歯科医院を円滑に運営していくには、受付スタッフの存在はとても重要です。受付スタッフの対応次第で、歯科医院の評判が左右されるといっても過言ではありません。
そんな受付業務をスムーズにこなせるスキルの高いスタッフを育成するには、受付マニュアルの作成は必須です。
受付マニュアルを作成するメリットはいくつかあります。しかし、作成手順を理解しておかなければいいマニュアルを作成できません。
この記事では、歯科医院の受付マニュアルの作成ステップや、作成するメリット、作成におけるポイントおよび必要な4項目について詳しくご紹介します。
この記事の内容
歯科医院の受付マニュアルが必要な理由
歯科医院における受付マニュアルとは、受付業務の手順や流れ、接客方法や注意点などをまとめたものです。
スタッフに受付業務のレクチャーを目的として事前に作成することで、教育にかかる手間が軽減され、スタッフのスキルを均一化できるメリットがあります。
また、患者さんへの対応方法や基準がスタッフごとに異なっていると、「前はこうしてもらった」とクレームにつながる恐れがあります。統一しておけばそういった心配もありません。
受付マニュアルの作成は、スタッフの迷いを無くす役割を持っています。
歯科医院の受付マニュアルを作成するメリット
歯科医院の受付マニュアルを作成することには、以下4つのメリットがあります。
- 業務の質が向上する
- スタッフのスキルを均一化できる
- スタッフ教育の負担が減る
- スタッフ評価の基準になる
業務の質が向上する
マニュアルを用いて教育を行うことで、業務の質が向上します。
作業方法や判断基準などが明確に定められていると理解しやすく、自信をもって業務をこなせるようになるでしょう。
作業の抜けや細かいミスの防止にもつながるため、仕事の品質が安定します。
また、マニュアルをいつでも見れる場所に保管しておくことで、受付スタッフは繰り返し確認できます。その内容を覚えて業務スキルを身につけやすくなるでしょう。
スタッフのスキルを均一化できる
受付マニュアルを用いることで、同じ内容の教育ができるため、スタッフのスキルを均一化できます。
患者さん目線で見れば誰が新人で誰がベテランかは関係なく、受付対応で抜けや漏れが発生することがあってはいけません。
特に、人によってどう対応するかが分かれがちな部分や、迷うスタッフが多い業務に関してはマニュアルに記載してどう対応すべきか明記しておきましょう。
人によって対応方法が異なることがあると、「前と対応がちがう」とクレームを入れられる恐れがあるため、対応方法を統一することは組織として重要なポイントです。
また、「この業務はあの人しかできない」ということがないようにするという点でも、受付マニュアルはメリットがあります。そのスタッフが休みの日や、もし急に辞めてしまった場合などに、対応できずに困るという事態が起こらないように備えましょう。
スタッフ教育の負担が減る
受付マニュアルを導入すればスタッフ教育の負担が減ります。
マニュアルを用意しておけば、マニュアルに記載されている内容に沿って教えられるため説明しやすいです。
スタッフ側はただ聞きながら教えられるより、マニュアルを見ながら教わったほうが頭に入りやすく覚えやすいというメリットもあります。
業務の最中に作業方法が分からずに悩むことがなくなり、わからない点があった際にスタッフ自身で確認できると教育の負担が軽減されます。
先輩や上司に頼り過ぎずに業務進行できるという点で、お互いにメリットがあります。
スタッフ評価の基準になる
受付マニュアルがあれば、そのマニュアル通りに作業ができているかがわかりやすく、スタッフ評価の基準となります。
マニュアルを基準に客観的な評価を行えば、「特定のスタッフだけがえこひいきされている」というような不満を持たれにくいです。
賞与や昇給の基準にもなり、スタッフ自身が自己評価をしやすくなるという点もメリットの一つです。
公平に評価をしているという証拠として提示できるため、不公平感や不満を持たせないためにも必要だといえるでしょう。
歯科医院の受付マニュアルを作成する際のポイント
歯科医院の受付マニュアルを作成する際は、以下3つのポイントを意識しましょう。
- 見た目や表現をわかりやすくする
- 定期的に更新する
- ITツールを活用する
1.見た目や表現をわかりやすくする
見た目や表現をわかりやすくすることで、理解しやすいマニュアルになります。
受付マニュアルを作成するにあたって重要なのは、「誰が見てもわかりやすいか」という点です。
