クリニックを開業するためには、資金調達や物件の選定、スタッフの採用などやるべきことが数多くあるため、綿密なスケジュール管理が欠かせません。
クリニック開業までの全体的なスケジュールをあらかじめ把握しておくと、スムーズな開業が実現できます。
そこで本記事では、クリニック開業の準備を進めていく際のスケジュールや手順を紹介します。開業に至るまでの流れを確認して、計画的にクリニック開業の準備を進めてください。
この記事の内容
クリニック開業に必要な準備の全体スケジュール
クリニックを開業する場合、準備期間が必要となります。クリニック開業までの全体的なスケジュールは以下の通りです。
- 事業計画の立案(~1年前)
- 土地選定(~10ヶ月前)
- 物件選定(~6ヶ月前)
- 保健所との協議(~6ヶ月前)
- 資金調達(~6ヶ月前)
- 機械・設備の準備(~6ヶ月前)
- スタッフ採用(~3ヶ月前)
- 行政手続き(~1ヶ月前)
- 開業
一般的に約1年半程度かかりますが、スケジュールは前後することも多いです。上記を目安として参考にしながら、余裕をもって準備を進めておくといいでしょう。
クリニック開業に必要な準備|12〜18か月前
クリニック開業にあたって、最初に取り組むべき内容は以下の3つです。
- クリニックが掲げるコンセプトの決定
- 開業までのスケジュール策定
- 事業計画の策定
クリニックが掲げるコンセプトの決定
まずはクリニックが掲げるコンセプトを決定しましょう。クリニックを開業する目的や、経営理念、診療方針などを策定します。
「患者のためにできることは何か」を念頭に置いて経営理念を定めるのが重要です。
開業までのスケジュール策定
開業予定日から逆算をして具体的なスケジュールを策定します。
クリニックを開業する際は、行政手続きが多いのが特徴です。手続きの申請期限には、十分気をつけてスケジュールを立ててください。
事業計画の策定
クリニックの開業を成功させるための事業計画を練ります。開業資金の調達方法や開業後の収支などの計画を策定します。
曖昧な内容の事業計画では開業後の資金繰りに苦労し、経営が難航する恐れがあります。安定した経営を叶えるためにも、現実的で無理のない計画を策定しましょう。
クリニック開業に必要な準備|7~12か月前
開業予定日の7か月前〜12か月前にやるべき準備は、以下の3つです。
- 開業地の選定
- 不動産の選定
- 資金調達
開業地の選定
開業地の選定は、自院の将来を大きく左右するものです。競合医院数や人口を調査して、患者の来院数が見込める場所から開業地を選択しましょう。
クリニック開業に適する立地について、具体的な例を紹介します。
診療圏内に競合が少ない | エリア内に同じ診療科が少なければ、自ずと患者に選ばれるクリニックになるため、開業に適した立地といえます。
あまりにも競合が多い場合は、集患が困難になる可能性が高いので避けるのが無難です。 |
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視認性が高く認知されやすい | クリニックの開業地として、視認性の高さも重要です。駅前や大通り、幹線沿いなどは目に入りやすく、クリニック開業に適しています。
また、テナントビルの場合は、2階以上の物件よりも1階にある物件のほうが認知されやすくおすすめです。 |
アクセス面が良好 | 電車やバスなどの公共交通機関でのアクセスがしやすい立地を選ぶと、より集患しやすくなります。
道路からクリニック敷地へ侵入しやすいかや横断歩道があるかなど、さまざまな側面からアクセス良好であるかを検証しましょう。 |
アクセスを阻害する要素が少ない | 大きな道路や線路などの要素はアクセスを阻害する原因となります。
アクセスを阻害する要素が少なく、患者が来院しやすい立地を選ぶのが理想です。 |
開業地について考えるにあたっては、「診療圏調査」を実施するケースがほとんどです。
診療圏調査とは、クリニックを開業する際に、開業予定地周辺の状況を調べ、対象となる患者数がどのくらい見込めるのかを推計するものです。
以下の記事では、診療圏調査の正しいやり方や設定する際のポイントを解説しています。診療圏調査に役立つおすすめのアプリも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
不動産の選定
開業エリアが決まったら、いよいよ不動産探しに入ります。
不動産は自分で探すわけではなく、不動産会社や開業コンサルタントなどに相談して、条件にあった物件を紹介してもらうケースがほとんどです。
家賃は継続して発生する固定経費のため、事業規模に合わない高額な賃貸契約にならないか慎重に検討しましょう。
資金調達
クリニックの開業には、物件や内装、医療機器など、多くのコストが必要です。その費用を自己資産で補えない場合は、金融機関の融資を受け、資金を調達することになります。
開業後の運転資金も視野に入れ、ある程度余裕をもった融資金額を申請しておくのがいいでしょう。
クリニック開業に必要な準備|4~6か月前
ここからは、開業準備の後半でやるべき準備を紹介します。
- 内装工事
- 医療機器の選定
内装工事
店舗の賃貸借契約が完了したら、クリニックの内装工事に入ります。
賃貸の場合は、物件のオーナーや管理会社にどの程度まで内装工事が行えるのか確認しておきましょう。
医院の内装工事では、建築基準法や消防法はもちろん、医療法を遵守する必要がある点にも注意が必要です。
医療機器の選定
医院で使用する医療機器を選定し、開業日までに導入できるよう手配します。
医療機器については、X線や内視鏡、MRIなどで自院の診療に必要なものを選ぶのが基本です。
また、電子カルテや自動精算機、セルフレジなど、業務効率が向上する医療機器も必要に応じて選定しましょう。
クリニック開業に必要な準備|1~3か月前
