労働基準法では賞与に関する明確な規定はないものの、労働契約締結時には賞与について明示する必要があります。
ですが、資金繰りが厳しい病院では賞与について悩む院長や経営者も多いでしょう。一方で、働く職員にとって賞与は収入に直結するため、就職先を選ぶ際の重要な指標です。
そこで本記事では、病院の賞与・ボーナスがいくらなのかについて解説します。支給される時期や職業別の平均額も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
病院の賞与とは?
病院の賞与とは、月々の定期給与とは別に労働の対価として支払うもの。ボーナスや特別手当などの呼び方もありますが、意味合いは変わりません。
定期給与は毎月1回以上と定められていますが、賞与には明確な規定はなく1~2回の場合もあれば、複数回支給する場合もあるでしょう。
ただし、賞与の支払いについて法律上明確な決まりはないため、労働条件で定められた場合のみ支払う義務が生じます。
病院の賞与は3種類
病院の賞与には、以下の3つの種類があります。それぞれにどのような特徴があるのかを見ていきましょう。
- 基本給連動型賞与
- 業績連動型賞与
- 決算賞与
基本給連動型賞与
医療業界や福祉業界を始め、多くの企業では基本給連動型賞与を採用しています。
基本月給の◯ヶ月分で算出されますが、基本的に月数は全職員一律です。ただし、役職や等級によって評価係数が異なるため、賞与の支給額は個々で異なります。
基本給に月数をかけ合わせるといったシンプルな算出方法で、業務変動に左右されないのが特徴です。
業績連動型賞与
業務連動型賞与は、企業業績や個人の成績に連動して賞与額が変わります。
基本月給を元にしないため、職員によって支給額に差が出るのが特徴です。
利益につながる成果をあげれば賞与が増えるため、モチベーションアップに役立つでしょう。しかし、業績不振により減額または賞与なしになる可能性があります。
決算賞与
決算賞与は、決算時期の業績に応じて、利益を賞与として職員に還元するものです。
- 事業年度終了日に賞与額が決まっている
- 事業年度終了日翌日から1ヶ月以内に支給する
上記2つの条件をクリアしていれば損金に認められることから、企業にとっては節税対策になるのがメリットです。
病院の賞与はいつ支給される?
病院の賞与については明確な規定がなく、医療機関がそれぞれ支給時期を決めるため一律ではありません。
賞与の支給時については、夏季と冬季の年2回が最も多く、春季を加えて年3回支給する場合もあるようです。
病院の平均賞与は基本給の2〜3ヶ月分が目安
病院の賞与平均は、2~3ヶ月が目安です。
例えば、基本給が20万円である勤務先のクリニックで、賞与の基準が「基本給の3ヶ月分」だった場合。20万円かける3ヶ月分の60万円が賞与になります。
もちろん、あくまでも目安ですので、スタッフごとのクリニックへの貢献度も加味して決定しましょう。
病院で働く職員別の平均賞与
病院では医師や看護師以外にも、さまざまな職員が業務に従事しています。
ここでは、厚生労働省が令和3年にまとめた、病院で働く職員別の年間平均賞与を見ていきましょう。
職種 | 国立(前年度) | 公立(前年度) |
---|---|---|
医師 | 2,329,391円 | 2,265,830円 |
看護職員 | 1,147,150円 | 1,278,958円 |
薬剤師 | 1,277,610円 | 1,359,661円 |
看護補助職員 | 729,933円 | 607,803円 |
医療技術員 | 1,197,921円 | 1,270,807円 |
医療事務 | 1,003,090円 | 1,149,446円 |
その他の職員 | 1,058,322円 | 949,950円 |
看護職員とは、看護師・保健師・助産師・准看護師などが該当します。医療技術員は、診療放射線技師・臨床検査技師・栄養士など専門技術を持つ職員のことです。
職員によって賞与額が変わることが分かるでしょう。
参照:厚生労働省|第23回医療経済実態調査の報告(令和3年実施)
病院における賞与の注意点
それでは、病院における賞与の注意点を5つ紹介します。
- 支給条件は明確にする
- 昇給額と賞与のバランスを考慮する
- 賞与額を安易に確約しない
- 支給日在籍要件を決めておく
- 職員間で不公平感が生まれないように工夫する
支給条件は明確にする
賞与の支給条件は明確化しておきましょう。
病院の賞与に関しては明確な規定はなく、雇用主の裁量で決められます。しかし、賞与の支給には条件があることを明確化しておかないと、思わぬトラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。
開業初年度は資金繰りが厳しいため、賞与を出せないこともあるでしょう。
賞与支給時点で6ヶ月または1年以上在籍しているなど、賞与の支給条件を明確化してください。
昇給額と賞与のバランスを考慮する
昇給額と賞与のバランスを考慮することも重要です。
昇給は職員にとって喜ばしいことですが、昇給額が大きくなると賞与をプラスした場合の人件費も大きくなります。
昇給は年間3,000円~4,000円を目安に、賞与とのバランスを考えながら決めるといいでしょう。
賞与額を安易に確約しない
賞与額を安易に確約しないようにしてください。
新規開業で職員確保のため、賞与3ヶ月分など好条件を提示しても、実際は資金繰りが厳しければ約束通りの賞与を支払えない可能性があります。もし払えなければ条件が違うと、スタッフの不満につながりかねません。
また、基本給ベースで5ヶ月分なのに、基本給5ヶ月分と勘違いされることもあるでしょう。
賞与額は安易に確約せず、支給条件なども記載するのが理想です。
支給日在籍要件を決めておく
賞与は支給日までに在籍要件を決めておきましょう。
- 賞与は勤続1年以上経過していること
- 勤続1年以上経過し、支給日に在籍していること
このように、具体的な期間を明確にしておきます。この場合、1年在籍した翌日に退職した職員は対象外です。
- 夏季賞与の査定期間:1月~6月/7月に支給
- 冬季賞与の査定期間:7月~12月/翌1月に支給
上記のように明確化しておけば、職員も賞与の仕組みを理解しやすくなります。
職員間で不公平感が生まれないように工夫する
職員間で不公平感が生まれないように工夫することも大切です。
特に女性が多い職場では、賞与額に差があると職場の雰囲気が悪くなる恐れがあります。
職員間で賞与額の話をする可能性があるので、できるだけ差をつけすぎないよう心がけてください。
病院の賞与に関するよくある質問
では最後に、病院の賞与でよくある質問を紹介します。
派遣やパートでも賞与はもらえますか?
病院によって異なりますが、派遣やパートには賞与を支給しないのが一般的です。
扶養範囲内である場合、賞与を支給すると扶養内では働けなくなる可能性があります。ただし、寸志として少額の賞与を支給されることもあるでしょう。
新卒でも病院から賞与はもらえますか?
新卒でも、雇用契約書に賞与の記載があればもらえます。
ただし、新卒の場合は支給対象外もしくは、もらえても0.3ヶ月分程度であることが多いでしょう。
病院の賞与は義務ではないため、中には正職員でも賞与がもらえないケースはあります。
契約の際は、賞与に関する事項をしっかりと確認しておいてください。
まとめ:病院の賞与は職員間の公平性を意識しよう
病院の賞与は雇用主の裁量で決められますが、不公平感があると職場の雰囲気が悪くなり、業務に影響する恐れがあります。
賞与に関するルールは明確化しておくことも大切です。
職員のモチベーションアップにもつながるので、職員間の公平性を意識して査定を行ってください。