以下の点を意識すると、新人からベテランのスタッフまで誰でも読みやすく、わかりやすいマニュアルになります。
- 専門用語はなるべく使わない
- 専門用語が必要な場合は、意味を追記するか用語集を作成する
- イラストや写真、図表を用いる
- 動画マニュアルも用意する
- 文字の大きさやフォントを工夫する
視認性を高めて、一目見て内容を理解できるマニュアルを作成しましょう。
2.定期的に更新する
受付マニュアルは一度作成したら終わりではなく、定期的に更新しましょう。
歯科医院の成長とともに業務内容は変わり、作業量が増えたり効率のいい方法へ変わると考えられます。
こういった変化と同時にマニュアルも更新する必要があります。
マニュアルを読んだスタッフからの意見も取り入れて、評判が良くなかった部分については書き直すなどブラッシュアップしていくことが重要です。
3.ITツールを活用する
受付マニュアル作成時は、ITツールの活用もおすすめです。
マニュアル作成ツールなら、テンプレートから作成できたり、レイアウト作成や画像・動画の埋め込みなどを簡単にできて作成の手間を減らすことができます。
クラウド型のツールならさまざまな端末からアクセスでき、場所を選ばずマニュアルの閲覧ができるメリットもあります。
データをクラウド上に保存できれば、万が一のPC端末故障などにも備えられます、
歯科医院の受付マニュアルに必要な4項目
歯科医院の受付マニュアルには、以下の4項目を必ず盛り込みましょう。
- 電話応対の項目
- 接遇に関する項目
- システムの操作方法の項目
- 緊急時対応の項目
1.電話応対の項目
歯科医院の受付スタッフは、電話応対をするシーンが多く、予約や当日の空き状況の問い合わせなどさまざまな電話がかかってきます。
電話での予約受付に対応している場合は、受付とキャンセルの際の対応方法を記載し、クレームについても状況別に対応方法を記載しましょう。
いつも電話応対しているスタッフが診療中で補助にあたっていて電話に出れないというケースも考えられるため、スタッフ全員が電話応対ができるようにしておくことが重要です。
2.接遇に関する項目
歯科医院の受付での接遇は、歯科医院の印象を決める一つの要因であり、重要な項目となります。
歯科医院に来られる患者さんは気分が落ち込んでいる場合もあり、そんな中受付でぞんざいな扱いを受けたとなると印象が悪くなる可能性があります。
高齢者や障害者の患者さんに対しては、診療室への誘導や会計時の応対方法も適切にサポートをするなど、より丁寧な対応が求められます。
丁寧かつ明るい接遇を心掛け、患者さんへ安心感を与えられるようにマニュアルにも接遇に関する項目を取り入れましょう。
3.システムの操作方法の項目
歯科医院の受付では、医院によってはカルテやレセプト、予約管理システム、会計システムなど多くのシステムを操作する機会があります。
自院で取り入れているシステムの操作方法をマニュアルに記載しておくことで、操作方法を理解しやすくなります。
予約管理システムや会計システムは、患者さんから操作方法を聞かれることも多いでしょう。しっかりと対応できるように、管理者側だけでなく、患者側の操作方法も理解しておく必要があります。
4.緊急時対応の項目
災害・火災・事故など、緊急時の対応方法に関する項目も必要です。
なにか予期せぬ出来事が起こった際は、患者さんの安全確保を第一に考え、冷静な対応ができるように準備しておきましょう。
特に商業施設やビルテナントなどにテナントとして入っているクリニックの場合、避難経路を想定して患者さんを適切に誘導しなければなりません。
あらかじめこうした避難方法などを確認しておくことで、慌てずに冷静な判断が下せる可能性が高くなるしょう。
歯科医院の受付マニュアルを作成する手順7ステップ
ここからは、歯科医院の受付マニュアルを作成する手順を7ステップで紹介します。
- マニュアルを作る目的を明確にする
- マニュアル化する業務内容を整理する
- 作成スケジュールを計画する
- 構成・見出しを作る
- 本文を作る
- マニュアルの運用を始める
- 定期的に改正する
ステップ1.マニュアルを作る目的を明確にする
まずは誰に対して作成し、何を達成したいかを考えて、マニュアルを作る目的を明確にしましょう。
マニュアル作成は、対象者が異なるだけで構成や本文が変化します。
新人スタッフの教育のために作成するのに専門用語がたくさん入っていると、理解するのが難しくなってしまいます。
まずは対象者を決めて、そこから内容を決めるといいでしょう。
ステップ2.マニュアル化する業務内容を整理する
