「歯科訪問診療を導入したほうが良いのかな?」
「歯科訪問診療を導入すると、どのようなメリットがあるのかな?」
このような疑問を抱えているのではないでしょうか。
歯科訪問診療は、高齢化が加速する日本において、重要な役割を果たします。そのため、導入するかどうかにかかわらず、歯科訪問診療について理解を深めておくことは非常に重要です。
そこで、本記事では歯科訪問診療とは何か、歯科訪問診療を行うメリットを解説します。記事の後半では、歯科訪問診療に関するQ&Aも紹介しているので、ぜひ最後までお読みください。
この記事の内容
歯科訪問診療とは?概要や対象者とは?
まず、歯科訪問診療について説明します。
ご存知の方も多いかと思いますが、改めて、歯科訪問診療とは何か、またどんな人が対象者なのかを確認しておきましょう。
歯科訪問診療とは?
歯科訪問診療とは、歯科医院に通院できない患者に対して、歯科医師や歯科衛生士が患者のもとを訪れて診療を行うことです。
医療には、大きく分けて保険診療と自費診療の2つがありますが、歯科訪問診療は保険診療の適用範囲内です。
高齢社会である日本においては、歯科医院に通院できない患者の増加が想像されるため、歯科訪問診療の普及が必要とされています。
歯科訪問診療の対象者
先ほどの歯科訪問診療の説明に「歯科医院に通院できない患者に対して」とある通り、全ての人が歯科訪問診療を受診できるわけではありません。
疾病や傷病によって通院するのが難しい患者のみに限定されています。
しかし、その判断基準は形式的に決まっているのではなく、歯科医師が個別の患者ごとに判断することとなっています。歯科医院に通院できない状態とは、例えば次のような事例が考えられます。
- 高齢になり、身体が思うように動かない
- 寝たきりにより、歯科医院への通院ができない
- 障がいにより、歯科医院への通院が難しい
そのため、仮に要介護認定などがなされていなくても、通院が実質的に厳しいと歯科医師が判断すれば歯科訪問診療の利用が可能になります。
歯科訪問診療と外来・往診との違い
歯科訪問診療をよりよく理解するには、外来・往診との違いを知っておくことが大切です。
外来・往診との違いを、形式的な面だけでなく実質的な面からも確認してみましょう。
歯科訪問診療と外来診療との違い
患者は外来診療では通院しなければいけませんが、歯科訪問診療では生活しながら治療が受けられます。
歯科訪問診療を利用するのは、何かしらの理由により歯科医院への通院ができないと判断された方であるため、口腔だけでなく他の部位にも気を配って診療をしなければなりません。
さらに、障がいをお持ちの方もおられたり、意思疎通が難しい場合もあります。
ほとんどの場合は介助者の方がいるため、大きな心配をする必要はありませんが、介助者を通じて正確な意思疎通をとる必要があります。
歯科訪問診療と往診との違い
続いて、歯科訪問診療と往診との違いを見ていきましょう。
どちらも患者のもとを訪れて診療をする方法ではありますが、目的が大きく異なります。
歯科訪問診療は、あらかじめ治療内容を計画した上で患者のもとを訪れます。しかし往診の場合は、突発的な事態に対処するために患者のもとを訪れることを指します。
たとえば体調が急変したものの医療機関に赴くことができず、応急処置を希望する場合は往診を依頼するケースがほとんどです。
なお、医科の点数表においては往診と訪問診療は別のものとして扱われる一方、歯科の点数表には訪問診療にまとめられている点に注意してください。
歯科訪問診療を行うメリット
では、歯科訪問診療を行うメリットにはどんなものがあるのでしょうか?
ここでは、主に3つのメリットを解説します。
- 患者が通院しなくてよい
- 生活環境の様子を直接見て確認できる
- 介護者の負担が軽減される
1つずつ確認していきましょう。
患者が通院しなくてよい
1つ目は、患者が通院しなくてよいことです。
当然ながら、通院が難しい患者のもとに歯科医師、歯科衛生士が訪問するため、患者が通院しなくてよくなります。
身体の事情で通院が難しい方、できない方には大きなメリットがあります。
それだけでなく、障がいをお持ちの方で通院すると緊張して精神的に疲弊してしまう方や高齢の方で感染症の罹患リスクを減らしたい方にも自宅や介護施設など、慣れている場所で診療を受けられるのは非常に嬉しいことでしょう。
しかし、歯科訪問診療のメリットは患者が通院しなくてよいことだけではありません。
以下では、患者が通院しなくてよいこと以外のメリットも紹介します。
生活の様子を直接見れる
2つ目は、生活の様子を直接見れることです。
食事の様子を見れるので、食生活の指導、食後の口腔ケア方法の指導など、診療以外の面でも患者に寄り添った個別の対応ができます。
言うまでもありませんが、診療以外の面でも患者をサポートできると、より効果的な診療ができるようになるため、大きな効果が期待されます。
介護者の負担が軽減される
3つ目は、介護者の負担が軽減されることです。
もし通院が難しい状況でも通院しなければならない場合は、介護者の方が患者と一緒に歯科医院まで来てもらわなければなりません。
しかし、歯科訪問診療を選択すれば、その必要はありません。
さらに、日常から患者の介護をしている方は、毎日が大変な日々で休まる暇がないかもしれません。
そこで、歯科訪問診療をしている間だけは、ゆっくりしてもらうなどの配慮ができれば、なお喜んでもらえるでしょう。
ただし、意思疎通が難しい患者などの場合は、この限りではありませんので、ご注意ください。
歯科訪問診療に関するQ&A
ここまで歯科訪問診療についての解説をしてきましたが、まだ気になっていることや疑問に思っていることがある方がいらっしゃるかもしれません。
そこで、最後に、歯科訪問診療に関する質問の中で、特によくある質問を3つ紹介します。
歯科訪問診療で交通費は請求できる?
まず最も多い質問は、「歯科訪問診療で交通費は請求できますか?」です。
結論として、請求できます。
ガソリン代を含めた交通費を患者に請求することが可能です。
歯科訪問診療で行ける範囲はどこまで?
2つ目に多い質問は「歯科訪問診療で行ける範囲はどこまで?」です。
答えは、訪問診療を行う保険医療機関から半径16km以内です。
もし16kmを超えた範囲で歯科訪問診療をする場合は、保険診療ではなく、自費診療が適用されます。
歯科訪問診療に必要な資格は?
3つ目に多い質問は「歯科訪問診療に必要な資格は?」です。
歯科医師・歯科衛生士になるには、それらの国家資格が必要ですが、その他に必要な資格はありません。
しかし、訪問先によっては運転が必要なため、自動車の運転免許が求められます。
歯科訪問診療の移動で車が使用できないと、かなり不便を強いられるので、運転免許は取得しておくといいでしょう。
まとめ
今回は、歯科訪問診療について解説しました。
歯科医院への通院が難しい方、通院することの代償が大きい方にとっては、自宅や介護施設等で診療を受けられる歯科訪問診療には大きなメリットがあります。
また、普段の生活の様子も見られるため、より的確な診療につながる可能性が大いにあります。
高齢社会になるにつれ、通院できない方の数は増えてくることが予想されるため、積極的に歯科訪問診療を活用することが求められるでしょう。