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分割調剤とは?目的や流れからメリット・注意点まで解説

日常で目にする機会の少ない分割調剤。「分割調剤をするメリットってあるのか」「何のためにやるのか」といった疑問を抱えている方はいるでしょう。

 

本記事では、分割調剤の概要や取り入れるメリット、注意点などについて解説していきます。

 

分割調剤に触れる機会がある医師や薬剤師の方は、ぜひ参考にしてみてください。

分割調剤とは医師の指示で最大3回に分けて処方すること

分割調剤とは、主に医師からの指示を受けて本来1回で処方する薬剤を最大3回分に分けて処方する方法です。

 

この方法は、主に長期的な保存に向いていない薬剤を処方する際や患者自身による薬剤の保存が難しいと判断された際などに用いられます。

薬剤師は指示を受けて分割調剤を行いますが、医師がなぜそう判断したのかを把握しておかなければなりません。

分割調剤とリフィル処方箋との違い

リフィル処方箋とは分割調剤と異なり、一定期間内であれば1枚の処方箋で最大3回まで同じ薬剤を処方してもらえる処方箋です。

 

一般的に慢性疾患などを抱えている患者に対して、病状が安定していて同じ薬剤を長期的に処方できると医師が判断した場合に発行されます。リフィル処方箋を利用することで、病院で診療を受けずとも薬剤がもらえます。それにより、薬を受け取るためだけの通院を減らすことが可能となり、患者への身体的・経済的負担を抑えられます。

 

このように分割調剤は、本来1回で処方する薬剤を最大3回分に分けて処方する方法なのに対し、リフィル処方箋は1枚で最大3回まで薬剤を受け取れる処方箋であるという違いがあります。

分割調剤の流れ|3つのケース別

ここでは、以下3つのケース別に分割調剤が行われる流れを解説していきます。

  1. 医師からの指示による分割調剤
  2. 患者自身での長期保存が困難
  3. ジェネリック医薬品をお試しする時の分割投与の場合

ケース1.医師からの指示による分割調剤

  1. 医師から「分割指示に関わる処方箋」という紙が発行される。分割する回数によって2枚もしくは3枚の処方箋が発行される。
  2. 患者から「分割指示に関わる処方箋」と最大3枚の処方箋を全て受け取る。
  3. 医師からの指示に従って、1回目の処方を行う。2回目以降の処方箋は、患者に一度返却した後、薬剤をもらいに来る度に持参してもらう。
  4. 2回目の処方の際、再度2回目以降の処方箋を全て受け取り、薬剤を処方する。3回目の処方箋がある場合は、3回目の処方箋を返却し次回再度持参してもらう。
  5. 2回目以降の処方の後には、分割指示を出した医師に服薬情報等提供書などを作成し、情報提供をする。

ケース2.患者自身での長期保存が困難

  1. 患者からの処方箋を受け付けた際に、処方医に確認し14日分を超える薬剤を患者自身で保存ができないと判断した場合に、分割調剤を行う。
  2. 処方箋に、調剤済みにならなかった分の薬剤情報や分割理由などを記述した上で、患者に一度返却する。その際、調剤録もしくは薬歴に必要事項を記述しておく。
  3. 最大3回の処方の後、全て調剤済みになったところで処方箋を回収する。

ケース3.ジェネリック医薬品をお試しする時の分割投与の場合

  1. 患者からの処方箋を受け付けた際に、処方医に確認した後、患者本人の希望があれば分割調剤を行う。
  2. 2以降の流れは、ケース2と同様

分割調剤を行う場合は、どのケースかに関わらず同じ薬局で行うことを進めてください。患者の希望やどうしようもない事情があり、薬局を変える場合は変更先の薬局と情報共有しなければなりません。

 

参照:厚生労働省 「保険調剤の理解のために(平成30年度)」

分割調剤をスタートした目的

2016年に診療報酬改定が行われたことで、それまで薬剤師の判断で行われていた分割調剤が医師の指示からでもできるようになりました。

 

現在のような仕組みになった背景には、以下の3つのような目的があるとされています。

  1. ポリファーマシーを予防するため
  2. 残薬や医療費を削減するため
  3. 服薬の管理をしやすくするため

ポリファーマシーを予防するため

ポリファーマシーとは、複数の薬剤を服用することで、副作用などの害を及ぼしてしまうことです。

 

多剤服用になることで、「薬剤の組み合わせが悪く十分に効果が発揮されない」「薬を飲み忘れる」「飲む薬を間違える」といったトラブルが生じやすくなります。

 

これらのポリファーマシーは、高齢者に多く見られており、問題視されています。加えて、必要ない薬剤を処方してしまうことにより、国民医療費が高額になりかねません。

 

そこで分割調剤を取り入れることで、薬剤師と患者がコミュニケーションを取る機会が増え、正確な服薬状況の把握が可能となります。また薬剤師と医師が連携し服薬情報を共有しておくことで、ポリファーマシーの予防につながるでしょう。

残薬や医療費を削減するため

服用されず長い間保存されている残薬や国民医療費の高額化は、深刻な問題です。

本来服用する必要のない種類の薬剤処方や過剰量の処方により、残薬や医療費の高額化が生じています。

 

