給与水準が高い医師は、退職金の相場も高いと思われる一方で、退職金がもらえないケースがあります。
老後のことを考えたとき、退職金がもらえなければ不安に感じる方もいるでしょう。
そこで本記事では、医師の退職金について徹底解説します。退職金の相場やもらえないケースも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
医師(勤務医)の退職金は1,000〜2,000万円が目安!
医師(勤務医)の退職金について統計的なデータはないものの、1,000万円~2,000万円が目安です。
開業医に退職金はありません。しかし、医療法人化していれば開業医でも退職金はもらえます。
退職金に関して
退職金の計算方法には以下の4通りがあります。どの計算方法を採用するかで金額が変わります。
種類 | 計算方法 |
---|---|
定額制 | 勤続年数に合わせて一律の退職金が支払われる 基本給や業績は反映されない |
基本給連動型 | 計算式に当てはめ算出されるが勤務先で数値は変わる 「基本給×支給率×退職事由係数」 |
別テーブル型 | 退職時の役職と計算式によって算出される 「基礎金額×支給率×退職事由係数」 |
ポイント制 | 医療機関や施設が独自に定めたポイント単価とポイント数で算出される |
退職金の計算方法によって条件も変わるので、勤務医であっても平均相場に達するとは限りません。
医師(勤務医)の退職金が支払われる3つのケース
それでは、医師(勤務医)の退職金が支払われる3つのケースを紹介します。
- 大規模・大学病院での長期間勤務
- 医局の紹介による勤務
- 雇用契約での勤務
大規模・大学病院での長期間勤務
赤十字病院や大学病院など、大規模病院で長期間勤務した医師には退職金が支払われます。
大学病院は給与水準が低い傾向が見られますが、福利厚生の待遇は良いでしょう。
また、長期間にわたり臨床研究や後進育成に貢献したと評価されれば、退職金を支給するケースがあります。
医局の紹介による勤務
医局の紹介による勤務でも退職金がもらえるケースがあります。
ただし、勤務先が変わるたびに退職金はリセットされることに留意しましょう。さらに、医局を抜けた場合は、あまり多くの退職金はもらえないとされています。
雇用契約での勤務
退職金制度を設けている国立病院や市立病院と雇用契約を結んでいれば、大学病院ほどではないものの退職金がもらえます。
退職金に関する条件や金額は、医療機関で異なるため、雇用契約を結ぶ際は契約書や就業規則を確認してください。
医師でも退職金がもらえない4つのケース
一方、医師でも退職金がもらえないケースが4つあります。
- 小規模な病院での勤務
- 勤続年数の不足
- フリーランスで働く医師
- 開業医
小規模な病院での勤務
小規模な病院や個人経営のクリニックでは、退職金がもらえない可能性があります。
理由として考えられるのが、退職金を支払う余裕がないことです。
多くの場合、退職金制度を導入していないケースが多いため、雇用契約の際に退職金について確認してください。
勤続年数の不足
勤務医でも、勤続年数が不足していると退職金がもらえないケースがあります。
定額制の場合は、勤続年数によって退職金が決まっているため、規定の年数に満たなければ退職金はもらえません。
なお、病院によって独自ルールを設けており、勤続年数何年以上という条件がある場合も同様です。
フリーランスで働く医師
フリーランスで働く医師は退職金をもらえません。
退職金制度を設けている医療機関や施設であっても、フリーランスは非正規雇用のため退職金の対象外です。
開業医
開業医は、クリニック自体が資産となるため、退職金はありません。
基本的に退職金は、雇用主が従業員に支払うものです。開業医は自身が雇用主であるため、退職金はもらえません。
もし、退職時に退職金と同様の金額がほしい場合は、小規模企業共済をはじめとする制度の加入を検討してみてください。
医師(開業医)でも医療法人なら退職金をもらえる可能性がある
本来退職金のない開業医でも、医療法人なら退職金をもらえる可能性があります。
法人化すると退職時に「退職慰労金」と「特別功労金」を受け取れます。
退職慰労金は、役員に支払われるもので規定は必要ありません。さらに、退職慰労金は損金にはならないため節税対策にも有効です。
計算式:最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率 |
特別功労金は、特別な功労が認められた場合に限られますが、退職金の30%以内の金額が加算されます。
なお、創設者が死亡した場合は、以下のお金を受け取れます。
死亡退職慰労金 | 退職慰労金と同様に算出される |
---|---|
弔慰金 | 業務上:最終報酬月額×36ヶ月 業務外:最終報酬月額×6ヶ月 |
特別功労金 | 死亡退職金の30%以内 |
ただし、医療法人化には保険の種類や財産の管理など、いくつかクリアしなければならない規定があるため、退職金以外のことも考えて検討する必要があります。
医師が退職金をもらえなかったときの対策
では最後に、医師が退職金をもらえなかった場合の対処法について解説します。
- 収入を増やす
- 資産運用をする
収入を増やす
退職金をもらえない場合は、まず収入を増やす方法があります。
開業医は診療時間を増やせば、収入増加が見込めるでしょう。非正規雇用であれば、アルバイトや給与がいい病院への転職を検討してください。
増えた収入を貯蓄に回せば、老後に備えられます。
資産運用をする
余裕資金を資産運用に回すのも選択肢の一つです。
- 外貨預金
- 貯蓄性のある保険
- NISA
- iDeCo
上記は初心者向きですし、小額から始められるものもあります。
ただし、資産運用は必ず成功するとは限りません。十分な知識を習得しても、失敗のリスクがあることを理解する必要があります。
まとめ:退職金がもらえない医師は老後の資産形成を検討しよう
医師は、退職金がもらえるケースともらえないケースがあります。勤務医であっても、勤務先が退職金制度を導入していなければ退職金はありません。
そこで、退職金がもらえない医師でも、貯蓄や資産運用で老後に備えられます。
資産運用を始めるにはタイミングも重要です。自身のライフプランに合わせて、堅実な資産形成を検討してください。