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標榜科目とは?4つの基本ルールや注意点・変更方法も解説

これから開業を控える医師が迷うのは、標榜(ひょうぼう)科目の設定です。標榜科目とは、医院の診療範囲や医師が得意とする診療科目を患者さんに示す大切な要素です。

標榜する科目は、基本的には決められたルールがあります。

しかし、集患を意識しすぎてしまい、ニーズの高い診療科目をむやみに標榜してしまうと、後々クリニックの評判を落としかねません。違法になる恐れもあります。

本記事は、標榜科目を決める際のルール注意点、また一度標榜した診療科目を変更する方法も解説していきます。標榜する科目を迷っている方は、参考にしてみてください。

この記事を監修した医師
見立 英史 国立・私立大学や開業医勤務を経て私立大学病院に勤務。一般歯科診療から全身麻酔手術症例までを行っています。日本口腔外科学会指導医・専門医、日本口腔科学会指導医。専門分野は口腔粘膜疾患。  

標榜科目とは?

標榜科目とは、医師の専門とする診療分野や診療範囲を示すために「◯科」とホームページや看板などに掲げられる診療科名のことです。標榜科目はわかりやすい表記にし、患者が正しい受診先を選べるようにすることが大切です。

また、医師の得意な科目を示すことにもつながるため、よく考えて決めましょう。

なお、科目の標榜には、一定のルールが存在します。間違えた標榜をしてしまうと、厚生労働省から認められない可能性もあり、開業スケジュールに支障が出る恐れがありますので、注意しましょう。

標榜科目の決め方

標榜科目を決める際には、医院の診療範囲や医師の得意分野、専門分野を示すものにしましょう。

しかし、標榜科目が患者さんに誤解を与えないように、一定のルールが設けられています。

ここからは、標榜する科目を決める際のルールと、標榜可能な科目を中心に、以下の内容で解説していきます。

基本的な標榜方法の4つのルール

標榜する科目の設定は、医院の診療範囲や医師の専門分野や得意とする科目を示すものですが、自由に標榜できるわけではありません。

決める際には、以下の3つの基本ルールがありますので、確認しておきましょう。標榜科目のルールは、厚生労働省によって決められているため、内容をしっかり理解した上で決定してください。

  1. 内科
  2. 外科
  3. 単独で標榜可能な診療科目
  4. 内科または外科とその他の項目との組み合わせ

診療科目の標榜方法は、厚生労働省によって2008年に大きな見直しがされました。見直し以降に新規で作成する看板などは、新ルールを適用した表記をする必要があります。

内科または外科と組み合わせられる項目

内科と外科は、他の項目と組み合わせて標榜することも可能です。組み合わせができる項目は以下4つのパターンに分類されています。

  1. 身体の部位や器官、組織や臓器の名称
  2. 疾病や病態の名称
  3. 患者の特性
  4. 医学的な処置

例えば、内科の場合、神経内科や心療内科、内科(循環器)などの組み合わせができます。外科の場合なら、形成外科と標榜もできます。

しかし、全ての組み合わせが適用されるわけではありません。例えば、器官食道消化器内科のように同グループの組み合わせはできないため「器官食道・消化器内科」のように区切る必要があります。

参照:広告可能な診療科名の改正についてー医政発第 0331042 号

標榜可能な科目の数

なお、標榜科目数に上限はありません。とはいえ、厚生労働省によれば、患者さんが適切に医療機関を選択するサポートをするために、標榜科目や数は以下の考えに基づくのが望ましいとされています。

  • 勤務医1人に対して標榜科目は2つ以内に留める
  • 主となる診療科目は大きく表示し、他の診療科目と区別をつける

実際のところ、これらには法令上の罰則や決まりはなく、標榜できる科目数に制限が設けられているわけではありません

ただし、むやみに標榜科目を増やすことは、患者さんが本当に受診したい科がわからなくなる可能性がありますので、避けた方が良いでしょう。

単独で標榜できる診療科名の一覧

単独で標榜可能な診療科名は、以下となります。

  • 内科
  • 外科
  • 小児科
  • アレルギー科
  • 皮膚科
  • 泌尿器科
  • 婦人科
  • 産婦人科
  • 産科
  • リウマチ科
  • 耳鼻咽喉科
  • 眼科
  • リハビリテーション科
  • 放射線科
  • 放射線診断科
  • 放射線治療科
  • 病理診断科
  • 臨床検査科
  • 精神科
  • 救急科

上記の診療科名は、医院の専門分野や得意分野に合わせて標榜可能です。そのため、内科や外科の標榜がなくても使用できます。

参照:広告可能な診療科名の改正についてー医政発第 0331042 号日本医師会「診療科名の標榜方法の見直し」

標榜科目を組み合わせるうえでの注意点

ここでは、標榜科目を組み合わせる際の注意点について解説していきます。注意点は主に3つありますので、理解した上で標榜科目の組み合わせを決めてください。

  1. 矛盾・不合理な組み合わせにしない
  2. 法令に根拠のない組み合わせにしない
  3. 同じ分類の単語はつなげない

矛盾・不合理な組み合わせにしない

標榜科目を組み合わせる際、矛盾を感じる組み合わせや不合理な組み合わせに気を付けましょう。以下は、不合理と判断される組み合わせになります。

科目 不合理な組み合わせ
内科 整形または形成
外科 心療
アレルギー科 アレルギー疾患
小児科 小児、老人、老年または高齢者
皮膚科

呼吸器、消化器、循環器、気管食道、心臓血管、腎臓、脳神経、気管、気管支、肺、食道、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓、心臓または脳

