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NPPVとCPAPの違いを徹底比較!特徴や使用目的・機能を紹介

「NPPVの機能とCPAPはどう違う?」
「NPPVとCPAPはどのような病気に有効?」

NPPVは、マスクを使って肺に空気を送る人工呼吸療法であり、CPAPは、同じくマスクを使って気道を確保する換気療法です。

当記事では、NPPV療法とCPAP療法を比較して、違いについて解説します。異なる機能や注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

NPPVとCPAPの特徴

NPPVとCPAPは、呼吸に問題のある患者に対して、メスを入れて体を傷つけることなく行える非侵襲的な治療方法です。

  1. NPPVとは
  2. CPAPとは

特徴について解説します。

NPPVとは

NPPVは、マスクを介して肺に空気を送り込み、患者の自発呼吸をサポートする装置です。

肺が正常な働きをしなくなる病気を患っている患者に対して、非侵襲的な方法で陽圧喚気を行います。

患者が息を吸い込む吸気時に陽圧を供給して、息を吐き出す呼気時に圧力を減らすことで呼吸がしやすくなるように補助をします。

切開などの手術が不要なため、痛みや苦痛をおさえた治療が可能です。

また、気管切開や気管挿管をしていないことから、会話ができる、食事ができるというメリットがあります。

NPPVは、以下の条件で治療が実施できます。

  1. 自発呼吸が可能
  2. 気道が確保されている

NPPVの本体から空気を送り出し、専用の鼻マスク、鼻口マスク、顔全体を覆うマスクを介して、患者の呼吸がしやすくなるようにサポートします。

患者の状態に合わせて、細やかな設定ができるという特徴があります。

設定できる項目は、以下の項目です。

  1. 換気回数
  2. 圧力の強さ
  3. 吸入酸素濃度
  4. 吸気時間
  5. ライズタイム

NPPVの治療は主に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性心原性肺水腫、喘息の急性憎悪など、肺の機能が正常に働かない状態となった患者に有効とされています。

CPAPとは

CPAPとは「持続陽圧呼吸療法」という、非侵襲的な方法で睡眠中の気道閉塞を防ぎ、継続的に酸素を取り入れた空気を送る方法です。

CPAP装置は、睡眠時無呼吸症候群の対症療法として利用される機械ですが、NPPVの機種によっては、CPAPモードを搭載している機種があります。

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠時に呼吸が止まる無呼吸の状態や、呼吸が浅くなる低呼吸の状態になる疾病です。

睡眠時無呼吸症候群患者の9割は、閉塞性無呼吸症候群です。

閉塞性無呼吸症候群の患者は、睡眠時に上気道が狭くなることが原因で、無呼吸や低呼吸が起こります。

上気道が狭くなる原因としては、首や喉まわりに脂肪がついている、扁桃腺が肥大している、睡眠時に喉周辺の筋肉が緩むことなどが挙げられます。

CPAPは、鼻や口に専用のマスクを装着し、気道が塞がらないように、一定の陽圧を持続的に体内に送り込む装置です。

肺に空気を取り込めるようにすることで、睡眠時の呼吸をサポートします。

患者自身の呼吸に合わせるのではなく、あらかじめ決めている一定の圧力をかけて持続的に酸素を含んだ空気を供給する仕組みです。

睡眠時の無呼吸や少なくなっている呼吸回数を改善し、いびきを軽減させる役割を果たします。

NPPVとCPAPの違い

NPPVとCPAPの異なる点は、大きく分けて3つあります。

  1. 圧の設定
  2. 起動のトリガー
  3. 役割・機能

それぞれの項目について詳しく解説します。

圧の設定

NPPVは、トリガーや換気の設定が異なる換気モードが複数あり、患者の状態に合わせて選択し、圧力を調整して設定します。

CPAPよりも、患者の状態に合わせてきめ細やかな設定ができるという点が特徴です。

CPAPは、患者の呼吸とは関係なく、一定の圧力で継続的に気道に空気を送り込み続ける仕組みになっています。

無呼吸や低呼吸によって、気道が塞がらないようにするために使用します。

起動のトリガー

NPPVは、患者の自発呼吸に合わせて、呼吸のサポートを行うため、呼吸回数は患者の呼吸回数に同調します。

NPPVは、患者の自発呼吸がトリガーとなるため、患者の自発呼吸を感知したときや、自発呼吸が弱くなったときなどを感知します。

CPAPは、一定の圧力を気道にかけ続ける装置であり、患者の自発呼吸とは関係なく動作します。

自発呼吸を感知する機能はなく、患者の呼吸回数に対して同調性はありません。

役割・機能

NPPVは、患者の自発呼吸を補助する役割を果たすものです。

例えば、慢性期の患者は睡眠時のみの使用、急性期の患者は24時間使用など、呼吸不全の患者の状態に合わせて使用します。

特に、神経筋疾患や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核後遺症の治療に有効とされています。

NPPVのCPAPモードは、気道に一定の圧力の空気を送り続けて、気道を確保するために使用し、主に急性心原性肺水腫に有効です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を行う際は、専用のCPAP装置が使われています。

