「在宅医療の開業を検討しているけど、どのような開業支援があるのか知りたい……」
「在宅医療の開業支援を行っている企業・サービスを知りたい……」
このような悩みを抱えていませんか?
在宅医療は、病院や診療所に通院することが難しい患者に対して、医師や看護師などが自宅を訪問して診療やケアを行う仕組みです。
在宅医療を担うことで、地域包括ケアの中核として信頼を得やすく、地域に不可欠な存在になれるなどのメリットがあります。
しかし、在宅医療を始めるためにはさまざまな準備が必要であるとともに、どのようなことから手を付ければよいかわからないという方も多いです。
そこで本記事では、在宅医療の開業支援について解説します。在宅医療の開業支援が気になっている方は、参考にしてみてください。
この記事の内容
在宅医療を開業する際にはどのくらい取り組むか明確にすることが重要
在宅医療を開業する際には、診療の中で在宅医療をどの程度取り組むのか明確にしましょう。どのくらい在宅医療を診療の柱にするのかで、診療所の方向性が大きく変わります。
在宅医療を診療の柱にするのか、外来中心クリニックと在宅医療を少し取り入れるのか、在宅医療を専門にするのかなど、さまざまな取り入れ方があります。
方向性を決めないままで始めてしまうと、外来と在宅のバランスが取れず、経営が不安定になる可能性もゼロではありません。
また、在宅医療は24時間対応や緊急往診の有無によって業務量が大きく変わり、人員配置や勤務体制の設計が必要です。
そのため、経営が不安定になってしまう状態を避けるためにも、在宅医療を開業する際には、どのくらい取り組むのかを明確にしてください。
在宅医療のみを実施する場合の条件
在宅医療のみを実施する場合は、医療法上「診療所」として開設する必要があります。
外来診療を行わなくても開設は可能ですが、内科や外科、在宅療養支援診療所など、提供する医療内容に応じて標榜科を選択し、保健所に開設届を提出することが必要です。
また、在宅医療のみで運営する場合は、在宅療養支援診療所として届け出ることが多いですが、24時間体制の確保や多職種・他機関との連携も重要になります。とくに、夜間・休日も往診や電話対応できる体制が必須です。
自院または他院との連携で、常時対応可能な状態を構築する必要がある点を理解しておきましょう。
在宅医療の開業支援の主な内容
在宅医療の開業支援の主な内容は、以下の5つです。
- 事前調査・計画支援
- 運営準備支援
- 電子カルテ選定およびシステム構築支援
- 開業後サポート
- 在宅医療周辺機能の強化支援
それぞれの内容について解説します。
事前調査・計画支援
在宅医療の開業支援では、事前調査や計画支援が受けられます。どのような地域で、どのくらいの在宅医療ニーズがあるかを把握できるため、経営計画を立てやすいでしょう。
たとえば、半径5km以内に在宅医療専門クリニックが少なく、高齢者人口が多い場合は、在宅特化型を開業することで、経営状況を安定化させやすいです。
ほかにも、どのくらい患者数を見込めるのか試算してくれたり、病院や介護施設の数、競合クリニックの在宅医療状況などを調査してもらったりすることも可能です。
在宅医療の開業を視野に入れている方は、開業支援を受けてみてください。
運営準備支援
運営準備支援は、在宅医療の開業支援内容の一つです。開業前に必要な体制や物品を整えることができるので、初めて在宅医療を開業する方に向いています。
たとえば、保健所への診療所開設届出や、在宅療養支援診療所の指定申請などが挙げられます。
ほかにも、医師や看護師、事務スタッフの採用や教育研修、近隣クリニックとの共同オンコール体制の構築などをしてくれるため、運営準備を整えやすいでしょう。
電子カルテ選定およびシステム構築支援
在宅医療の開業支援として、電子カルテ選定やシステム構築支援も挙げられます。
たとえば、訪問スケジュール管理や、多職種連携機能が備わっている在宅医療専用カルテを選定してもらえます。
ほかにも、患者や家族との連絡や、訪問看護ステーションとの情報共有アプリの導入、レセプト請求システム・訪問スケジュール管理システムの連携なども支援内容の一つです。
在宅医療でよく利用されているシステムを目的や状況に合わせて選定してくれるため、どの電子カルテ・システムを選べばよいか迷っている方には開業支援の利用がおすすめです。
開業後サポート
在宅医療の開業支援では、開業後のサポートが含まれている場合もあります。具体例をあげると、収益・患者数のモニタリングや、経営改善アドバイス、スタッフの離職防止などです。
ほかにも、開業半年後、想定よりも在宅患者が集まらない場合は、地域包括支援センターへの説明会を実施し、紹介を増やすような支援を受けられる場合もあります。
