みなさんは「チーム医療」というフレーズをご存知ですか?
近年、このチーム医療が大きな注目を集めており、多くの医療機関が採用し始めています。
本記事では、チーム医療とは何か、チーム医療の重要性、チーム医療のメリット・注意点について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、チーム医療に対する理解を深めましょう。
この記事の内容
チーム医療とは?各専門職の役割を解説
ここでは、チーム医療について、その概要を説明します。
チーム医療とは何か、またチーム医療における各専門家の役割を解説します。
チーム医療とは何か?
チーム医療とは、一人の患者さんに対して、複数の職種・専門家が協力して治療を行うことです。
病院をはじめとする医療機関には、医師、看護師をはじめ、複数の職種・専門家が在籍していることが多くあります。
従来は、基本的に一人の患者さんに対応するのは医師などわずかな専門家のみで、他の職種との横の連携が取れていませんでした。
専門家が一人だけですと、自分の専門範囲のことしかわからず、専門外の内容には対応できないことが問題となってきました。
そこで、それぞれ異なる専門分野を持った職種・専門家が連携して対応することで、患者さんに適切な治療を施すことをチーム医療といいます。
チーム医療での各専門家の役割
チーム医療には、さまざまな分野の専門家が携わります。
ここでは、以下に挙げたそれぞれの専門家がチーム医療において、どのような役割を果たすのかを解説します。
- 医師
- 看護師
- 薬剤師
- 管理栄養士
- 医療ソーシャルワーカー
- その他
1つずつ解説します。
医師の役割
医師の役割は、チーム医療全体を統括することです。
診断と治療方針を決定したり、自ら治療に臨みながら全体への指示出しをしたりします。
また、患者さん本人やそのご家族に、治療方針・治療方法等を説明し、理解を得るのも医師の役割です。そして、患者さんとのやりとりの中で出てきた問題点に対して、他の専門家に繋げる役割もあります。
看護師の役割
看護師の役割は、患者さんやご家族の精神的な拠り所になることです。
患者さんやご家族は、不安や悩みを抱えていることが多いのですが、女性の患者さんから男性の医師には言いづらい、同じ女性同志なので話せるなど、その相談相手になれる身近な存在の1つです。
患者さんやご家族のことを理解し、寄り添うことが求められます。
また、医師の説明が不十分な場合は補足説明を行うなど、医療チームと患者さんとの架け橋の役割を果たします。
薬剤師の役割
薬剤師の役割は、治療で使う医薬品に関する情報を提供することです。
医薬品の名前や効能、副作用、注意点などを説明したり、副作用が起きにくいような服用方法を説明したりします。
また、医師が把握していない情報を聞き出したり、副作用症状があれば、医師に伝えるなどの役割もあります。専門的な知識を活かして、正確な情報伝達が求められます。
管理栄養士は、入院中から退院後の食事内容について、専門的なアドバイスを行います。治療中の病気と関連して食事の際に気をつけること、調理方法の工夫、栄養状態の評価などを行います。
医療ソーシャルワーカーの役割
医療ソーシャルワーカーは、市町村の医療扶助に関する手続き、他の病院との患者情報のやりとりなど、窓口の役割を果たします。
看護師は治療そのものへの不安を取り除くことがメインであり、医療ソーシャルワーカーは、入院費の支払いや保険適用の有無、転院する場合には転院先への情報の共有など、経済面での不安を取り除くことや、他がメインとなっています。
患者さんの利益が最大化されるよう、問題を的確に把握し、行動する力が求められます。
その他の役割
他にも、以下に挙げたように、医療施設にはさまざまな専門家が在籍しています。
- 保健師
- 理学療法士・作業療法士・言語療法士
- 臨床検査技師
- 臨床工学士
- ケアマネージャー
- 臨床心理士
- 医療事務
それぞれの専門性が必要とされた時、その都度チームに参画し、専門性を発揮することになります。
チーム医療はなぜ必要なのか?
では、チーム医療はなぜ必要なのでしょうか?
