レントゲンやCT・MRIは、外からでは見えない体内の状態を確認できるため、診断や治療に欠かせないものです。
しかし、医療用画像は法令により数年間の保管義務があるため、収納スペースや管理方法に悩むことも多いのではないでしょうか。
こうした課題の解決に役立つことから注目されるようになったのが「PACS」です。PACSは医用画像を電子化して保管するもので、収納スペースや管理の課題を解消できます。
とはいえ、PACSの導入にはコストがかかりますし、何を基準に選べばいいのか迷うという担当者もいるでしょう。
そこで本記事では、PACSのおすすめ10選を紹介します。選び方や導入するメリットも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
PACSとは?
PACS(Picture Archiving and Communication System)は、医療用画像管理システムのことを指します。医療用画像の新しい保存システムとして注目されています。
医療機関では、レントゲン・CT・MRIなどの医療機器を使って撮影した画像を検査や診断に使用します。
これらは医療用画像と呼ばれ、従来はフイルムや写真に印刷するなどして物理的に保管していました。これは、保管場所の確保や、探し出す際の手間などの問題に直面します。
そこで登場したPACSは、画像撮影装置からダイレクトに画像データを受信し、ネットワークを通じて電子化して保存します。
ネットワーク上で保管するため、いつでも、どこでも端末上でデータの確認が可能です。そのため、画像を院内ネットワーク上で共有しやすいことも特徴です。
PACSが重要視される理由
PACSが重要視されるのは、医療用画像を電子化し保存できるからです。
医療用画像には、患者さんの治療が終了してから数年間の保存義務があります。(医療法施行規則第二十条では2年間、保険医療機関及び保険医療養担当規則第九条では3年間、じん肺健康診断のレントゲンフィルムは事業者が7年間保存する義務があります)
検査や診察のたびに増えていく膨大な量の画像データを保存するには、保管スペースの確保が課題でした。また、過去の画像を探し出すのも一苦労でした。
院内で保管しきれない場合は、外部の倉庫を借りるか、外部の保管サービスの利用を検討しなければなりません。
PACSシステムを導入すれば、保管スペースの確保はサーバーだけとなります。さらに、院内ネットワークを通じて、いつでも医療現場の閲覧や共有が可能になります。
昨今では、医療現場でもデジタル化とネットワーク化が加速していますが、こうした背景もPACSの普及に影響していると考えていいでしょう。
PACSを導入する時に見ておくべきポイント5つ
PACSを導入する際は、以下に紹介する5つのポイントをチェックしてください。それぞれのポイントについて解説します。
- クラウド型かオンプレミス型か
- セキュリティの安全性は十分か
- サポート体制は充実しているか
- 既存システムとの連携が可能か
- 導入コストと予算がマッチしているか
クラウド型かオンプレミス型か
PACSを導入する際は、クラウド型かオンプレミス型かを確認しましょう。
クラウド型は、インターネット上にデータを保管するため、他施設とのデータ共有が可能です。院内ネットワークの構築が不要なため、導入コストをおさえられます。
ただし「システム利用料がかかる」「セキュリティ面でのリスクがある」点に留意しましょう。
オンプレミス型は、院内ネットワークを構築しネットワーク上でデータを保管します。クラウド型よりセキュリティ面でのリスクが低く、既存システムと連携しやすいのもメリットです。
ただし、院内のサーバー設置が必要ですので、ネットワークの構築には高い費用がかかります。またネットワークトラブル発生時の対応について、導入する企業との間で管理料がかかります。
クラウド型とオンプレミス型には、それぞれ良し悪しがありますので、自院に合ったタイプを選んでください。
セキュリティの安全性は十分か
セキュリティの安全性も確認してください。
オンプレミス型はクラウド型よりセキュリティリスクは低いものの、ノーリスクではありません。
院内ネットワークを利用していても、情報漏洩リスクがある以上、セキュリティの安全性はしっかりと確認しておくべきでしょう。各端末でUSBメモリやCDを認識しないように設定すること、外部から画像を取り込む際の端末を限定し、ウイルスチェックは必須です。
