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医療のICT化とは?今必要とされる理由と課題・事例を紹介

現在 、医療業界全体で医療のICT化を推進する傾向が高まりつつあります。

しかし、医療のICT化について理解できなかったり、導入の必要性を感じられなかったりと言った声もあるでしょう。

そこで本記事では、医療のITC化について必要な理由やメリット、課題や事例をわかりやすく解説していきます。

医療のICTとは?

パソコンで電子カルテを確認する医師

医療ICTとは、Information and Communication Technologyの略で、情報通信技術のことです。

インターネットを利用して、医師や患者がコミュニケーションを取るためのサポート的な役割があります。

具体例としては、オンライン予約やオンライン診療など。患者情報を管理するカルテを、紙から電子カルテに切り替えるのも医療のICT化の一環です。

医療にICTを取り入れることで、業務効率化や医療の地域差を解消する効果が期待できます。

ITとICTの違い

ITとは、Information Technologyの略で、コンピューターやデータ通信など、情報通信分野で活用される技術のことです。

ITとICTは意味はほぼ同じですが、活用する分野が異なります。

ICTは、単なる情報技術ではなく、人同士のコミュニケーションを目的としているのが両者の違いです。

医療のICT化が必要な理由

医療のICT化が必要とされるのは、少子高齢化によって生じる課題を解決するといった理由があります。

  • 医師不足
  • 医療機能の偏在
  • 医療従事者1人当たりの負担増
  • 国民1人当たりの医療費・介護費の負担増

上記のような課題の解決には、早急な医療の効率化が求められます。医療業界でもこの課題を深刻に受け止めており、医療ICTを推進する傾向が高まっているのです。

医療のICT化における現状

聴診器を首にかけた白衣を着る人が電子カルテに入力している

では、医療のICT化における現状について解説していきます。

  1. 電子カルテの普及率は約49%~57%
  2. オンライン診療の導入が加速
  3. 地域医療情報連携ネットワークの活用状況は低調気味

電子カルテの普及率は約49%~57%

厚生労働省によると、電子カルテの普及状況推移は以下の通りです。

電子カルテ 平生23年 平成26年 平成29年 令和2年
一般病棟 21.9% 34.2% 46.7% 57.2%
200床未満
(病床別)
14.4% 24.4% 37.0% 48.8%
200床~399床未満
(病床別)
33.4% 50.9% 64.9% 74.8%
400床以上
(病床別)
57.3% 77.5% 85.4% 91.2%
一般診療所 21.2% 35.0% 41.6% 49.9%

参照:厚生労働省:電子カルテシステム等の普及状況の推移

電子カルテの普及率は、一般病院と一般診療所いずれも年々増加しています。

病床規模別の令和2年の普及率では、400床以上の一般病院で91.2%と普及率の高さがうかがえる状況です。

オンライン診療の導入が加速

医療ICTにおいては、オンライン診療の導入が加速しています。これは、コロナ禍における影響が大きいと言えるでしょう。

以前までは、原則初診のオンライン診療が認められていませんでした。しかし、感染拡大防止措置として一時的に実施が認められています。

こうした背景もあり、オンライン診療の導入が加速した結果、利便性の高さから恒久化を望む声も多く上がっているようです。

地域医療情報連携ネットワークの活用状況は低調気味

地域医療情報連携ネットワークは、医療機関や施設と患者が情報共有できる画期的なシステムですが、利用されている現場は少ないのが現状です。

電子カルテの普及率やオンライン診療の導入が高まる一方で、地域医療情報連携ネットワークの活用状況は低迷気味となっています。

参照:厚生労働省|地域医療情報連携ネットワークの現状について

医療のICT化で期待できる4つのメリット

 