CPAPはNPPVの換気モードのひとつといえる

NPPVの主な換気モードは、大きく分けて5つあり、そのうちの1つがCPAPです。

単体のCPAP装置は、睡眠時無呼吸症候群の対症療法として活用されますが、NPPVの換気モードの中に、CPAPを搭載している機種があります。

  1. CPAPモード
  2. Sモード
  3. Tモード
  4. S/Tモード
  5. ASVモード

NPPVの換気モードについて詳しく解説します。

CPAPモード

自発呼吸ができる患者が使用できるCPAPモードは、吸気と呼気のいずれも一定の陽圧で肺に酸素を含んだ空気を送り込む役割を果たします。

PEEP(呼気終末陽圧)の機能のもとで働くモードです。

PEEP(呼気終末陽圧)とは、呼気の終わりに陽圧をかけて、呼気時に肺胞が潰れないようにする機能です。

潰れた肺胞に無理やり空気を送り込むと、炎症が生じるなど肺に損傷を与える可能性があるため、いずれの換気モードにもPEEPを付加することが一般的となっています。

CPAPモードでは、気道の内圧を上昇させることで、部分的または全体的に潰れてしまった肺への換気を行います。

これによって、機能的残気量(吸気時に肺の中に残る空気の量)の増加や、酸素化能(酸素が血液中に取り込まれる量)が増加する効果を得ることが可能です。

さらに、PS(プレッシャーサポート)機能で、あらかじめ患者の吸気に設定しておいた圧力の補助を行えます。

Sモード

Sモードは、患者の自発呼吸を感知して、あらかじめ設定しておいた吸気時間や吸気時・呼気時にかかる陽圧の換気を補助するモードです。

吸気時にかかる陽圧をサポートすることで、一回の換気量の増加、換気に必要なエネルギー量の減少、動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)を減少させる効果があります。

動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)とは、動脈内の二酸化炭素の量のことです。

呼吸状態が悪くなると、二酸化炭素の排出がスムーズに行われなくなり、動脈内の二酸化炭素が増え、高二酸化炭素血症となる恐れがあります。

また、吸気時にかかる陽圧をサポートすることで、呼吸仕事量を減らし、機能的残気量の増加させ、換気血流不均衡を改善させます。

換気血流不均衡とは、肺胞での酸素と二酸化炭素のガス交換が行えなくなった状態をいいます。

Sモードの注意点として、患者の自発呼吸がなければ作動しないモードであり、自発呼吸を感知できなければ一切のサポートを行いません。

自発呼吸は強度によって、機械が感知できない場合があるため、注意が必要です。

例えば、非常に弱い自発呼吸では、感知できずにSモードが作動しない可能性があります。

患者の自発呼吸の強度が十分にあるかを確認して、安全に使用しましょう。

Tモード

Tモードは、患者の自発呼吸に関係なく、強制的に換気を行うモードです。

あらかじめ設定した、圧力・呼吸回数・吸気時間に従って、換気を行います。

Tモードは、SモードまたはS/Tモードでトリガーが正常に作動しない患者に適したモードです。

主に、拘束性換気障害や安定期の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の治療に利用されています。

