クリニックを開業するにあたって、診察机や聴診器など、さまざまな備品を用意する必要があります。
クリニックの備品は、大型器具から事務用品まで種類の幅が広く数も多いため、早めに購入手続きを進めることが重要です。
しかし「具体的に何を用意すべき?」と備品選びに迷っているクリニックも多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、クリニックの開業時に無くてはならない備品をリスト化して紹介します。
備品を購入する際の注意点についても触れていますので、これからクリニックを開業する方は参考にしてみてください。
この記事の内容
クリニックにおける備品とは?消耗品との違いも解説
よく混同されがちな「備品」と「消耗品」ですが、この2つには税務上の取り扱いに違いがあります。
- 備品:金額が10万円以上、使用可能期間が1年以上
- 消耗品:金額が10万円未満、または使用可能期間が1年未満
トイレットペーパーやボールペンなど、使用するにつれて状態が変化し、本来の役割を果たせなくなるものが消耗品です。それ以外のものは備品に該当すると覚えておきましょう。
クリニック開業に必要な備品カテゴリ
必要な備品をもれなく揃えるためには、クリニックにおける基本的な備品カテゴリを押さえておくのが重要です。
ここからは、クリニック開業時に必須となる備品カテゴリを4つ紹介します。
- 医療機器・医療設備
- 家具・家電
- 大型事務用品
- 小型事務用品
医療機器・医療設備
医療機器や医療設備は、治療や診断に使用する道具全般を指します。
メスや医療用ハサミなどの小物製品から、人工呼吸器や血圧計などの中型機器、さらにX線検査装置やMRIなどの大型機器まで、医療で使用するアイテムの総称です。
小物製品であれば比較的早く手に入りますが、中型や大型の製品は納品に時間がかかります。そのため、中型や大型の機器はどの備品よりも優先して選定を行いましょう。
家具・家電
クリニックで使用する家具や家電は、待合室のソファやテレビ、バックヤードのデスクや椅子などが含まれます。
家具や家電などの備品はホームセンターや家電量販店など、一般向けの店舗でも購入可能です。
サイズの大きい家具については、物件決定後にスペースが明確になった時点で、配置できる大きさのものを選定しましょう。
大型事務用品
自動精算機やセルフレジなどがクリニックにおいて代表的な大型事務用品です。
近年クリニックでもデジタル化が急速に進んでおり、会計用の自動精算機やセルフレジなどの導入が増加しています。
このような機器はスタッフの会計業務負担を軽減できる一方、機能が多岐にわたるため、自院に適したものを選び出すのに時間を要する点には注意が必要です。
開業の半年前くらいから積極的な情報収集をして、慎重に選定しましょう。
小型事務用品
クリニックに必要な小型事務用品は、文房具やコピー用紙、クリアファイル、診察券などが挙げられます。また、医療衛生材料として白衣や看護服、ガーゼや包帯、消毒液なども該当します。
小型の事務用品は比較的簡単に手に入るものの、使用頻度が高いため、常にストックまで準備しておくといいでしょう。
場所別|クリニック開業に必要な備品リスト
医院に用意するべき備品は、エリアによって変わってきます。ここからは、診察室や受付、待合室など部屋ごとに必要な備品を紹介します。
- 診察室
- 受付
- 待合室
- 玄関
- トイレ
- スタッフルーム
診察室に必要な備品リスト
診察室は診療科目や治療内容に合わせて備品を用意する必要があります。
一般的なクリニックの診察室に揃えておくべき備品は以下の通りです。
診療室の主な備品一覧
- 診察机
- 医療用椅子
- 患者用椅子
- 患者の荷物入れ
- 聴診器
- 血圧計
- 体重計
- 消毒器具
- 感染予防品(マスク、手袋など)
- タイマー
- 診察用ライト
- パルスオキシメーター
- 衛生材料(包帯、ガーゼなど)
受付に必要な備品リスト
受付に置く備品は、患者と受付スタッフの両方の視点を意識して揃えていくといいでしょう。
受付の主な備品一覧
- 診察券入れ
- ご意見箱
- 老眼鏡セット
- 杖ストッパー
- 手荷物台
- レジスター
- シュレッダー
- 筆記具
- つり銭用トレー
- カレンダー
- ゴミ箱
- 非接触式体温計
- カルテラック・カルテワゴン
- 飛沫対策パーテーション
待合室に必要な備品リスト
待合室に空気清浄機や加湿器、座り心地のよいソファなどがあれば、患者が快適に待ち時間を過ごせます。
待合室の主な備品一覧
- ソファ
- テレビ
- オーディオ機器
- 雑誌
- マガジンラック
- 時計
- 空気清浄機
- 加湿器
- ウォーターサーバー
- 絵本
- おもちゃ
子どもが来院する診療科なら、絵本やおもちゃも揃えておくといいでしょう。
玄関に必要な備品リスト
玄関はクリニックの第一印象に関わるスペースなので、清潔感やデザイン性にこだわることが大切です。
玄関の主な備品一覧
- 玄関マット
- 手指消毒スタンド
- 靴箱
- スリッパ
- スリッパラック
- 傘立て
センスの良い観葉植物や絵画なども設置すれば、患者に好印象を与えやすくなります。
トイレに必要な備品リスト
産婦人科や婦人科の場合は、トイレに生理用品も用意しておきましょう。
トイレの主な備品一覧
- トイレットペーパー
- ペーパータオルまたはハンドドライヤー
- 清掃用具
- トイレ用スリッパ
- ゴミ箱
- 消臭剤
- 生理用品
美容系クリニックであれば、メイク直し用の綿棒や油取り紙なども置いておくと、気が利いた印象になります。
スタッフルームに必要な備品リスト
医師やスタッフが着替えたり休憩時間を過ごしたりする部屋がスタッフルームです。
スタッフルームの主な備品一覧
- 冷蔵庫
- 電子レンジ
- コップ
- 食器
- テーブル
- 椅子
- ロッカー
- 掃除機
- 掃除道具
- ユニフォーム
目的に沿った備品を用意しましょう。
クリニック開業で備品を用意するタイミングはいつ?
