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医療AIとは?現状や課題・メリット・デメリット・事例を紹介

近年、AI技術は著しく発展し、こうした人工知能が医療現場をサポートする機会も増えてきました。

AIの導入は、現代医療の進歩に大きな影響があり、診断や治療の工程に革命をもたらすと期待されています。

一方で、AIに任せて問題はないのか、どのように活用していくのかなど、不安を抱える医療関係者も少なくないでしょう。

そこで本記事では、医療AIの現状やメリットとデメリット、今後の可能性について解説します。医療現場でAI導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

医療AIとは?

文字Aのコンピュータ生成画像

医療AIとは、人工知能(AI)技術を医療分野に応用したものです。

AI技術を活用し、医療分野における課題を抽出・解決して医療の質を向上させるべく、さまざまな取り組みがされています。

機械学習や深層学習、自然言語処理、画像認識などの技術が利用されており、医療現場のサポートを担っています。

医療AIの現状

ピンクの背景の前で触れ合う両手

近年、AI技術を医療に活用する機会は増えています。

たとえば、大腸ポリープを瞬時に発見する内視鏡AIや、がんのリンパ節への転移を見つける病理AIなど、高度な技術を誇る医療AIの導入が進んでいます。

政府も、医療分野におけるAIの開発や利用を推進しており、2019年には「AI戦略2019」を策定しました。医療分野におけるAI実装を目標に掲げ、データ集積とシステム構築を進めています。

さらに、2022年に策定した「AI戦略2022」では、深層学習を重点分野に定めてさらなるAI技術の発展を目指しています。

しかし、8割の医療機関はAI医療機器が未導入と、ほとんど普及していないのが現状です。 これは、承認審査に時間がかかるうえ、AI医療機器に対する保険適用が進んでいない点が影響しています。

ただ、2022年12月にAI医療機器を用いた診断が公的保険に適用されたため、今後はさらに導入が進んでいくと予測されます。

医療現場でAIを活用する5つのメリット

赤ちゃんを抱いている人

医療の現場でAIを活用する主なメリットは、以下の5つが挙げられます。

  1. 業務の効率化ができる
  2. 医師・看護師の負担軽減につながる
  3. 医療の精度と質が向上する
  4. 地域の医療格差を解決できる
  5. 24時間対応可能な体制づくりができる

それぞれのメリットについて詳しくみていきましょう。

業務の効率化ができる

業務効率化を実現できるのが、医療AIを活用する最大のメリットです。

たとえば、来院する患者の電子カルテ情報抽出や、X線やMRIなどの医療画像の解析業務をAIが自動で処理すれば、作業にかかる工数を削減できます。

その結果、医師や看護師など医療従事者の業務効率化につながります。

医師・看護師の負担軽減につながる

近年、医療現場の人材不足が深刻化している状況は続いています。

医療AIが医療従事者の自動化できるタスクに対応できると、その分医師や看護師の負担が軽減されます。

業務の負担軽減によって、医師や看護師はより集中して他の業務に専念できるのも大きなメリットです。

医療の精度と質が向上する

高精度化したAIを導入すれば、医師が見つけにくい微かな異常も検出できるため、医療の精度と質の向上が期待できます。

医療AIは豊富な医学データをもとに、精度の高い情報を即座に提供し、医師の診断をサポートします。

AIの精度を高めたうえで医療現場に導入すれば、重篤な症状を見落とす医療ミス防止にもつながるでしょう。

地域の医療格差を解決できる

地域によって医療スタッフの数に差があり、地方では医師が足りず、医療崩壊するケースも珍しくありません。

医療AIを活用すれば、現地に医師がいない地域とデータをやり取りして診断できるようになり、医療格差の解消につながります。

24時間対応可能な体制づくりができる

医療AIは人間とは違い24時間365日、時間を問わずいつでも稼働できます。そのため、非常事態や緊急のケースにも対応できるのも大きな利点です。

AIの活用は医師・看護師の負担を軽減し、より良い医療サービスの提供を実現が可能です。医療現場にAIを導入すると、スタッフの働き方改革を推進し、医療の質の向上が図れます。

たとえば、24時間患者をモニタリングできるAIを導入すれば、患者の体調の変化をすぐに察知できます。患者の安全を守りやすくなり、医療スタッフの負担軽減にも役立つでしょう。

また、患者の問い合わせに自動で24時間対応する、クリニック特化型AIチャットボットも開発されています。このAIチャットボットを活用すると、時間のかかる電話対応から解放され、医師は診療に専念できるのがメリットです。また、遠隔地の患者とのやりとりもAIがサポートするので、場所を問わず医療サービスを提供できます。

このように、24時間対応可能な医療体制は、AIの活用によって実現可能です。

医療現場でAIを活用する5つの課題やデメリット・注意点

黒いフレームの眼鏡をかけた青いドレスシャツの男

さまざまなメリットがある一方で、医療AIにあるデメリットにも注意しなければなりません。医療AIを活用する際には、デメリットについても理解を深めておきましょう。

  1. 患者のプライバシー保護が重要になる
  2. 医師による最終的な判断が求められる
  3. 信頼性の担保が難しい
  4. 導入・維持コストがかかる
  5. 故障・障害のリスクがある

患者のプライバシー保護が重要になる

医療AIを導入すると、患者の名前や住所、受診履歴など個人情報がオンラインで取り扱われます。そのため、厳重にセキュリティ対策をして患者のプライバシーを保護するのが重要です。

