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在宅医療が抱えている課題とは?在宅医療を開設する際のポイントも解説

2022年現在、日本の在宅医療はさまざまな課題を抱えています。

その多くが日本社会全体で取り組まなければならない課題になっているため、一人ひとりが在宅医療の課題に関心を寄せることが重要です。

そこで、本記事では在宅医療の課題について、患者目線と病院・医師目線に分けて解説します。また、記事の後半では在宅医療を開設する際のポイントも解説しているので、ぜひ最後までお読みください。

【患者】在宅医療の課題

患者視点から見た在宅医療の課題は、主に以下の3つが挙げられます。

  • 在宅医療への理解が不十分
  • 急変時への対応に不安
  • 家族への負担が大きい

1つずつ見ていきましょう。

在宅医療への理解が不十分

1つ目は、在宅医療への理解が不十分なことです。

在宅医療が広く普及しているとは言えない状況において、在宅医療へ正しい理解をしている方は少ないと言えます。

どのような場合に在宅医療を利用するのか、在宅医療にはどのような目的があるのか、などが理解できていなければ、在宅医療を導入するのは難しいでしょう。

そのため、国や地方自治体だけでなく、各医療機関が在宅医療について患者に丁寧に説明していくことが重要です。

急変時への対応に不安

2つ目は、急変時への対応に不安があることです。

在宅医療への理解がある、または得られたとしても、家で体調が急変してしまった場合への対応に不安を抱える場合が少なくありません。

もし急変した場合に「自分たちでは解決できない」と考えてしまい、在宅医療の導入に対し、慎重になってしまうのです。

急変時における医療機関での対応や家族がすべきことを説明することで、不安を軽減できます。

家族への負担が大きい

3つ目は、家族への負担が大きいことです。

医師が診れない時間帯は、家族が付きっきりで看病する必要があります。

ヘルパーに対応を依頼することもできますが、ヘルパーが対応できない時間帯は家族で対応するしかありません

そのことに対し、患者自身が家族へ負担をかけたくないと考えているケースが多々あります。

もし、家族が大きな負担を感じていなければ、家族から患者へ在宅医療の選択肢を提示するのが好ましいでしょう。

【病院・医師】在宅医療の課題

続いて、病院や医師から見た在宅医療の課題は、主に以下の3つです。

  • 人材不足
  • 24時間体制の構築
  • 地域の支援が不十分

1つずつ見ていきましょう。

人材不足

1つ目は、人材不足です。

在宅医療を専門としている医師の数が少ないため、そもそも在宅医療を実施できない場合が少なくありません。

また、医師以外のスタッフが不足している場合もあります。

人材不足により在宅医療ができないことは早急に避ける必要があるため、各医師が積極的に在宅医療への対応を進める必要があるでしょう。

24時間体制の構築

2つ目は、24時間体制の構築です。

1つ目の人材不足からつながる問題であり、人手が足りず24時間体制で対応できない場合が考えられます。

いざ、というときには医師が駆けつけられる環境が整えられていないと、患者は安心して在宅医療を受けられません。

しかし、金銭的な問題から、24時間体制を構築するための医師やスタッフを雇えない場合もあるでしょう。

その場合は、同じ地域にある他の医療機関と連携することで、24時間体制を構築することが重要です。

地域の支援が不十分

3つ目は、地域の支援が不十分なことです。

先ほど、人材を十分に確保できない場合は、同じ地域にある他の医療機関と連携するのがよいとお伝えしましたが、そもそも地域で在宅医療に携わる人材の数が少ない場合があります