クリニック開業の寸前になって慌てないように、スケジュールに余裕をもって備品を準備しておきましょう。
特に開業1か月前は多くの業務に追われるため、遅くとも開業の2か月前までには必要な備品を揃えておくと安心です。
クリニック開業で備品を用意する際に注意すべきポイント7つ
クリニックの備品は、診療内容やコストなどを考慮して選定するのが重要です。
ここからは、クリニック開業時に備品を選ぶ際の注意点を7つ紹介します。
- クリニックの診療コンセプトを決めておく
- 診察内容を考慮して備品を選ぶ
- 業務効率化できる備品を選択する
- 院内のスペースに合わせる
- 収支を意識してコストを計算する
- 保証期間やサポートの有無をチェックする
- リースやサブスクも検討する
医院の診療コンセプトを決めておく
クリニックに必要な備品は、医院の経営方針や診療目的によって異なります。そのため、備品を選定する前に、まず自院の方針となるコンセプトを明確にしなければなりません。
例えば、ファミリー層をターゲットしているなら、幼児が待ち時間に遊べる絵本やおもちゃなどを待合室に用意しておく必要があります。
また、高齢者向けクリニックであれば、足腰の弱い患者でも立ち座りがしやすいソファを設置しておくと、安全性や快適性を高められます。
また、高級感を重視するのか、親しみやすさを大切にするのかによっても、購入する家具の色やデザインが変わってきます。
あらかじめ自院のコンセプトを明確に策定しておけば、その後の備品選定は順調に進められるでしょう。
診察内容を考慮して備品を選ぶ
クリニックに用意しておくべき備品は、どの科目の診察を行うかによっても異なります。
例えば、整形外科なら車椅子や固定帯などの準備に対する優先度が高くなります。また、美容系クリニックの場合は、メイク落としやフェイスタオルなどの洗面用具を揃えておくといいでしょう。
診察内容によって必要となる備品が変わるため、患者のニーズに合った備品を選ぶことが重要です。
業務効率化できる備品を選択する
人手不足が問題になっている医療業界では、業務の効率化をはかるためにデジタル化の動きが急速に進んでいます。
近年では、多くのクリニックでも電子カルテや自動精算機などの導入が増えてきています。
デジタル化によって作業効率が高まるだけではなく、人的ミスの軽減やスタッフのストレス低減にも効果を発揮することが期待できます。
クリニック運営の成功につなげるためにも、業務効率化を意識した備品の選定をしましょう。
院内のスペースに合わせる
クリニック内のスペースを確認してから備品を選定するようにしましょう。無計画に備品を購入すると、院内スペースが不足したり、患者やスタッフの動線を防いだりしてしまう可能性もあります。
例えば、診察室のデスクやベッドは、患者やスタッフの移動の邪魔にならないように、余裕を持って配置できるサイズを選びましょう。
また、待合室にモニターを設置する場合は、壁掛けタイプであれば省スペース化が図れるのでおすすめです。
収支を意識してコストを計算する
備品選びで後悔しないためには、収支を意識してコストを調整するのも重要です。適正な範囲内の金額で備品を揃えなければ、クリニックの経営にも悪影響を及ぼします。
使用頻度や得られる利益を考慮して、厳格にコスト計算を行い、限られた予算内で選定を行いましょう。
保証期間やサポートの有無をチェックする
人工呼吸器やMRIなどの医療機器は長く使用するため、販売価格や機能性以外にも、保証期間やサポートの有無も確認すべきポイントです。
アフターフォロー体制が不十分な場合、機器トラブルが発生した際に修理の時間やコストが多くかかってしまう可能性もあります。
医療機器といった比較的大きな備品は、保証期間やサポートの有無を確認してから導入しましょう。
リースやサブスクも検討する
大型の医療機器や自動精算機などの設備には、購入以外にもリースやサブスクリプションなどの方法もあります。
リースやサブスクは、契約料やレンタル料などのランニングコストが発生しますが、初期費用を大幅にカットできます。検討する価値は高いでしょう。
どのような料金システムで備品を揃えるべきかは、開業時の準備資金や使用する頻度などによって異なります。運用のシミュレーションをして、自院にあった費用形態を選択しましょう。
まとめ:クリニック開業時には業務効率を高める備品を選ぼう
クリニック開業にあたっては、さまざまな備品が必要になります。クリニック開業時には、自院に合った備品を選んで、患者やスタッフの満足度を高めるのが重要です。
とはいえ、多忙な中で準備を進めていると、つい抜け漏れが発生するかもしれません。
本記事に登場したチェックリストを参考にして、余裕をもって計画的に備品の選択を進めていきましょう。