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クリニックの廃業率は増加している?閉院理由や従業員への対応について解説

次々に新規開業するクリニックがある一方で、廃業せざるを得ないクリニックが増えているとされています。

では、なぜクリニックの廃業率が増加しているのでしょうか。

本記事では、クリニックの廃業率が増加している理由について解説します。閉院理由廃業が与える影響についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

クリニックの廃業率は0.47%であるものの増加傾向にある

病院の廃業率が増えていることを表すグラフ

帝国データバンクの調査では、2021年のクリニック廃業率は約0.47%と報告されています。

休廃業や解散は567件あり、そのうち診療所(クリニック)は471件と過去最高です。0.47%という数字だけを見ると少ないように思えますが、実際は増加傾向にあります。

ただし、一般企業の廃業・倒産率が約1.4%であることと比較すれば、医療業界の廃業率は低いといえるでしょう。

参照:帝国データバンク|医療機関の休廃業・解散動向調査(2021年)
参照:厚生労働省|医療施設動態調査(令和3年10月末概数)
参照:中小企業庁|倒産の状況

クリニックの倒産数推移も増加傾向にある

感嘆符が書かれた木のブロックを積み上げ、クリニックの廃業率が増えていることを表している

帝国データバンクの報告によると、2021年のクリニックの倒産数推移も33件で前年比1.8倍と増加傾向にあります。

2020年は12件だったため、2019年の22件に対して倒産数は減少傾向にありました。2019年は、新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったようです。

翌年以降コロナ関連は減少しているものの、その他の理由で倒産や廃業に追い込まれるクリニックは増加傾向にあります。

参照:東京商工リサーチ|~ 2022年度(4-3月)の「診療所の倒産動向」調査 ~
参照:帝国データバンク|特別企画:医療機関の倒産動向調査(2021年)

クリニックの廃業で考えられる理由

考え事をする男性医師

それでは、クリニックの廃業で考えられる7つの理由を紹介します。

  1. 高齢化によって後継者がいない
  2. 医師の経営スキルが足りない
  3. 資金繰りがうまくいかない
  4. 立地条件が悪く集患につながらない
  5. エリアで周知されていない
  6. 人間関係でうまく噛み合わない
  7. <新型コロナウイルスの影響が大きくて対応できない/li>

高齢化によって後継者がいない

クリニックの廃業理由で最も多いのが、高齢化によって後継者がいないことが挙げられます。

厚生労働省がまとめた令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況では、クリニックで働く医師の年齢構成割合は次の通りです。

  • 29歳以下:0.3%
  • 30歳~39歳:4.7%
  • 40歳~49歳:17.0%
  • 50歳~59歳:26.6%
  • 60歳~69歳:29.7%
  • 70歳以上:21.8%
  • 平均年齢:60.2歳

