病院やクリニックでクレームが起こった場合、その内容によっては困るのではないでしょうか。また、正しい対応が取れないと、余計に相手を刺激しかねません。
クリニックの評価や評判にも関わるでしょう。
そこで本記事では、病院でクレーム対応をする際のマニュアルとして、心構えや手順、具体例について解説していきます。
しっかりとクレームに対応していくためにも、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
病院での正しいクレーム対応の心構え
病院で正しいクレーム対応をするための心構えとして重要なのが、ポジティブに考えることです。
クレーム対応をすると考えると憂鬱な気分になる方が多いでしょう。
しかし、「患者から病院のサービスに対する意見」「従業員の改善すべき点」などを聞かせてもらえているとも考えられます。
クレームにまで発展する原因は、患者が思っていたようなサービスを提供してもらえなかった場合がほとんどです。そういった際には、病院や自分自身をレベルアップさせる機会だと受け止めるとポジティブな気持ちで対応できます。
患者側は、本来口に出しにくいようなことをわざわざ意見として伝えてくれます。「何に困っているのか」「何に満足がいかなかったのか」を真摯に受け入れ、改善方法を模索する姿勢が大切です。
クレームに正しく対応することで、院への信頼性が高まると同時に、至らない部分が改善され、病院としての質が上がるでしょう。
病院でのクレーム対応は4ステップ
病院でのクレーム対応は、主に以下4つのステップで行いましょう。
- 患者の話を傾聴して謝罪する
- 事実と要望を確認する
- 解決策を提案する
- 意見に対して感謝する
ステップ1.患者の話を傾聴して謝罪する
ステップ1は、まず患者の話を傾聴し謝罪を述べることです。
患者の意見を真摯に受け止めるためにも、まずは話の腰を折らず最後まで傾聴することが重要なポイントです。
相手から一方的に意見を言われると、言い返したくなる気持ちにもなりますが、感情的にならず何を伝えたいのかを理解しようとしましょう。
患者に「ちゃんと話を聞いてもらえる」と分かってもらうことが解決するきっかけになります。
最後まで傾聴した後は、相手に不快な思いをさせてしまったことについて謝罪しましょう。
ここでは、クレーム内容については謝罪しないように注意が必要です。事実がどうなのかまだわかっていない段階でクレーム内容について謝罪してしまうと、病院側が非を認めたと受け取られる危険性があります。
ステップ2.事実と要望を確認する
ステップ1を経て、患者の感情を落ち着かせたところで、次は事実と要望を確認します。
クレーム内容を再度聞き、何に対しての意見なのかを詳しく事実確認しましょう。そして同時に患者がどういった対応を求めているかの要望も確認をします。この時には、5W1Hに注意して確認することが大切です。
事実・要望確認で注意すべきポイント
- いつ・どこで起きたことなのか
- どのようなことが起こったのか
- どうして起こったのか
- 何に納得がいっていないのか
- 誰が起こしたのか
- どのようにしてほしいのか
また、相手から事実や要望を確認する際には、正確に内容を把握するためにメモを取ったり、復唱して確認を取りましょう。
ステップ3.解決策を提案する
事実と要望の確認が済んだら、次は解決策の提案をしていきます。
万が一、自分では判断しきれないと感じた場合は、無理をせずに一度持ち帰り検討する旨を正直に伝えて上司などに相談しましょう。無理して対応すると、話がこじれる可能性があるので注意が必要です。
解決策を提案する際には、病院側に責任があるなら初めに深く謝罪をしましょう。そして今後、同じことがもう起こらないように改善するのかを丁寧に説明することで、相手に良い印象を抱いてもらえます。
病院側に責任がなかった場合、どこで勘違いが生じてしまったのかを事実を踏まえて説明しましょう。この時には相手の間違いをただ指摘するのでなく、また不快な思いをさせないように優しく話すことが大切です。
来院している患者のほとんどが体調を崩しているので、気持ちが乱れやすくなっていることも考えて対応してください。
ステップ4.意見に対して感謝する
対応の最後には、必ず意見をいただいたことに対して感謝を伝えましょう。
どうして感謝をするのかわからないという場合は、言いづらいことをわざわざ意見として伝えてくださったと考えましょう。
相手も好き好んでクレームを入れているわけではありません。相手に言ってよかったと感じてもらえるようなクレーム対応を心がけてください。
病院でのクレーム対応マニュアル|シーン別
ここでは、病院でのクレーム対応マニュアルを以下のシーン別で具体的に解説していきます。
- 「待ち時間が長い」に対するクレーム
- 「会計金額が誤っている」に対するクレーム
- 「スタッフに話しかけづらい」に対するクレーム
これらのような実際に起こりやすいシーンのクレーム対応は、練習としてロールプレイングしておくと良いでしょう。
「待ち時間が長い」に対するクレーム
「診察や会計まで何時間待たせるんだろうか」というクレームは多くあります。
こういったケースにおいて、「他の患者さんもお待ちいただいてますので」と言い訳をするのはよくありません。たとえ待ってもらうしかない状況だとしても、まずは待たせてしまっていることに対して誠意を込めて謝罪しましょう。
その上で、待ち時間が短くて済むような日時を提案するなどの解決案を提示すると、患者に満足してもらえます。実際の問答の例としては、以下の通りです。
・クレーム内容
「会計まで何時間待たせる気だ。」
・ダメな対応例
「他の患者さんにもお待ちいただいてますので、もうしばらくお待ちください。」
・良い対応例
「お待たせしてしまい大変申し訳ございません。何曜日の何時からでしたら、あまりお待たせすることなくご案内できるかもしれません。よろしければ、次にご来院なさる際にご検討ください。」
「会計金額が誤っている」に対するクレーム
「会計金額が誤っている」というクレームも少なくありません。
