診療報酬ファクタリングとは？仕組みやメリットを解説

クリニックや病院では、開業初期や急に現金を用意すべきタイミングで早期に資本金を得られる「診療報酬ファクタリング」という仕組みがあります。

診療報酬ファクタリングとは、診療報酬債権を活用した医療分野専門の現金化サービスです。医療に携わる国家資格取得者のみが活用できるもので、一般的なサービスに比べて審査の基準が低く、手数料の負担が少ないという特徴があります。

本記事では、診療報酬ファクタリングについて解説します。仕組みや利点を理解し、自社に適したファクタリングのサービスや仲介サイトを選択できるようにしましょう。

診療報酬ファクタリングとは？仕組みを解説！

診療報酬債権ファクタリングとは、医療行為をおこなう病院やクリニックなどで、国家資格取得者が得た公的機関から支払われる金額の売掛を債権として使用し、資本金を調達する仕組みです。

本来、国民健康保険や社会保険支払基金から診療後の2～3か月後に受け取れる報酬金を売掛債権として、ファクタリングの事業をおこなう会社に売却します。売却する際に費用が支払われるため、キャッシュ化が素早くでき、急な資金の工面に役立ちます。

一般的には、診療報酬ファクタリングは3社で契約を結ぶのが基本です。病院・クリニックとファクタリング会社、売却先である国民健康保険・社会保険支払基金の3社で契約します。

診療報酬ファクタリングのメリット

利点としては早急な現金の調達ができること、手数料が安いこと、医療機関に支払われる金額の判断ハードルが低いことがあげられます。売掛先は国保・社保（支払基金）となるため、未回収のリスクは低いといえるでしょう。
財務状況が悪くても審査に通りやすいため、費用がかかる開業初期や急に医療器具や設備投資が必要になったときなどにも役立ちます。
また、すでに保有している債権を売却するサービスであるため負債として記録されません。

診療報酬ファクタリングのデメリット

診療報酬ファクタリングを用いる際の欠点もあります。一度使い始めると中止のタイミングが難しくなり、継続しなければ資金運用ができなくなります。開始当初から前倒しで調達できる分、十分な貯金がないとファクタリングを止められません。
また、安価とはいえ手数料の負担があるため、本来受け取れる収益が低くなり、そのうち資金繰りは悪化するでしょう。

診療報酬ファクタリングを使いこなすには専門的な知識が必要であるため、取り扱うファクタリング事業が少なく、選択肢の幅が限られやすいこともマイナス面です。

診療報酬ファクタリングの費用や手数料の相場はいくら？

診療報酬ファクタリングの導入時に必要な費用は、選択するファクタリングの事業内容により異なります。手数料は0.5〜5％程度が相場です。

一般的なファクタリングでは、2社間に比べ3社間での契約の方が安く、診療報酬ファクタリングはさらに安い相場であるといえます。

診療報酬ファクタリングの流れ

申込みから契約、入金までの手順は次のとおりです。

1. サービスや内容の比較による会社選び
2. 申し込み・審査
3. ファクタリング会社との契約締結
4. 債権譲渡を通知
5. ファクタリング会社から入金
6. 診療報酬額の確定
7. ファクタリング会社から残額分の入金

それぞれ解説するので、流れを理解しましょう。

①ファクタリング会社選び

診療報酬債権を専門に取り扱う複数のファクタリング会社に見積もりをし、サービスの内容や必要な費用を比較します。
ファクタリング会社によって初期費用や月額の固定費、手数料などは異なり、入金までの期間にも差があるため、自院に適した事業内容や経営費用であるかを検討しましょう。

②ファクタリングの申し込み、審査

依頼するファクタリング会社が決定したら債権買取を申し込み、診療報酬額に問題がないかチェックをおこないます。審査の際は、次の書類が求められることが代表的です。

• 保険医療機関の指定通知書（病院やクリニックの実態が把握できる書類）
• 経営者の本人確認をおこなえる書類
• 決算書（経営の状態が確認できる書類）
• 診療報酬の決定通知書

国や自治体が売却先であるため信用度は高く、基本的には判断基準に抵触しないことがほとんどです。

③ファクタリング会社との契約締結

審査に通過すると、病院やクリニックの経営者とファクタリング会社の2社間で債権譲渡契約を結びます。
契約締結後に内容の相違がなく、解約時までスムーズに進むことが最善ですが、万が一に備えて控え書類の管理は徹底しましょう。

