運営:東京ドクターズ

開業のための
Web集患戦略

開業医のための経営支援メディア
『ウェブドクター』

歯科医院の居抜き物件とは?メリット・デメリットや選び方を紹介

歯科医院を開業しようと検討する中で、居抜き物件の賃貸を考えている方も多いのではないでしょうか。

居抜き物件には、さまざまなメリットがある反面、デメリットもあります。検討するなら慎重に進めなければなりません。

この記事では、居抜き物件についての説明と、メリット・デメリット、選び方についてご紹介します。居抜き物件で開業を進める流れも解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

歯科医院の居抜き物件とは?

歯科医院の居抜き物件とは、それまで歯科医院のテナントとして使用されていた物件を、内装や設備をそのまま引き継いで開業する方法です。

知り合いから紹介されて受け継ぐ方法や、不動産会社やサイトで情報を得るなど、さまざまな探し方があります。

一般的に、店舗物件の賃貸契約では、内装や設備、什器備品などは全て前のテナントが退去時に撤去・回収してしまいます。

しかし、後に入居するテナントが同業種であると分かっている場合で、前テナントの歯科医院が閉院する場合などに、そのまま内装を残して次のテナントに引き渡すケースがあります。

居抜き物件ならそのままの状態で使用できることから、手間や費用を最小限に抑えて開業できます。

もし居抜き物件ではない場合は、新たに開業する医師なら一から設備や医療機器などを揃えて、新築物件の場合はさらに内装にかける費用もかかってきます。

歯科医院開業の物件は3種類

歯科医院として新たに開業する際の物件は、以下の3種類があります。

  1. テナント物件
  2. 新築物件
  3. 居抜き物件

テナント物件

テナント物件とは、簡単にいえば貸店舗のことです。

駅ビルやショッピングモールやオフィスビルの一区画を賃貸契約して、入居することを指し、物件数が多く最も自分の理想に近い物件を探しやすいです。

駅周辺や商業施設など、人が集まりやすい場所を選ぶことができるため、集患しやすいというメリットがあります。

特に駅ビルはメリットが大きく、仕事帰りのサラリーマンや、買い物のついでに通いやすいのが特徴です。

新規開業の場合でも、「駅ビルの店舗なら清潔感もありそうだし、信頼もできそう」と良いイメージを持たれやすいメリットもあります。

一方、立地が良いと賃料も高くなるため、開業資金に余裕を持って物件を探す必要があります。

「賃料が払えなくなってすぐに退去することになった」ということにならないように気を付けましょう。

新築物件

新築物件は、建物を新しく建築する方法です。

自宅と診療所を併設したり、医師のイメージ通りのデザインやフロアなどを設計できるため、内装デザインにこだわりたい人におすすめです。

職場と自宅が同じ建物になるため、通勤が楽になることや賃料が発生しないこと、地域に根差した歯科医院へとカスタマイズできるなどのメリットがあります。

反対に、新築物件の買取や建築などに大きな費用がかかり、自宅を兼用するとプライバシーが保たれにくいなどのデメリットがあります。

建設するエリア次第では、集患に手を焼く恐れもあるでしょう。

居抜き物件

居抜き物件とは、以前の入居者が使用していた設備や什器備品などを残した状態で、売買または賃貸借される物件のことです。

以前まで歯科医院だった場所をそのまま引き継いで開業することとなるため、費用が安く済むほか、以前まで通っていた患者が引き続き通院してくれるメリットもあります。

しかし、以前の歯科医院の評判が良くなければ、悪評も引き継いでしまう恐れがあるため注意が必要です。

歯科医院を居抜き物件で開業するメリット

歯科医院を居抜き物件で開業するメリットは、以下の5点です。

  1. 開業コストを抑えられる
  2. 前の歯科医院を利用していた患者を引き継げる
  3. スムーズに事業の立ち上げができる
  4. 過去の経営データをもとに予測を立てられる
  5. 資産価値の目減り幅が小さい