次は、マニュアル化する業務内容を整理します。
受付業務で必要な業務内容を一つずつ洗い出し、現場からの要望も取り入れましょう。
受付では、来院時の受付での患者情報の入力だけでなく、会計や予約の受付、電話応対などさまざまな業務があります。
業務内容を理解できるように、受付で対応すべき事項はすべてマニュアルの中に取り入れましょう。
ステップ3.作成スケジュールを計画する
項目が洗い出せたら、作成スケジュールを計画します。
歯科医院での診療をこなしつつ、マニュアル作成を進めるのは簡単ではありません。
そこで、これまでの患者さんの来院頻度や先々の予約状況などから、スケジュールを立てて計画的に作成を進めましょう。
マニュアル作成を任せられるほど信頼のおけるベテランスタッフがいれば、担当者にするといいですが、都度自身でも確認しながら進めることが重要です。
もっとも分かりやすくマニュアルを作成できるのは、受付業務を日常的に行っていて熟知しているスタッフです。
ただし、スタッフに作成を任せる場合は、負担が増えすぎないように注意しましょう。
ステップ4.構成・見出しを作る
スケジュールが立てられれば、構成と見出しを作成していきます。
本文も同時並行で作成していくと、構成がごっちゃになり、分かりにくいマニュアルになる可能性があります。まず構成と見出しだけを先に作成してください。
この時に意識するべきポイントは、読み手の立場になって考えることです。
「自分が教えられる立場なら、この項目があるとわかりやすい」など、読み手を意識して作成すると質の高いマニュアルができるでしょう。
また、見出しがあると、後から読み返すときに読みたい部分がどのページにあるかを即座に見つけられます。
業務内容ごとに大見出しを作って、具体的な細かい内容や補足したい部分を小見出しで設けましょう。
ステップ5.本文を作る
構成を作成したら、本文の作成に取り掛かります。
見出しごとに細かい内容を記述して、業務の手順や注意点を書き込んでいきます。
本文作成の際に意識すべきポイントは、以下の通りです。
- 読み手を意識する
- 説明文はシンプルに短くまとめる
- 経験が浅いスタッフにもわかりやすい表現と内容
- 具体的に書きすぎない
- 文章・画像・写真・図表をバランスよく構成
- 背景も設定して視覚的にわかりやすくする
マニュアル作りにおいて大事なのは「わかりやすさ」です。書き込み過ぎず、シンプルな構成にしつつ、1つの項目内で内容が逸れないように気を付けましょう。
また、内容はシンプルなほうがわかりやすいものの、簡素過ぎても不親切な内容となるため注意が必要です。
1日の業務の中でやるべきことは「〇〇時までに」と付け加えるなど、タイムテーブルを用意すると円滑に業務が進みやすいです。
ステップ6.マニュアルの運用を始める
マニュアルが作成できれば、実際に運用を始めます。
マニュアルをスタッフに配布し、業務に活用してもらいます。この工程で重要なのは、スタッフから意見を聴取することです。
実際にマニュアルを用いて業務を行い、分かりにくい箇所があれば教えてもらい改善します。
また、マニュアルの有効性や適用性を確認し、どの程度業務に生かされているかも確認しましょう。
マニュアルを配布しても結局スタッフからの質問が絶えなかったり、かえって業務スピードが遅くなっているようであれば、改善すべきポイントがあると考えられます。
ステップ7.定期的に改正する
マニュアルは、作成後も定期的に改正してブラッシュアップさせていきましょう。
業務内容は変化することもあり、マニュアルが古いままだとマニュアルを読んだときに混乱を招く恐れがあります。
例えば、新しく予約システムを導入した場合は、そのシステムの操作方法や患者さんからの問い合わせへの回答方法を追記する必要があります。
日々の業務で生じる変化に細かく対応し、マニュアルも更新していきましょう。
マニュアルを更新した際は、変更した旨と変更箇所について周知し、読み直すようにしてもらって医院全体のサービスの質を向上させてください。
まとめ:歯科医院の受付マニュアルを作成してスタッフの教育を円滑化させよう
歯科医院では受付マニュアルを作成することでさまざまなメリットが得られます。
スタッフへの教育がしやすくなるだけでなく、受け取り側もマニュアルがあることで業務を進めやすくなり、自己評価もできるなどメリットは多いです。
ただし、マニュアルを活用するとしても、分かりやすくなければ効果が薄くなりかねません。
まだ受付マニュアルを作成していない場合は、受付マニュアルを作成してスタッフの教育を円滑化させましょう。