産婦人科 男性、小児、児童
眼科 胸部、腹部、呼吸器、消化器、循環器、気管食道、肛門、心臓血管、腎臓、乳腺、内分泌、頸部、気管、気管支、肺、食道、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓または心臓
耳鼻咽喉科 胸部、腹部、消化器、循環器、肛門、心臓血管、腎臓、乳腺、内分泌、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓または心臓

例えば、内科と心療を組み合わせた心療内科はよく見かける標榜科目ですが、外科と心療を組み合わせた心療外科と標榜することはできません。

また、産婦人科と小児を組み合わせた小児産婦人科など、正反対の標榜も矛盾・不合理な組み合わせとなるため、認められません。

参照:広告可能な診療科名の改正についてー医政発第 0331042 号日本医師会「診療科名の標榜方法の見直し」

法令的な根拠のない組み合わせは認められない

法令的な根拠がないと判断される名称は、診療科目として標榜できません。主な例は、以下の通りです。

  • 呼吸器科
  • 循環器科
  • 消化器科
  • 女性科
  • 老年科
  • 化学療法科
  • ペインクリニック科
  • 糖尿病科
  • 性感染症科
  • インプラント科
  • 審美歯科

こうした認められていない診療科目は使用しないように注意してください。

同じ分類の単語はつなげない

標榜可能な項目は、4つに分類されます。

標榜科目の組み合わせを考える際に、この中で同じ分類に属する単語をつなげて標榜することはできません。

しかし、単独で標榜可能な内科と外科があります。内科と外科は、4つの分類の項目と組み合わせて標榜することが可能です。

各分類毎の項目は以下の通りです。

分類 項目
部位、器官、臓器、組織またはこれらの果たす機能 頭頸部(けいぶ)、頭部、頸部、胸部、腹部、呼吸器、気管食道、気管、気管支、肺、消化器、食道、胃腸、十二指腸、小腸、大腸、循環器、肛門、血管、心臓血管、心臓、腎臓、脳神経、脳、神経、血液、乳腺、内分泌、代謝、脂質代謝、肝臓、胆のう、膵臓(すいぞう)
疾病、病態の名称 感染症、性感染症、腫瘍、がん、糖尿病、アレルギー疾患
患者の特性 男性、女性、小児、周産期、新生児、児童、思春期、老人、老年、高齢者
医学的処置 整形(内科との組み合わせは不可)、形成(内科との組み合わせは不可)、美容、心療(外科との組み合わせは不可)、薬物療法、移植、光学医療、生殖医療、不妊治療、疼痛(とうつう)緩和、緩和ケア、ペインクリニック、漢方、化学療法、人工透析、臓器移植、骨髄移植、内視鏡

例えば、分類1の胃と大腸と内科を組み合わせて胃大腸内科とするのは、認められません。ただし、胃・大腸内科とする場合には標榜可能です。

参照:広告可能な診療科名の改正についてー医政発第 0331042 号日本医師会「診療科名の標榜方法の見直し」

標榜科目を変更する方法

標榜科目を変更したい場合には、都道府県知事宛に開設許可等の事項の変更届出が必要です。診療所の場合、保健所が設置されている市長や区長宛の届出の提出となります。

上記以外にも、医療機能情報提供制度にかかる変更の報告が必要となりますので、変更する際には必要な届出を事前に調べておきましょう。

参照:社団法人日本医師会

標榜科目についてのよくある質問

では最後に、標榜科目について下記のよくある質問を紹介します。標榜する際にお役立てください。

クリニックを開業する時の診療科目の標榜は自由ですか?

医師免許さえ取得していれば、基本的に歯科以外の標榜は自由です。自院の標榜科目に麻酔科を入れたい場合には、麻酔科標榜医の資格が別途必要となります。

需要が高い標榜科目だからという理由で、担当する医師の専門外の標榜科目にすることで、クリニックの評判を落としてしまう恐れも考えられます。

近年は、個人クリニックの競争が激化しているため、差別化や専門化が必要とされています。科目を標榜する際には、ルールをよく理解することはもちろん、クリニックの経営方針を明確化した上で決めるのが良いでしょう。

総合診療科は標榜できますか?

一般的な医療機関である診療所やクリニックでは、総合診療科の標榜は認められていません。

しかし、さまざまな診療科目のある大規模病院に分類される医療機関は、総合診療科の標榜が認められているケースもあります。

まとめ:標榜科目はルールを遵守して適切に決めよう

標榜科目の決定は、多くの開業医が判断を迷うポイントです。

標榜科目は、医院の得意とする科目や専門性を示す手段でもあり、患者さんがクリニックを選ぶ際の選択基準となる大切なものです。

標榜ルールをしっかりと理解した上で、病院のコンセプトや集患戦略も踏まえて適切に決めましょう。