一つずつ具体的に紹介します。

開業コストを抑えられる

まず、居抜き物件で開業するメリットとして挙げられるのが、開業コストを抑えられる点です。

以前までテナントだった歯科医院の内装・設備を引き継げるため、全ての機器を新たに購入する必要がありません。

レントゲンやユニットといった高額な医療機器は、有償での譲渡となる場合が多いです。しかし、それでも新品を購入するよりは安く、総合的に見て大きくコストカットできるでしょう。

前の歯科医院を利用していた患者を引き継げる

続いて、前の歯科医院を利用していた患者の引き継ぎができます。

以前、歯科医院として経営されていた場所にそのまま開業するため、患者もそのまま通院されることが期待できます。

その地域で広く認知されている歯科医院であれば、開業後積極的に集患をしなくても患者が自然と来てくれる可能性があります。そうなれば、医師は診療に集中しやすくなるでしょう。

場合によっては、オーナーが変わったことに気付かず、そのまま利用してくれる可能性もあります。

歯科医院の新規開業は、開業直後は集患に苦労するケースも少なくありません。特に近隣に他の歯科医院があれば、地元住民はその歯科医院に通っている場合があります。

歯科医院は評判が非常に重要で、評判がわからないところに行くのは不安だと感じる人も多いです。そのため、初めから患者と評判を引き継げるというのは大きなメリットとなります。

スムーズに事業の立ち上げができる

居抜き開業により、スムーズに事業の立ち上げができる点もメリットの一つです。

以前の患者を引き継げるというのも事業立ち上げがスムーズになる理由の一つですが、事業譲渡という形ならスタッフも引き継ぎができるため、よりスムーズになります。

新規開業の場合は、新患獲得やスタッフの育成からスタートするため、初めのうちはさまざまな面で苦労するでしょう。

しかし、居抜き物件で事業譲渡での開業なら集患やスタッフの採用・教育の手間も軽減され、以前の事業基盤を参考に経営を軌道に乗せやすくなります。

過去の経営データをもとに予測を立てられる

過去の経営データをもとに、事業に関する予測を立てられる点もメリットの一つです。

新規開業の場合は、ゼロからのスタートとなるため、経営データなどはなく手探りの状態で進めていかなければなりません。

しかし、居抜き物件での開業なら、前の歯科医院の患者数や売上データ、治療内容などのデータがあるため、分析して事業計画を立てやすくなります。

前の歯科医院の運営方法やデータを分析した結果、改善点が見つかれば自院の経営に反映させて、より良い歯科医院へレベルアップさせることもできるでしょう。

資産価値の目減り幅が小さい

居抜き物件での開業は、資産価値の目減り幅が小さいというメリットも存在します。

将来、移転・売却・廃業をする際に、新規開業の場合は資産取得額が大きいのに対し、居抜き物件での開業の場合は、資産の取得額を抑えられています。

そのため、新規開業に比べて相対的に資産価値の目減り幅が小さくなるという考え方です。

資産売却額が開業時に支払った額の20%だとすると、新規で6,000万支払った場合と居抜き物件で1,000万支払った場合だと、1,200万円と200万円で大きな差になります。