たいていは大手ファクタリング会社や金融機関の子会社が事業を提供していますが、中には悪徳なファクタリングを運用する業者も存在します。トラブルに巻き込まれないよう、契約内容は注意して確認してください。

④債権の譲渡通知

病院、クリニックの経営者とファクタリング会社の連名で、国民健康保険や社会保険支払基金に債権譲渡通知書を送付します。
債権の譲渡通知により、国民健康保険や社会保険支払基金は債権の所有者が変更されたことを認知し、3社間の契約を結びます。

⑤ファクタリング会社から入金

3社間での契約の締結後に、ファクタリング会社は病院やクリニックへ診療報酬の買い取り代金を入金します。
通常ファクタリングは、債権分のすべてを一度に入金します。しかし、診療報酬ファクタリングでは、国民健康保険や社会保険支払基金による診療報酬額の決定が必要です。

審査後に入金額が確定するため、1回目の入金では8割程度の支払いがおこなわれます。

⑥診療報酬額の確定

医療やクリニックから、国民健康保険や社会保険支払基金の支払機関に請求する診療報酬に対する判断が行われます。
提示内容が認められれば診療報酬額が確定し、ファクタリング会社に全額が支払われます。

⑦ファクタリング会社から残額分の入金

国民健康保険や社会保険支払基金からファクタリング会社に診療報酬額が支払われた後、残額分が病院やクリニックに入金されます。
この際、本来の収益である全額から手数料を差し引かれます。

診療報酬ファクタリングのおすすめ仲介サイト3選！

診療報酬ファクタリングに特化した仲介サイトを紹介します。

1. エヌエスパートナーズ
2. 三菱ＵＦＪファクター(株)
3. アクリーティブ

それぞれ内容を解説するので、自院に適した事業内容や経営費用であるか比較してみてください。

エヌエスパートナーズ

エヌエスパートナーズは、医療や介護事業者の共創運営型ビジネスパートナーを目指す会社で、開業や事業再生、運転資本の助言をおこないます。
20年の実績経験があり、財源の確保以外にも経営や運営に関する知識を持っているため、資金繰りに悩む経営者の味方になってくれます。
買取上限額はなく1～5か月分の買取実績があるため、運営状況にあわせた相談ができます。

三菱UFJファクター(株)

三菱UFJファクター株式会社は、三菱UFJ銀行が運用するファクタリング事業であり、信用度が高いのが特徴です。オンラインで申込みや手続きができるため、手間も省けるでしょう。
初期手数料や月額利用料がかからず、一律の手数料0.8％のみで運用できることも、資金計画や経営管理が簡易的におこなえる利点です。
契約は1年更新で途中解約もできるため、貯金ができたタイミングで解約すれば、ファクタリングに依存する心配もありません。

アクリーティブ

アクリーティブは、医療機関向けの診療報酬ファクタリングに特化した専門の会社であり、経験豊富な担当者に相談できるメリットがあります。20床の小規模機関から利用でき、最大3か月分の買取をおこないます。
保証人は原則不要で、必要書類を専用サイトからアップロードして申込み可能です。審査結果までの手続きもオンラインで完結できます。
施設の建て替えをおこなう目的での資金繰りや、一時的に収益が減少した際でも必要なスタッフへの賞与、退職金などの人件費への活用実績があります。

診療報酬ファクタリングの利用をおすすめするケース

運用費用が不足している場合や、早急に現金が必要な場合に活用できます。代表的な利用を推奨するケースは、次のとおりです。

• 開業したばかりで運転資本が足りない場合
• 銀行融資で財源の調達ができない場合
• 急に資金が必要な場合

診療報酬ファクタリングは売掛先が国保・社保（支払基金）であるため、信用度が高いことが魅力です。
赤字経営の場合でも価値判断が低く、基準を満たせる確率が高いため、銀行で融資を受けるよりも利用しやすいでしょう。

借入をおこなう借金ではないため負債にならず、収益が見込める際に利用を停止できれば資金繰りに役立ちます。

まとめ：診療報酬ファクタリングの利用で差別化を図ろう

診療報酬ファクタリングは、保険適応の医療報酬を売掛けする手段です。

一般的なサービスに比べて手数料が安く、判断基準も低いため運用しやすい特徴がありますが、長期間にわたり運用費用に充てると収益が減少し、依存するリスクも懸念されます。

ファクタリングの正しい運用方法を理解して、資金の調達に役立てましょう。