歯科医院をやっていく上で、オートクレーブを導入するか迷っている方はいらっしゃいませんか?
本記事では、おすすめのオートクレーブや選び方のポイント、滅菌の際のポイントなどについて解説していきます。
導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
歯科医院におけるオートクレーブとは?
オートクレーブとは、高圧蒸気滅菌機とも呼ばれ、すでに使用した器具の滅菌を行うための医療機器です。歯科に限らず、他の医療現場や研究所など衛生管理を徹底しなければならない場所では広く利用されています。
オートクレーブ内を真空状態にし、さらに水蒸気で高温かつ高圧な状態を作ることで高い水準の滅菌を実現しています。
オートクレーブの重要性
オートクレーブは、治療に用いる器具の衛生面を保つために必要不可欠です。
患者に使用した治療器具には血液などの体液やタンパク質が付いており、それに伴いさまざまな菌も付着しています。それらを正しく洗浄・滅菌できていないと感染症の蔓延など取り返しの付かない事態に陥ってしまいます。
そのため歯科医院をやっていく上で、オートクレーブを用いた滅菌による衛生管理の徹底はかなり意識して取り組むべき項目でしょう。
オートクレーブの分類
オートクレーブは、滅菌処理できる形状や種類によって以下の3つのクラスに分けられています。
クラスB(Big) | 最上位のランク
あらゆる形状の器具の滅菌に対応している |
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クラスS(Special) | 複雑な形状をした器具の滅菌に対応 |
クラスN(Naked) | 一般的に導入されているランク
複雑な形状の器具に対しては十分に滅菌できない場合がある |
クラスNのオートクレーブは、ミラーやピンセットといった特に包装もされておらず、シンプルな構造の器具の滅菌ができます。
それに対し、クラスSはクラスNが対応している器具に加えて、ハンドピースやタービンなど中に空洞がある器具や包装されている器具の滅菌も可能です。
そしてそれらを含め、あらゆる器具の滅菌に対応しているのがクラスBとなっています。
歯科医院に導入するオートクレーブを選ぶポイント
歯科医院にオートクレーブを導入する際に、見るべきポイントは以下の4つです。
- 自動タイプか、セミオートタイプか
- 給水方式はどんなタイプか
- 機器のサイズや容量はどのくらいか
- 滅菌時間はどれくらいか
これらについて、ひとつずつ解説していきます。
自動タイプか、セミオートタイプか
オートクレーブは、滅菌したい器具を中に入れ、そのままスタートすれば滅菌から乾燥までの一連の処理を全て自動で行ってくれるタイプが主流です。このタイプは空き時間や他の業務を進めている間に滅菌しておけるため、効率的に時間を使えます。
それに対しセミオートタイプは、滅菌から乾燥の工程に移る際に自身で操作しなければいけないなど、少し手間がかかってしまいます。ただこのタイプは自動タイプに比べてやや安価で、導入費用をできるだけ抑えたい場合には向いているでしょう。
給水方式はどんなタイプか
オートクレーブは滅菌を行う際に、内側を高温・高圧状態にするため水蒸気を発生させます。そのため使用する前には給水が必要であり、その給水方式も重要なポイントです。
多くのタイプは、精製水や蒸留水を手作業で給水する方式です。ただ、水道に浄水装置を設置することで直接自動で給水できるものなど、手間のかからないタイプも存在します。
また水道の水を浄水することなく直接給水できるタイプの製品もあり、運用コストを抑えて利用することも可能です。どの程度の手間まで許容できるのか、運用コストの希望はどれくらいなのかを考慮して、給水方式を確認しておきましょう。
機器のサイズや容量はどのくらいか
機器のサイズや器具の入る容量も確認しておくべきポイントです。
通常は、普段使用している器具の数や患者の人数に合わせて、容量を決めます。ただあまりにも容量を大きくしてしまうと、機器のサイズも大きくなっていくので設置する予定のスペースも踏まえて選ぶことが重要です。
スペースに限りがある場合は、小さめのオートクレーブを空いている場所にいくつか設置することで十分な容量を保ちつつ、スペースの有効活用ができるでしょう。
滅菌時間はどれくらいか
オートクレーブでの滅菌は、30〜50分ほどの時間をかけて行うのが主流です。
始めに130℃ほどで約5分滅菌した後、温度を落とし121℃で約20分ほど再度滅菌を行います。そこまで終わると、あとは15分ほど乾燥させます。
