運営:東京ドクターズ

開業のための
Web集患戦略

開業医のための経営支援メディア
『ウェブドクター』

歯科口腔保健の推進に関する法律とは?内容をわかりやすく解説

「歯科口腔保健の推進に関する法律」をご存知ですか?
国民が口腔の健康維持を推進するための法律であり、2011年に制定されています。
そんな「歯科口腔保健の推進に関する法律」では、どのような内容が記載され、どのような取り組みがなされているのでしょうか?
今回は、「歯科口腔保健の推進に関する法律」の概要や取り組みについて、厚生労働省のデータを参照しながら解説します。

歯科口腔保健の推進に関する法律とは?

まず、「歯科口腔保健の推進に関する法律」がどのような法律なのかを確認しましょう。
「歯科口腔保健の推進に関する法律」の概要や基本理念について解説します。

歯科口腔保健の推進に関する法律とは?

「歯科口腔保健の推進に関する法律」は、2011年8月に公布・施行された法律です。
口腔の健康は日常生活を送る上で非常に大切であり、特に日頃の予防活動が口腔の健康には重要です。
すなわち、国民が健康に暮らすためには口腔の健康を保たなければなりません。
そこで、国が口腔の健康を保つための施策を推進し、国民が健康的な生活を送れるようにすることが目的となっています。

歯科口腔保健の推進に関する法律の基本理念

「歯科口腔保健の推進に関する法律」では、第2条には以下の3つの基本理念が書かれています。

一 国民が、生涯にわたって日常生活において歯科疾患の予防に向けた取組を行うとともに、歯科疾患を早期に発見し、早期に治療を受けることを促進すること。
二 乳幼児期から高齢期までのそれぞれの時期における口腔とその機能の状態及び歯科疾患の特性に応じて、適切かつ効果的に歯科口腔保健を推進すること。
三 保健、医療、社会福祉、労働衛生、教育その他の関連施策の有機的な連携を図りつつ、その関係者の協力を得て、総合的に歯科口腔保健を推進すること。

(引用:「歯科口腔保健の推進に関する法律」第2条

これらの基本理念に基づき、国民の健康的な生活を後押しすると理解しておきましょう。

歯科口腔保健の推進に関する基本的事項について

「歯科口腔保健の推進に関する法律」第12条では、法律の内容を実施するために基本的事項を定めるとされています。
ここでは、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項がどのようなものか、中間評価報告、最終評価に向けた取り組みについても解説します。

歯科口腔保健の推進に関する基本的事項とは?

歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」が定められている「歯科口腔保健の推進に関する法律」第12条の条文は以下の通りです。

第十二条 厚生労働大臣は、第七条から前条までの規定により講ぜられる施策につき、それらの総合的な実施のための方針、目標、計画その他の基本的事項を定めるものとする。

(引用:「歯科口腔保健の推進に関する法律」第12条

これによれば、基本的事項には、国民が口腔の健康を通して健康的な生活を送るために、どのような施策を実行していくのか、その方針や目標、計画などが含まれます。
なお、基本的事項に書かれる目標・計画は、以下の5つの観点に沿って決められています。
1)口腔の健康の保持・増進に関する健康格差の縮小
2)歯科疾患の予防
3)生活の質の向上に向けた口腔機能の維持・向上
4)定期的に歯科検診又は歯科医療を受けることが困難な者に対する歯科口腔保健
5)歯科口腔保健を推進するために必要な社会環境の整備
これらは10年をめどに達成していくものとされ、半分経過した5年で中間評価報告、10年経過した際には最終評価報告をすると定められています。

そこで、2011年の法制定以来、どのような取り組みが行われてきたのかを見ていきましょう。

歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の中間評価報告

ここでは、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の中間評価報告について解説します。
先ほど紹介した5つの領域に対して、19の項目が置かれています。
それぞれの項目は、a1、a2、b、c、dの5段階で評価され、改善しているか否かの判断がなされます。
それぞれの評価は以下の通りです。

