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非常勤医師とは?常勤との違いやメリット・デメリットを解説

「非常勤医師は常勤医師と何が違う?」
「非常勤医師として働くメリットとデメリットは?」

医師の働き方には、特定の病院で正職員として働く「常勤」と、アルバイトのような形で非正規で働く「非常勤」があります。

非常勤のみで収入を得ている医師や、副業という形で収入をアップさせている常勤医師も少なくはありません。

非常勤医師として働く場合は、収入面や柔軟な働き方などのメリットがありますが、注意すべきデメリットも把握すべきです。

本記事では、非常勤医師の年収や仕事内容、メリット・デメリットを解説します。働き方を検討する際の参考にしてみてください。

非常勤医師とは

非常勤医師は、決まった病院に正職員として勤務せずに働く医師です。アルバイトのような形で雇用される医師だと考えて良いでしょう。

日本医師会によって2015年に発表された「病院における必要医師数調査結果」では、非常勤医師の割合は18.4%とされており、全体の約2割程度にとどまっています。

しかし、非常勤医師を雇用している病院の割合は全体の92.1%です。

多くの医療機関が非常勤医師を必要としていることが分かるでしょう。

非常勤医師と常勤医師の違い

非常勤医師と常勤医師は、一般的には以下の2点で区別されます。

  1. 「週32時間以下」の勤務時間ボーダーライン
  2. 福利厚生など待遇の充実度

「週32時間以下」の勤務時間ボーダーライン

常勤医師と非常勤医師を区別する際は、「週32時間」という勤務時間が1つの基準として用いられるのが一般的です。

厚生労働省が2014年に送付した「医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱」では、以下のように定められています。

病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。
出典:医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査要綱

勤務時間が週32時間以上の医師が「常勤医師」、週32時間未満の医師が「非常勤医師」として想定されています。

この目安はあくまでも、各病院の必用医師数を数えるために想定された数字に過ぎません。実際に非常勤・常勤を区別する基準には、医療機関ごとに違いがあります。

福利厚生など待遇の充実度

非常勤は常勤の医師と違い、どうしても給料以外の福利厚生をはじめとした待遇面が充実していません

社会保険や税金の手続きを自分で行わなければならず、手間もかかります。

非常勤のみで働く場合は、福利厚生などの待遇面で不利になる点には注意が必要です。

非常勤医師の働き方は2つ

非常勤医師には、主に2つの働き方があります。

  1. 定期非常勤
  2. スポット

定期非常勤

定期非常勤とは、勤務日程が決まっている働き方です。

「月曜日の10時〜18時」「土曜日の9時〜17時」のように、毎週同じ曜日と時間で働く場合が該当します。

週ごとに固定のシフトが決まっており、一般的なアルバイトと似たような働き方といえばイメージしやすいでしょう。

スポット

スポット勤務は、不定期に特定の日時のみ働くタイプの非常勤です。

健康診断や予防接種など、一次的な医師不足を解消するために募集されます。

日雇いのアルバイトのような形ではあるものの、一時的な医師不足を補わなければならないので、時給は高い傾向にあります。

非常勤医師の年収相場

非常勤医師が常勤医師と同じようにフルタイムで働く場合、年収は2,000万円を超えることもあります。

非常勤医師の時給は10,000円が相場ですが、診療科目によってはさらに高くなることも珍しくありません。

時給10,000円で1日8時間、月に20日働いた場合、年収は1,920万円となります。

診療科目や医療機関、地域によっても差はありますが、一般に非常勤医師の方が常勤医師よりも時給・日給が高くなることは珍しくありません。

非常勤医師の勤務内容

非常勤医師の勤務内容は、常勤医師に比べると限定的です。

診療科目や求人によって差はあるものの、一般的には非常勤医師の仕事は以下のような内容に限定されます。

  • 外来
  • 当直
  • 訪問医療
  • 健康診断
  • 予防接種

常勤医師の業務は上記に加え、執刀(外科手術・解剖でメスを持つこと)や検査、病棟管理や研究論文の作成など多岐にわたります。

非常勤医師に求められるスキル

非常勤医師は、一時的な医師不足を解消するために雇用されるため、医師としてある程度の経験を積んでいなければなりません。

基本的には、一時的な医師不足を補うために雇われる非常勤医師は、即戦力としての働きを期待されるからです。

しかし、非常勤医師向けの求人の中には未経験可のものも一定数あり、経歴が浅くても働けないわけではありません。

健康診断や事務作業など、スキルレベルの低い業務から手術の執刀といった豊富な経験とスキルが必要な求人もあります。

非常勤医師として働く5つのメリット

では、非常勤医師として働くメリットを5つ紹介します。

  1. 収入アップが見込める
  2. スキルアップにつなげられる
  3. 家事や育児との両立がしやすい
  4. オンコール対応がない
  5. 人脈を広げられる