情報漏洩が起こらないよう、データへアクセスできるメンバーを制限したり、データの保管期間を明確にしたりといった工夫が必要になります。

医師による最終的な判断が求められる

医療AIは、膨大なデータからパターンを抽出し、適切なアドバイスを提供します。

しかし、医療AIが下した判断だけで診療を進めるのは危険です。AIだけに判断を任せてしまうと、未学習の症例には対応できず、医療ミスを引き起こす可能性もあります。

そこで最終的な判断は、専門知識を持った医師が行ってください。AIは、あくまでも補助ツールとして活用するという認識を持っておきましょう。

信頼性の担保が難しい

AIの診断結果は、アルゴリズムや検証データに左右されます。データが不十分だった場合、診断結果にエラーが含まれるケースもあるので注意が必要です。

また、AIにはブラックボックス問題があります。これは、AIの思考プロセスは人間には分からないという問題です。

意思決定のプロセスが不透明な以上、信頼性の担保が難しいといえます。今後、AIの透明性を引き上げる研究は必須でしょう。

導入・維持コストがかかる

医療AIの導入や維持には、高度な技術や専門知識が必要なため、高額なコストが発生します。

また、AI技術は常に進化しているため、維持だけではなくバージョンアップも必要です。

特に、小規模な医療機関にとって、医療AIの導入・維持コストは大きな負担となる可能性があります。

故障・障害のリスクがある

医療AIは、故障や障害が発生するリスクがゼロではありません。システム侵害やハッキングをはじめ、アップデート後に互換性がなくなるといったトラブルもあります。

そのため、システムの修復方法を学んだり、医療AIがなくても対応ができる体制を整えたりしておくのが重要です。

医療現場におけるAIの活用事例

茶色い壁の近くの白いロボット

すでに医療現場ではAIが活用され始めています。ここからは、いくつかの活用事例を紹介します。

  1. AI画像診断
  2. AIオンライン診断
  3. AI処方
  4. 医療器具へのAI搭載
  5. 医薬品開発
  6. 手術支援

AI画像診断

医療AIは、レントゲンやMRIなどの画像解析において高い精度を発揮するのが特徴です。

具体的には、AIと画像認識を組み合わせて早期のがんを発見するといった事例が挙げられます。

参考:【プレスリリース】人工知能で胃がんを発見する! -AIを活用した内視鏡画像診断支援システムの開発-|お知らせ|がん研有明病院

がん以外でも、レントゲン写真での肺炎検出や皮膚病変の分類、心筋梗塞の診断においても、医療AIの能力は各専門医と同等であるという報告もあります。

膨大な医療データを学習しているAIだからこそ、画像から小さな異常にも気がつけるのです。

AIオンライン診断

最近では、AIを活用したオンライン診断システムも登場しています。AIが搭載されたカメラ機器が患者の状態を自動分析し、AIの診断結果をもとに医師が治療をする手段です。

感染症の患者や移動が難しく病院に行けない患者でも、オンライン上で治療を受けられるのがメリットです。

AI処方

AIは、医薬品の処方にも役立てられています。AI処方では、患者の体重や体調だけでなく、複数施設の服用履歴データから、より細かく適切な処方を実現できます。

一日に多くの患者を診る医師や薬剤師は、一人ひとりへの細かい対応が難しいかもしれません。

AIの活用で、瞬時に処方データを解析できれば、処方にかかる時間や労力を大幅に短縮できます。

医療器具へのAI搭載

AIを医療器具に組み込む施策も積極的に行われています。特に技術が進んでいるのが、心電図モニターや医療カメラ、注射へのAI搭載です。

いずれのケースも医師の施術の助けになるのはもちろん、患者の異常を検知するのにも役立ちます。

医薬品開発

医薬品の開発には、研究から認可まで長い年月を要するのが一般的です。新たに効果のある薬を生み出すのは容易ではありません。

既存のデータをAIが学習することによって、時間とコストを軽減した医薬品開発が可能になります。

AIを活用してデータを効率的に収集・集約できれば、疾患の理解が進み、採算の都合で研究が進みにくかった分野の医薬品も進展が望めるかもしれません。

手術支援

AIが手術中の医師の助手を務めるシステムが国内で実用段階に入っています。

AIが内視鏡の映像をリアルタイムで解析し、手術の対象となる部位を示すため、医師の負担軽減につながります。

医療AIにおける今後はどうなる?

屋内に立つ女性

今後、医療現場においては、AIの活用はますます進むと予測されます。

AIの開発は世界中で実施されており、その発展は加速度的に進んでいるため、この先医療AIは人間と遜色ない診断や処方ができる可能性もあります。

AIが人と同じ業務がこなせれば、医療現場での人材不足や医療費増加といった問題の解消にもつながるでしょう。

ただし、医療現場において、AIから出力される情報がすべてではありません。AIが導き出した情報を利用して、どれだけ適切な医療を提供できるかが重要です。

まとめ:医療AIの活用は病院・クリニックにメリットが大きい

コンピューターで作業している男性

医療AIの活用は病院やクリニックにとってメリットが多く、今後、医療AIの可能性はさらに拡大すると予想されます。

しかし、医療AIがどれだけ普及しても、治療の最終的な決定権は人間にあります。

医療スタッフが効率を上げられるツールとして医療AIが存在すると認識しておきましょう。