また、人材が足りている場合でも、情報がまとまっておらず、どの医療機関がどの程度のリソースを有しているのかを把握しにくい場合もあります。

他にも、相談窓口の数が少なかったり相談窓口の存在が知られていなかったりすると、在宅医療に踏み出しにくい状況になってしまうのです。

地域全体で在宅医療に関する機運を高めることが、在宅医療の普及には欠かせません。

在宅医療を開設する際のポイント

医師が新しく在宅医療を開設する際は、以下の4つのポイントを意識しましょう。

  • 方針の決定
  • 理念・コンセプトの明確化
  • 複数の医師で24時間対応
  • 自己実現を優先しない

1つずつ見ていきましょう。

方針の決定

1つ目は、方針の決定です。

在宅医療を行う際、在宅医療を専門とする医療機関なのか、外来を行いながら在宅医療も行う医療機関なのかを決める必要があるのです。

なお、在宅医療を専門とする医療機関にする場合、以下の基準を満たさなければなりません。

  1. 無床診療所であること。
  2. 当該保険医療機関において、在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定し、その範囲(対象とする行政区域、住所等)を被保険者に周知すること。
  3. (2)の地域の患者から、往診又は訪問診療を求められた場合、医学的に正当な理由等なく断ることがないこと。
  4. 外来診療が必要な患者が訪れた場合に対応できるよう、(2)の地域内に協力医療機関を2か所以上確保していること(地域医師会(歯科医療機関にあっては地域歯科医師会)から協力の同意 を得ている場合にはこの限りではない)。
  5. (2)の地域内において在宅医療を提供し、在宅医療導入に係る相談に随時応じること及び当該医療機関の連絡先等を広く周知すること。
  6. 診療所の名称・診療科目等を公道等から容易に確認できるよう明示したうえ、通常診療に応需する時間にわたり、診療所において、患者、家族等からの相談に応じる設備、人員等の体制を備え ていること。
  7. 通常診療に応需する時間以外の緊急時を含め、随時連絡に応じる体制を整えていること。

引用:厚生労働省「在宅医療のみを実施する医療機関に係る保険医療機関の指定の取扱いについて

このハードルを満たすのが難しい場合は、外来を行いながら在宅医療を行うことになるでしょう。

理念・コンセプトの明確化

2つ目は、理念・コンセプトの明確化です。

在宅医療は、生半可な気持ちでできるほど甘いものではありません。

在宅医療を長い期間続けていくためには、それなりの覚悟が必要です。

具体的には、在宅医療にどのような理念を持って取り組んでいくのか、どのようなコンセプトの医療機関を作っていきたいのかを明確にする必要があります。

理念と聞くと難しいかもしれませんが、つまり「在宅医療を通して地域にどのように貢献するのか」を考えることです。

理念やコンセプトが明確になることで、途中で挫折することなく、最後までやりきれるようになるでしょう。

複数の医師で24時間対応

3つ目は、複数の医師で24時間対応をすることです。

24時間対応は必ずしなければならないわけではありませんが、「在宅療養支援診療所」の基準を満たすためには必要です。

また、24時間対応である医療機関のほうが安心して受診してもらえるでしょう。

しかし、自分1人で24時間対応をするのは避けるべきです。

自分以外の医師にも協力を仰ぎ、持続できる体制を構築しましょう。

なお、先ほど「【病院・医師】在宅医療の課題」でもお伝えしましたが、医師やスタッフを雇用しながら24時間体制を構築することは、金銭面において難しくなります。

そのため、自院で雇用をするのではなく、周辺の医療機関と連携することで、24時間体制を構築することが望ましいでしょう。

自己実現を優先しない

4つ目は、自己実現を優先しないことです。

開業すると、どうしても自分が実現したい未来が先走ってしまい、地域医療の担い手であることを忘れやすくなります。

しかし、あなたが実現したい未来があったとしても、地域で求められていなければ実現は不可能でしょう。

一般的な営利事業と異なり、需要を一から作り出すことは極めて困難だからです。

そのため、自己実現ができなかったとしても、地域医療の担い手である、すなわち公共事業として医療に取り組んでいる、という気持ちを忘れずに持ち続けてください。

まとめ

今回は、在宅医療の課題について解説しました。

在宅医療を普及させるためには、多くの市民に、在宅医療の存在や目的、意義について知ってもらうことが大切です。

また、在宅医療の担い手を確保し、地域全体で在宅医療に取り組む環境を整備することも重要です。

決して1人で抱えることなく、地域全体で課題解決に向け取り組みを進めていくことが望ましいでしょう。