運営:東京ドクターズ

開業のための
Web集患戦略

開業医のための経営支援メディア
『ウェブドクター』

オンライン服薬指導とは?要件や点数・適切な流れについて解説

2020年4月から可能になったオンライン服薬指導は、患者はもちろん、医療スタッフにとってもメリットが大きい取り組みです。

しかし、これまで適用されてきた0410対応は2023年7月31日で終了してしまったため、今後は改正薬機法に沿った対応が求められます。

また、2022年に厚生労働省により施行された「薬機法施行規則の改正および施行通知」によって、オンライン服薬指導の規制が緩和された上に実施要件も変わりました。こうした変化にも対応していかなければなりません。

この記事では、オンライン服薬指導の要件や0410対応との違いなどについて解説していきます。

オンライン服薬指導とはスマートフォンなどを駆使して行う服薬指導のこと

オンライン服薬指導とは、患者自身のスマートフォンやタブレットなどを使い、オンラインで薬剤師の服薬指導が受けられる制度を指します。オンライン服薬指導により、受診後に薬局へ移動する負担や、薬局での待ち時間がなくなるのもメリットです。さらに、不要な外出を避けられるため、感染リスクを減らすことも可能になりました。

薬剤師にとっても、薬局での窓口業務の負担が軽減されるなど、業務効率化につながります。オンライン服薬指導の実施は、患者と薬剤師どちらにとってもメリットが大きい方法といえるでしょう。

参照:厚生労働省「オンライン服薬指導の実施要領について」

0410対応に基づくオンライン服薬指導は2023年7月に終了

オンライン服薬指導は、もともと2019年の薬機法改正により2020年9月に施行される予定でした。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大したため、厚生労働省は、2020年4月に時限的かつ特例的なオンライン服薬指導の対応である「0410通知」を発出しました。0410通知は、時限的な措置だったため、2023年7月をもって適用終了となりました。

2022年3月に「薬機法施行規則の改正および施行通知」が発出されたことで、オンライン服薬指導の規制が緩和され、実施要件が大きく変わりました。

さらに、同年9月には、「オンライン服薬指導の実施要領」が出されたことで、薬局以外でのオンライン服薬指導も可能になっています。

オンライン服薬指導における改正後薬機法の実施要件

2022年3月に厚生労働省より、「薬機法施行規則の改正および施行通知」が施行されました。

これにより、オンライン服薬指導の実施要件が大きく変わっています。ここでは、オンライン服薬指導における改正後の実施要件についてみていきましょう。

  • 実施方法
  • 通信方法
  • 薬剤師
  • 診療の形態
  • 薬剤の種類
  • 服薬指導計画
  • セキュリティ
  • 実施場所

実施方法

オンライン服薬指導は、基本的に薬剤師の判断により実施が可能になりました。該当の薬局で服薬指導を受けたことがない患者や、処方内容に変更があった患者であっても、患者の服薬状況の把握ができる場合、オンライン服薬指導を受けられます。

ただし、患者の状況などによって、薬剤師がオンライン服薬指導が難しいと判断する場合には、患者本人が希望しても受けられないケースもあります。

通信方法

オンライン服薬指導の改正後、通信方法は映像および音声による対応となりました。0410対応で許可されていた、電話(音声のみ)による指導はできなくなったため、注意が必要です。

薬剤師

オンライン服薬指導を実施する薬剤師は、基本的には患者のかかりつけの薬局や薬剤師による指導が望ましいとされています。

改正前の同じ薬剤師によるオンライン服薬指導は、原則ではなくなりました。患者が希望する薬局や薬剤師があれば、そこでオンライン服薬指導が行えます。

診療の形態

オンライン診療や訪問診療で交付された処方箋に限らず、どの診療形態の処方箋でもオンライン服薬指導の実施が可能になりました。

薬剤の種類

原則として全ての薬剤は、オンライン服薬指導による処方が可能です。ただし、手技が必要な薬剤の場合は、薬剤師による判断によりオンラインによる服薬指導が難しい場合もあります。

