受診する機会を逃さないことで未然に防ぐ
大腸は、約1.6mの臓器でその個人の身長とほぼ同じ長さと言われています。肛門側に消化した食事を運ぶ蠕動運動と、水分を吸収することで便の形成に働いています。大腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸および肛門に分類されます。肛門から約12cmまでは直腸と呼ばれ、排便機能に特に重要です。それより口側が結腸となります。大腸がん(結腸がんと直腸がんの総称)は、罹患数および死亡数ともに増加傾向で、2021年における女性のがんによる死亡数の第1位で、男性の2位です(厚生労働省人口動態統計より)。大腸がんの発生には食事をはじめとする生活習慣、環境因子および加齢などが影響していると言われており、大腸粘膜や腺腫(ポリープ)に遺伝子のバリアント(異常)が蓄積して発生すると言われています。大腸がんの大部分が、良性のポリープである腺腫から癌が発生します(adenoma- adenocarcinoma sequence)。つまり、発がんする可能性のあるポリープを切除することで大腸がんの発生は予防できると考えられています。仮に発がんしても、早い段階で癌が発見された場合は、大腸内視鏡的切除(大腸カメラで癌を切除すること)で治癒が得られる可能性が高いので、定期的な大腸内視鏡検査が必要です。一方で、大腸がんのおよそ5%と少数ですが、遺伝する大腸がん(原因遺伝子が明らかにされているもの)もあり、遺伝性大腸がんと総称されます。代表的な疾患として、家族性大腸腺腫症(大腸に100個以上のポリープが多発する疾患)とリンチ症候群(大腸がん以外に子宮、卵巣、胃や尿路など多彩な関連腫瘍が発生する疾患)などがあります。家系内に該当する疾患がある方は、まず大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。最後に、検便(便潜血反応)などを契機に無症状のうちに大腸がんが見つかることが最も望ましいですが、血便、腹痛、便秘や下痢など症状が出てから内視鏡検査を受ける方も少なからずいらっしゃいます。症状があっても決して手遅れではありません。内視鏡的切除や外科的大腸切除で治癒が得られることも多いです。「検査がこわかった」、「痔だと思い込んでしまった」など受診しない理由はそれぞれあると思いますが、受診する機会を逃さないことが重要です。気がかりなことがある場合は、まずはかかりつけ医に相談してみてください。
- 大滝大腸肛門クリニック
- 柿添 学 院長
- 横浜市戸塚区/戸塚町/戸塚駅
- ●胃腸内科 ●消化器内科 ●肛門科 ●内視鏡内科