クラウド型のPACSを利用する場合は、セキュリティ対策が万全であるか、ウイルス感染した場合にどうするかという対策を確認してください。
サポート体制は充実しているか
PACSの導入にあたっては、サポート体制の確認も重要です。
画像を電子化しネットワーク上で保管するため、システムに不具合が生じれば画像の閲覧や共有ができなくなる恐れがあります。それが診療中だと業務に支障をきたします。
万が一、何らかのシステム不具合によりPACSが利用できなくなった場合は、どのような対応をしてもらえるのかは確認しておきましょう。病院の業務に支障がないよう、サポートは24時間365日対応していると安心です。
既存システムとの連携が可能か
既存システムとの連携が可能かも確認してください。
PACSと電子カルテを連携できれば、医療用画像を診察室や病棟で効率的に確認できます。
電子カルテとの連携ができない場合、レントゲンやCT画像などを確認するためのモニターを準備しなければなりません。
導入コストと予算がマッチしているか
PACSを購入する際は、コストと予算がマッチしているかを確認しましょう。
導入コストは、クラウド型かオンプレミス型かでも異なります。また、システムを提供する会社によっても料金プランは異なります。
自院の予算をオーバーすれば、継続的な利用が難しくなるでしょう。
導入前に予算にマッチしているかをしっかりと確認してください。
PACS(医療用画像管理システム)のおすすめ10選
それでは、PACSのおすすめ10選を紹介します。
- SYNAPSE|富士フイルム株式会社
- WATARU|株式会社スリーゼット
- C@RNACORE|富士フイルムメディカル
- Centricity PACS/Centricity Clinical Archive|GEヘルスケア・ジャパン
- LOOKREC|式会社エムネス
- RapideyeCore Grande|キャノンメディカルシステムズ株式会社
- NEOVISTA I-PACS SX|コニカミノルタジャパン
- Claio|株式会社ファインデックス
- クラウド PACS NOBORI|PSP株式会社
- XTREK SERVER|株式会社ジェイマックシステム
SYNAPSE|富士フイルム株式会社
運営会社 | 富士フイルム株式会社 |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 高速表示 ゼロフットプリント方式など |
料金 | 要問い合わせ |
SYNAPSEは、「サーバサイドレンダリング方式」を採用したクラウド型のPACSシステムです。
サーバサイドレンダリング方式とは、サーバー側で処理後の情報のみをクライアントに配信すること。これにより、画像表示の高速化を実現しました。
最新OSへの対応や最新ハードウェアアーキテクチャの導入など、常に最新技術を取り入れているのも特徴です。
運用規模が拡大した場合も、安価でアップデートできます。
WATARU|株式会社スリーゼット
運営会社 | 株式会社スリーゼット |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 電子カルテや複数モダリティとの連携 |
料金 | 要問い合わせ |
WATARUは、電子カルテや複数モダリティとのシームレスに連携できる、クラウド型のPACSシステムです。
画像データをクラウドに保存する際、CUBEに一次保存するので、オンプレミス型に引けを取らない画像閲覧スピードを実現しています。
東日本と西日本の2拠点で二重管理するため、災害時のデータ確保も万全です。
ニーズに合わせて、必要なソフトを厳選するため、コストをおさえたい医療機関に適しています。
C@RNACORE|富士フイルムメディカル
運営会社 | 富士フイルムメディカル |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 各種システムとの連携 モバイル対応 |
料金 | 要問い合わせ |
C@RNACOREは、クリニック向けのPACSシステムです。
シンプルながら多機能であり、モバイル端末からのアクセスも可能。各種モダリティとの連携が可能なため、さまざまな検査情報を一元管理できます。
あらゆる検査装置やデータ群との連携も可能なため、クリニックの業務効率化を図れるでしょう。
Centricity PACS/Centricity Clinical Archive|GEヘルスケア・ジャパン
運営会社 | GEヘルスケア・ジャパン |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 2D表示 3D解析 動画再生など |
料金 | 要問い合わせ |
Centricity PACS/Centricity Clinical Archiveは、システム内に複数の医療機関の画像データを集約できるシステムです。
総合病院のように、複数の科を持つ大規模病院でも、画像やデータを共有できます。
あらゆるデータに一元的なアクセスが可能なため、病院内はもちろんのこと各部門のサイロ化を防げるのもポイントです。
動画再生や3D画像再構成にも対応しており、クライアント側のリソースを消費しません。リソースが限られた環境にも適しています。
LOOKREC|株式会社エムネス
運営会社 | 株式会社エムネス |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 電子カルテ連携 画像保管 遠隔撮影 AI診断 ワンクリックで画像呼び出し 3Dビューアなど |
料金(税込) | 要問い合わせ |
LOOKRECは、クラウド型のPACSシステムです。
保存容量に応じた検査画像の保存ができ、導入費や更新費もかかりません。※CTやMRIがない医療機関でも、患者が持ち込む検査画像を保存しておけます。
ワンクリックで見たい画像を呼び出せるので、診察室や病室での説明も可能です。
コストをおさえたい小規模クリニックにも導入しやすいでしょう。
※導入時に訪問を伴う対応が必要な場合は、別途費用が発生するケースあり
RapideyeCore Grande|キャノンメディカルシステムズ株式会社
運営会社 | キャノンメディカルシステムズ株式会社 |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 遠隔読影 名寄せ機能 比較読影など |
料金 | 要問い合わせ |
RapideyeCore Grandeは、大学病院や専門病院を中心としたグループ医療機関向けのPACSシステムです。
離れた場所でも読影が可能で、シームレスな画像連携を可能にしています。
複数の医療機関を受診しており患者IDが異なる場合も、名寄せ機能により同一患者として認識が可能。各医療機関で撮影した画像を、比較読影できます。
NEOVISTA I-PACS SX|コニカミノルタジャパン
運営会社 | コニカミノルタジャパン |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | Bone Suppression処理 経時差分処理 整形計測機能 マンモ読影機能 レポート一体型PACS ブックマーク機能など |
料金 | 要問い合わせ |
NEOVISTA I-PACS SX は、独自のBone Suppression処理機能を搭載したPACSシステムです。
Bone Suppression処理機能とは、医師がイメージする鎖骨/肋骨の減弱像を可視化する画像処理技術のこと。
通常では確認しづらい病変の視認性が上がるので、多忙な医師の読影業務をサポートします。経時差分処理機能では、過去と現在の画像を比較し、変化を可視化できるのも注目したいポイントです。
他にも、コニカミノルタジャパンならではの高度な技術により、幅広い用途に活用できます。
Claio|株式会社ファインデックス
運営会社 | 株式会社ファインデックス |
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タイプ | オンプレミス型 |
主な機能 | データエクスポート DICOMキャプチャ DICOMコンバート 動画データ管理 手描き機能&シェーマテンプレート 画像サマリなど |
料金 | 要問い合わせ |
Claioは、オンプレミス型のPACSシステムです。
エコーや内視鏡など、DICOMモダリティでのデータ取り込みの他、非DICOMモダリティでも専用データ変換装置は必要ありません。(オプションの追加が必要)
さまざまな検査機器のデータを取り込める他、画像サマリ機能により、各診療科のデータも一元管理できます。
保存されたデータは、システム停止時も参照可能。電子カルテとの連携も可能です。
Claioは、耳鼻咽喉科や眼科での運用にも適しています。
