2024年12月より従来の健康保険証の新規発行が廃止され、マイナ保険証へと移行します。
しかし、現在のマイナ保険証の利用率は15.67%※と低迷しており、マイナ保険証に対して懸念を持つ方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、マイナ保険証のデメリットについて詳しく解説し、クリニック運営者が知っておくべき課題やメリットについても解説します。クリニックの運営をスムーズにするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
【患者側】マイナ保険証のデメリット
マイナ保険証はどのようなデメリットがあるのでしょうか。
まずは、患者側にもたらすマイナ保険証のデメリットを3つ解説します。
- 顔認証付きカードリーダーの操作がうまくできない
- 有効期限切れのマイナンバーカードでは使用できない
- 個人情報漏洩のリスクがある
顔認証付きカードリーダーの操作がうまくできない
マイナ保険証を利用する際、顔認証付きカードリーダーを使用する必要がありますが、操作に慣れていない患者にとっては戸惑うこともあるでしょう。
特に高齢者やデジタル機器に不慣れな方にとって、マイナ保険証を正しく設置する方法や、顔認証がうまくいかない場合があり、煩わしさを感じる可能性があります。
このような状況では、患者・クリニック双方にとって、時間的にも精神的にも負担となるでしょう。
有効期限切れのマイナンバーカードでは使用できない
マイナンバーカードには有効期限が設定されており、期限が切れるとマイナ保険証として利用できません。
そのため患者自身で有効期限を確認し、有効期限内に更新手続きを行う必要があります。
しかし、日々の忙しさや確認不足で更新を忘れるケースも少なくないでしょう。
有効期限の管理や更新手続きへの煩雑さがデメリットにつながります。
個人情報漏洩のリスクがある
マイナンバーカードには個人情報が多く含まれているため、紛失や盗難による個人情報漏洩のリスクが懸念されています。
特にマイナ保険証として利用する場合、診療情報や薬剤情報などのプライバシーに関わるデータが流出する可能性に不安を感じる方も多いでしょう。
ただしマイナンバーカードは、顔写真や暗証番号による本人確認が必要なため、なりすましが困難な仕組みになっています。また、ICチップには保険証情報や医療情報は記録されておらず、不正使用への安全対策が施されているのです。※
とはいえ、セキュリティ対策を万全にするに越したことはありません。患者には利用時の注意事項をしっかりと説明しましょう。
※疑問も不安も解消! 医療機関や薬局でマイナンバーカードを健康保険証として使おう|厚生労働省
【クリニック側】マイナ保険証のデメリット
次に、マイナ保険証がもたらすクリニック側のデメリットを3つ解説します。
- 顔認証付きカードリーダーに不具合が生じる場合がある
- 患者への対応の負担
- 導入コストがかかる
顔認証付きカードリーダーに不具合が生じる場合がある
マイナ保険証を運用するには顔認証付きカードリーダーが必要ですが、精密機器であるため不具合が生じる場合があります。
マイナンバーカードの読み取りエラーや、うまく顔認証ができないなどの不具合が生じると、保険資格確認作業が滞ってしまい、患者に迷惑をかけてしまいます。
不具合が発生すると、修理や再設定に時間がかかるため、クリニック運営そのものに影響を及ぼしかねません。
万が一のために、対応フローを準備しておく必要があるでしょう。
患者への対応の負担
マイナ保険証を初めて利用する患者や、顔認証付きカードリーダーの操作に不慣れな患者には、クリニックスタッフが丁寧に説明し、サポートする必要があります。
導入当初は対応に時間がかかるため、忙しい診療時間中は他の業務の妨げになる可能性があるでしょう。
また、マイナ保険証の利用方法や登録状況をめぐり、患者との間で誤解やトラブルが発生することも考えられるため、適切な対応力が求められます。
導入コストがかかる
マイナ保険証の運用には、顔認証付きカードリーダーやシステムの導入が必要です。
システムを導入するには初期費用だけでなく、メンテナンスや更新にかかる運営コストも継続的に必要となります。
小規模のクリニックにとっては、導入コストが財務的な負担となり、導入をためらう要因にもなるでしょう。
コスト負担を軽減するために、助成制度を活用することをおすすめします。
【患者側】マイナ保険証のメリット
マイナ保険証にはデメリットばかりではなく、私たちにとってたくさんのメリットがあります。
ここからは、マイナ保険証を利用することで得られる患者側のメリットを3つ解説します。
- 質の良い医療が受けられる
- 医療費控除が簡単になる
- 高額医療費の限度額を超える支払いが不要になる
質の良い医療が受けられる