滅菌の際の温度や時間を自由に決められるタイプのオートクレーブであれば、患者の数やその他の業務などに合わせて調節することで柔軟に対応できます。
最近では、低温で乾燥させるタイプや高温で長時間滅菌するタイプなど多岐に渡っているので、あらかじめ滅菌時間について確認しておきましょう。
オートクレーブで滅菌を行う際に注意すべきポイント
オートクレーブで滅菌処理を行う際に、注意するべきポイントは以下の3つです。
- 滅菌前に器具を徹底して洗浄・消毒する
- 滅菌状況をバリデーションする
- 滅菌した器具を衛生的に保管する
これらについて、ひとつずつ解説していきます。
滅菌前に器具を徹底して洗浄・消毒する
患者に使用した器具には、血液や体液、固形物などが付着しています。それらをオートクレーブでの滅菌の前に洗い流すことで、滅菌の効果を最大限引き出せます。
また滅菌前の洗浄・消毒には以下のような種類があり、器具や用途などによって使い分けます。
用手洗浄 | 手作業で洗浄する |
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浸漬洗浄 | 洗浄液に漬けることで洗浄する |
超音波洗浄 | 専用の機器を用いて洗浄する |
これらの洗浄を行った後に、専用の薬液を使って消毒していきます。
滅菌の状況をバリデーションする
滅菌の状況を定期的にバリデーションすることも重要です。
「バリデーション」とはオートクレーブが正常に作動し、滅菌処理が正しく進んでいるかを逐一確認する作業のことです。これを行うことで、故障や不具合、ミスなどによってきちんと滅菌ができていないというようなトラブルを防ぐことができます。
バリエーションを行う方法は以下の3つです。
- 化学的インジケータ CI
- 生物学的インジケータ BI
- 物理的インジケータ PI
これらを行い、記録したデータを紙で出力できたり、SDカードに保存しておけるといった機能が備わっている製品も販売されています。バリデーションのしやすさは正確な滅菌処理につながるので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
滅菌した器具を衛生的に保管する
滅菌した器具を衛生的に保管することも必要不可欠です。
せっかく滅菌しても汚染された場所に保管してしまっては元も子もありません。そのため滅菌後はキャビネットや紫外線殺菌灯キャビネットなどに保管することで、再汚染する可能性を最小限に抑えられます。
歯科医院に導入するオートクレーブ(クラスB)おすすめ3選
クラスBはどんな形状の器具の滅菌にも対応している、最高ランクのオートクレーブです。その中からおすすめの製品を3つ紹介していきます。
YS-A-C501B
価格 | 要問い合わせ |
---|---|
滅菌時間 | ・標準モード
134℃:4分 121℃:20分 ・ロングモード 134℃:18分 |
容量 | 約16.5L |
YS-A-C501Bは、あらゆる医療器具の滅菌に対応するクラスB準拠のオートクレーブです。
3種類の滅菌モードを搭載しており、器具や用途、汚染の状態などに合わせて滅菌を行えます。
またメンテナンスモードで、定期的に交換が必要な部品の寿命やテスト運転、運転履歴管理が可能となっています。これにより運転中に故障や不具合が生じるリスクを抑え、安全に滅菌処理が行えるでしょう。
Lisa
価格 | 要問い合わせ |
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滅菌時間 | 要問い合わせ |
容量 | 22L |
Lisaは人工知能を搭載しており、高度かつ安全な滅菌処理を提供するクラスBのオートクレーブです。
クラスBならではのサイクルスピードで、2kgもの器具をわずか30分ほどで滅菌から乾燥までの一連の工程を完了させます。
また独自に開発されたW&H Steriアプリをスマホやタブレットにインストールすることで、最大4台のオートクレーブを遠隔操作したり、さまざまなデータの管理ができるなど利便性が高くなっています。
INC Clave
価格 | 1,375,000円(税込) |
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滅菌時間 | 121℃:20分
134℃:4分もしくは18分 (運転プログラムによって乾燥時間などには変動あり) |
容量 | 16.5L |
