開業医は年収が高い傾向があるため、勤務医から開業医への転向を考える方もいるでしょう。
中には年収1億円を稼ぐ開業医もいるといわれていますが、開業医の平均年収では1億円に遠く及ばないのが現実です。
そこで本記事では、開業医の平均年収や、年収1億円を稼ぐ方法について解説します。儲からない開業医の特徴も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
開業医の平均年収は約2,807万円
厚生労働省の医療経済実態調査によると、開業医の平均年収は、約2,807万円とされています。「勤務医の平均年収・手取り」と「診療科別の平均年収」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 勤務医の平均年収・手取り
- 診療科別の平均年収
参照:中央社会保険医療協議会|第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告
勤務医の平均年収・手取り
勤務医の平均年収は約1,500万円です。手取りは収入の約6~7割となるため、約900~1,050万円程度と見ていいでしょう。
平均年収だけで比較した場合は、開業医の方が約1.8倍多いことがわかります。しかし、開業医は税金や経費などの出費が多くなるため、手取りでは約1,600万円前後です。
また、開業医は勤務医よりも、責任の重さや業務量が多くなります。一方勤務医は経営に携わることはほとんどなく、業務量もある程度は限られるでしょう。
開業医は勤務医よりも年収や手取りが多い反面、業務量や責任が大きくなるのが特徴です。
診療科別の平均年収
勤務医の平均年収は、診療科によっても異なります。以下に診療科別の平均年収をまとめます。
診療科 | 平均年収 |
---|---|
内科 | 1,247万円 |
外科 | 1,374万円 |
呼吸器科・消化器科・循環器科 | 1,267万円 |
整形外科 | 1,289万円 |
脳神経外科 | 1,480万円 |
小児科 | 1,220万円 |
産婦人科 | 1,466万円 |
救急科 | 1,215万円 |
精神科 | 1,230万円 |
麻酔科 | 1,335万円 |
放射線科 | 1,103万円 |
眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科 | 1,078万円 |
参照:労働政策研究・研修機構|勤務医の就労実態と意識に関する調査
勤務医で最も平均年収が多いのは、脳神経外科と産婦人科で、平均年収は1,400万円超えです。診療科別では最も低い、眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科でも1,000万円を超えています。
開業医でも年収5,000万円〜1億円は可能?
開業医でも年収5,000万円~1億円を稼ぐのは不可能ではありません。
開業医の平均年収が約2,807万円であることを考えると、目標を達成するには単純計算で2倍~4倍の努力が必要になります。
具体的には、保険診療だけでなく自由診療を取り入れたり、副業や投資をしたりするのも選択肢です。
しかし、年収を増やすことばかりに目を向けていると、医療の質が低下し患者から離れられる恐れがあります。
開業医で年収5,000万円〜1億円を目指す場合は、患者ファーストを第一に考えたうえで稼ぐ方法を検討してください。
開業医で年収1億円を目指す方法
それでは、開業医で年収1億円を目指す2つの方法について解説していきます。
- 医療保険制度を用いない自由診療を行う
- 株や不動産などの投資を副業にする
医療保険制度を用いない自由診療を行う
医療保険制度を用いない自由診療を行うことで、開業医でも年収1億円を目指せる可能性があります。
- 美容外科
- アンチエイジング
- レーシック
- 不妊治療
- 男性型脱毛症(AGA)治療
- 人間ドック
- 歯科矯正・インプラント
診療科目は限られるものの、上記のような自由診療を取り入れることで年収1億円も不可能ではありません。
ただし、個人診療所の場合は所得にかかる税金の割合も大きくなります。年収1億円を目指すなら、節税対策を取り入れることも検討しましょう。
株や不動産などの投資を副業にする
株や不動産など、投資を副業にするのも選択肢の一つです。
ただし副業を行う場合は、病院経営と並行することになります。
年収1億円を目指すためであっても、副業にのめり込み本業を疎かにしないよう注意してください。
また、投資は必ず成功するとは限りません。失敗するリスクが伴うことも理解が必要です。
開業医で年収1億円を目指す5つの戦略・ポイント
続いて、開業医で年収1億円を目指す5つの戦略とポイントを紹介します。
- 好条件の立地で開業する
- 業務効率化を追求する
- 優秀な人材の獲得と育成に注力する
- 売上を積み上げる工夫をする
- 経営規模の拡大を模索する
好条件の立地で開業する
まずは、好条件の立地で開業することが大前提です。
どんなに最新の医療機器を完備しても、患者が来なければ年収1億円は目指せません。収入アップの実現には、集患や増患が重要になります。
診療科目に合わせて、ターゲットとなる患者が来院しやすい好条件の立地を選びましょう。
ただし、好条件の立地で開業する場合は、初期費用が高額になるのが留意点です。費用対効果を考えながら、最適な場所を選んでください。
業務効率化を追求する
業務効率化を追求することも重要です。
院内レイアウトが、スタッフ動線に配慮されていなければ業務効率化は図れないでしょう。
患者が待合室から検査室や診察室に移動する際、バリアフリーや通路の幅など患者動線に配慮されているかも大切です。患者動線に配慮されていなければ、スタッフのサポートが必要になり、その分業務にも影響するでしょう。
受付にはオンライン予約システムや、電話自動応答システムの導入も有効です。
