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診療報酬の仕組みとは?計算方法もあわせて分かりやすく解説!

保険医療機関では、公的医療保険制度により、患者は自己負担額のみで医療を受けられます。

患者の自己負担分以外は、医療保険者によって医療機関に支払われる仕組みです。

とはいえ、患者の自己負担分は1割負担や3割負担があり、どのように計算されるのかわからないことも多いでしょう。

そこで本記事では、診療報酬の仕組みや計算方法について解説します。計算シミュレーションや請求手順についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を監修した医師
見立 英史 国立・私立大学や開業医勤務を経て私立大学病院に勤務。一般歯科診療から全身麻酔手術症例までを行っています。日本口腔外科学会指導医・専門医、日本口腔科学会指導医。専門分野は口腔粘膜疾患。  

診療報酬とは医療行為によって医療機関に支払われる対価のこと

診療報酬とは、医療行為の対価として医療機関に支払われるものです。

例えば、商店で商品を購入する際には、商品代金と引き換えに商品を受け取り、飲食店では提供された料理に代金を支払います。

医療では、病院が提供する医療行為について、患者の自己負担分と患者が加入している保険組合が診療報酬という対価で支払うのです。

診療報酬が医療機関に支払われる仕組み

医療機関で、患者が医療行為を受けると「医療費」が発生します。

医療費のうち、患者は加入している保険によって、1〜3割を自己負担します。残りは、医療行為を提供した医療機関に対価として「診療報酬」が支払われる仕組みです。

診療報酬の支払い方式は2種類

診療報酬の支払い方式は、「出来高払い」と「包括払い方式」の2種類です。それぞれに特徴を紹介します。

  1. 出来高払い方式
  2. 包括払い方式

出来高払い方式

出来高払い方式は外来で採用されることが多く、診察内容によって診療報酬が変動します。

出来高払いでは、検査や手術など医療行為ごとに細かく点数が設定されており、治療や診療で発生した内容を合算して診療報酬を算出します。

行われた医療行為が多いほど、診療報酬は増えます。しかし、その算出において多数の複雑なルールがあること、また過剰診療の恐れがあるのが留意点です。

包括払い方式

包括払い方式は、国が定めた診断と処置の組み合わせが適用されて医療費が定額となるので、治療内容による診療報酬の変動はありません

入院において包括払い方式を採用するケースが多い傾向にありますが、診療報酬が固定されます。医療機関としては低コストでの医療提供を目指すため、粗診粗療になる危険性が留意点です。

診療報酬の計算方法

続いて、診療報酬の計算方法について解説します。

  1. 診療報酬の主な種類
  2. 決められた要件を満たすと加点

診療報酬の主な種類

診療報酬の主な種類は、以下の通りです。

  • 初診料・再診料・時間外加算・乳幼児加算
  • 医学管理、在宅医療
  • 検査・画像診断
  • 投薬注射・リハビリ
  • 処置
  • 手術
  • 麻酔
  • その他

初診料は、初めて医療機関を受診した際に発生します。ただし、患者都合で治療を中断したり通院期間が一定以上あいて再度受診した際は、同じ症状であっても再度初診料が発生します。

再診料は、同じ症状で継続して通院する際に2回目から発生します。時間外加算は、病院の診療時間外に受診した際に発生するものです。

乳幼児加算は、6歳未満の子どもが受診した際に発生します。6歳未満の子どもが初めて医療機関を受診する場合は、「初診料」と「乳幼児加算」の両方が加点可能です。診療時間外では「時間外加算」も算定できます。

診療報酬は上記以外にもさまざまな項目があり、医療行為ごとにそれぞれ点数が定められています

決められた要件を満たすと加点

診療報酬は、決められた要件を満たしたときに加点されるものです。

ただし、複雑なルールがあります。街中にある診療所と、大きな総合病院とで加算できるものが異なります。

管理料では、月1〜2回しか算定できないものがある、実際に行った処置内容に対応する点数が設定されていない場合は、何も算定できないこともあります。

診療報酬の計算シミュレーション

 