INC Claveは多彩な運転プログラムによって、忙しい時や汚染が激しい器具が出た時など幅広い状況にも柔軟に対応できるクラスBオートクレーブです。
タッチパネルは操作性に優れ、運転モードの選択や設定の変更なども簡単に行えます。運転中にエラーが出た際も、どういったトラブルが生じたのか一目で分かるように表示してくれます。
またオートオフ機能が備わっており、運転終了後には自動でスリープ状態に移行するため、待機電力の削減になるでしょう。
歯科医院に導入する小型オートクレーブのおすすめ3選
小型オートクレーブはタービンやハンドピースなどの中が空洞になっている器具の滅菌に向いています。その中でもおすすめの製品を3つ紹介していきます。
フレッシュクレーブ
価格 | 要問い合わせ |
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滅菌時間 | 134℃:4分
134℃:15分 121℃:20分 121℃:30分 |
容量 | 未包装のハンドピース:12本
滅菌パックに入ったハンドピース:8本 |
フレッシュクレーブは、簡単な操作だけでハンドピースを滅菌できるハンドピース専用小型オートクレーブです。
コンパクトにも関わらず、未包装のハンドピースなら12本、滅菌パックに入った状態でも8本まで同時に滅菌処理できるほど大容量なのが特徴です。
またハンドピースを傷つけることなく乾燥できる送風乾燥機能が備わっており、器具の劣化も最小限に抑えられます。
スマートクレーブHSS
価格 | 要問い合わせ |
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滅菌時間 | ・HP(ハンドピースモード)
未包装:7分~ 包装:7分~ ・134℃ 未包装:3分~ 包装:4分~ ・121℃ 未包装:34分~ 包装:36分~ |
容量 | 包装時:ハンドピース最大6本
未包装時:ハンドピース最大12本 |
スマートクレーブHSSは、用途に合わせて3種類の滅菌モードから最適な条件を選択して滅菌処理できる小型オートクレーブです。
タービンやコントラの滅菌も可能ですが、ハンドピース専用のモードを搭載しており、ハンドピース専用としても利用できます。
蓋が前に開けるタイプで、器具の出し入れがしやすいだけでなく、チャンバー内の清掃もしやすい設計になっています。また一度運転してから冷却する必要が無く、連続で運転が可能なので効率よく業務を進行できるでしょう。
iClave mini2
価格 | 要問い合わせ |
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滅菌時間 | 134℃:5.5分 |
容量 | 未包装時:ハンドピース最大12本
(一重包装なら6本) |
iClave mini2は、高圧蒸気重力置換によって高い滅菌力を実現しつつ、ハンドピースへの負荷を最小限にした小型オートクレーブです。
着脱式の給水タンクは一度の給水で4回の滅菌が可能な大容量で、取り外しができることで給水や清掃をストレス無く行えます。
また操作パネルはわかりやすいレイアウトで、誰でも簡単に扱うことが可能です。画面に映し出されるステータスバーで、滅菌の進行状況や残りの時間を瞬時に把握できます。
オートクレーブで滅菌できない器具を衛生的に保つには?
患者の治療に使用する器具の中には、オートクレーブのような高温・高圧状態では滅菌できない器具も存在します。プラスチックや紙、布など熱によって溶けたり燃えたりする器具が主な例です。他にも精密機器も熱によって故障する恐れがあるので注意が必要です。
そういった器具は、他の方法で衛生的にしなければなりません。
方法の1つは、グローブや紙エプロンなど使い捨てできる製品を導入することです。これにより、患者や職員の衛生面も守れるのに加え、消毒や洗浄の手間も省くことができます。
また低温滅菌器を使用する方法もあります。プラスチックやゴムからできた器具が変形したりしない程度の熱で滅菌できる医療機器も販売されています。
まとめ:歯科医院にオートクレーブを導入して医療器具を衛生的にしよう!
本記事では、ここまで歯科医院におすすめのオートクレーブや選び方のポイント、滅菌時の注意するべきポイントなどについて解説してきました。
オートクレーブは正しく扱うことで、医療器具を衛生的に保ち、患者と職員の両方を守ることにつながります。
歯科医院には欠かすことのできないオートクレーブの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください!