歯科医院にとっての問診票は、医師が最初に行う医療行為としてとても重要な役割を持ちます。
患者の症状を確認するためや、治療計画を立てるうえで必ず必要となる書類ですが、どのように作成すればいいかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、歯科医院の問診票で必要な6つの項目や、問診票の重要性、気になる疑問などをご紹介します。初診時の流れ3ステップについてもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の内容
歯科医院における問診票の重要性
問診票とは、病院・クリニックにおいて初診の際に記入を求めるもので、患者の健康状態やアレルギーの有無、病歴などを把握するための重要な書類です。
歯科医院においても問診票は重要で、受診の目的や具体的な症状、どの歯にどのような症状があるかを詳しく質問するために存在します。
患者の口腔内を適切に把握し、治療方針などを決めるために必要で、診察の際も問診票をもとに患者に質問・診断を行います。
問診票は、初診の際だけでなく定期検診の際など、定期的に記入してもらい都度更新していくことが望ましいです。
初診時と半年後、1年後では患者の健康状態が変化している可能性もありますし、歯科医院に通院したことで意識を改めて生活習慣を改善している可能性があるためです。
問診票に記入された内容を見て、不明点があれば患者に積極的に質問していきましょう。
適切に問診票を活用することで、症状を把握でき診断や治療を円滑に行えます。
歯科医院の問診票で必要な項目
歯科医院の問診票では、少なくとも以下の5項目が必要です。
- 受診の目的・症状
- 既往歴
- アレルギーや蕁麻疹の有無
- 気になること(自由記述欄)
- その他の確認項目
1.受診の目的・症状
まず受診の目的と症状を確認します。
受診目的は単に「歯が痛い」以外にも、症状はないけど歯の健康状態を確認したい場合や、歯が黄色くてホワイトニングをしたいという方もいるでしょう。
症状に関しては、歯が痛い場合でも「ズキズキと痛む」「冷たいものを飲んだ時にしみる」「継続的に痛み続けている」など、さまざまな症状があります。
ただ歯が痛いでは詳しく把握できないため、「どのように痛むのか?」という一文を付け加えておくと患者も記入しやすくなるでしょう。
歯の痛み以外にも、歯茎の腫れや出血が気になる場合や歯並びや噛み合わせ、顎関節が気になる場合など、さまざまな症状が考えられます。
症状を詳しく書けるような工夫と「いつから」「どのように」「考えられる原因」などを記入してもらいましょう。
2.既往歴
既往歴とは、これまでにかかった怪我や病気、つまり病歴のことです。
持病や疾患についても把握しておくことで、歯科治療に影響を及ぼさないように適切な治療体制を整えられるほか、他の医療機関と連携をとりやすくなります。
特に、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、心臓や肝臓に以上がある場合、気管支喘息などのアレルギー性の疾患がある場合など、詳しい情報を把握しておく必要があります。
発症時期や現在の治癒状況、発作が起こりやすい時間帯などを記入してもらいましょう。
例えば喘息持ちなら、歯の削りかすやほこりなどで発作を起こす可能性があります。そこで口腔外バキュームの使用や十分な換気などの対策が必要です。
3.アレルギーや蕁麻疹の有無
アレルギーや蕁麻疹が出やすいかを記入してもらいます。
歯科治療においては、金属アレルギーがないかが非常に重要です。
治療後に被せものとして銀歯が装着できるかどうかを左右する要素であるためです。
金属アレルギーの患者に銀歯を装着してしまうと、口腔内のただれや腫れ、口まわりやその他の部位にかゆみが発症してしまう恐れがあります。
この銀歯によってアレルギー症状がでることを、「歯科金属アレルギー」と呼びます。
金属アレルギーを持つ患者の場合は、被せもの・詰めものの素材選びを慎重に行いましょう。
また、薬物アレルギーがないかも重要です。麻酔や投薬によってアレルギー反応が起こるとアナフィラキシーを起こしてしまうかもしれません。
アレルギーと聞くと、花粉やダニ、ハウスダストなどをイメージする方も多いでしょう。しかし、歯科治療においては抗生物質や麻酔薬などの薬物アレルギー対策が欠かせません。
蕁麻疹は、一時的に肌の一部が赤く盛り上がってかゆみが起こり、しばらくすると収まる症状です。
患者自身はアレルギーの自覚はないものの、蕁麻疹が出ることがあると回答があった場合は、何かしらのアレルギーを持っている可能性があるため要注意です。
4.気になること(自由記述欄)
患者が現在口腔内において気になることを自由に記述してもらう欄です。
これまでの問診票で書いたこと以外に、伝えたいことや懸念事項などを記入してもらいます。
費用に対する不安であったり、歯はなるべく削らない治療を希望するなど、治療計画をより立てやすくするために思っていることを書いてもらいましょう。
この項目は自由記述欄のため、特に詳細な質問などを設ける必要はありません。
5.その他の確認項目
その他の確認事項として、これまでに確認した質問以外で確認しておく必要のある項目などを記入してもらいます。
具体的には、以下の項目を設けるといいでしょう。
- 喫煙歴(頻度や量を確認。歯周病やインプラントの成功率に影響)
- 妊娠中や授乳中か(胎児や乳児に影響を及ぼす治療を避けるため)
- 自由診療の希望(費用の相談や、保険診療で対応できない治療を行うかの確認)
- 抜歯の経験(回数や時期を確認。合併症がなかったかを確認するため)
- 血液凝固異常はないか(原因や治療法を確認。治療で出血が多くなったり、血が止まりにくくなる可能性があるため)
これらの項目は、質問の下に選択肢を記載して、当てはまるものを丸で囲って選んでもらう方法がわかりやすいです。
