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ダブルチェックの有用性とミスを減らす方法を解説【クリニック向け】

仕事をしていれば1度は耳にするダブルチェックですが、重要かつ有用な作業の一つです。

ダブルチェックには、医療安全対策の一環としても大きな役割を持ち、インシデントの発生を防ぐ効果が期待できます。

新人、ベテラン問わず、どんな職員でも必ずミスをする可能性はあり、そのミスを見落とさないよう、極力ゼロにしていくためには必要な作業です。

そこで本記事では、ダブルチェックが医療現場・看護においてどのような有用性があるのか、ダブルチェックのやり方やミスを減らすための方法などについて紹介します。

ダブルチェックとは?看護における有用性

ダブルチェックとは、ミスがないかを確認し未然に損害を防ぐため複数回に渡って確認作業を行うことを指します。
もし書類や処方する薬のリスト(処方箋)などを作成してチェックなしに進めてしまうとミスを見落としてしまうかもしれませんが、2度注意深くチェックをすればミスを発見できる可能性が高まります。

看護においては、患者への投薬の際に誤った薬を投与してしまうミスを防ぐために、必ず複数の看護師でダブルチェックをする必要があります。
用量、濃度、方法など細かな指定がある薬剤を正しく投与するためには、事前の確認が不可欠です。
薬剤は名前や形状がそっくりで紛らわしいものがたくさんありますが、ダブルチェック、さらにはトリプルチェックを行い、入念に確認を行うことでミスを最小限に抑えられます。

ダブルチェックの方法

ダブルチェックを行う方法は、主に以下の7つです。

  1. 1人連続型
  2. 1人時間差型
  3. 1人双方向型
  4. 2人連続型
  5. 2人連続双方向型
  6. クロスチェック
  7. トリプルチェック

1人連続型

1人で2回繰り返しでチェックする方法です。
1人で行う方法なので複数人を拘束する必要がなく、人員不足の際に用いられることが多いです。
しかし、細かいミスであれば2度の確認をしても気づきにくいこともあり、複数人で行う方法よりも正確性が低く、やや不安が残ります。
ミスの発生率があまり高くないような、単純作業でのチェックで使われる事が多い方法です。

1人時間差型

1人時間差型は、1人で2度チェックする方法ですが、連続で行わずに1度目のチェックと2度目のチェックで少し時間をおいてからチェックを行います。
連続で行うよりも1度別の作業を挟んだ方が、また一からチェックするような感覚で見られるのでミスに気づきやすくなります。
時間をおかずに続けてチェックをすると、2度目のチェックを流れ作業のように行ってしまう可能性もあるため、人員不足等でチェックを1人でする必要がある際は1人時間差型がおすすめです。

1人双方向型

1人で行う場合でも、1度目とは違う方向から2度目のチェックをする方法もあります。
1度目は上から順に確認し、2度目は下から順に、単語の並びも逆から確認するなどして時間をかけてチェックします。
1人で行うならこちらも取り入れたいチェック方法です。できれば時間差型と双方向型を組み合わせて、時間を空けて2度目は下からチェックするなどの方法が望ましいです。

2人連続型

2人連続型は、多くの職場が取り入れている一般的なダブルチェック方法です。
2人で順番に確認を行う方法で、1人でチェックするよりも他人の目が入ることで精度が高くなりミスの減少が期待できます。
自分では気づかなくても他人ならミスが発見できたり、気づきが生まれたりする可能性が高いです。
連続型なため、1人目が確認したらすぐに2人目に渡し、あまり長い時間をかけずにチェックしていきます。そのため、普段の業務の流れでスムーズに行えて時間もかかりすぎず、それでいて2人での確認なため精度も高いことから、かかる時間に対して高い効果が得られます。

2人連続双方向型

2人連続双方向型は、2人がそれぞれ異なる視点から確認することでミスを発見しやすくなる方法です。
1人目(作成者)が上から、2人目が下からといった具合に、見方を変えて見落としを防ぎます
通常の方法よりも時間はかかりますがその分効果も高いため、ミスの発生率が高いものを確認する場合に用いられます。
2年目以下の経験が浅いスタッフ同士でチェックすることは避け、どちらか一方は経験のあるスタッフのペアで行いましょう。

クロスチェック

クロスチェックは、1度目とは違うチェック方法、異なる視点で確認する方法です。
ミスの見落としなく確実性を持たせたい場合に用いられます。
病院に例えるなら、患者が病院で薬を処方されて薬局で受け取る際に、薬剤師は処方箋を確認しますが、薬剤師が医師とは異なる目線で確認することで、ミスがあった際に発見できる可能性が高くなります。
確実性を持たせるための方法なので、他の方法と比較してコストや時間はかかってしまいますが、絶対にミスが許されない場合に用いるとよいでしょう。