開業後の経営が心配な場合は、開業後サポートが取り組みに含まれている在宅医療開業支援サービスを選びましょう。
在宅医療周辺機能の強化支援
在宅医療周辺機能の強化支援も、在宅医療開業支援の取り組みの一つです。在宅医療では、周辺の介護や福祉サービスとの連携が重要です。
訪問看護ステーションや訪問リハの立ち上げ支援や、クリニックが中心となり、在宅医療ネットワークを構築してくれる支援も受けられる場合があります。
ケアマネ・訪問看護・薬剤師と合同で勉強会を開くこともあります。
【事例】自治体が行っている在宅医療開業支援のサポートや補助金
自治体が行っている在宅医療開業支援のサポートや補助金事例を2選ご紹介します。
- 北海道在宅医療推進支援センター
- IT導入補助金
サポート・補助金の活用を検討している方は、参考にしてみてください。
北海道在宅医療推進支援センター
北海道では、地域の在宅医療推進を目的に、北海道在宅医療推進支援センターが設置されています。
主な支援内容では、医師向け研修の開催や、地域への在宅医療アドバイザーの派遣支援を実施しています。
在宅医療に従事しようと考えている医師を対象に研修会を実施しているため、基礎知識や疑問を抱いている点が解消されやすいです。
参照:令和3年度(2021年度) 地域医療介護総合確保基金(医療分)事業
IT導入補助金
IT導入補助金は、小規模事業者持続化補助金と同様に、国が出している補助金制度です。
中小企業や小規模事業者が、ITツールを導入する際の経費の一部を補助する制度です。在宅医療分野でも、電子カルテや訪問診療システムの導入支援として活用できます。
在宅医療で開業支援している会社・サービスの選び方
在宅医療で開業支援をしている会社・サービスを選ぶ際に意識したいポイントは、5つあります。
- サポート範囲
- 在宅医療の支援実績
- 費用体系と契約条件
- 開業後のフォロー体制
- 専門性の深さ
それぞれのポイントについて解説します。
サポート範囲
在宅医療の開業支援を提供している会社・サービスを選ぶときは、サポート範囲に注目しましょう。会社・サービスによって、サポート範囲が大きく変わります。
たとえば、物件探しから開業資金の融資サポートまで対応してくれる企業や、開業後の分析までワンストップで対応してくれる企業もあります。
ただし、サポート範囲が多いほど費用も高額になりやすいため、予算と照らし合わせながらサポート範囲を確認するのがおすすめです。
在宅医療の支援実績
在宅医療の支援実績は、会社・サービスを選ぶ際に確認したい重要なポイントです。支援実績が多いと、これまで相談を受けたノウハウを活かして柔軟に対応してもらえます。
また、支援実績でも具体的にどのような支援を受けて、どのように解決できたのかわかりやすく記載されていると、自院と合っているか判断しやすいです。
さらに、サポートしたクリニックが現在も安定的に運営されているか確認すると、サポートを受けたあとの姿を想像しやすいでしょう。
費用体系と契約条件
在宅医療支援を提供している会社・サービスを選ぶときは、費用体系と契約条件を確認しましょう。費用体系では、コンサル料や契約金の初期費用、紹介料や採用成功報酬の成果報酬、月額費用の有無などが挙げられます。
また、契約解除や途中解約時の条件を確認しておくと、万が一の際にトラブルを防げます。
費用面だけでなく、どこまでサポートが含まれているかもしっかりとチェックしてみてください。
開業後のフォロー体制
開業後のフォロー体制は、在宅医療支援を提供している会社・サービスを選ぶ際にチェックしたいポイントです。
開業後の患者紹介支援や、施設や居宅の訪問先開拓の同行支援などを提供している会社もあります。
ほかには、スタッフ教育や離職対策、収支管理のアドバイスを提供している会社もあるため、開業後に不安を抱えそうな点までフォローしてくれる企業を選ぶのがおすすめです。
とくに、在宅医療は患者・施設紹介ルートの確保が生命線でもあるので、開業後フォローの有無は入念にチェックしましょう。
専門性の深さ
在宅医療支援を提供している会社・サービスを選ぶときは、専門性の深さに注目しましょう。
とくに注目したいのは、スタッフやコンサルタントに、医師や看護師、医療事務経験者がいるかです。
また、在宅医療における診療報酬の算定や、地域包括ケアの知識、介護保険制度に精通していると、わからない点を相談しやすいでしょう。
制度改定や地域事情に対応できる専門性があると、開業の成功確率を高めやすいです。
在宅医療で開業支援している会社・サービス5選
在宅医療で開業支援をしている会社・サービスを5選紹介します。