Tモードは、自発呼吸があっても強制換気が行われるため、呼吸時の呼吸筋の活動を補助する役割を果たせます。

装置からの強制換気に合わせて呼吸をすることで、呼吸時にかかる呼吸筋への負担を減らし、呼吸を楽にするサポートが可能です。

S/Tモード

S/Tモードは、通常は自発呼吸を感知してSモードで作動しています。

患者の自発呼吸を感知しなくなったときには、あらかじめ設定していたバックアップが働いて、Tモードに切り替わる仕組みです。

Tモードは、事前に設定した時間内に自発呼吸が感知できなければ、強制的に吸気時に圧力を負荷します。

例えば、1分間に10回の呼吸を設定しておくと、6秒に1度の呼吸があるかを確認する仕組みです。

1分間に10回の呼吸回数が確認されれば、強制換気は行われず、設定した呼吸数を下回ったときに、強制的に換気が行われます。

1分間に9回しか呼吸がなかった場合には、患者の自発呼吸に関係なく換気が行われることになります。

なお、時間を1分間、自発呼吸回数を10回と設定している場合に、1分間に10回以上の呼吸が確認されれば、モードの切り替えは起こりません。

自発呼吸があるけれど、微弱になる恐れがある患者に使用することで、有効的な働きをします。

ASVモード

ASVモードは、患者の呼吸に合わせて、患者にとって最適な呼吸になるように自動で設定を変更して呼吸をサポートできるモードです。

例えば、呼吸が不規則になる患者の場合、酸素を吸えるときは呼吸を補助する軽い陽圧を供給し、酸素を吸えないときは、強制換気に切り替えることが可能です。

使用前に設定しておいた呼吸回数を維持するように働くのではなく、患者の呼吸の状態に合わせて最適な呼吸をするために自動調節ができるため効果的に活用できます。

患者の状態に合った自動調節機能によって、安定した呼吸をサポートし、酸素供給量を増加させる役割があります。

NPPVはCPAPよりも高度な設定が可能

CPAPはシンプルな機能ですが、NPPVは設定時間内の呼吸回数など、細かな設定ができる機能を搭載しています。

  1. 呼吸の状態を細かく見られる
  2. アラーム機能

それぞれの設定について解説します。

呼吸の状態を細かく見られる

CPAPは一定の陽圧をかけ続けるというシンプルな機能となっていますが、NPPVはCPAPよりも詳細な呼吸状態のモニタリング機能を搭載しています。

例えば、血液中の酸素飽和度を知ることで、患者が酸素をしっかりと取り込めているかがわかります。

酸素飽和度が低い場合は、息苦しさを感じますが、基準値よりも少し低い程度の異常では、体内に酸素がきちんと供給されていないという自覚症状がないケースがあり、危険です。

そのため、NPPVは、呼吸の状態が不安定な患者の治療に向いています。

NPPVのモニター画面では、以下の項目の表示が可能です。

  1. リーク量(酸素がもれる量)
  2. 呼吸回数
  3. 換気量
  4. 分時換気量
  5. 気道内圧
  6. 肺気量
  7. 流速
  8. 酸素飽和度

機種によって、複数の項目をモニターで表示できるようになっているため、患者の変化にいち早く対応できます。

アラーム機能

NPPVには、患者の変化に応じてアラームが鳴り、警告してくれるアラーム機能があります。

アラーム機能の種類は、ローアラームとハイアラームの2種類があります。

ローアラームは、主にリークを疑うもので、酸素がもれる量が多くなったときにアラームが鳴る仕組みです。

ハイアラームは、主に閉塞を疑うもので、酸素が十分に取り込めてないときにアラームが鳴る仕組みになっています。

アラーム機能がなったら、まずは患者の意識レベルの低下やショック状態の初見がないかを確認して、必要に応じて適切な処置を行います。

NPPVとCPAPの治療の流れ

治療はまず、疾病の診断から始まり、患者に合った適切な機器を選択して治療を進めていきます。

  1. 疾病の診断
  2. 適切なモード・機器を選択
  3. 在宅医療のサポート
  4. 多職種が連携して治療をサポート

治療の流れを解説します。

疾病の診断

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いがある場合、問診を行ったのちに、自宅で携帯型装置を使って簡易的なスクリーニング検査を実施します。

睡眠時に無呼吸になっている、低呼吸の頻度が高くなっている患者は、簡易的なスクリーニング検査のみで、睡眠時無呼吸症候群と診断されるケースもあります。

簡易スクリーニング検査で、より詳しい検査が必要と判断されたら、医療機関に入院をして精密検査を行い、診断を確定させることが可能です。

睡眠時無呼吸症候群の精密検査は、終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)といい、睡眠時の呼吸の状態を確認します。

