「薬局のレセプト業務は、具体的にどのようなことをするのだろう……」
「薬局のレセプト業務の流れを知りたい……」
このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
薬局はレセプト業務を行う必要があり、適当に対応してしまうと診療報酬が支払われません。薬局の収益に影響が出るため、レセプト業務は慎重に行う必要があります。
そこで本記事では、薬局のレセプト業務について解説します。
薬局がレセプト業務を行う際のコツや具体的な流れを含めて紹介しているので、参考にしてみてください。
この記事の内容
薬局のレセプト業務とは?
薬局のレセプト業務は、保険薬局が患者に調剤を行った際に、健康保険や国民保険から薬剤費または調剤料を請求するために行う事務処理です。
薬局は、基本的に医師の処方箋に基づいて調剤を行い、薬剤料や技術料などを算定します。
調剤報酬明細書(レセプト)を作成し、請求内容に誤りがないか点検を行い、社会保険診療報酬支払基金や国保連合会に提出する作業が主なレセプト業務です。
提出されたレセプトに問題がなければ、調剤報酬が支払基金や国保連合会から支払われます。
薬局の収益に影響が出る業務になるため、レセプト業務は重要な業務といえるでしょう。
薬局の主なレセプト業務
薬局のレセプト業務は、主に5つあります。
- 処方箋受付・入力
- 調剤報酬点数の算定
- レセプトデータの作成
- レセプト点検・請求
- 返戻・査定対応
それぞれの業務について解説します。
処方箋受付・入力
処方箋受付や入力は、薬局のレセプト業務の一つです。患者から処方箋を受け取り、薬局システム(レセコン)に情報を入力します。
具体例を挙げると、患者の氏名や生年月日、保険証情報を入力します。
ほかにも、処方箋に記載された薬剤名や規格・用量・日数などをレセプトに記載する業務がレセプト業務です。
ただし、保険証の期限切れや入力ミスがあると、請求却下の返戻対象になるため、注意する必要があります。
調剤報酬点数の算定
薬局のレセプト業務として、調剤報酬点数の算定も挙げられます。処方箋に基づいて調剤を行った後、算定ルールに従って報酬点数を計算します。
たとえば、調剤基本料や調剤料、薬学管理料などを算定ルールに従って計算する作業がレセプト業務です。
算定できる条件を満たしていないのにレセプトに記載して請求すると、査定となって減額されます。
レセプトデータの作成
薬局は、1か月分の調剤内容をまとめ、支払基金や国保連合会などの保険者に提出するデータ「レセプト」を作る必要があります。
具体的な内容として、患者ごとの診療報酬明細や、保険者ごとに仕分けを行います。
ただし、レセプトデータは誤りがあると請求不可として返戻を受け、修正を行って再提出することが必要です。
また、月末締めで作成し、翌月の10日前後までに提出する必要がある点も把握しておきましょう。
レセプト点検・請求
作成したレセプトに誤りがないかチェックして、支払基金・国保連合会に提出するレセプト点検や請求は、業務内容の一つです。
たとえば、投薬日数が処方日数と一致しているか、同じ日に2つの薬学管理料など算定されている重複算定が行われていないかなどを確認します。
レセプトにミスがあると、請求不可として返戻や、減額の査定を受ける可能性があります。
そのため、レセプト点検や請求は慎重に行うことが必要です。
返戻・査定対応
返戻・査定対応は、レセプト業務の重要な業務内容です。
作成して提出したレセプトに入力ミスや不備がある場合は、請求不可として返戻または減額の査定を受けます。
具体例を挙げると、保険証番号の入力に誤りがあったり、公費の併用ルールに違反していたりすると、返戻を受けるため注意しましょう。
返戻を受けたレセプトは不備を修正し、再提出して問題がなければ調剤報酬を支払ってもらえます。
薬局のレセプト業務の締め日と提出期限
薬局のレセプトは、一般的には月末で締めます。
1か月分の調剤内容を月末で締めた後、提出期限が翌月の10日になるため、間に合うように提出することが必要です。
提出期限が土日・祝日の場合は、翌営業日が締め切りになります。
なお、提出期限を過ぎてしまったときは、月遅れ請求として翌月に提出し、問題がなければ薬剤報酬を支払ってもらうことが可能です。
薬局がレセプト業務を行う際のコツ
薬局がレセプト業務を行う際のコツは、主に6つあります。
- 処方箋入力はその場で正確に入力する
- 作業を小分けにして集中的に行う
- 病名と薬剤の紐づけを意識する
- 加算・体制加算を漏らさない
