医療現場において、血液・体液・分泌物などの感染源から患者や医療従事者を守るために活用されるPPE。PPEは正しく着脱する必要があり、処置によっても使用するPPEは異なります。
そこでこの記事では、PPEの種類や正しい着脱方法について解説します。今後感染被害を起こさないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
PPEは医療従事者の安全を守るための防具
PPE(ピーピーイー)は「personal protective equipment」の略称であり、日本語訳すると「個人用保護具」です。
医療現場で働く医療従事者は、処置中に患者の湿生体物質(血液・体液・分泌物・嘔吐物・排泄物)などの感染源に触れることが多くあります。
PPEは、医療従事者および接する患者を、さまざまな感染のリスクから守る目的でも使用されています。
PPEの種類
それではPPEにはどのような種類があるのかを詳しく見ていきましょう。
- ゴーグル・フェイスシールド
- キャップ
- マスク
- 手袋
- ガウン・エプロン
- シューズカバー
ゴーグル・フェイスシールド
ゴーグル・フェイスシールドは、目元・口元や顔の汚染を防ぐためのものです。
無菌的処置を行う場合は、医療従事者の眼・鼻・口腔に付着している病原体やほこりなどから患者を守るために使用する場合もあります。
キャップ
キャップは、頭部の汚染を防ぐ目的で使用します。
無菌的処置を行う場合は、医療従事者の頭部に付着した病原体やホコリから患者を守るため、毛髪落下防止目的でも使用されます。
マスク
マスクは、飛沫感染予防目的で使用します。
医療現場ではサージカルマスクが採用されていますが、ウイルスの粒子が細かい場合はN95などの防塵マスクを使用するのが一般的です。
徹底した感染予防対策が必要な場合は、ゴーグル+マスク、マスク+フェイスシールドなど組み合わせて使用する場合もあります。
手袋
手袋は、手指を湿性生体物質による汚染から守る目的で使用します。
無菌領域では滅菌手袋を使用しますが、非滅菌・滅菌にかかわらず手袋は処置ごとに交換が必要です。
ガウン・エプロン
ガウン・エプロンは、医療現場の身体や衣服に湿性生体物質が付着するのを防ぐために使用します。
ガウン・エプロンには、綿・不織布・プラスチックなどが使用されています。
- 綿・不織布:通気性があるがバリア機能は低い
- プラスチック:通気性はないがバリア機能が高い
シューズカバー
シューズカバーは、靴に湿性生体物質が付着するのを防ぐために使用します。
例えば、無菌領域や清潔領域に入るときには、汚染を防ぐためにシューズカバーを着用しなければなりません。
PPEは処置によっても使用する種類が異なる
PPEは処置によっても使用する種類が異なります。
以下に、処置内容別の使用例をまとめました。
主な処置内容 | 使用するPPE |
---|---|
採血・血管確保 | 手袋 |
注射剤のミキシング | 手袋・マスク |
呼吸器症状がある患者の処置 | マスク |
接触予防策が必要な患者のケア | 手袋・ガウン |
環境整備 | 手袋・マスク・プラスチックエプロン・ガウン |
リネンの交換 | 手袋・マスク・ガウン |
注射剤・抗がん剤の無菌調製 | 手袋・マスク・ゴーグル・キャップ・ガウン |
おむつ交換・排泄介護 | 手袋・マスク・ゴーグル・ガウン・エプロン |
口腔・気管内吸引 口腔ケア |
手袋・マスク・ゴーグル・プラスチックエプロン |
医療器材の洗浄・消毒 | 手袋・マスク・ゴーグル・ガウン・キャップ |
それぞれ必要なものを把握して、スムーズに準備を進められるようにしておきましょう。
PPEの正しい着用手順7 ステップ
PPEは、正しい手順で着用しなければいけません。具体的な着用方法について、7ステップで紹介していきます。
- ステップ1:身だしなみを整える
- ステップ2:ガウン・エプロン
- ステップ3:シューズカバー
- ステップ4:マスク
- ステップ5:ゴーグル・フェイスシールド
- ステップ6:キャップ
- ステップ7:手袋
なお着用手順は、東京都庁のガウンタイプPPEの個人防護具着脱手順を参照していますので、ぜひ参考にしてください。
ステップ1:身だしなみを整える
まずは、身だしなみを整えましょう。
PPEを着用する前に石鹸で手指を洗い消毒液で消毒します。
手指消毒は、以下の順で行ってください。
- 指先
- 手のひら
- 手の甲
- 指の間
- 親指
- 手首
手指の消毒はとても大切な工程ですので、入念に消毒液を擦り込みましょう。
また、時計や指輪、医療用PHSなどを身につけているなら外してください。髪が長いのであれば、ピンやゴムできちんと束ねましょう。
ステップ2:ガウン・エプロン
ガウンは首にかけてから袖を通し、最後に腰紐を後ろで結びます。
紐を後ろで結ぶのが難しい場合は、邪魔にならないのであればサイドで結んでもOKです。
ステップ3:シューズカバー
短いシューズカバーは、ゴムの部分を手で広げながら靴全体を覆うように装着しましょう。
丈が長く紐で結ぶタイプは、ズボンの裾を中に入れ解けないようしっかりと紐を結びます。
立ったままでの装着が難しい場合は、イスを用意しておきましょう。
ステップ4:マスク
マスクを装着する前に、もう一度手指を消毒しましょう。
マスクの表裏と上下を確認したらゴム紐を耳にかけます。
ノーズピースを鼻に合わせたら、プリーツを広げて顎の下までしっかりとカバーしましょう。
N95マスクを装着する場合は、上部のゴムは頭の上側、下部のゴムは首の後ろにかけクロスしないようにするのがポイントです。
ステップ5:ゴーグル・フェイスシールド
ゴーグル・フェイスシールドを着用する際は、先にマスクを装着しておきましょう。
ゴーグルは目の部分を、フェイスシールドは顔を覆うように装着します。
ゴーグルもフェイスシールドも、予め自分の頭に合わせてサイズを調節しておくとスムーズに装着できます。
ステップ6:キャップ
キャップをかぶる際は、髪の毛が出ていないか姿見で確認するか、他の誰かに確認してもらいましょう。
キャップを広げて頭にかぶったら、髪の毛が出ないよう全体をしっかりと覆います。
ステップ7:手袋
手袋は一番最後に着用します。
インナー手袋とアウター手袋を使う場合は、インナー手袋はガウンの中に、アウター手袋はガウンの袖口を手袋の中に入れ込みます。
最後に全てのPPEを正しく着用できているか確認しましょう。
PPEの正しい脱衣手順6ステップ
PPEは脱衣時も正しい手順があります。そこで正しい脱衣手順について6ステップで解説していきます。
- ステップ1:手袋
- ステップ2:ガウン・エプロン
- ステップ3:シューズカバー
- ステップ4:キャップ
- ステップ5:ゴーグル・フェイスシールド
- ステップ6:マスク
なお、ガウン・エプロンはプラスチック素材の使用を前提としていますのでご注意ください。
ステップ1:手袋
脱衣の手順は手袋から行いますが、PPEの脱衣では二次感染のリスクがあります。
予め準汚染区域・通過区域を決めておき、医療廃棄物容器・脱衣シートを準備しましょう。
手袋を外す前に消毒液で消毒します。
アウター手袋の手首の部分をつまみ中表になるよう丸めながら外し、もう片方も同じように外したら丸めて廃棄しましょう。
このときインナー手袋はまだ外さずに付けておきます。
ステップ2:ガウン・エプロン
ガウン・エプロンは、首紐を引っ張りながら外し表面に触れないようにしながら裾部分から上部をくるむようにまとめます。
小さくまとめたら、腰紐を引っ張り外して表面に触れないよう処分しましょう。
ステップ3:シューズカバー
次にシューズカバーを外しますが、外した方の足は汚染区域を踏まないよう注意しながら、通過区域に出しておきます。
もう片方のシューズカバーを外したら、通過区域に移動します。
シューズカバーも中表になるよう、丸めて表面に触れないよう処分しましょう。
ステップ4:キャップ
キャップを外す前に、ここでもう一度手指を消毒してください。
キャップの内側に指をかけ、ゆっくり広げ髪や顔に触れないよう注意しながら外し中表に丸めてから処分します。
ステップ5:ゴーグル・フェイスシールド
ゴーグル・フェイスシールドを外す前に、アウター手袋と同じ手順でインナー手袋を外しましょう。
手指消毒をしてから、ゴーグル・フェイスシールドを外します。
ステップ6:マスク
マスクを外す際は、耳にかけたゴム紐を持ちながら外し、外側に触れないよう2つに折って処分します。
N95マスクは、首にかけた下部のゴムを先に外してから上部のゴムを外しましょう。
外側に触れないよう注意しながら2つに折って処分します。
全てのPPEを脱ぎ終わったら、廃棄袋の空気を抜かないよう口を閉じ処分してください。
最後に手指の消毒をして完了です。
まとめ:PPEの意味と正しい着脱方法を理解しよう!
今回はPPEの意味や正しい使い方・着脱方法などを解説しました。
PPEは医療現場において、医療従事者や患者を守るための防具ですが、正しい着脱方法を実践しないと感染リスクを高めかねません。
PPEの正しい着脱方法を理解し、感染経路の遮断に有効な手段として活用しましょう。