業務効率化の実現には、院内スタッフが働きやすい環境作りや、患者動線への配慮を意識してください。
優秀な人材の獲得と育成に注力する
優秀な人材の獲得と育成に注力することも大切です。
クリニックの規模にもよりますが、1人の医師が対応できる患者数には限りがあります。
集患や増患を実現できなければ、年収1億円の目標達成はかなわないでしょう。
そこで、優秀な人材の獲得と育成が重要になります。
優秀な人材を獲得するには、採用基準が適切であることが重要です。給与以外にも労働時間や福利厚生など、求職者が働きたいと思える条件を提示してください。
新人の育成には研修制度の導入や、既存スタッフによるOJT※などを検討しましょう。
※職場での実践を通じて業務知識を身につける育成手法
売上を積み上げる工夫をする
年収1億円の実現には、売上を積み上げる工夫が欠かせません。
集患や増患対策には「宣伝」が必要です。チラシ配布や看板広告の他、ホームページの作成やSNSなど、インターネットを活用した宣伝も有効です。
まだ、開業して間もないのであれば、周辺エリアへのポスティングも効果的でしょう。
経営規模の拡大を模索する
そして、経営規模の拡大を模索しましょう。
既存クリニックが軌道に乗っているのであれば、分院展開も選択肢の一つです。
将来的に経営規模拡大を前提にした新規開業の場合は、フロアレイアウトに余裕を持たせておきましょう。
儲からない開業医の特徴5選
では次に、儲からない開業医の特徴5選を紹介します。
- 開業後の運営方針やビジョンがない
- 経営スキルが備わっていない
- 目先の利益ばかりで患者のことを考えていない
- スタッフとの連携が上手く取れていない
- 地域の患者ニーズを正しく把握できていない
開業後の運営方針やビジョンがない
開業後の運営方針やビジョンがない開業医は、儲からない可能性が高いといえます。
クリニックの方向性が曖昧なまま運営を続けると、スタッフ同士の認識にズレが生じる恐れがあります。
スタッフによって対応が異なれば、患者満足度の低下により、クリニックの評判を落としかねません。
運営方針やビジョンは、開業前に明確化しておきましょう。
経営スキルが備わっていない
院長に経営スキルが備わっていないのも、儲からない開業医の特徴です。
院長は患者の診療と並行して、クリニック経営も行わなければなりません。クリニック経営では集患対策やスタッフの管理、宣伝や医療機器の管理などマネジメントスキルが必要です。
開業医で年収1億円を目指すのであれば、院長の経営スキルが問われます。
目先の利益ばかりで患者のことを考えていない
目先の利益ばかりで、患者のことを考えない開業医は儲からない可能性があります。
クリニックの新規開業に伴い、多くの費用がかかります。そこから年収1億円を目指す場合は、利益にとらわれてしまうのも仕方ありません。
ですが、患者なしで安定したクリニック経営の実現はかないません。
患者が安心して通院できるよう、患者ファーストのクリニック経営を心がけましょう。
スタッフとの連携が上手く取れていない
スタッフとの連携が上手く取れていないのも、儲からない開業医の特徴です。
クリニックには、看護師や医療事務、検査技師などさまざまなスタッフが働いています。また、開業医は医療従事者以外にも、弁護士や税理士など多職種との連携も必要です。
コミュニケーションスキルが低ければ、スタッフや多職種との良好な関係は築けません。
連携が上手く取れなければ、医療の質が低下したり経営に影響したりする恐れがあります。
開業医を目指すなら、スタッフとの連携が上手く取れるよう、積極的かつ適切なコミュニケーションを図ってください。
地域の患者ニーズを正しく把握できていない
地域の患者ニーズを正しく把握できていない開業医は、儲からない可能性が高いといえます。
例えば、高齢者が多い地域で小児科を開業しても、来院する患者は限られます。
新規開業のクリニックは清潔感があり、初期は来院する患者がいても、通院に不便と感じればかかりつけ医になるのは困難でしょう。
開業医で年収1億円を目指したいなら、地域の患者ニーズを正しく把握する必要があります。
開業医の年収に関するよくある質問
それでは、開業医の年収に関するよくある質問を紹介します。
首都圏と地方では開業医の年収に差はありますか?
開業医においては、地方の方が首都圏よりも年収が高い傾向が見られます。
理由として、首都圏は設備が整った大学病院があり、開業医は飽和状態なのが現状です。首都圏では競合が多いため、集患が困難で赤い経営になり廃業するクリニックも少なくありません。
地方では、クリニック不足も懸念されていますが、競合が少ないため地域の患者ニーズにマッチしていれば集患しやすいでしょう。
首都圏と地方の開業医に年収以外で違いはありますか?
首都圏と地方の開業医では、患者との関わり方にも違いが生じる傾向が見られます。
地域の患者ニーズにマッチしていれば、スムーズに集患できるでしょう。しかし、その分業務量や責任も増え、診療時間内に診察が終わらないことも多くなります。
クリニック開業にかかる初期コストはどれくらいですか?
診療科目やクリニックの規模にもよりますが、新規開業には8,000万円程度かかるとされています。
融資を受ける場合は、自己資金として1,500万円前後が目安です。クリニック経営が軌道に乗るまでは、月々の返済が困難になることも想定しなければなりません。
クリニック開業には初期コストがかかるため、年収1億円を目指すには必要な資金を把握することが大切です。
まとめ:開業医なら年収1億円も可能!患者を第一に考えて年収アップを目指そう
開業医でもやり方次第では、年収1億円を目指すのも不可能ではありません。
しかし収入を増やすためには、患者を第一に考えることが重要です。目先の利益だけにとらわれると、医療の質が低下して患者離れが進む恐れがあります。
患者を第一に考えながら、副業や投資など自身に合った方法で収入を増やし、年収1億円を目指してください。