クラウド PACS NOBORI|PSP株式会社
運営会社 | PSP株式会社 |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 患者データ共有 遠隔読影 モバイル対応 症例共有 障害自動検知など |
料金 | 要問い合わせ |
クラウド PACS NOBORIは、医療用画像データを安全に管理するシステムです。
クラウド型で懸念されるセキュリティリスクを、厚生労働省などのガイドラインに準拠した堅牢なセキュリティで対応します。
専用の「NOBORI-CUBE」で、病院に合わせてシステムを構築しますが、レンタル機器として提供するため初期投資ゼロを実現。SSDストレージの採用で耐障害性にも優れています。
充実した機能は、施設間連携にも役立つでしょう。
XTREK SERVER|株式会社ジェイマックシステム
運営会社 | 株式会社ジェイマックシステム |
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タイプ | クラウド型 |
主な機能 | 画像同期 計測・アノテーション 読影履歴の自動保存 内脂肪計測 肺気腫計測など |
料金(税込) | 初期費用:専用機器購入代金:220,000円(メイン/バックアップの2台ご購入分) 設置代行サービス:330,000円(オプション) 月額利用料:16,500円(データ保存容量無制限 保守サポート費用含む) 遠隔診断機能利用代金:1,100円(オプション読影料金は別途) |
ClimisクラウドPACSサービスは、新規開業医向けのクラウド型PACSサービスです。
低コストでの導入が可能で、直感的操作により誰でも簡単に操作できます。
画像ビューアや管理者ツールは、Webベースで開発されているため、インストールや更新は必要ありません。
導入前に試したい場合は、資料請求時にデモ用URLを教えてくれるので、使用予定の端末で確認できます。
PACSを導入するメリット
では最後に、PACSを導入することによるメリットを5つ紹介します。
- 業務効率化を図れる
- 地域医療の向上につながる
- ヒューマンエラーを回避できる
- 画像データの保存義務に対応できる
- 画像共有がスムーズになる
業務効率化を図れる
PACSの導入により業務の効率化を図れます。
従来の物理的な保管方法では、画像を探すのに時間と手間がかかっていましたが、PACSなら見たい画像を瞬時に見つけ表示できます。
画像撮影装置からPACSへデータを転送できるため、待ち時間の短縮につながるのもメリットです。検査や診察の待ち時間が大幅に短縮されれば、業務効率化にもつながるでしょう。
地域医療の向上につながる
PACSは地域医療の向上にもつながります。
地域の他医療機関もPACSを導入していれば、医療機関同士での画像共有やデータの参照が可能です。
例えば、自院で治療していた患者を他院に紹介する際、画像共有により再撮影の手間を省けます。遠隔画像診断も可能になるため、地域医療の向上にもつながるでしょう。
ヒューマンエラーを回避できる
PACSはヒューマンエラーを回避できるのもメリットです。
従来の物理的保管方法では、画像の取り違えや紛失のリスクがありました。
PACSは、患者IDと画像を紐づけ保管するので、ヒューマンエラーを回避できます。
画像データの保存義務に対応できる
PACSは画像データの保存義務にも対応できます。
前述の通り、法律により、医療用画像は数年間保存しなければなりません。
従来の保存方法では、保存スペースの確保が必要でしたが、PACSは電子化したデータをネットワーク上に保存します。
物理的なスペースがサーバーだけになり、永久的に保存できるのもメリットといえるでしょう。
画像共有がスムーズになる
PACSは画像共有がスムーズになります。
ネットワークにアクセスできる環境であれば、時間や場所を問わず画像を確認できるのがメリットです。
クラウド型のPACSなら、往診や遠隔診断などにも活用できるでしょう。
まとめ:PACSを導入して業務効率化を図ろう
医療現場のデジタル化やネットワーク化の普及に伴い、PACSの導入も増える傾向が見られます。
画像データの保管スペースが不要なだけでなく、画像保存義務にも対応できるのが特徴です。また、PACSは地域医療の向上につながるところも注目されています。
本記事を参考にしつつ、ぜひPACSを導入して業務の効率化を図ってください。