クリニック開業直前はやることが多いため、スケジューリングを綿密に行いましょう。
開業予定日の1か月前〜3か月前にやるべき準備は、以下の4つです。
- スタッフの採用
- 集客や広告による宣伝の準備
- 会計・税務
- 行政手続き
スタッフの採用
受付や診療をサポートしてくれる人材を募集します。
どのような人材が必要なのか条件を明確にし、自院に合ったスタッフを確保するようにしましょう。
開業前にはスタッフや看護師への研修も必要です。経営理念の共有や機器の操作方法、接遇マナーなどの研修を行い、開業に備えましょう。
集客や広告による宣伝の準備
開業当初は患者を確保するためにも、ホームページやSNSをはじめとした宣伝を積極的に行う必要があります。
ポスティングや看板などの宣伝方法もありますが、特にホームページは重要な集客方法のひとつです。
来院数を確実に増やすためには、マーケティングのノウハウが豊富なWeb制作会社にホームページ作成を依頼するといいでしょう。
会計・税務
医療系の納税には特殊な知識が必要になるので、正しく納税するためにも、税理士や公認会計士など専門家のサポートを受ける体制を整えておくと安心です。
医療機関の経営に対して有益なアドバイスを与えてくれる専門家を選ぶのがおすすめです。
自院の従業員数が多い場合は、労働のエキスパートである社労士との契約も検討してみましょう。
行政手続き
クリニック開業する際は、保健所に「診療所開設届」の提出が必要です。また、厚生局には「保険医療機関指定申請書」を提出します。
さらに、個人で事業を始める場合は税務署に「開業届」を届け出なければいけません。
その他にも、診療内容や使用する医療機器によって必要な提出物は異なります。提出期限を厳守して、各機関に書類を届け出ましょう。
クリニック開業準備において注意すべきポイント7つ
スムーズなクリニック開業を実現するためには、注意しておくべきポイントが多数あります。
特に押さえておくべきポイントは、以下の7つです。
- 開業資料は送付先を自宅にする
- スケジュール管理を徹底する
- 地域の医師会に挨拶へ行く
- 周辺医院をリサーチする
- 開業支援の活用を検討する
- 予算を超えた見積もりに気をつける
- 開業後に起こりうるトラブルを想定しておく
開業資料は送付先を自宅にする
クリニック開業の準備中には、不動産や医療機器にまつわるさまざまな資料が必要です。
在職中の職場に資料が送付された場合、上司や同僚の目に入って関係性が悪化する可能性もあるので注意してください。
退職まで周囲と人々と良好な関係を保つためにも、開業関連の資料は勤務先でなく自宅に送付してもらいましょう。
スケジュール管理を徹底する
クリニックを開業するためには、物件や医療機器の選定や行政への届出など、多くのアクションが必要になります。開業予定日から逆算して、具体的にスケジュールを立てるのが重要です。
スケジュール管理がしっかりしていないと、必要なステップが完了できていないまま開業日を迎えてしまいます。
トラブルによって作業が遅れる場合もあるので、万が一に備えて余裕をもった計画表を立案しましょう。
地域の医師会に挨拶へ行く
医師会に入会する予定の方は、事前に挨拶を済ませておきましょう。医師会へ入るためには審査があるため、事前に挨拶しておくとスムーズに入会しやすくなります。
なお、医師会の入会は義務ではありません。しかし、入会するメリットは多いため、クリニック開業時に医師会へ入会する方は多いです。
医師会に入会することで、検診や予防接種などの依頼が医師会からあるため、収益増加につながります。また、診療機会が増えることでクリニックの認知度アップも期待できるでしょう。
周辺医院をリサーチする
クリニック開業を成功させるためには、周辺医院のリサーチも欠かせません。
もし周辺に同じ分野のクリニックがひしめき合っていたら、集患に苦戦を強いられることになります。
クリニックを開業する際には、競合となる医療機関が少ないエリアを選ぶようにしましょう。
開業支援の活用を検討する
クリニックを開業するためには、数多くの手続きが必要となります。また、建築基準法や消防法など遵守しなければならない法律も多い点に注意してください。
そこでスムーズに開業を進めるには、知識や実績が豊富な開業支援コンサルタントを活用するといいでしょう。
開業に関する手続きはもちろん、開業後のサポートも受けられることが多く、安定したクリニック経営が期待できます。
予算を超えた見積もりに気をつける
不動産や内装、医療機器を選ぶ際は、予算を超えた金額にならないように注意しましょう。
例えば、医療機器は各メーカーによって価格に差があります。性能や材質が同じ場合、安く手に入るものを選んで、少しでも出費を抑えましょう。
開業後に起こりうるトラブルを想定しておく
開業後にトラブルとなる主な原因は「お金」か「人間関係」です。
まず金銭面に関してですが、経営が軌道にのるまでに約1~2年かかるのが一般的であり、最初は利益が少ないのはよくあることです。
事業計画書通りに患者数が増えていなければ方策を練る必要はありますが、おおよそ3年で経営を軌道に乗せるのを目安にするといいでしょう。
また、スタッフ同士の揉め事は多くの医院で起こる、避けられないトラブルの代表格です。自然に解決するケースもありますが、最悪の場合はスタッフが次々と辞めてしまうといった事態も発生します。
日常的に院内の人間関係には目を配って、問題がありそうなら話を聞くといった早めの対処を心がけましょう。
まとめ:クリニック開業の準備を計画通りに進めて成功させよう
クリニックを開業する際には、不動産の選定や医療機器の導入、スタッフの確保など多くの準備が必要です。
準備不足によって開業が失敗してしまうリスクは避けるためにも、本記事で紹介した開業スケジュールを参考にして、計画的に開業準備を進めましょう。