「医療クラークとはどのような役割を果たすのか?」
「医療クラークを配置することにメリットはあるの?」
医療クラークに対して、このような疑問をお持ちではありませんか?
医療クラークを導入したことがなければ、実態がどのようなものか分かりづらいですよね。
そこで、今回の記事では医療クラークとは何か、仕事内容や導入するメリットについて解説します。
記事の後半では、医療クラークを導入する際、どのような点に注意すべきかについても解説しているので、ぜひ最後まで確認してみてください。
この記事の内容
医療クラーク(医師事務作業補助者)とは?
医療クラークとは、正式には医師事務作業補助者といい、医師の負担軽減を目的に配置される職員です。
2008年に医師の負担を軽減するために保険収載された「医師事務作業補助体制加算」に規定されています。
本来、医師が行う業務である文書の作成代行や電子カルテの入力代行などを行うのが医師事務作業補助者の仕事です。
なお、あくまでも”医師”事務作業補助者なので、看護師や受付スタッフなどの仕事の代行はできないとされています。
医療クラークの仕事内容とは?
ここでは、医療クラークの仕事内容を解説します。
- 文書作成補助
- データ入力補助
- オーダー補助
- 行政への報告業務
- その他
1つずつ確認してみましょう。
文書作成補助
1つ目は、文書作成補助です。
医師は診療をするだけでなく、診療のためにさまざまな書類を作成することになります。
- 診断書
- 処方箋
- 患者とその家族への説明文書
- 紹介状
- 退院サマリー
これらの作成に多くの時間を費やしてしまうと、本来やるべき診療に時間を割けなくなるため、医療クラークが文書の作成を補助するのです。
なお、作成された文書の責任は医師が取ることになっていますので注意してください。よくあるパターンは、医療クラークが入力し、医師が確定処理・署名押印をする、という流れです。
データ入力補助
2つ目は、データ入力補助です。
主に電子カルテの入力が挙げられます。
カルテは医師が入力するものですが、患者への説明内容、患者の訴えなどについて、長時間にわたる場合は、医療クラークがカルテ入力を代行することで、記載すべき内容の漏れを減らし、診療に集中できます。
なお、文書作成補助と同様、カルテの内容に関する責任は医師にありますので、最終的には医師が確認する作業が必要です。
オーダー補助
3つ目は、オーダー補助です。
オーダーとは、処方・注射・検査・処置・食事などの指示です。
オーダーも医師の仕事ですが、医療クラークが代行して行うこともあります。
しかし、オーダーは患者さんの療養へ直接影響を与える業務ですので、初めから任せるのではなく、経験に応じて割り振ること、そして最後は医師が確認することが好ましいでしょう。
行政上必要な業務
4つ目は、行政上必要な業務です。
医療機関では、以下のような行政上必要な業務があります。
- 救急医療情報システムの入力業務
- 感染症サーベイランスに関する入力業務
- その他、保健所や役所への届出が必要な業務
これらは、医師が内容を確認し、、医療クラークが代行して手続きを行います。
その他
他にも、資料作成や院内電話の対応、器材整理なども行うことがあります。
いずれも「医師」の仕事の範囲内である点に注意してください。
この後で詳しく解説しますが、医師の仕事の範囲外の業務は医療クラークが担当できないことになっています。
医療クラークだからと言って、なんでも対応させて良いわけではありませんので、必ず確認するようにしましょう。
医療クラークが禁止されている仕事内容とは?