マイナ保険証を利用すれば、データに基づく質の良い医療を受けることが可能です。
マイナ保険証を利用する際、患者が薬剤情報や特定健診結果の提供に同意すれば、患者の医療履歴や投薬情報がデジタルで一元管理されます。
これにより医療機関間でスムーズに情報が共有されるため、より的確な診療が受けられるのです。
医療費控除が簡単になる
確定申告時に必要な医療費控除の手続きも、マイナ保険証を使えば大幅に簡略化できます。
1年分の医療費の領収書を保管しておかなくても、マイナポータルとe-Taxを連携させることで、医療費データが自動的に取り込まれるため入力の手間が省けます。
確定申告にかかる時間と労力が削減され、さらに正確性も上がるため大きなメリットと言えるでしょう。
高額医療費の限度額を超える支払いが不要になる
マイナ保険証を利用すれば、高額医療費が発生する場合でも、限度額を超える一時的な支払いが不要になります。
従来は限度額を超える医療費を患者が一旦支払い、後日払い戻しを申請する必要がありましたが、マイナ保険証では事前の手続きなしに限度額内での支払いに収めることが可能です。
大きな医療費がかかる場合でも、患者の金銭的負担が軽減される仕組みとなっています。
【クリニック側】マイナ保険証のメリット
続いて、マイナ保険証の利用で得られるクリニック側のメリットを3つ解説します。
- 受付業務の負担が軽減する
- レセプト業務を効率化できる
- 患者情報を閲覧できる
受付業務の負担が軽減する
マイナ保険証の導入により、健康保険証情報の入力や確認を手動で行う必要がなくなります。
患者自身がマイナ保険証を顔認証付きカードリーダーにかざすだけで必要な情報が自動で取り込まれるため、受付での負担が大幅に軽減されるでしょう。
また、自動化することで手作業によるミスのリスクも減らせるため、受付業務の正確性も向上します。
レセプト業務を効率化できる
マイナ保険証の導入により、患者の資格情報をオンラインで正確に確認できるため、保険証の資格過誤が発生しにくくなります。
そのため、レセプトの返戻件数が大幅に減少し、修正や再提出にかかる手間が削減されるのです。
資格確認が迅速化されることは、保険資格の誤りに伴うトラブルを未然に防ぎ、レセプト業務の効率化につながります。
患者情報を閲覧できる
マイナ保険証を利用することで、患者の医療履歴や投薬情報をデータ上で閲覧できるようになります。
他院での処方薬や過去の診療内容を把握できるため、適切な診療が可能となります。
患者が薬の名前や過去の治療歴を正確に覚えていない場合でもデータ上で確認でき、質の良い医療を提供できる点が大きなメリットです。
クリニックがマイナ保険証の課題解決のためにできること
マイナ保険証の利用を進めるためには、デメリットとされる課題を解決する必要があります。
ここでは、クリニックがマイナ保険証の課題解決のためにできることを3つ紹介します。
ぜひ参考にしてみてください。
- スタッフ間で情報を共有する
- 患者への説明を丁寧に行う
- マイナ保険証を保有していない場合は「資格確認書」で対応する
スタッフ間で情報を共有する
マイナ保険証の導入当初はさまざまなトラブルが見込まれるため、スタッフ間で情報を共有する必要があります。
たとえば、顔認証付きカードリーダーに不具合が出た時や、マイナ保険証を導入するにあたって患者からクレームが出た場合など、スタッフそれぞれが同様に対応できるようマニュアルや対応フローを準備しておくとよいでしょう。
スタッフの対応が統一されることで、トラブルへの対応が迅速化され、クリニックに対する患者からの信頼度も向上するでしょう。
患者への説明を丁寧に行う
患者の中には、マイナ保険証についてよく知らない方も多くいるため、説明を丁寧に行うことが求められます。
先述したように、マイナ保険証は患者にとってもメリットがたくさんあります。
メリットをしっかりと伝えることで患者の不安や懸念が取り払われ、マイナ保険証の導入がスムーズになるでしょう。
マイナ保険証を保有していない場合は「資格確認書」で対応する
マイナ保険証に切り替えていない方や、マイナンバーカード自体をまだ作成していない方でも「資格確認書」を利用すれば保険診療が可能です。
2024年12月以降も「資格確認書」があれば保険適用になるため、あまり不安に思う必要はありません。
ただし「資格確認書」はあくまでも一時的な手段です。今後もマイナ保険証への移行を促す説明や呼びかけを継続的に行いましょう。
まとめ:マイナ保険証をうまく活用して質の高い医療を提供しよう!
「マイナ保険証」と検索すると「デメリットだらけ」などのネガティブな意見を目にすることもありますが、実際には多くのメリットがあります。
マイナ保険証を導入することで、患者にもクリニックにも多くの利点をもたらし、医療サービスの質向上につながります。
ぜひマイナ保険証を活用し、クリニック運営の成功に役立てていきましょう。