片手にファイルを持ち笑顔で佇む看護師

それでは、医療のICT化で期待できる4つのメリットを紹介していきます。

  1. 業務効率化を図れる
  2. 新薬や治療法の研究・開発に活用できる
  3. BCP対策につながる
  4. 地域差なく最適な医療を提供できる

業務効率化を図れる

医療のICT化による最大のメリットは、業務効率化を図れること。

医療業務では診療と平行して、カルテや診断書等の書類作成と管理、システムへの入力なども遂行しなければいけません。

特に人員不足の現場では、医療従事者1人当たりにかかる負担も大きくなるでしょう。

医療ICT化により、大幅な業務効率化が可能になります。

新薬や治療法の研究・開発に活用できる

医療のICT化により、多くの医療情報やデータを収集・分析できます。

これらのデータを活用することで、新薬や治療法の研究・開発に役立てられるでしょう。

BCP対策につながる

医療のICT化は、BCP(Business Continuity Plan)対策につながるのもメリットです。

BCPとは、災害やテロなど不測の事態に見舞われた際、早期復旧に向けた対策を決めておくこと。

医療ICT化によって、重要な情報やデータのバックアップが可能になるため、BCP対策につながります。

例えば、台風や地震など自然災害により、病院のシステムがダウンしたり崩壊したりした場合でも、バックアップがあれば復旧までの時間を短縮できるでしょう。

地域差なく最適な医療を提供できる

医療のICT化が進めば、オンライン診療が可能になります。

地方や離島など医師が少ない地域では、診察を受けたくても受けられないのが現状です。しかし、オンライン診療は遠隔で医療を提供できます。

オンライン診療のデータを電子カルテで保管すれば、過去の治療データに基づく提案が可能です。

また、医師と医療従事者間の連携もしやすくなり、人材が不足した地域でも作業負担の軽減も期待できます。

これにより、地域差なく最適な医療を提供できるのは大きなメリットとなるでしょう。

医療のICT化による課題とデメリット

 

顎に指を当てる困り顔の看護師

では、医療のICT化による課題とデメリットについて見ていきましょう。

  1. 医療現場によって使いこなしに差が生じる
  2. 患者情報のセキュリティ対策問題が発生する
  3. システムエラーが起こると業務を遂行できない

医療現場によって使いこなしに差が生じる

医療現場によっては、医療のICT化を進めても十分に駆使できないこともあります。

一部の人は使いこなせても、全体として差が生じれば業務効率化は実現できません。

医療のICT化を目指すのであれば、現場全体で使いこなせるよう事前の説明や講習などを取り入れましょう。

患者情報のセキュリティ対策問題が発生する

医療のICT化は利便性が高い反面、患者個人の情報を取り扱うためセキュリティ対策の強化が求められます。

昨今、さまざまな業界で騒がれる個人情報の漏洩。医療業界でも便利なICT化が進むにつれて、セキュリティ面での懸念点が生じる恐れがあります。

医療のICT化には、セキュリティ対策の強化はもちろん、患者から同意をもらえるような配慮や説明も必要です。

システムエラーが起こると業務を遂行できない

医療のICT化がシステムである以上、システムエラーが起きる可能性もゼロではありません。

特に、自然災害による停電でシステムエラーが起きた場合、業務を遂行できなくなる恐れがあることに留意すべきです。

いつ何が起きてもいいように、システムエラーが起きたときの対応を策定しましょう。

医療ICT化の活用事例

アイコンにタッチする白衣の男性

では最後に、医療ICT化の活用事例を3つ紹介します。

  1. オンライン診療
  2. カルテやお薬手帳の電子化
  3. AIシステムの導入

オンライン診療

オンライン診療では、遠隔による診療や服薬指導が可能です。

オンライン診療で通院の必要がなくなれば、患者の通院負担を軽減できることから、離島や地方などでの活用事例も増加しています。

また、2022年4月に診療報酬改定が実施され、オンライン診療料が見直され利用しやすくなりました。

こういった理由もあり、今後もオンライン診療は需要拡大が期待できます。

カルテやお薬手帳の電子化

医師に薬を処方してもらうときや、調剤薬局で薬を受け取るときにはお薬手帳で服薬履歴を確認します。

紙のお薬手帳は、持っていくのを忘れたり紛失したりするリスクがありますが、電子版のお薬手帳であればデータでの管理が可能です。

毎回お薬手帳を持っていく必要もなく、医師と薬剤師が服薬履歴を共有できるなどのメリットもあります。

AIシステムの導入

医療のICT化に加え、健康維持のヘルスケアや検査から手術までの治療、回復ケアでAIシステムの導入も進められつつあります。

例えば、新薬開発におけるリスクの予測、薬が合う患者とのマッチングなどさまざまな応用が考えられます。その他、レントゲンやMRIなどにおいてもAIの活用余地があるでしょう。

AIシステムの導入は、診察時間の短縮や作業負担の削減にもつながります。

まとめ:医療ICTで業務効率化や医療の質向上に役立てよう

青い制服を着て肩に聴診器をかけカルテを確認する医師

医療のICT化により、医療従事者の業務効率化や業務負担の軽減といった効果が期待できます。

患者にとってもオンライン診療で通院負担を減らしたり、自宅にいながらにして服薬指導を受けられたりするのはメリットです。

現状では地域や現場での差があるものの、さまざまな場面で変革をもたらす医療のICT化は、さらに推進されるでしょう。