また、単純に居抜き物件は人気で価値が高いということもあり、居抜き売却をする時にも高額で買い取られやすいです。

歯科医院を居抜き物件で開業するデメリット

歯科医院を居抜き物件で開業するのにはデメリットも存在します。

具体的には、以下の3点が挙げられます。

  1. 機材のメンテナンス費用がかかる
  2. 悪評を引き継ぐ可能性がある
  3. 物件・設備の自由度が低い

それぞれ詳しく紹介します。

機材のメンテナンス費用がかかる

居抜き物件での開業は、コストが抑えられるものの、機材のメンテナンス費用がかかる点はデメリットです。

居抜き物件は、機材をそのまま引き継げるメリットはありますが、機材が古いものであればメンテナンス費用がかさむ恐れがあります。

型が古い場合や長期間メンテナンスされていない機材はそのまま使用できません。修理や買い替えをしなければならない可能性もあります。

リース契約を引き継ぐケースもありますが、契約期間が切れると追加投資が必要になります。

余分な費用がかかると、居抜き物件で開業するメリットが薄くなってしまうため注意しましょう。

悪評を引き継ぐ可能性がある

前の医院の評判が悪いと、居抜き開業した際に悪評を引き継いでしまう恐れがあります。

一度ついたイメージは中々覆らないため、悪いイメージを持った患者はその歯科医院には行こうと思わず、オーナーが変わってもほとんど気付かれません。

悪評がつくと、その場所自体の評判が下がると考えられるため、新たに別の歯科医院として開業をしても前のイメージに引きずられるリスクがあります。

患者からすれば、別の歯科医院に変わっても同じに見える可能性はあります。

居抜き物件での開業というメリットを生かすなら、前の歯科医院の評判をリサーチしておき、なるべく早めに開業しましょう。

物件・設備の自由度が低い

居抜き物件は、探す段階で苦労するケースも多いです。

テナント物件に比べて居抜き物件は募集の数が少なく、見つけにくいというデメリットがあります。

運良く見つけられたとしても、自身の好みの内装や求める設備が揃っているとも限りません。

また、居抜き物件での開業は、以前の歯科医院の内装・設備を引き継ぐため、好みの内装や最新機器などを選べないのもデメリットです。

こだわりの内装デザインや機材がある場合は、居抜き物件と相性が悪いでしょう。

歯科医院における居抜き物件の選び方

歯科医院における居抜き物件の選び方は、以下の3点を意識しましょう。

  1. 内装・設備の状態は良好か
  2. 以前の歯科医院の評判は良いか
  3. 集客が見込める立地であるか

具体的に一つずつ解説していきます。

1.内装・設備の状態は良好か

まず、内装・設備の状態が良好かを確認してください。

不動産サイトで居抜き物件を発見したら、すぐに契約したいと思われるかもしれません。しかし、実際に足を運んで現地へ行き、自身の目で内装や設備の状態をしっかりチェックしましょう。

築年数が長い物件なら内装が古く、清潔感に欠けた見た目になっている恐れがあります。

設備・医療機器もすぐに使える状態であるとは限らず、老朽化していて修理が必要となるかもしれません。

不動産サイトで写真で見る分には綺麗に見えるけど、実際に目でみると全く印象が異なることもあります。

実際に内見をして、内装や雰囲気、設備の状態をすべてチェックして、稼働するか、どのくらいの期間利用できるかをイメージしましょう。

2.以前の歯科医院の評判は良いか

以前の歯科医院における評判が良好であるかもリサーチしておく必要があります。

居抜き物件での開業は、前の歯科医院が受けてきた評判を引き継いで開業することとなります。よって、悪評が目立つ場合は開業後も患者が寄り付かない恐れがあります。

一方で評判が良ければ、そのまま利用してくれると考えられるため、評判はとても大事です。

評判を調べる方法は、Google Mapの口コミを見たり、SNSで調べるのがいいでしょう。

3.集客が見込める立地であるか

居抜き物件であったとしても、集客が見込める立地でないと売上は見込めません。

歯科医院の患者の数は、人口に比例して多くなりやすいと考えられるため、なるべく駅近や住宅地など、通いやすい場所にあるのが理想的です。

裏路地や周囲に住宅がなく人口が少なそうな土地の場合、思うように集患できないと予想されます。

人口が多いエリアだから良いというわけではなく、周りに歯科医院が多いと選ばれにくくなる恐れもあります。

近年は歯科医院の数も増えているため、人口比で歯科医院の数が少ない地域を狙うといいでしょう。

歯科医院の居抜き物件を探す際の注意点

歯科医院の居抜き物件を探す際に注意すべき点は、「引き継ぎ」に関する部分です。

居抜き物件は、コストが安く済む可能性があるというメリットがある反面、歯科医院の評判や設備を、良い所も悪い所も引き継いでしまいます。

院長の患者に対する態度や治療に関する腕が悪い、スタッフへのパワハラがあったなど、評判が悪ければ、看板や名前が変わっても「場所」で避けられてしまう恐れがあります。

また、以前の歯科医院の評判が良かった場合でも、「以前の院長先生は人柄が良くて好きだったけど、新しい院長先生は好みではない」とギャップを感じて避けられてしまうかもしれません。