分割調剤を行うことで、必要な分だけ薬剤を処方し、多剤服用による不必要な処方を防ぐことができます。適正な処方が可能になれば、残薬の発生を抑え、医療費の削減にも寄与するでしょう。

服薬の管理をしやすくするため

薬剤の中には、定期的に患者の状態や服薬状況を確認し、管理する必要がある種類もあります。

 

薬剤を正しく服用できているかはもちろん、吸入など専用のデバイスを用いて服用する薬剤の場合、デバイスを正しく扱えているかなどを確認する必要があります。

そういった場合に分割調剤の実施によって、定期的に服薬指導する機会が増えれば管理がしやすくなるでしょう。

分割調剤を取り入れるメリット

分割調剤を取り入れるメリットは、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 患者からアクションを起こしやすくなる
  2. より詳細に服薬管理ができる
  3. 副作用に対してすぐにリアクションできる

患者からアクションを起こしやすくなる

患者からアクションを起こしやすくなるのは、分割調剤を取り入れる大きなメリットです。

 

分割調剤では、複数回に分けて薬剤を処方します。そのため、一般的な処方箋より頻繁に薬剤師とコミュニケーションを取れます。

 

そういった機会は、患者自身が困っていることや薬剤を服用し始めてからの変化などを積極的に伝えられる場になるでしょう。

患者から聞いた情報を薬剤師と医師が把握できれば、今後の処方に活かせます。

 

このように治療を受ける患者からアクションを起こし、治療方針を決めていくことを「服薬アドヒアランス」といいます。分割調剤による患者とのコミュニケーションの増加は、服薬アドヒアランスの向上にもつながるでしょう。

より詳細に服薬管理ができる

分割調剤によって、より詳細な服薬管理が可能となります。

 

患者にとっては飲み慣れた薬だとしても、効果の出方は体調や季節、環境の変化により変わる場合があります。

複数回に分けて処方することで、そういった変化にもいち早く気づき、対応することができます。

 

また、突然の体調不良などで追加の処方が生じても、分割調剤であれば、臨機応変に服薬管理できるでしょう。

副作用に対してすぐにリアクションできる

分割調剤では薬剤の処方の際、患者の健康状態の変化についてカウンセリングし、医師に報告します。

 

薬剤が体に合わなかった場合や新薬を服用する場合などで副作用が出ても、定期的にカウンセリングをしておけば、すぐに対応できます。

分割調剤を取り入れる際の注意点

分割調剤を取り入れる際に注意しなければならないポイントは、以下の3つです。

  1. 安易に長期処方を推進しない
  2. 業務量や負担が増加する恐れがある
  3. 患者ファーストのスタッフが求められる

安易に長期処方を推進しない

2016年より、医師からの指示で分割調剤を実施できるようになりました。

それに伴い、長期処方の場合でも、医師は毎回の処方の度に患者の健康状態などを把握できます。

 

患者の状態を把握しておくことで、処方に活かせることは確かですが、安易に長期処方しないように注意が必要です。

業務量や負担が増加する恐れがある

分割調剤は、薬剤師の業務量や負担を増加させる恐れがあります。

 

分割調剤では、通常は1回の処方で済む業務を複数回に分けて処方しています。そのため調剤やカウンセリング、服薬指導、医師への報告など、さまざまな業務負担が分割回数分増加します。

 

また、患者から薬局を変更したいと申し出があった際には、変更先の薬局と情報共有する必要もあり、イレギュラーに業務が増える場合もあります。

分割調剤以外の業務との兼ね合いを考えると、薬剤師の負担が大きいことは明らかでしょう。

患者ファーストのスタッフが求められる

分割調剤を行っていくには、患者ファーストのスタッフが求められます。

 

分割調剤は、通常の処方より作業量が増加しスタッフの負担が大きくなる場合もあります。

 

そんな中でも、毎回の処方の度に患者からの声を聞き、服薬指導やカウンセリングを行わなければなりません。そのため、分割調剤を行うスタッフは、患者の健康状態を常に気にかけられる「患者ファースト」の心が求められます。

分割調剤の調剤報酬点数について

ここでは分割調剤の調剤報酬点数について解説していきます。

 

医師からの指示による分割調剤を例に見ていきましょう。

この場合の調剤報酬点数は、「調剤料」「調剤基本」「薬学管理料」の合計点数を分割する回数で割ることで、1回の処方ごとで算定します。

 

60日分の処方を20日で、全3回として分割するというケースだと次のような計算になります。

 

「調剤料+調剤料+薬学管理料※」÷3回=処方1回分の調剤報酬点数

※60日分

上記に加えて、別途「薬剤料」を1回の処方分(20日分)で算定します。

まとめ:分割調剤は患者ファーストで適切に進めよう

分割調剤には処方する側と患者側の両方に大きなメリットがあります。

 

しかし、むやみやたらに分割調剤を行ってしまうと、薬剤師への負担を増やしかねません。

 

分割調剤が必要な患者かどうかは、薬剤師と医師が連携し見極めつつ、適切に進めてください。