勤め人のメンタルヘルス向上や職場環境の改善を目的とした「ストレスチェック制度」。常時使用する従業員が50人以上の企業においては法的義務を伴うため、該当する勤め人への適切な施行が求められます。
ただ、対象となる範囲は複雑な点も多く、具体的に誰が検査対象なのか、初めて実施する企業は手探り状態かもしれません。
そこでこの記事では、ストレスチェックを施行する際の対象範囲についてわかりやすく解説します。チェックを担当する方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
ストレスチェックの検査対象者とは?
ストレスチェックは、常時勤務者が50人以上の企業において施行義務があると、法律で定められています。
チェックの検査対象者は、国の定める基準に基づき、以下の条件を満たす勤労者が対象となります。
【契約形態に関する条件】
・期間の定めのない労働契約で雇用されている者
・期間の定めがある労働契約の場合、契約期間が1年以上、または更新により1年以上使用されることが予定されている者、もしくは1年以上継続して使用されている者
【勤務時間に関する条件】
・週の勤務時間が同じ事業場内で通常の勤務者の週所定勤務時間の4分の3以上である者
参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」
ストレスチェックの具体的な対象者の範囲
ここからは、ストレスチェックにおいて具体的に誰が検査対象になるのか見ていきましょう。
雇用形態別の具体例は、以下となります。
- 正社員
- 契約社員
- パート・アルバイト
- 派遣社員
- 退職予定者
- 外国人労働者
- 入社直後の勤労者
正社員
正社員は、基本的に全員がチェックの対象です。正社員はフルタイム勤務の特性上、自動的に対象に含まれます。
契約社員
契約社員がチェックの対象となるかは「雇用期間」と「勤務時間」で判断されます。
契約期間の定めがある契約社員は、当初の契約期間または更新により1年以上の勤務が確定している場合に対象となります。
1週間の勤務時間数が、通常勤労者(正社員)の4分の3以上であるのが原則条件です。
ただし、継続的な雇用実態がある場合、2分の1以上ほどの勤務時間であっても対象にするのが推奨されます。
パート・アルバイト
パートやアルバイトの労働形態であっても、勤務時間や契約期間が条件を満たす場合は、チェックの対象となります。
前述のとおり、契約期間が1年以上で、1週間の勤務時間数が通常勤労者の4分の3以上であるとチェックの対象です。
派遣社員
派遣社員も、契約期間(1年以上)や週の勤務時間(通常勤労者の4分の3以上)の条件を満たしている人物はチェックの対象になります。
ただし、施行義務があるのは派遣先ではなく派遣元です。
派遣社員のチェックは派遣元企業が主導し、派遣先企業の協力を得て実施されます。
派遣元が法制度に則って施行し、派遣先が職場環境データを提供する双方向連携が必須です。
退職予定者
退職予定者は、チェック施行時点で在籍していれば検査対象となります。
外国人労働者
在留資格を問わず、条件に当てはまる外国人労働者にもチェックを行う義務があります。
日本語に不慣れな海外出身の勤労者が検査する際は、多言語対応した調査票の使用が必須です。
厚生労働省の公式サイトでは、外国人労働者向けに、多言語版の調査票や案内文書が公開されています。
外国人労働者がチェックの質問内容を正確に理解できるよう、翻訳ツールや通訳者を活用するのもよいでしょう。
入社直後の勤労者
入社して間もない勤労者の場合、雇用形態や契約期間によって対象に入るかどうかが異なります。国が定める契約期間や勤務時間を確認して判断しましょう。
ストレスチェックは「1年以内ごとに1回」施行が義務付けられており、新入社員も入社後1年以内に1回検査する必要があります。
うつ病・メンタル不調などで治療を受けている勤労者
うつ病といったメンタル不調で治療中の勤労者もチェックの対象です。
ただし、チェックの「施行」に法的義務はあっても、「受検」は勤労者に義務づけられていません。
検査がメンタル治療中の勤労者にとって負担になるケースもあるため、受検を強制しないように注意してください。
海外勤務者
海外勤務者のチェック対象については、雇用関係の所在によって明確に区分されます。
日本の企業に在籍し、海外に赴任・出張している場合は、チェックを施行しなければなりません。というのも、勤務地が海外であっても雇用契約が日本の企業と結ばれているため、日本の法律が適用されるからです。
海外の現地企業に直接雇用されている場合は、日本の法律の適用外となり、チェックを施行する義務はありません。
ストレスチェックの対象外者例
以下に該当する場合は、ストレスチェックを施行する義務がありません。
- 役員
- 休職している勤労者
- 勤務時間が短いパート・アルバイト
- 短期契約の従業員
なぜ対象外なのか、その理由も含めて見ていきましょう。
役員
役員の区分は労働者ではなく使用者に当てはまるため、法的な義務対象には含まれません。
法令上は施行義務がありませんが、役員も含めてチェックを実施すると企業全体の勤務環境を分析しやすくなります。そのため、役員も検査するのが望ましいでしょう。
休職している勤労者
チェックを施行している期間に、病気や育休などの理由で休職中の勤労者については、対象外となります。
勤務時間が短いパート・アルバイト
パートやアルバイトの方は、所定勤務時間が通常勤労者の4分の3未満であればチェック対象外です。
短期契約の従業員
契約期間が1年未満の場合は、チェックの対象外となります。
対象者がストレスチェックを受けるかは任意
常時勤務者が50人以上の企業については、対象者へのストレスチェック施行が義務となっています。
ただし、務め人の受検に関しては任意であり、義務ではありません。
また、ストレスチェックの検査強要は、法律で禁止されています。就業規則で義務付けたり、拒否者に懲戒処分を科したりなどは違法になります。
個人のメンタルヘルス情報は極めてセンシティブな性質を持つため、強要ではなく「本人の気付きを促す」という制度趣旨に沿った運用が不可欠です。
実施する企業側は受検の「強要」ではなく「促進」する仕組みづくりが求められます。
まとめ:ストレスチェックを対象者に施行して勤務環境の改善に努めよう
ストレスチェックは、勤務者が50人以上の企業には施行が義務づけられており、検査対象の範囲も定められています。
チェックの対象判定では「雇用期間」と「勤務時間」の両基準を厳密に適用するのがポイントです。
国のガイドラインや本記事を参考に、チェックを対象となる勤労者へ施行して、職場環境の改善に努めましょう。