服薬指導計画

実施要件改正後には、服薬指導計画と題する書面の作成は求められず、服薬に関する必要最低限の情報開示のみが薬剤師に求められるようになりました。

セキュリティ

オンライン上で服薬指導を実施するにあたり、オンライン服薬指導で使用されることを念頭に作成されたシステムや汎用サービスを適切に使用することが求められています。

個人情報の漏洩やプライバシーの保護には最大限注意する必要があり、十分なセキュリティ対策が講じられているサービスの選択が重要です。汎用されているサービスを活用する場合には、医療情報システムに影響を与えないような設定にする必要があります。

また、オンライン服薬指導にあたり、患者本人に対して事前にセキュリティリスクの説明を実施することも求められています。

実施場所

オンライン服薬指導の実施場所では、以下の点に注意することが必要です。

  • 薬剤師のいる空間で、服薬指導情報を確認できる第三者がいないこと
  • 患者がいる空間で、家族やオンライン服薬指導支援者以外の第三者がいないこと

薬剤師は、オンライン上で服薬指導を実施する場所に、意図しない第三者が紛れ混んでいないかなど、プライバシーに留意する必要があります。

オンライン服薬指導の調剤報酬(点数)

2022年に実施された診療報酬改定により、オンライン服薬指導と調剤報酬の評価が見直されました。さらに、服薬管理指導料という項目が新たにできたことで、従来の調剤報酬とは点数や要件も異なっています。

改正後の具体的な調剤報酬は、原則3ヶ月以内に処方箋を提出した患者さんは「45点」、それ以外の患者さんは「59点」になりました。

参照:厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要」

オンライン服薬指導を実施するメリット

ここからは、オンライン服薬指導を実施する3つのメリットを紹介します。

  1. 時間と場所を選ばずに服薬指導を受けられる
  2. 患者の負担を軽減できる
  3. 感染リスクを軽減できる

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。

時間と場所を選ばずに服薬指導を受けられる

オンライン服薬指導を実施する最大のメリットは、時間と場所を選ばずに受けられることです。

自宅で服薬指導を受けられるので、体調不良の中、通院後に薬局へ足を運ぶ必要もなくなる上、薬局での待ち時間によるストレスを軽減もできます。仕事の合間に受診している方は、仕事のスケジュール調整がしやすくなるでしょう。

また、医療資源が不足している地域に住んでいる方なら、より質の高い医療サービスを受けられる機会となります。

患者の負担を軽減できる

オンライン服薬指導を実施することで、患者にかかる負担を軽減できます。

処方箋の原本を薬局まで送付する手間はかかりますが、服薬指導を受けるにあたって直接足を運ぶ必要はありません。

感染リスクを軽減できる

オンライン服薬指導を実施すれば、患者が薬局内に集まることを防止できるため、ウイルス蔓延による感染リスクを回避できます。

特に、高齢者や小さい赤ちゃんなど感染リスクが懸念される方にとっては、オンライン服薬指導によるメリットが大きいでしょう。

オンライン服薬指導が抱える課題

オンライン服薬指導には多くのメリットがある反面、抱える課題もあります。

ここでは、オンライン服薬指導が抱える以下の課題について、詳しく解説していきます。

  1. 状態把握の正確性が低下する恐れがある
  2. 環境や知識次第では実施できない可能性がある
  3. 薬の受け取りまでタイムラグが発生してしまう

状態把握の正確性が低下する恐れがある

オンライン服薬指導は、画面を通して患者さんと対話しながら進めます。直接顔を合わせることができないため、患者さんの顔色や体調、精神状態などの状態が把握しにくいという課題があります。

オンライン服薬指導を実施する上では、状態把握の正確性を高めるための方法を検討する必要があります。服薬期間中のフォローを行うなど、オンラインだけに頼らない施策の検討も必要になるでしょう。

