少子高齢化が起こっている現代社会において、医療業界には人手不足の課題があります。
こうした人手不足は、新型コロナウイルスの流行による医療逼迫が大きな拍車をかけたといえます。
業務量が多くなる反面、給料は大きな変化がなく、離職した看護師やスタッフもいるでしょう。
こうした深刻な問題は、どのような方法で解決できるのでしょうか。
そこで本記事では、医療における人手不足を解決する7つの方法についてご紹介します。どんな原因なのかも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
医療現場が人手不足に陥っている現状
日本看護協会調査研究報告によると、「採用数を増やす予定」と回答した病院は全体の3割を超えていました。このことから人手不足であることがわかります。
また一般就職紹介状況によると、人手不足であることがわかる有効求人倍率を計算した結果、2.07倍と示されていました。医療現場では人手不足が深刻であり、まだまだ人の手が増やさなければなりません。
今後も少子高齢化が進んでいく見込みなので、さらに人手不足になるといえるでしょう。
参照：2018 年 病院看護実態調査
参照：一般職業紹介状況（職業安定業務統計）
医療現場の人手不足はなぜ？5つの原因
では、医療現場の人手不足が起こっている5つの原因についてご紹介します。
- 離職・退職率が上昇している
- 厳しい労働環境がある
- 看護師などの需要が高騰している
- 医療技術が高度化している
- 担当する業務範囲が広く重い
離職・退職率が上昇している
離職・退職率の上昇は、人手不足の大きな要因になっています。医療従事者の業務は、夜勤も多く重労働となります。加えて、残業や休日の勉強会、研修を行うことも少なくありません。
こうした重労働により、辞める決断をする方は多いでしょう。
また、スキルアップやキャリアアップをするために退職、いじめやトラブルによる退職、結婚や出産をきっかけに退職されるケースもあります。
厳しい労働環境がある
先ほども少し触れましたが、過酷な労働環境も人手不足の要因です。
夜勤があったり、早朝に勤務したりと勤務時間が不規則でプライベートに支障をきたすかもしれません。時間帯によっては医師や看護師の数が少ないので、患者の対応に追われたり、緊急搬送された場合は他の患者の対応に遅れたりすることがあります。毎日バタバタしている状態に耐えきれず、離職してしまう方も少なくありません。
看護師などの需要が高騰している
現代の日本において、看護師などの需要は高騰しています。需要に供給が追いつかず、深刻な人手不足となっています。
日本の高齢化はどんどん進んでおり、高齢者の数は増えていくと言われています。内閣府が公表する高齢社会白書によると、令和4年10月には高齢者の割合は29.0％、令和19年には33.3％と予想されています。
総人口は1億2,000万人を下回り、その後も減っていき、3人に1人が高齢者となると見込まれています。
医療の需要が高まっている反面、医療従事者の数は追いついていません。
医療技術が高度化している
医療技術が高度になり、急速に発展してきたからこそ人手不足になっています。というのも、医療技術の発展に伴って、求められるスキルも高度になっているからです。
スキル人材を採用・育成することは容易ではありません。技術が進化するにつれて、スキルを持った人材の確保は難しいでしょう。
担当する業務範囲が広く重い
医療現場は、さまざまな業務があり、それぞれが人間の命を支える重要な役割を担います。医療現場の主な職種は以下のとおりです。
- 医師
- 助産師
- 看護師
- 救急救命士
- 薬剤師
- 保健師
- 理学療法士
- 歯科医師
- 歯科衛生士
- はり・きゅう師
もちろん、上記の他にたくさんの職種があります。
業務範囲が広く、さまざまな人材が求められるため、人手不足となっています。
医療の人手不足は人的ミスにも影響する
医療業界はミスが命取りになりますが、人手不足は人的ミスに直結します。病床あたりの医師や看護師の数が増えると、業務を分担でき、安全に治療可能です。余裕を持って業務にあたれれば、医療サービスの向上にもつながります。