評価 項目
a1:改善しており、目標を達成している ・中学生・高校生における歯肉に炎症所見を有する者の割合の減少
・60歳で24歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加
・80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加
・3歳児でう蝕がない者の割合が80%以上である都道府県の増加
・12歳児の一人平均う歯数が1.0歯未満である都道府県の増加
・歯科口腔保健の推進に関する条例を制定している都道府県の増加
a2:改善しているが、目標を達成していない ・12歳児でう蝕のない者の割合の増加
・20歳代における歯肉に炎症所見を有する者の割合の減少
・40歳の未処置歯を有する者の割合の減少
・40歳で喪失歯のない者の割合の増加
・60歳の未処置歯を有する者の割合の減少
・介護老人福祉施設及び介護老人保健施設での定期的な歯科検診実施率の増加
・過去1年間に歯科検診を受診した者の割合の増加
b:変わらない ・3歳児で不正咬合等が認められる者の割合の減少
・60歳代における咀嚼良好者の割合の増加
・ 障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施率の増加
c:悪化している ・40 歳代における進行した歯周炎を有する者の割合の減少
・60歳代における進行した歯周炎を有する者の割合の減少
d:設定した指標又は把握方法が異なるため評価困難 ーーー

改善していると判断された項目はおよそ2/3にあたる13項目あります。
中でも、6の項目は改善しているだけでなく目標も達成されている状況です。
一方、歯周炎を有する人の割合や障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施率は、改善するどころかむしろ悪化しています。
多くの項目で改善していることから口腔の健康格差は縮小していると考えられるでしょう。
しかし、課題も明らかになったため、継続的な支援策の実施が必要となります。

(参考:歯科口腔保健の推進に関する専門委員会『「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」中間評価報告書』

歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の最終評価に向けた取り組み

法制定から10年、中間評価報告から5年が経過したため、最終評価も行われました。
2022年8月現在、報告書の案が取りまとめられています。
今回は、A、B、C、D、Eの5段階で評価されました。
それぞれの評価は以下の通りです。

評価 項目
A:改善しており、目標を達成している ・12歳児でう蝕のない者の割合の増加
・20歳代における歯肉に炎症所見を有する者の割合の減少
B:改善しているが、目標を達成していない ・3歳児でう蝕のない者の割合の増加
・障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施率の増加
・介護老人福祉施設及び介護老人保健施設での定期的な歯科検診実施率の増加(※)
・3歳児でう蝕がない者の割合が80%以上である都道府県の増加(※)
・12歳児の一人平均う歯数が1.0歯未満である都道府県の増加
・歯科口腔保健の推進に関する条例を制定している都道府県の増加
C:変わらない ・60歳代における咀嚼良好者の割合の増加
D:悪化している ・3歳児で不正咬合等が認められる者の割合の減少
E:評価困難 ・中学生・高校生における歯肉に炎症所見を有する者の割合の減少
・40歳代における進行した歯周炎を有する者の割合の減少
・40歳の未処置歯を有する者の割合の減少
・40歳で喪失歯のない者の割合の増加
・60歳の未処置歯を有する者の割合の減少
・60歳代における進行した歯周炎を有する者の割合の減少
・60歳で24歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加(※)
・80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合の増加(※)
・過去1年間に歯科検診を受診した者の割合の増加(※)

(※)中間評価時点で目標を達成したため、目標値を再設定した項目

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、調査が中止となりデータが取れなかったため、19項目中9項目は評価困難と判断されました。
約半数が評価困難であるため、全体像を把握することは困難です。
しかし、評価が行われた10項目では8項目が改善していると評価されたことから、全体として改善傾向にあることが見込まれます。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により状況が変化した項目もあることから、今後も継続的にデータを分析していくことが求められます。

(参考:歯科口腔保健の推進に関する基本的事項 最終評価報告書(案)(令和4年8月3日暫定版)

まとめ

今回は、歯科口腔保健の推進に関する法律について解説しました。
国民が健康的な生活を送れるように、国が口腔の健康を保つための施策を推進することが求められる本法律では、さまざまな取り組みが行われています。
新型コロナウイルスの感染拡大により、評価できない項目が多くありましたが、全体的には改善傾向に向かっていると判断できます。
今後も、新型コロナウイルスによる行動変容も考慮しつつ、長期的なデータ分析を続けていくことになるでしょう。