環境や知識次第では実施できない可能性がある

薬局側がオンライン服薬指導の導入をしても、患者さんの状況によって実施が困難なケースもあります。

オンライン服薬指導に必要なインターネット環境が、患者さんの自宅などにない場合は、オンライン服薬指導の実施はできません。インターネット環境がある場合でも、患者さんや患者さんに付き添う方の、通信機器に関する知識が乏しいと実施が難しいでしょう。

薬の受け取りまでタイムラグが発生してしまう

直接対面で服薬指導を受ける場合は、受診後そのまま薬局を訪れ、その場で薬を受け取ることが可能です。

オンライン服薬指導の場合、服薬指導を受ける日時が受診から数日経っていることも多く、薬の受け取りまでにタイムラグが生じてしまう恐れがあります。

薬が切れてしまい当日どうしても必要な場合や、症状が強く出ていてすぐに服用したい場合などには、利用が難しいケースもあります。

オンライン服薬指導を実施する流れ

オンライン服薬指導の実施は、一般的に以下の流れになります。

  1. 医療機関へ受診する
  2. オンライン服薬指導を予約する
  3. 処方箋原本を提出する
  4. オンライン服薬指導を受ける
  5. 決済・薬を受け取る

医療機関へ受診する

オンラインもしくは対面で、医療機関を受診します。受診時、患者さんが医師にオンライン服薬指導を受ける旨を伝えておくとスムーズです。

医療機関側がオンライン服薬指導を把握している場合は、診察終了後、患者さんの希望薬局へ処方箋を送付できます。

医療機関側が把握していないと、患者さん本人が薬局へ直接処方箋を提出することになり、手間がかかります。定期的に利用がある患者さんには、担当医師へ伝えるように案内すると良いでしょう。

オンライン服薬指導を予約する

受診が終わったら、オンライン服薬指導を予約します。予約方法は、オンライン服薬指導を実施している薬局に直接問い合わせるか、薬局の公式アプリなどからできます。予約の際に、都合の良い日時や処方される薬の受け取り方法、決済方法などを選択します。

処方箋原本を提出する

オンライン服薬指導の日時までに、有効期限内の処方箋原本が該当の薬局に提出されている必要があります。有効期限は原則発行日を含めて4日以内なので、注意しなければなりません。

提出方法は、郵送や直接どちらでも行えます。

また患者が受診した医療機関が、処方箋を一旦FAXやメールにて送付し、後日郵送することも可能です。

オンライン服薬指導を受ける

予約の日時になったら、オンライン上で薬剤師より服薬指導を受けます。

薬局によって、オンライン服薬指導に使用するツールが異なる場合があります。専用アプリがある場合は、該当の手順に従いましょう。

服薬指導の内容は、直接対面するときと同様に、薬剤の情報提供や薬の効能効果や副作用、飲み合わせや取り扱いの注意事項の説明になります。

直接対面する指導ではないため、状態の把握がしづらいので、質問や気になる症状などがあれば、具体的に確認しましょう。

決済・薬を受け取る

専用アプリなどを利用している場合には、アプリ上で決済を済ませます。薬の受け取りは配送か薬局で直接受け取るか、選択できるケースがほとんどです。

配送を選択した場合には、別途配送料がかかることがありますので、気になる方は事前に担当する薬局へ確認しておくことをおすすめします。

まとめ:オンライン服薬指導を導入して患者さんと薬剤師の負担を軽減しよう

オンライン服薬指導は、患者さんの移動時間や薬局での待ち時間が軽減される上、感染リスクを避けられるなど様々なメリットがあります。薬剤師にとっても薬局の混雑緩和などにより業務の負担が軽減されます。

セキュリティなどの留意点はあるものの、オンライン服薬指導の導入が増えることで、患者さんだけでなく、薬剤師や薬局にとっても多くのメリットがあるといえるでしょう。

ただし、現状では浸透し切れていないため、普及や改善も含めて進めていく必要があります。