- 公費・自己負担割合の二重確認を行う
- 診療報酬改定情報は早めにキャッチアップ
それぞれのコツについて解説します。
処方箋入力はその場で正確に入力する
薬局のレセプト業務を行う際には、処方箋入力をその場で正確に入力しましょう。
処方箋を受け取った際に、入力を後回しにしてしまうと、時間が経ったときに思い出せず、レセプトが誤った内容になる可能性があります。
たとえば、アムロジピン錠5mgを1日1回28日分の内容で、5mgを誤って10mgと入力してしまった場合、後から修正すると他のデータとズレやすいです。
その場で入力・チェックを行うことで、後から見直す手間やミスを防げます。
作業を小分けにして集中的に行う
レセプト業務を行うコツとして、作業を小分けにして、集中的に行いましょう。
一度にまとめてやると、入力漏れやチェックミスが起きてしまう可能性があります。
たとえば、毎日午前中に前日の処方箋を入力、午後に点検を行うなどの作業を区切ると、集中して行いやすいです。
月末にまとめて処理すると、ミスに気づいたときに訂正に間に合わないこともあるため、小分けにして処理を行うようにしましょう。
病名と薬剤の紐づけを意識する
薬局のレセプト業務を行うコツとして、病名と薬剤の紐づけを意識しましょう。レセプトでは、処方薬と傷病名が対応している必要があります。
具体例を挙げると、糖尿病治療薬のメトホルミンを処方した際には、病名「糖尿病」の記載が必要です。
ほかにも、高血圧治療薬の「アムロジピン」の場合は、病名「高血圧症」と紐づける必要があります。
病名の記載がないと、査定で減額される可能性があるため、病名と薬剤の紐づけは徹底するようにしましょう。
加算・体制加算を漏らさない
レセプト業務のコツとして、加算や体制加算は漏らさないようにしましょう。体制加算とは、地域支援体制加算を指し、地域医療に貢献する薬局を評価する制度です。
具体的には、夜間休日対応や在宅薬剤管理、後発品調剤割合など多岐にわたる実績と体制が評価されます。
ほかにも、患者がかかりつけ薬剤師に同意した場合は、かかりつけ薬剤師指導料の算定が可能です。
患者の対応や薬局の体制によって加算できる算定があるため、漏らさないようにレセプトに加えましょう。
公費・自己負担割合の二重確認を行う
公費・自己負担割合の二重確認を行うことも、レセプト業務を行うコツです。保険証情報や公費負担の有無、自己負担割合を間違ってしまうと、返戻に直結します。
具体例を挙げると、難病や母子医療などの公費を入力し忘れて全額保険請求していると、保険者から返戻を受けます。
加えて、保険証を更新したのに旧保険で請求してしまうという状態も返戻によくある原因です。
公費や自己負担割合、保険証の情報を含めて、二重確認を行いミスがない状態を目指しましょう。
診療報酬改定情報は早めにキャッチアップ
診療報酬の改定は2年ごとに行われ、薬剤料や加算ルールが変更されます。
たとえば、調剤基本料の施設基準が変わった際に、届け出が必要なので、気づかないと算定が受け付けてもらえない可能性があります。
日本薬剤師会や厚生労働省の通知、レセコンの更新情報を早めに確認すると良いでしょう。
薬局のレセプト業務の流れ
薬局のレセプト業務は、主に7つの流れで進みます。
- 調剤・服薬指導
- 調剤報酬の入力
- レセプトデータ作成
- レセプトの点検・修正
- レセプト提出
- 返戻・査定対応
- 請求・入金確認
それぞれの流れについて解説します。
STEP.1:調剤・服薬指導
薬局のレセプト業務では、まず処方箋に基づいた薬を調剤し、患者への服薬指導を行います。
具体例を挙げると、高血圧症の患者に対して、アムロジピン5mgを1日1回28日分に分包して渡す際に、血圧を測りながら毎日同じ時間に飲むように指導します。
服薬指導や調剤などの業務がそのままレセプト請求の基礎データとなるため、ミスがないように対応しましょう。
STEP.2:調剤報酬の入力
調剤や服薬指導が終わった後は、処方箋情報や調剤内容をレセコンに入力します。
レセコンに入力した際に、調剤報酬を算定しましょう。
たとえば、新規患者の場合は、服薬情報等提供料を算定します。
調剤報酬の入力を行う際のポイントは、病名との紐づけや加算の算定漏れがないようにすることです。
STEP.3:レセプトデータ作成
調剤報酬の入力が終わった後は、患者・保険者ごとに診療報酬明細書のレセプトを作成していきます。
薬局がレセプトを作成する際には、社会保険や国民保険、公費など保険者別に仕分けることが必要です。