対応方法が変わりすぎると、「以前はできていたことが、どうしてできないんだ」とクレームにつながる恐れもあるため、注意が必要です。

良い評判だった場合は、以前の運営方法などをなるべく崩さないようにして、患者のニーズに応えられるようにするのが望ましいです。

さらに、頻繁にオーナーが変わる歯科医院の居抜き物件の場合、「またすぐに廃業しそう」というイメージを持たれる可能性があります。

「頻繁に出入りを繰り返している物件ではないか」「悪評はないか」といった部分は下調べしておくべきでしょう。

居抜き物件で歯科医院を開業する流れ

ここからは、居抜き物件で歯科医院を開業する流れについてご紹介します。

1.物件を探す

まずは、物件を探すことから始まります。

物件探しの方法は、主に以下の4つがあります。

  • 不動産サイトで探す
  • 不動産会社に依頼する
  • 自分の足で歩き回って探す
  • 歯科に強い経営コンサルタントを頼る

これらを複数組み合わせて探すと効果的です。

居抜き物件は人気が高いため、すぐに埋まってしまう可能性もあります。どれか一つに絞るよりも、複数の方法で探すと自分の希望する物件を見つけやすいでしょう。

2.資金調達をする

開業にはまとまった資金が必要です。

資金の調達方法は、自己資金金融機関から借り入れる方法の2つが挙げられます。

金融機関からの借り入れは、以下の4種類があります。

借り入れ方法 概要 メリット デメリット
公的融資 国や自治体を通した融資 低金利 必要書類の用意や手続きが大変
制度融資 地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して融資する方法 事業者の目的に合った制度がある 申し込みから着金まで時間がかかる
プロパー融資 金融機関からの直接融資 低金利
融資限度額がない
審査が厳しい
返済期間が短い
ノンバンク融資 銀行以外の機関が行う融資(商工ローン) 手続きが簡単
着金までが早い
金利が高い
信用が落ちる恐れがある

これらの特徴、メリット・デメリットを理解したうえで、資金調達方法を検討しましょう。

3.内装・デザインをカスタマイズする

居抜き物件は、内装・デザインを引き継げるとはいっても、内装の状態が悪い場合やあまりに自分の好みからかけ離れている場合などは、必要に応じてカスタマイズしてください。

内装をカスタマイズする場合は、歯科医院に強い内装業者に依頼するといいでしょう。

内装以外にも、外観や看板デザインを変更したり、ホームページを作成するのもおすすめです。

外観や看板は、以前の歯科医院から新しくなったことを示すための材料となるため、イメージを一変させたい場合は思い切って全く異なるデザインにしましょう。

4.スタッフ採用・備品調達をする

最後に、スタッフの採用や備品を調達して開業できる状態まで進めます。

優秀なスタッフを雇うためには、時間がかかると考えられるため、早い段階から募集をかけて慎重に採用活動を行う必要があります。

また、居抜き物件は備品や機材は揃っている場合が多いですが、開業にあたって不足しているものは仕入れましょう。

特に、医薬品や一部の歯科材料などは消耗品のため、一から揃える必要があります。

自院にとってベストな仕入れ先を選び、資金と相談しながら調達を進めましょう。

まとめ:歯科医院の居抜き物件におけるメリット・デメリットを把握して検討しよう

歯科医院の居抜き物件は、コストをかけずに開業できる反面、前の歯科医院に悪評があればその評価も引き継いでしまう特徴があります。

メリットは多いですが、一から理想を創り上げていきたい人にとっては向いていない場合があります。

せっかくの新規開業のため、自身の納得できる方法を追求するのが望ましいです。

居抜き物件での開業を目指す場合は、メリット・デメリットを把握して慎重に検討しましょう。自身の目指す歯科医院を実現できるかどうかを、自分の目で見定めることが重要です。