一方、医療クラークには禁止されている仕事があります。
- 医師以外から指示された業務
- 受付・窓口業務
- レセプト業務
- 医療機関の運営
- 医療機関の運営に必要なデータの収集
- 看護業務の補助
- 指示のない物品の運搬
それぞれの内容を以下で確認しましょう。
医師以外の指示による業務
1つ目は、医師以外の指示による業務です。
医療クラークはあくまでも医師の業務の一部を代行することが業務ですので、看護師やコメディカルなど、医師以外から指示された業務はできないことになっています。
医療クラークの業務が規定されている「医師事務作業補助体制加算」にも、「医師以外の指示は受けないように」と定められているため、医師以外から指示された業務は行わないようにしてください。
受付・窓口業務
2つ目は、受付・窓口業務です。
医療機関における受付・窓口業務は、医師ではなく医療事務が担当することが一般的です。
このことから、受付・窓口業務は医療クラークの仕事内容としては認められていません。
レセプト業務
3つ目は、レセプト業務です。
レセプト業務とは、診療報酬請求の事務などのことです。
これも医師の仕事ではなく、医事課で行うべき業務です。
したがって、医療クラークの仕事内容として認められていません。
医療機関の運営
4つ目は、医療機関の運営です。
院長を除いた医師は、医療機関の運営に携わることはないでしょう。
そのため、医療機関の運営も医療クラークの業務ではありません。
医療機関の運営に必要なデータの収集
5つ目は、医療機関の運営に必要なデータの収集です。
これも医師ではなく、医事課で診療情報管理士により行われる業務であるため、医療クラークの業務ではありません。
看護業務の補助
6つ目は、看護業務の補助です。
看護業務の補助とは、文字通り看護師業務の補助にあたります。
医療クラークは医師の補助にあたる仕事しかできないため、看護業務の補助は認められていません。
指示のない物品の運搬
7つ目は、指示のない物品の運搬です。
物品の運搬も通常は医師の仕事ではありません。主に看護や事務の業務として行われる場合が多いでしょう。
ただし、医師が物品の運搬を指示する場合は、医療クラークによる物品の運搬も許可されます。
医療クラークを導入するメリットは?
医療クラークを導入する1番のメリットは、医師がかかえこんでいる業務を減らせることです。
そのため、医師が本来行うべきである診療に多くの時間を費やせるようになるため、患者さんへの対応が改善できます。
また、医療クラークが業務内容のみならず、診療の一連の流れを把握するようになれば、医師に先回りして提案して作業を進めたり、他の従業員との連携役の役割を果たしてくれたりします。
診療の効率化だけでなく、病院業務の効率化という、より大きな効果が望めるでしょう。
医療クラークを配置する際のポイント
医療クラーク(医師事務作業補助者)を配置する際には、3つのポイントを解説します。
- スタッフへの理解を得る
- 教育の充実・マニュアルの整備
- モチベーションの管理
それぞれ見ていきましょう。
スタッフへの理解を得る
1つ目は、スタッフへの理解を得ることです。
医療クラークは医師の代わりを務めるため、医師以外のスタッフともやりとりをする機会があります。
この際、スタッフから医療クラークへの理解が得られていないと、医療クラークとスタッフとのやりとりがスムーズにいかず、業務の遂行に影響が出てしまう可能性があります。
そのため、医療クラークを導入する前に、すでにいるスタッフに対して、医療クラークの業務内容、導入することの理解を得ることが大切になります。
教育の充実・マニュアルの整備
2つ目は、教育の充実・マニュアルの整備です。
医療クラークは、非常に多くの業務内容に対応する必要があるため、いきなり全てを理解することは難しいといえます。
そのため、1つずつ理解できるための教育制度を充実させたり、医療クラークとしての業務を行いやすくするためのマニュアルを整備すると良いでしょう。
医療クラークが業務を遂行しやすい環境を作ることが大切です。
モチベーションの管理
3つ目は、モチベーションの管理です。
医療クラークが対応する業務は専門性が高い内容が多く、また作業環境に慣れ、業務の手順など覚えることも多いため、初めから業務がうまく流れていくわけではありません。
そのため、医療クラークが自信を失ったり、やる気をなくしたりしてしまう可能性があります。
これは医療クラークに限ったことではなく、全ての職員にあてはまることですが、焦らないで良いこと、不明な点はいつでも聞いてよいことなどを折にふれて伝え、たとえミスをしても、周囲がフォローすることが大切です。
まとめ
今回は、医療クラークについて解説しました。
医療クラークは医師事務作業補助者の別称であり、医師の仕事を手伝う職員として配置されます。
文書の作成やカルテの入力など、医師の仕事内容の中で、医師以外が処理可能な専門性の高い業務を担当します。
医療クラークがやってはいけない業務内容がありますので、必ず確認し、トラブルにならないように注意してください。