参照:厚生労働省|令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況

上記を見ても、クリニックでは20代~40代の医師が少なく、60歳以上の医師が多いことが分かります。

創設者の高齢化により後継者が見つからなければ、クリニックの存続は困難でしょう。

医師の経営スキルが足りない

医師のスキルが足りないことも、クリニックの廃業率を高める理由と考えられます。

交通アクセス良好なエリアでは、競合が多く患者を獲得するための競争も激化するでしょう。

医師のスキルが足りなければ、患者を不安にさせる可能性があります。

他に選択肢があれば、患者は安心して通えるクリニックを選ぶため、患者数が減ったクリニックは廃業せざるを得ません。

資金繰りがうまくいかない

資金繰りがうまくいかないのも、クリニックの廃業につながる原因と考えられます。

資金繰りが悪化すれば、安定した経営はかないません。資金繰りに関しては、財務の知識も必要ですが、ない場合は税理士に相談するなどの工夫が必要です。

資金繰りがうまくいかなければ、廃業率は高まるでしょう。

立地条件が悪く集患につながらない

立地条件が悪ければ、集患にはつながりません。

立地条件はクリニック運営で重要なポイントですが、駅から近く交通アクセス良好なエリアであっても、競合が多ければ集患は困難でしょう。

また、診療科目によっても立地条件が影響してきます

例えば、小児科なのに周辺に高齢者が多ければ集患や増患は見込めません。

エリアで周知されていない

エリアで周知されていなければ、集患や増患は困難です。

原因は、開業時の宣伝力不足が考えられます。

エリアで周知されるには、ポスティングやホームページなどでの宣伝は欠かせません

人間関係でうまく噛み合わない

人間関係でうまく噛み合わないのも、クリニックの廃業率を高める原因のひとつです。

クリニック内の人間関係が悪化すれば、雰囲気も悪くなります。雰囲気の悪い職場では退職者が増えますし、ギスギスした雰囲気が患者に伝われば患者も離れていく恐れがあります。

人材不足を補うための採用活動では、コストもかかるでしょう。スタッフ教育をする間は生産性も低下します。

こうした悪循環で経営が立ち行かなくなれば、廃業に追い込まれてしまうでしょう。

新型コロナウイルスの影響が大きくて対応できない

新型コロナウイルスの影響が大きく、対応できないのもクリニックの廃業率を高める一因です。

患者が激減すれば赤字経営が続き、クリニックの存続が危ぶまれます。

しかし、クリニックによっては患者が激増しすぎて対応しきれないといったケースもあります。

本来、患者が増えるのは喜ばしいことですが、多すぎて激務が続けば退職や転職を考えるスタッフもいるでしょう。

プライベートの時間が持てないといった理由から、クリニックを閉鎖して勤務医に転職するケースも少なくないようです。

いずれにしろ、新型コロナウイルスの影響で対応しきれなければ、クリニックの存続は困難になります。

コロナウイルスは、実は現在も流行しているため、注意しなければいけません。

クリニックの廃業が与える影響

白衣姿の男性医師が腕を組み、病院が廃業する影響について考えている

では最後に、クリニックの廃業が与える影響について解説します。

  1. 廃業で大きなコストがかかる
  2. 従業員が解雇される
  3. 住人はかかりつけ医を失う
  4. 地域医療が損なわれる

廃業で大きなコストがかかる

クリニックの廃業には大きなコストがかかります。

  • 医療機器の処分費用
  • 建物の取り壊しや原状回復の費用
  • 医療用品や薬剤の処分費用
  • 従業員への退職金
  • 登記や法的な手続き

クリニックを廃業する際は、ざっと見積もっても数百万円かかります。

資金繰りが困難で廃業せざるを得なくなった場合や借入金残債の清算などがある場合は、廃業にかかる費用を捻出できない可能性もあるでしょう。

従業員が解雇される

クリニックを閉院するにあたって、従業員は解雇されます。

この場合、閉院の30日前までに解雇予告が義務付けられています

やむを得ない事情で解雇予告できない場合は、賃金の最低30日分かそれ以上の金額を支払わなければなりません。また、従業員の新しい勤務先の紹介も必要です。

住人はかかりつけ医を失う

クリニックに通う住人は、かかりつけ医を失います。

郊外でクリニックがないようなエリアでは、他のクリニックを探すのも困難です。

クリニックの廃業は、周辺住民や患者にも非常に大きな影響を与えます

地域医療が損なわれる

地域医療が損なわれるのも、クリニック廃業による懸念点です。

クリニックが保険や福祉などと連携していた場合は、地域住民の健康をサポートできなくなる恐れがあります。

特に高齢者が多く、医療と介護の連携が必須のエリアでは、地域医療が損なわれることによる影響は計り知れないでしょう

まとめ:クリニックの廃業リスク理解したうえで開業しよう

クリニックの廊下

クリニックの廃業率は増加傾向にありますが、廃業には大きなリスクが伴います

廃業に追い込まれないためにも、診療圏調査や物件探しなど、徹底した準備が欠かせません。

これから開業を目指しているのであれば、クリニックの廃業リスクを十分理解した上で検討してください。