ビジネススクウェア
運営会社 | 有限会社ビジネススクウェア |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・在宅医療支援に特化 ・幅広いサポート範囲 ・紹介患者を増やすための渉外ノウハウがある |
公式サイト | https://www.business-square.jp/homecare/ |
在宅医療クリニック支援サービスは、在宅医療の開業支援に特化したサービスです。
クリニックの開設手続きや各種届出の作成だけでなく、開院に向けた病院・クリニックのPRやホームページ作成を行っています。
ほかにも、協力病院や在宅患者との契約、重要事項説明書など、運営に必要な事務や契約書類も用意しています。
また、開業後も医師や看護師などが医療に専念できるように、人事管理やシフト管理、レセプトチェックなどといったオペレーションの部分もサポートしてもらうことが可能です。
セコム医療システム
運営会社 | セコム医療システム株式会社 |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・全国各地に支援実績あり ・希望に応じた開業支援 ・職員研修や地域連携・施設営業のサポートがある |
公式サイト | https://medical.secom.co.jp/service/medical/ |
セコム医療システムは、全国各地に在宅医療の支援実績があり、希望に応じた開業支援を提供してくれます。
たとえば、在宅医療に重点をおいたクリニックや、外来に重点をおいたクリニック、在宅医療と外来のバランスを取りたいクリニックごとに対応しています。
また、クリニックの開業・運営支援だけでなく、医療機器や医材料の調達、電子カルテの導入など、幅広い支援を提供しているサービスです。
サポート内容の中には、地域連携や施設営業のサポートもあるため、周辺施設との連携がうまくいくかわからないと悩んでいる方にも向いているでしょう。
メディパス
運営会社 | 株式会社メディパス |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・専任のスタッフが円滑な診療をサポート ・診療報酬請求全般に関わる業務サポートもあり ・開業後のサポートもある |
公式サイト | https://medipass.co.jp/ |
メディパスは、専任のスタッフが円滑な診療をサポートしてくれたり、診療報酬請求全般に関わる業務のサポートもあったりする会社です。
さまざまなサポート内容があり、希望に合わせて柔軟に対応してもらえます。
ほかにも、採用媒体の選定や、求人原稿内容のアドバイスなどもあり、スタッフ採用に力を入れたい方にもおすすめです。
また、訪問診療を行っている介護施設を定期的に訪問し、患者やクリニックへの要望収集や共有・改善策の検討まで行っています。
メディカルラボ
運営会社 | 有限会社メディカルラボ |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・支援実績が豊富でわかりやすい ・事務長代行サービスがある ・初回相談は完全無料 |
公式サイト | https://medicallabo999.com/ |
メディカルラボは、豊富な支援実績がある会社で、在宅医療や医業経営のアドバイスを行っています。
支援実績は公式サイトに具体的に掲載されており、支援目的や課題、成果が詳細に記載されています。そのため、自院が抱えている課題を解決できる会社・サービスなのか判断しやすいでしょう。
また、事務長代行サービスもあり、開業後しばらくの間、人事労務管理や経営管理などの業務を代行してもらえます。
さらに、初回相談は無料なので、初めて在宅医療の開業を検討している方にも向いているでしょう。
エージェント・プロフェッショナル
運営会社 | 株式会社エージェント・プロフェッショナル |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・開業地の選定や開業届書類の作成代行がある ・営業活動もサポート ・保険請求業務もフォローしてもらえる |
公式サイト | https://agent-professional.com/lp/zaitakushinryo/ |
エージェント・プロフェッショナルは、開業に関するプロセスをフルコミッションで対応してくれる会社・サービスです。開業地の選定や各種書類の作成代行のほかに、営業活動も支援してもらえます。
たとえば、緊急時の受け入れ可能な病院や、地域訪問看護ステーション等とのネットワーク構築支援を行ってくれるため、周辺施設と強い連携体制を整えられます。