トリプルチェック

トリプルチェックは、3人で順番に注意深く確認する方法です。
3重でチェックをするため、その分見落としが減ることが期待できますが、3人分のコストと時間がかかるため、少人数で経営されているクリニックでは取り入れるのは難しいかもしれません。
3人の時間を確保するのが難しいという場合は、1度目は作成者、2度目は他者、3度目にもう一度作成者がチェックするという方式を取ると確実性が増します。2度目か3度目のどちらかを逆から(下から)のチェックにするなどすれば、より精度が高まります

ダブルチェックでミスが発生する理由、注意点

ここからは、ダブルチェックでミスが起こってしまう理由や、ダブルチェック時 の注意点を紹介します。
インシデントの発生原因にもつながりますので、ダブルチェックでミスが発生しないように改善するためにも以下の6点に当てはまっていないかを確認しましょう。

  1. 集中力の低下
  2. ミスはないという思い込み
  3. お互いの作業に対する過信
  4. 担当者のスキル不足
  5. チェック時間の不足
  6. チェックの甘さ

1.集中力の低下

長時間休憩なしに作業をしていれば集中力が低下し、結果的にミスを引き起こす可能性があります。
適度な休憩時間を設けるか、作業方法を変えるなどの工夫が必要です。

事務スタッフなどは、デスクワークでPC画面を見続けての作業は徐々に集中力が低下していきますので、画面上でチェックするのではなく、印刷して紙にペンで印を付けながら行うなどの工夫をするとよいでしょう。
看護スタッフは動き回り続けることでの疲労の溜まり具合から、集中力が低下する事が考えられるので、休憩しやすい環境づくりを意識しましょう。

2.ミスはないという思い込み

1人でダブルチェックする際、「これくらいの単純作業だし、ミスなんてないだろう」と思い込んでしまい、飛ばし読みをしてしまうなどで見落としが発生しがちです。
入社や異動からしばらく経って慣れてきたタイミングが最も起こりやすいです。

慣れてきたことで作業スピードのアップを図り、その結果ダブルチェックも疎かになってしまうケースが挙げられます。
ミスはないという考えを捨ててチェックをすれば、見落としを減らせるでしょう。

3.お互いの作業に対する過信

ダブルチェックを行う2人の間で、お互いにミスはなさそうと過信してしまい見落としが発生するケースもあります。
この人がチェックしているからたぶん大丈夫だろう」「ベテランの上司が確認してくれているから」という責任感の低下が引き起こすもので、これではダブルチェックの意味がありません。

お互いにミスはあるものだという前提のもと、責任感と緊張感を持って各々の視点で確認をすれば見落としを最小限に抑えられます。
ダブルチェックの重要性を改めて認識してもらうことも必要です。

4.担当者のスキル不足

他部署から異動してきて間もない担当者が、まだ経験が浅くスキルが不足していれば、ダブルチェックを任せてもミスを発見できずに見落としが発生してしまう恐れがあります。
異動してきた上司がその部署の業務をまだ完全に把握しきれていない状態であれば、見落としが発生しても仕方のない部分もあります。

経験が浅い人が業務を把握できるまでの間は、経験豊富な人や低限のスキルを有している人がダブルチェックを行うようにしましょう。

5.チェック時間の不足

十分な時間を確保できずに、短い時間の中で急いでチェック業務を行い、ミスを見落としてしまうケースもあります。
忙しい医療現場の中では時間が不足するのは仕方がないかもしれませんが、ミスが起きて損害が発生するのは避けたいです。

忙しくてもスタッフ同士でカバーし合って、時間を確保して慎重にチェックをするのが望ましいです。
忙しさの根本的な原因である、人手不足の改善や患者受付数の見直しを検討するのも一つの手段です。

6.チェックの甘さ

業務に慣れてきた頃に起こりうるもので、「もう慣れてきたし大丈夫」という心理が働き、チェックが甘くなってしまう傾向にあります。

また、「リンゲルマン効果」によりチェックが甘くなってしまうケースもあります。
リンゲルマン効果とは、共同での作業時に一人あたりの作業効率が下がる現象をいい、「自分以外にもうひとりが確認するから」と緊張感が損なわれてしまいます。
その結果、ほとんどチェックをせずに進めてしまって、ミスを見落としてしまうケースが発生します。