しかし、現在は病床あたりの医師や看護師の数が減っているので業務の分担ができず、安全に治療できないことになりかねません。
人手不足は、こうした医療サービスが低下する要因になります。
医療における人手不足の解決策7選
では、医療における人手不足の解決策を7つご紹介します。
- 給与や残業代の賃金を引き上げる
- 手当を充実させる
- 福利厚生などの労働環境を整備する
- 評価制度を見直す
- 勤務体制を再構築する
- スキル・キャリアアップの支援体制を整える
- 1on1ミーティングで関係値を深める
給与や残業代の賃金を引き上げる
給与や残業代の賃金を引き上げることが有効な手段の一つです。日本看護協会によると、看護師は現状の給料に不満を持っていると回答した人が75.7％でした。
業務量に対して賃金が見合っていないと感じる方は多いため、賃金アップは看護師を含む医療従事者にとって不満を解消する1番の解決策です。深夜時間は勤務している医療従事者は少ないですが、深夜帯の給料もあげることで、人手不足も解消につながるでしょう。
参照：「2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査」報告書
手当を充実させる
夜勤手当や残業手当を充実させることも大切です。先ほどお伝えしましたが、賃金に不満を持っている医療従事者は仕事に対してのモチベーションアップにもつながります。
昇給は難しい場合でも、手当を充実させることで不満の軽減につながるでしょう。
福利厚生などの労働環境を整備する
賃金や手当だけでなく、福利厚生などの労働環境を整備することも対策の1つです。結婚や出産、子どもの世話などで離職するのを防ぐため、生活面で支援するとより良い労働環境になります。具体的には以下のとおりです。
- 社宅や寮生活の支援
- 子どものために保育所を作る
その他の福利厚生制度を見直すことで、離職率の低下につながります。
評価制度を見直す
評価を見直し、明確にすることで医療従事者のモチベーションアップや教育面を充実させられます。
また、等級や給料の明確さも必要です。看護師などのスタッフの等級に応じた適材適所、給料アップを明らかにし、不満が溜まりにくい労働環境を作りましょう。
勤務体制を再構築する
就業時間や出勤時間、回数を見直し勤務体制を再構築することで人手不足の改善が見込めます。現状、出勤や就業に柔軟な対応ができていない病院が多いです。特に看護師は結婚や妊娠、出産を理由に転職する場合があります。復職を促すために、短時間労働の制度を導入するなどで対策すると人員確保が可能です。
また、ITなどを用いることで、効率的に作業が行えたり、勤務時間を減らしたりできるので、結果的に過度なストレスなく、長期間働けます。
スキル・キャリアアップの支援体制を整える
医療技術の高度化が進む中で、スキルやキャリアアップは欠かせません。こうしたスキルアップの支援体制を整えることで、人材のスキル向上につながり、人手不足の解消につながります。
スタッフ自身もスキルアップを実感できれば、やりがいを感じてもらえるでしょう。業務に対するモチベーションの維持にも役立ちます。例えば、医師に関する資格取得の支援やEラーニングの導入などが挙げられます。
1on1ミーティングで関係値を深める
いじめやトラブルなど、人間関係の悪化も離職につながる要因の一つです。そこで、1on1ミーティングによる現状の悩みや気持ちのヒアリングが有効です。
医療従事者にとって、人間関係の相談は勇気がいるものです。相談したことによって、状態が悪化する懸念もあります。
そこで、悩みや不満を相談できる機会があれば、モヤモヤも晴れ、問題の解決につながりやすくなります。
また、上司と部下との信頼関係構築にも活用できるでしょう。チーム全体の士気やモチベーションにつながるため、定期的に実施してみてください。
まとめ：深刻な医療の人手不足は解決策の実施で改善しよう
医療のおける人手不足は深刻ですが、解決策を実施することで確保できます。
しかし、病院によって、どの解決策が有効かは一概には言えません。
現状で病院にはどのような課題があるのかをしっかり見極めた上で、解決策を実行しましょう。