また、レセプト業務などの在宅医療関連の診療報酬請求も手伝ってもらうことが可能です。幅広いサポートを行っており、周辺施設との連携性を強化したいという方に向いています。
在宅医療の開業支援実例
在宅医療の開業支援実例を3選ご紹介します。
ほかの病院・クリニックがどのような支援を受けているか気になる方は、参考にしてみてください。
Sクリニック
神奈川県にある内科のSクリニックは、在宅医療に関する開業時支援を受けています。
具体的には、在宅医療に関する研修や各種書式等の準備、病院や介護事業所などの連携業務を受けています。
在宅医療に関する研修を行ってくれるため、医師や看護師などのスタッフが、在宅医療に関する基礎知識や重要なポイントを把握したうえで、開業できている状態です。
SHクリニック
東京都の泌尿器科・外科・内科のSHクリニックは、開業支援・運営支援を受けています。
開業・運営支援全般にわたって対応してもらっており、ストレスなく開業することができている実例です。
具体的には、開業前の事業計画や資産計画の作成、診療圏調査、内装工事の段取りなどの支援を受けています。
また、在宅診療向けの電子カルテを作り、モバイル端末があればどこでもアクセスできるカルテを導入しています。
専用の電子カルテのおかげで、レセプト業務の委託や24時間電話を受け付けるナースコールセンターを利用し、患者と医療者にとっての負担を大きく軽減している状態です。
Mクリニック
兵庫県の整形外科を行っているMクリニックは、開業支援や運営支援を受けています。
クリニック開業後は、事務長経験者が常駐する形で開業全般を手伝っている事例です。
開業半年後からは週1~2回のペースで訪問し、経営や人事労務管理、医事相談など深く関わっています。
在宅医療の開業に関するよくある質問
在宅医療の開業に関するよくある質問は、4つあります。
- 在宅医療を始めるために必要な資格や届出は何ですか?
- 在宅医療を開業する際には24時間365日の体制は必要ですか?
- 在宅医療を開業する際の資金調達の目安は?
- 在宅医療の診療報酬はどのように計算されますか?
それぞれの質問に対して回答しています。
在宅医療を始めるために必要な資格や届出は何ですか?
基本的には、医師免許があれば開業できます。主な届出や手続きでは、保健所への開設届、厚生局への保険医療機関指定申請などの届出が必要です。
また、在宅療養支援診療所や、在宅療養支援病院として届け出ると、診療報酬の加算が可能です。
まずは保健所に診療所開設届を提出し、その後に保険医療機関指定申請を行いましょう。
在宅医療を開業する際には24時間365日の体制は必要ですか?
在宅医療の開業で24時間365日の体制は必須ではないですが、患者の多くは高齢者・重症者になるため、緊急対応が求められるケースが多いです。
また、在宅療養支援診療所として加算を取る場合は、24時間往診・訪問看護との連携体制が必要になります。
個人開業では、まず平日日中のみから始め、患者数が増えてきた段階で夜間対応を外部の医師グループやオンコール代行サービスと連携する形で拡大させているケースもあります。
在宅医療は緊急対応が求められるケースが多いため、なるべく24時間365日の体制が作れるように準備しましょう。
在宅医療を開業する際の資金調達の目安は?
在宅医療開業時の資金調達の目安は、1,500~3,000万円程度です。診療所の賃貸や内装、車両、医療機器・備品などを用意する必要があります。
たとえば、在宅医療専門で始める場合、小規模な診療所と訪問用の車両2台、電子カルテの導入で約2,000万円の初期費用が目安となっています。
日本政策金融公庫の医療開業融資制度を活用して、資金調達を実施している医師が多いです。
在宅医療の診療報酬はどのように計算されますか?
診療報酬は、基本報酬に加算の組み合わせで決まります。在宅患者訪問診療料や、緊急往診・看取り加算などが挙げられます。
また、患者の状態に応じて月定額の在宅時医学総合管理料などを組み合わせることも可能です。
さらに、在宅療養支援診療所の施設基準を満たすと、診療報酬がさらに加算されます。
まとめ:在宅医療の開業支援を受けて安定した開業を!
在宅医療の開業を視野に入れているときは、開業支援を受けるのがおすすめです。開業支援を受けることにより、安定した開業を行いやすいです。
これまで培ってきたノウハウを活かした開業支援を受けられるため、開業までスムーズに進められるだけでなく、周辺施設との連携強化も図りやすいでしょう。
在宅医療の開業を検討している方は、本記事でご紹介した内容を参考にしてみてください。