ダブルチェックでミスを減らし、有用性を高める方法

ダブルチェックでのミスを減らすことはインシデントの発生減少にもつながります。
ダブルチェックでミスを減らし、有用性を高めるには以下の5つの方法がおすすめです。

  1. ツールを導入する
  2. ルールを策定する
  3. ミスの原因を分析・追究する
  4. チェック時間を確保する
  5. 知識・経験のあるスタッフがチェックする

1.ツールを導入する

電子カルテなどのツールを導入すればミス防止の効果も期待できます。
手書きの紙カルテよりも文字を認識しやすく、見間違い等も発生しづらくなり、看護師や事務スタッフへの指示の伝達ミス・転記ミスや請求誤り等を防止できます。
投薬に関しても、薬の名称から検索できるため、手書きと比較して医療事故を防ぐことができます。

その他にも、RPA(Robotic Process Automation)というツールで機械的なダブルチェック方法を取ることで、ヒューマンエラーを減らすことが可能です。
人の目で確認するのはどうしてもミスが発生してしまうもので、ツールでチェックすれば人為的ミスをなくすだけでなく、労力を軽減するメリットもあります。

2.ルールを策定する

チェックをする際のルールやマニュアルを用意しておくことで、「なんとなく」でダブルチェックをするのを防ぎ、共通意識と正確性を高める効果があります。
チェック方法を統一することで、担当者ごとのチェック基準の差異をなくして一定の精度を保ってダブルチェックができます。

指差しチェックは目で流し見するのを防ぐ効果があり、一単語ずつ、一文字ずつとルールを決めておけば、一つ一つ丁寧にチェックできる効果があります。

また、チェックリストを作成すればやるべきことが明確になるため、どういう基準で何をチェックすればよいのかがわかりやすくなって確実性が上がります。意識・集中力が高まる効果もあり、ミスを減らすことができます。

3.ミスの原因を分析・追究する

人為的ミスを確実にゼロにすることは難しく、ミスが起こることは仕方のない部分もあります。
ミスの原因としてよくあるのは確認不足と不注意ですが、あまりにもミスが頻発する場合は原因がどこにあるのかを細かく追求する必要があります。

たとえば、疲労により意識が低下していてぼんやりしていたり、連絡が不足しているケースでは上司や他の同僚から正確な指示・連携がなかったりなど、根本的な原因が別の部分に潜んでいる可能性があります。
労働環境の改善や、上司の指導力を高めたりコミュニケーションを多く取るようにするなど、働きやすい雰囲気を作ることも重要です。
ミスが起こってしまったら仕方のないことと切り替えて、原因を分析・追求して、2度目が起こらないように努めましょう。

4.チェック時間を確保する

チェック時間を確保することは重要で、チェックする時間が足りず雑な確認になってしまうことでミスが起こる恐れがあります。
時間がないからという理由で他業務と同時進行でダブルチェック業務を行ってしまったり、急ぎ足でチェックを行ったりすると、見落としが発生してしまいます。

また、忙しく時間がないという場合は、労働時間の長さによる疲労も溜まっていることが多く、集中力が保てずミスを起こす可能性がより高くなってしまいます。
しっかり時間を確保して、集中できる環境下で余裕を持ってチェックを行いましょう。

5.知識・経験のあるスタッフがチェックする

知識・経験のない新人スタッフにチェックを任せると思わぬ漏れが発生する可能性があるため、ベテラン・中堅のスタッフに任せるのが望ましいです。
新人教育の一環のためにダブルチェックから始めるという方法を取る職場は少なくないかもしれませんが、その場合は必ず上司・先輩が一緒にチェックするようにしたほうがよいです。
やむを得ず経験の浅いスタッフにチェックを依頼する場合は、マニュアルを用意してマニュアル通りに行ってもらうようにしましょう。

ですが、その場合も必ず正しくチェックできているかの確認は行い、数回チェックして問題ないことを確認できてから1人で任せるようにしたほうが無難です。

まとめ:ダブルチェックをミスなく行い、医療現場におけるエラーをなくしていこう

ダブルチェックはミス防止のために行いますが、そのダブルチェックにおいてミスが発生してしまっては元も子もありません。
ダブルチェックにおけるミスが発生している場合は、ダブルチェックの方法を改善したり、マニュアルを作成したり、可能な限りの対策を行ってチェック体制を整えていく必要があります。
ダブルチェックをミスのないように慎重に行い、医療現場におけるエラーを極力減らしていきましょう。