有無を確認し、有に当てはまる場合は、その詳細を確認する項目も記述してもらうようにしましょう。
歯科医院での初診時の流れ3ステップ
歯科医院での初診時では、以下の3ステップの流れで診察を進めていきます。
- 問診票に記入してもらう
- 検査を行い診断を実施する
- 症状や治療方法を説明する
1.問診票に記入してもらう
まずは、問診票に記入してもらい、症状や悩み、健康状態などを把握しましょう。
提出してもらった問診票を元に、治療方針をある程度考えておき、診断時に患者にいくつかの選択肢を与えて選んでもらえるよう準備しておきます。
問診票は、ホームページでダウンロードして自宅で記入してもらう方法を取っている歯科医院もあります。
しかし多くの場合は、受付時に渡して診察までの待ち時間の間に記入してもらいます。そのため、初診時は予約時間より10分ほど早めに来てもらうように案内すると良いでしょう。
近年では、Web予約システムで予約時に一緒に問診票を記入するという方法も徐々に増えてきています。
システムで事前に問診票を書いてもらうメリットとして、「待ち時間が短縮される」「来院時間を調整できる」などがあります。
2.検査を行い診断を実施する
書いてもらった問診票を参考にしながら、検査を行い診断を実施します。
歯の状態を目視するほかに、レントゲン撮影や口腔内写真を撮影してデータを収集します。
治療前の口腔内の状態を記録しておき、治療計画の材料とするほか、治療前後の比較やメンテナンス状態の確認のためにも活用できます。
虫歯の確認以外では、歯周ポケットを検査し、歯周病精密検査を行います。
歯周病の進行具合を確認し、虫歯治療の後に行う歯周病予防・治療に関する計画を立てましょう。
この検査データを参考に、口腔内の問題を見極めて診断を行います。
歯の状態はもちろんですが、全身の健康状態や持病・疾患との関連性を考慮し、患者にとって最適な治療計画を立てましょう。
3.症状や治療方法を説明する
診断結果が出れば、症状や治療方法を詳しく患者に説明していきます。
検査データを患者に見せながら、写真や歯の模型を使って一緒に治療方針を考えていくと、患者は安心して治療を受けられます。
治療内容や、スケジュールを細かく説明し、通院頻度も対応可能かどうか確認しておきましょう。
歯科治療は、保険適用でも費用が高額になるケースも考えられます。費用面で「こんなにかかるとは思わなかった」という認識のずれを無くすために、初めにおおよその金額を説明しておくとトラブル防止につながります。
診断書に自費診療を希望と書かれていれば、自費診療の提案もできるため、どういった診療を望むかをヒアリングして患者と一緒に治療計画を立てていきましょう。
最終的に、患者の同意を得られたことを確認してから治療に入ることが重要です。
歯科医院の問診票に関するよくある質問
歯科医院の問診票に関するよくある質問をまとめました。
問診票は法律で義務づけられた書類ですか?
問診票は、診察や治療のために必要な書類ですが、法律で義務付けられた書類ではありません。
とはいえ、医師が最初に行う医療行為として、病院で問診票の記入をお願いするのが一般的です。
問診票の内容は医療機関ごとに異なり、決まった書式はなく独自の内容で作られています。
また、氏名や生年月日、住所、性別、職業などの個人情報も記入してもらうため、同意を得るとともに個人情報の保護に努めなければなりません。
問診票とカルテの違いを教えてください
カルテとは、診療記録のカードという意味を持ち、診療内容や経過を記録するためのものです。
問診票は、自覚する症状や健康状態などを確認するために、初診時の診察前に記入いただくもので、カルテの一部という認識になります。
カルテは、法律で作成が義務付けられた書類のため、診療ごとに記録し、毎回更新する必要があります。
歯科医院においては、レントゲンや口腔内写真も一緒に記録していく必要があるため、カルテはデジタル化してスムーズに記録・確認ができるようにしておくとよいでしょう。
問診票に家族歴の項目を設ける理由は何ですか?
問診票に家族歴の項目を設けて記入いただく理由は、ご家族の病気の情報を集めて、その方の体質に合わせた治療を行うためです。
また、家族間で遺伝しやすい疾患・リスク因子がある場合に、予防や早期発見に努められるためというのも理由の一つです。
家族歴とは、家族がこれまでにかかったことのある疾患・持病のことで、把握しておけば適切な予防指導や定期検診を提示できます。
特に歯周病や虫歯は生活習慣病の一種であるため、食生活や生活習慣が大きく影響してきます。
糖尿病や高血圧を持つご家族と同居している患者は、歯周病や虫歯になるリスクも秘めている可能性があると考えられるでしょう。
インターネットにある問診票のテンプレートは使っていいですか?
インターネットで公開されている問診票のテンプレートは、使用しても問題ありません。
診療科や各医療機関によって確認したい項目は異なりますが、患者のニーズに近い問診票を用意するために、診療科別のテンプレートを活用するといいでしょう。
例えば、問診票.comというサイトでは、各診療科で使用されている問診票のテンプレートが紹介されています。
テンプレートを配布しているサイトを活用し、理想の問診票を作り上げましょう。
まとめ:歯科医院の問診票を正しく利用して患者の健康状態や症状を把握しよう
歯科医院では、治療計画を立てるために問診票の正しい利用は必須です。
患者の健康状態や症状、悩んでいることなどを把握することで、適切な診察・治療を行えます。
特に、疾患やアレルギーの情報は重要で、詰め物や被せ物の素材選びに影響が出たり、歯の削りかすで疾患が悪化する恐れもあるため、必ず確認しておく必要があります。
歯は再生しない部位のため、より慎重に診察を進める必要があり、患者の同意を得たうえで適切な医療を提供しなければなりません。
そのために、治療前に問診票を正しく利用して、患者の健康状態や症状を把握しましょう。