収入アップが見込める

非常勤医師として働くことで、収入アップが見込めます。

常勤医師が収入を増やすために非常勤として働くことも珍しくありません。

非常勤医師の時給相場は10,000円なので、短時間でも十分な収入アップが見込めるでしょう。

スキルアップにつなげられる

さまざまな現場や診療科を経験してスキルアップにつなげられるのも、非常勤医師として働くメリットです。

これまで経験したことのない治療法を学べたり、扱ったことがない医療機器を使用できたりと、自身の知識を広げることができます。

医師としてさらにレベルアップするために非常勤で働く方も少なくありません。

家事や育児との両立がしやすい

非常勤医師は、自分の都合に合わせて働く日時を決定できるため、家事や育児と両立しながら働けます

結婚や出産といったライフスタイルの変化に対応するには、常勤では難しい場合もあるでしょう。

育休や産休が満足に機能していない職場の場合は特に、医師としてのキャリアを続けながら家事や育児への対応は容易ではありません。

自分の都合次第で働く日時を決め、プライベートも大事にしながら自分のペースで働けるのは、非常勤で働く大きなメリットの1つです。

オンコール対応がない

基本的には、非常勤医師がオンコール対応をする必要はありません。

オンコールとは、緊急の患者に対応できるように待機する勤務形態のことで、効率が悪く体力的にも疲れる業務です。

オンコールの求人でない限り、非常勤の場合は対応の必要がないため、体力的にも余裕を持って働けます。

人脈を広げられる

さまざまな現場で働けるため、医師としての人脈を広げられるのも非常勤のメリットです。

複数の医療機関で医師や看護師の知り合いをつくりやすく、今後のキャリアに役立つこともあるでしょう。

非常勤医師として働く4つのデメリット

非常勤医師として働くデメリットを4つ紹介します。

  1. 常勤医師よりも社会的信用が獲得しづらい
  2. 手当や福利厚生が充実していない
  3. 職の安定性が低い
  4. 確定申告などの手続きを自分で行わないといけない

常勤医師よりも社会的信用が獲得しづらい

常勤の医師に比べると、非常勤医師は社会的信用が獲得しづらくなってしまいます

医師という職業自体は社会的信用のある仕事ではありますが、非常勤医師はあくまでも非正規の職員です。

常勤先がある非常勤医師であれば問題ありません。

ですが、非常勤のみで生計を立てる場合は、ローンの審査などで不利になってしまうリスクに注意しましょう。

手当や福利厚生が充実していない

常勤医師に比べると、非常勤医師は、手当や福利厚生といった待遇面で不利になります。

手当や福利厚生の対象が、常勤医師のみに限定されている医療機関も珍しくはありません。

非常勤医師としてのみ働く場合は、賞与や手当、有給休暇などもないため、基本給のみで生計を立てる必要があります。

職の安定性が低い

非常勤は安定性の低い働き方です。

もちろん、医師としてのスキルさえあればすぐに生活に困ることは少ないものの、収入が流動的で急に生活が厳しくなる可能性もあります。

病院の経営状態が悪化して待遇が悪くなったり、体調を崩して働けなくなったりするリスクもあるでしょう。

確定申告などの手続きを自分で行わないといけない

非常勤医師は、確定申告などの手続きを自分で行わなければなりません。

収入を自分で管理して申告しなければ、脱税になる恐れがあります。

また、国民健康保険国民年金にも自身で対応しなければならず、忘れずに手続きしなければなりません。

事務的な手間がかかるのも、非常勤医師として働くデメリットの1つです。

まとめ:非常勤医師か常勤か自分に合った働き方・採用を検討しよう

非常勤は非正規の働き方ではありますが、医師の雇用形態としては決して珍しくはありません。

多くの医療機関が非常勤医師を必要としているため、働くチャンスは十分にあります。

非常勤医師の時給・日給は常勤医師よりも高くなりやすく、年収換算で上回ることも珍しくありません。

スキルアップや柔軟な働き方ができるといったメリットもあるため、働き方の1つとして検討してみると良いでしょう。

もちろん、安定性や待遇面でのデメリットもあるため、慎重に考えて働き方を決める必要があります。