適切なモード・機器を選択

検査結果をもとに、治療に適切な機器を選択します。

例えば、基本的に自発呼吸ができるが、呼吸が不安定で、低呼吸になることがあるという患者は、自発呼吸をトリガーとしているモードは不適切です。

この場合は、自発呼吸がなくなったことも感知できる、S/Tモードが最適といえます。

また、CPAP治療では、3種類のマスクから患者に適したマスクを選択します。

鼻だけを覆う鼻マスク、口と鼻を覆う口鼻マスク、顔を覆う顔マスクの3種類から、使用感の良いマスクを選び治療を開始します。

マスクはサイズ感が合っているか、フィッティングを行い、マスクと顔のすきまから空気が漏れださないものを選びましょう。

在宅医療のサポート

患者の状態が安定すれば、在宅でNPPV療法・CPAP療法が行えるようになります。

在宅医療を行うことになれば、医療スタッフから患者や患者のサポートを行う家族に対して、機器の操作方法や管理方法を指導します。

患者や家族が機械のオンオフなどの簡単な操作ができるようになれば、自宅で安全に利用可能です。

ただし、詳細設定の変更などは行えないため注意が必要です。

定期的に外来受診を行い、在宅で治療を継続できるようにサポートを行うことで、安全な在宅医療が可能です。

多職種が連携して治療をサポート

CPAP療法やNPPV療法を安全に行い、効果を得るためには、多職種の連携が必要不可欠です。

医師や看護師だけでなく、臨床工学技士や理学療法士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど、それぞれの専門分野があらゆる方面からサポートを受けて治療を進めます。

治療の効果を高めるために、専門分野ごとに情報を共有することで、チーム医療が円滑に進み、治療の質が向上します。

NPPVとCPAPの治療に欠かせないマスクの注意点

NPPVとCPAPの治療に欠かせない機器が、呼吸のサポートを行うマスクです。

マスクを取り扱う際の注意点は2つあります。

  1. マスクが患者にフィットしているか
  2. マスクの使い心地を確認して必要であれば変更する

マスクを利用する際の注意点を解説します。

マスクが患者にフィットしているか

マスクは、鼻マスク、口鼻マスク、顔マスクの3種類あり、患者によって適したマスクをつける必要があります。

マスクを選ぶ際は、必ずフィッティングを行い、きちんと鼻や口を覆うことができるか、すき間ができないか、苦しくないかなどの確認が重要です。

すきまができないように、顔に食い込んでしまうほどのマスクをつけると、怪我の原因となるため、フィッティングが最適かどうか、医療スタッフに判断してもらいましょう。

マスクの使い心地を確認して必要であれば変更する

マスク装着時に違和感がある方も、しばらくすると慣れてくることが多いとされています。

しかし、しばらく使い続けても違和感があったり、傷みや不快感がある場合は、マスクがフィットしていない可能性も考えられます。

最初に選んだマスクを継続的に使用する中で、使用感が良くないと感じるときは、担当医師に相談して、マスクの再検討も考えてみると良いでしょう。

NPPVやCPAPのよくある質問

NPPVやCPAP治療を受ける際に、よくある質問は以下の通りです。

  1. CPAPを使えば、将来的に人工呼吸器は必要ない?
  2. NPPVを使っていて、CPAPに変更することはある?
  3. NPPVやCPAPの費用はいくらかかる?
  4. NPPVやCPAPの操作を自分でできる?

ぜひ参考にしてみてください。

CPAPを使えば、将来的に人工呼吸器は必要ない?

CPAPと人工呼吸器は使用目的が異なるため、CPAPを使っていれば、人工呼吸器は必要ないとは言い切れません。

CPAPを利用していた場合でも、睡眠時無呼吸症候群以外の疾病が原因で、呼吸不全の状態が悪化した場合には、人工呼吸器が必要となります。

NPPVを使っていて、CPAPに変更することはある?

患者の病状によって、使用する機械を変えるケースもあります。

例えば、喘息が一時的に悪化して、呼吸不全に陥った際には、まず一時的にNPPVを使用します。

NPPVを使用して病状が安定してきた場合に、睡眠時のみの呼吸サポートで良い状態となれば、CPAPを利用することになります。

NPPVやCPAPの費用はいくらかかる?

NPPVは機器のレンタルと指導管理料が保険適用となり、3割負担で月額27,840円の費用がかかります。

CPAPをレンタルする場合、3割負担の保険適用で、機器のレンタル代や月1回の診察・指導管理料などを含めた金額が月額4,000〜5,000円程度かかります。

CPAPを自費購入する場合は、20〜50万円程度かかります。

NPPVやCPAPの操作を自分でできる?

NPPVやCPAPは、自宅で利用できるように、患者や家族に対して、基本的な操作を指導します。

機器の電源のオンオフやマスクの着脱の方法、加湿器の水を交換する方法などの指導を受けることになります。

ただし、圧力の設定やアラームの設定などの詳細な設定や、設定の変更は患者や家族は行えません。

まとめ:NPPVとCPAPの違いを知り効果的な治療を進めよう

NPPVとCPAPは、人体を傷つけずに呼吸をサポートするため、患者に肉体的・精神的な負担をかけずに安全に行える治療方法です。

NPPVは、詳細な設定で呼吸の管理が行え、CPAPは気道確保ができるため、それぞれの特徴を活かして使い分けできます。

ぜひ当記事を参考にして、NPPVとCPAPそれぞれの特徴と役割の違いを知り、効果的な治療に活かしてください。