患者さんやそのご家族は、病気に対する身体的な苦痛に加え、心理的な不安・苦痛、社会的な不安を抱えていることが多くあります。
例えば、以下のような悩みが挙げられます。
- 「病気の再発はあるのか?」
- 「自分の薬の副作用にはどのようなものがあるのか?」
- 「入院費を分割で支払えないか?」
- 「退院後の食事はどうすればいいのか?」
- 「今後どうやって仕事に復帰できるのか?」
- 「介護はどのように手続きを行えばよいのか?」
こうした悩みを医師一人で全て解決するのは、到底困難です。
そこで、各専門職を集め、それぞれの専門分野の知見から可能な限り協力をすることで、心理的な苦痛や社会的な不安を取り除くためにチーム医療があります。
迅速に、かつ正確に患者さんの問題に向き合うことがチーム医療には求められているのです。
チーム医療を導入するメリットは?
チーム医療を導入するメリットは、主に以下の3つです。
- 医療の質が向上する
- 医療従事者の負担が軽減する
- 医療の安全性が向上する
1つずつ解説します。
医療の質が向上する
1つ目は、医療の質が向上することです。
さまざまな分野の専門家が集まって治療にあたるため、一人の医師で対応するよりも早く回復し、精神的に安定したりすることが見込めます。
その結果、医療の質が向上し、患者さんの生活の質も向上します。
医療従事者の負担が軽減する
2つ目は、医療従事者の負担軽減です。
複数の専門家が仕事を分担するため、治療が効率化します。
効率化すると、当然ながら一人ひとりの負担が減り、より働きやすい環境になります。
医療の安全性が向上する
3つ目は、医療の安全性が向上することです。
意思決定を一人に任せるのではなく、複数の専門家によって行うことで、間違った情報を伝えたり、ヒューマンエラーが減るので、医療全体の安全性が向上します。
より安全な医療を受けているとわかれば、患者さんも安心して治療を受けられるようになります。
チーム医療を導入するデメリットは?
一方、チーム医療を導入するデメリットが2つあります。
- コミュニケーション不足はエラーを起こしかねない
- 教育が不十分になりやすい
1つずつ解説します。
コミュニケーション不足はエラーを起こしかねない
1つ目は、コミュニケーション不足になりやすいことです。
情報伝達のやり方が確立していないと、必要な情報が伝達されず、患者さんに対して適切な治療が施せません。
コミュニケーション不足になると、専門家が集まってチーム医療を行っている意味がなくなってしまうので、早期に情報伝達のやり方を確立することが大切です。
教育が不十分になりやすい
2つ目は、各専門家の能力レベルの問題です。
常に同じチームを組めていれば、お互いの技量が把握でき、コミュニケーション不足も解消しますが、必ずしも毎回同じチーム編成で臨むわけではありません。
その際に、各専門家の技量がバラバラだったり、チーム医療におけるポイントを理解していなかったりすると、うまく連携できません。
そのため、各専門家にはチーム医療への理解を深めるような教育が大切です。
チーム医療をする上でのコツは?
チーム医療をする上で、3つのコツがあります。
- 患者さんが主体的に参加すること
- 円滑なコミュニケーション
- 目標を明確にすること
1つずつ解説します。
患者さんが主体的に参加すること
1つ目は、患者さんが主体的に参加することです。
患者さんが自分の症状を細かく伝えたり、看護師に悩み事を相談したりすることで、チーム医療の成果は大きく変わります。
しかし、不安を抱えている患者さんやそのご家族は、精神的に主体的に参加しづらい場合もあります。
その場合は、看護師をはじめとして、チーム全員がそれぞれの特性を活かして患者さんのサポートすることが大切です。
少しずつ心を開き、主体的に参加してもらえる可能性があります。
円滑なコミュニケーション
2つ目は、円滑なコミュニケーションをとることです。
チーム医療では、個人の能力よりも全体の連携が大切になります。
状況を逐一報告し、情報共有をしておくことで、迅速かつ的確なサポートが施せるでしょう。
なお、個人情報の取り扱いに関しては、十分に注意をしてください。
目標を明確にすること
3つ目は、目標を明確にすることです。
何を目標にチーム医療に取り組んでいるのかを明確にすることで、チームの士気が高まるだけでなく、患者さんも主体的に参加してくれる可能性が高まります。
全員が同じ方向を向き、改善に取り組めるように、目標を明確にしましょう。
まとめ:チーム医療の導入で医療サービスの品質を高めよう
近年、注目を集めているチーム医療では、さまざまな分野の専門家が協力することで、患者さんに対して効果的な医療を提供することを目的としています。
各専門家がそれぞれの専門性を発揮しながら、相互に連携して患者さんに接することで、患者さんの不安や悩みを早期に解決できるでしょう。
ぜひチーム医療を導入し、効果の高い治療を実践してみてください。