また、レセプトデータに不備があると返戻の対象になるため、作業を行う際には集中できる時間を確保したうえで業務を行うと良いでしょう。
STEP.4:レセプトの点検・修正
レセプトデータを作成した後は、レセプトの点検・修正を行います。
作成したレセプトに誤りや算定ルール違反があると、返戻や査定の対象になります。
点検を怠ると返戻や査定になり、入金遅延や減額につながるので、ダブルチェック体制を整えて点検・修正を行うのがおすすめです。
STEP.5:レセプト提出
レセプトの点検や修正を行い、問題がないと判断できる場合は、支払基金や国保連合会などにレセプトの提出を行います。
レセプトの提出期限は、毎月10日までとなっているため、提出期限に間に合うように対応しましょう。
締切をすぎると、遅延請求扱いで、入金が遅れる場合があります。
STEP.6:返戻・査定対応
レセプトを支払基金や国保連合会に提出し、審査で不備やルール違反が見つかった場合は、返戻や査定が発生します。
たとえば、保険証番号の入力ミスがある場合は、訂正して再提出する必要があります。
また、算定条件を満たさない加算を請求しているときは、減額される可能性があるため、注意しましょう。
返戻は再提出で対応可能ですが、査定は基本的に諦めるしかないので、細心の注意を払う必要があります。
STEP.7:請求・入金確認
支払基金や国保連合会にレセプトを提出し、問題がなければ指定した銀行口座に調剤報酬が振り込まれます。
入金された調剤報酬を確認し、薬局の会計に反映させるようにしましょう。
9月分の請求を行ったときは、11月下旬頃に入金されるため、診療月の約2か月後に入金があるとイメージするとわかりやすいです。
薬局のレセプト業務でよくある質問
薬局のレセプト業務でよくある質問は、主に3つあります。
- レセプトが返戻される理由は何がありますか?
- 後発薬に変更した場合、レセプトにどのように書きますか?
- 処方日数が変わった場合はどうすれば良いですか?
それぞれの質問について回答しています。
レセプトが返戻される理由は何がありますか?
レセプトが返戻される主な理由は、以下の4つが挙げられます。
- 保険証情報の誤り
- 公費の入力漏れ・誤り
- 処方内容と入力の不一致
- 算定ルール違反
たとえば、保険証の記号・番号の入力ミスを行ってしまうと、該当保険者なしとして返戻を受けます。
また、小児医療証を持っているのに、公費を入力し忘れてしまった場合は、公費併用不備として返戻を受けやすいです。
返戻は修正して再請求できるため、早めに原因を確認して対応することが重要です。
後発薬に変更した場合、レセプトにどのように書きますか?
処方箋が先発薬だったものの、薬局で患者同意を得て後発薬に変更した場合は、レセプトには実際に調剤した後発薬を記載します。
具体例を挙げると、処方箋にアムロジン錠5mg 1日1回28日分と記載されている場合に後発薬に変更したときは、アムロジピン錠5mg(後発薬)×28日分とレセプトに記載します。
レセプトは実際に調剤した薬を正しく記載することが原則となっているため、後発薬に変更した際には、先発薬ではなく後発薬を記載しましょう。
また、必要に応じて後発医薬品調剤体制加算を算定するのがおすすめです。
処方日数が変わった場合はどうすれば良いですか?
処方箋記載と実際の調剤日数が異なる場合は、実際に調剤した日数分を記載します。
たとえば、処方箋にアムロジピン錠 1日1回30日分と記載されているものの、患者に旅行の都合で28日分だけほしいと希望された場合は、28日分を調剤し、レセプトにも同日付を記載します。
処方箋通り30日分と記載することはできず、必要に応じて処方変更理由を薬歴やコメント欄に記載しましょう。
ただし、医師の処方変更が必要なケースでは、必ず処方箋訂正や再発行を行う必要があります。
レセプトは、実際に調剤・交付した内容を記載することが重要です。
まとめ:薬局のレセプト業務は作業を小分けにして集中的に行おう!
薬局のレセプト業務は、小分けにして集中的に行うことがコツです。
また、実際に調剤・交付した内容をレセプトに記載することが重要で、誤りがあると返戻や査定の対象になります。
返戻を受けると内容を確認して修正・再度提出を行う手間が増えるため、作成・点検を行う際には慎重に行うのがおすすめです。
とくに、ダブルチェック体制を整え、余裕を持ったスケジュール管理で進めると返戻や査定を減らせるでしょう。
薬局のレセプト業務が気になっている方は、本記事を参考にしながら進めてみてください。