それでは、たとえばインフルエンザで医療機関を受診した場合の診療報酬をシミュレーションしてみましょう。診察と検査を受け、薬を処方してもらった想定で見ていきます。(2024年3月現在)

初診料 288点
機能強化加算 80点
インフルエンザ・ウイルス抗原定性 139点
鼻腔・咽頭拭い液採取 5点
免疫学的検査判断料 144点
処方箋料(その他) 68点
一般名処方加算 17点
合計 731点

上記の例での診療報酬合計は、731点です。

  • 患者が全額自己負担:731×10=7,310円
  • 患者の自己負担が3割の場合:731×3=2,190円
  • 自己負担3割の場合、医療機関が受け取る金額:7,310円-2,190円=5,120円
  • 患者の自己負担が1割の場合:731×1=731円
  • 自己負担1割の場合で、医療機関が受け取る金額:7,310円-730円=6,580円

なお、診療報酬は健康保険法第75条により「10円未満を四捨五入する」と決まっていることと、この保険点数は改定されることがあります。医療費通知とは金額が多少異なる場合があるでしょう

診療報酬の請求手順5ステップ

では次に、診療報酬の請求手順のステップを順番に見ていきましょう。

  1. 電子レセプト請求を準備する
  2. 診療情報をレセプトコンピューターに入力する
  3. 入力内容をチェックする
  4. 医師でダブルチェックを行う
  5. 翌月10日までに審査支払機関へ提出する

電子レセプト請求を準備する

はじめに、電子レセプト請求の端末(レセプトコンピューター:レセコン)を準備します。

レセプトとは「診療報酬明細」のことで、医療保険者に請求する費用を算出するものです。

レセプトは、医師もしくは医療事務が行う業務で、医療機関の収入源となる診療報酬を受け取るために欠かせません。

診療情報をレセプトコンピューターに入力する

医療事務担当者は、診療情報をレセコンに入力します。

診療報酬は、項目ごとに点数と算定のルールが決められていますが、レセコンを導入していれば、算定のルールに従って自動で計算されます。

入力内容をチェックする

レセコンに入力した内容に誤りがないか、念入りなチェックが欠かせません。というのも、レセプト内容にミスがあると、提出したレセプトが受理されず返される(返戻)の可能性があるからです。

レセプトが返戻された場合、その理由が添えられているので、内容に応じた修正をし、再提出します。

しかし、病名と投薬内容の不一致、過剰な検査など、レセプト内容が不適切と判断された場合は、診療報酬が減額されるので、注意が必要です。

医師とダブルチェックを行う

医療事務がレセプト内容を確認した後、ダブルチェックを医師に依頼します。

例えば、医療事務が病名と診療内容に矛盾を発見した場合は、医師に確認してもらわなければなりません。

医師とダブルチェックすることで、返戻や減額査定のリスクを防ぎます

翌月10日までに審査支払機関へ提出する

レセプトは毎月末に行い、翌月10日までに審査支払機関に提出します。

もし返戻があり、翌月10日に間に合わない場合は「月遅れ」として翌々月に請求できますが、それだけ診療報酬の受け取りも遅れるので、注意が必要です。

診療報酬は定期的に改定される

 

診療報酬は、年度の変わり目などの時期に改定されます。

内閣や厚生労働省が医療制度の現状や社会情勢と照らし合わせながら、基本方針を策定します。

基本方針を元に、中央社会保険医療協議会が個別に項目を審議し、内容の見直しを行う仕組みです。

原則2年に1度ですが、それ以外に改定されることもあります。たとえば、歯科では被せ物で使う金属の相場価格変動を考慮して、半年おきに改定されたこともあります。なお薬価は、毎年改定されています。

まとめ:診療報酬の仕組みを理解して正しく利用しよう

診療報酬は、医療機関にとって大切な収入源です。

毎月レセプトで請求しますが、不備があれば返戻で請求が遅れたり、査定では減額される恐れがあります。診療報酬を正しく理解することが大切です。