この場合、会計金額が正しくても誤っていてもまずは謝罪を述べましょう。ただし、クレームの内容に対してではなく、ここでは手間を取らしていることに対して謝罪をするのがポイントです。
次に、会計金額を清算システムで計算していても、どこかで人為的なミスが生じている可能性があるため、少し待たせても再度会計金額の確認をしましょう。実際の問答の例は、以下の通りです。
・クレーム内容
「会計金額が間違っている。計算にミスがあるのではないか。」
・ダメな対応例
「会計金額の計算は機械で行っておりますので、間違いはありません。」
・良い対応例
「お手間を取らせてしまい、申し訳ございません。再度確認しますので、もう少々お待ちいただけますでしょうか。」
「スタッフに話しかけづらい」に対するクレーム
「スタッフに話しかけづらい」というクレームも病院ではよく見られます。
人手が足りず忙しさに気を取られていると、患者が何か困っていたり話しかけようとしている素振りに気づけない場合はあるでしょう。ただ、それを言い訳に患者を無碍に扱うのはよくありません。
このようなケースでは、気がつく余裕がなかったことを謝罪し今後どう改善していくのかを伝えましょう。また人手不足が原因の場合、根本的に改善していくために、スタッフの増員などを院内で検討する必要もあるでしょう。実際の問答の例は、以下の通りです。
・クレーム内容
「常にバタバタしていて困っていることがあっても、スタッフに話しかけづらいのですが」
・ダメな対応例
「申し訳ありません。忙しさのあまり気がつきませんでした。」
・良い対応例
「気づくことができず、大変申し訳ございません。次からはいつでも気兼ねなくお声がけください。今後は私たちの方からもお困りのことがないかなど伺いますね。」
「食事の量」に対するクレーム
病院では、入院している患者からの食事に関するクレームもよくあります。
「食事の量が多い」などのクレームを受けた場合には、どうしてそう感じたのかを詳しく聞くことが大切です。それぞれの患者にはライフスタイルがあり、普段の生活とのギャップから不満が生まれています。
患者によっては糖質や脂質を制限しており、病院食を全て食べても大丈夫なのかと不安を抱えているというケースがあります。そういった際には、患者の話を傾聴した上で栄養管理の観点から改めて食事の説明をしましょう。実際の問答の例は、以下の通りです。
・クレーム内容
「食事の量が多すぎる。こんなに糖質をとっても大丈夫なのか。」
・ダメな対応例
「わかりました。では食事の量を減らしますね。」
・良い対応例
「気づくことができず、申し訳ございません。食事に関しましては、適切な栄養管理のためバランスよく調理しておりますので安心してお召し上がりください。食事に関してわからないことなどございましたら、お気軽にお聞きください。」
食事に関するクレームは、「味付け」や「人為的なミスによる異物混入や提供ミス」などさまざまです。内容によっては些細に感じられることもあるかもしれませんが、患者に寄り添った対応を心がけてください。
病院でのクレーム対応でおさえておきたいポイント
病院でのクレーム対応をする際におさえておきたいポイントは、以下の5つです。
- 落ち着いて対応する
- 時間に余裕を持って対応する
- 全ての患者さんに誠意を持って対応する
- クレームに対して嫌な素振りを見せずに対応する
- クレームに対しての回答を持っておく
落ち着いて対応する
落ち着いて対応することは、クレームを解決する上で重要なポイントです。
クレームを入れている相手は、一方的に話したり感情的になっている場合があります。その際に、話を聞く立場も感情的になる、または慌てては話し合いになりません。
そのため、まずは落ち着いて相手の意見を最後まで傾聴し、相手も落ち着いたところで解決に向けて対応してください。
時間に余裕を持って対応する
時間に余裕を持って対応することも重要です。
時間がない中での対応になると、時間を気にして対応が雑になってしまいます。雑に対応された患者は、真剣に取り合ってもらえなかったと感じ、病院への信頼度低下にもつながります。
そうならないためにも、まずは時間に余裕を持って話をよく聞き、患者に納得してもらえるような解決策を提案しましょう。
全ての患者さんに誠意を持って対応する
全ての患者に対して、誠意を持って対応するようにしましょう。
「時間の有無」や「初来院の患者かリピート患者か」などに関わらず、適切にクレーム対応することが大切です。
相手に誠意を感じてもらえないと、さらなる不満にもつながりかねません。
まずは詳しく話を聞いて、ご迷惑をかけていることや場合によってはクレーム内容についても誠意を込めて謝罪してください。その上で納得してもらえるような解決策を提案できれば、患者の満足度や病院への信頼度の向上につながります。
クレームに対して嫌な素振りを見せずに対応する
クレームを受けた際には、嫌な素振りを見せないように心がけてください。
クレームは、患者から病院に対していただいた貴重な意見です。いただいた意見をもとに適切に改善し、自分自身のスキルや病院の質を向上させる良い機会だと認識してポジティブに対応しましょう。
クレームに対しての回答を持っておく
よくあるクレームに対しての回答を、あらかじめ持っておくのも重要です。
待ち時間や会計金額などが原因のトラブルは発生しやすいため、事前にどう対応するのか、どんな解決策を提案するのかを用意しておきましょう。そうすれば、実際の対応時にも慌てることなく、スムーズに解決できるようになります。
まとめ:病院のクレーム対応はマニュアルを作成して円滑に進めよう
病院のクレームには、適切に対処しなければ大きなトラブルにも発展しかねません。
病院のクレーム対応はポイントをしっかりおさえたマニュアルを作成しておくことで、スムーズに対応できますし従業員も安心して対応できるでしょう。
病院でのクレーム対応が苦手な方やどう対応するのが正解なのかわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください!