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在宅医療が普及しない理由とは?在宅医療の現状や課題をわかりやすく解説

「在宅医療があまり普及しないのはなぜ?」
「在宅医療の課題は何か?」

このような疑問をお持ちではありませんか?

在宅医療が普及しない理由や課題を理解すれば、在宅医療を普及させる糸口が見えてくるはずです。

そこで、本記事では在宅医療の現状がどうなっているのか、在宅医療が普及していない理由、すなわち在宅医療の課題は何かを解説します。

在宅医療の現状

2022年現在、在宅医療の現状はどうなっているのでしょうか?
ここでは、以下の3つの観点から在宅医療の現状を解説します。

  • 在宅医療患者数
  • 在宅医療の提供場所
  • 在宅医療のニーズ

それぞれの観点から、在宅医療の現状を理解しましょう。

在宅医療患者数

まずは、在宅医療患者数がどのように推移しているのかを見ていきましょう。

以下のグラフをご覧ください。

 

このグラフは厚生労働省が公表している「令和2年(2020)患者調査の概況」に記載されている在宅医療を受けた推計外来患者数の年次推移です。

このグラフを見ると、平成17年度までは70万人前後で横ばいが続いていたのですが、平成20年度の約98.7万人を皮切りに、平成29年度の約180.1万人まで右肩上がりの状況が続いています。

しかし、直近の令和2年度では、約173.6万人と若干減少していることがわかるでしょう。

因果関係は定かではありませんが、この年はコロナ禍に突入した年でもあるので、コロナ禍による影響が見られるのではないかと推測できます。

すなわち、コロナ禍の影響が疑われる令和2年度を除き、近年は右肩上がりの状況が続いてるといえます。

在宅医療の提供場所

次に、在宅医療の提供場所の現状を確認してみましょう。

厚生労働省が公表している「令和2(2020)年医療施設調査」によると、「医療保険等による在宅サービスを実施している」施設の数は以下の通りになっています。

  • 病院:5,382施設(65.3%)
  • 一般診療所:35,213施設(34.3%)
  • 歯科診療所:23,707施設(34.9%)

この結果から分かる通り、規模が大きい病院ではおよそ2/3もの施設で在宅医療の類を実施していますが、規模が小さい一般診療所や歯科診療所はおよそ1/3の施設での実施に留まっています。

なお、在宅医療の提供場所の基準を満たしているのかどうかを地方厚生局長が認可する仕組みがあります。

それは、「在宅療養支援診療所(病院)」と「在宅療養後方支援病院」の2つです。

「在宅療養支援診療所(病院)」は、担当医が患者と24時間連絡を取り、在宅医療も可能な状態が取れる診療所(病院)です。

一方、「在宅療養後方支援病院」は、在宅医療を行う機関と連携して、緊急時の対応に備える病院です。

これらの認可を受けていると、在宅医療に関して適切な体制が整えられていることの証になります。

在宅医療のニーズ

続いて、在宅医療のニーズについても確認しましょう。

厚生労働省が公表している「在宅医療の最近の動向」によれば、年々在宅医療を希望する人が増えており、およそ60%の人が在宅医療を希望しています。

また、重篤状態に置かれた場合でも、40%以上の人が在宅医療を希望しているため、かなりニーズが高いといえるでしょう。

在宅医療が普及しない理由

在宅医療が普及しない理由として、主に以下の4つが挙げられます。

  • 医療現場の人材不足
  • 家族への負担が大きい
  • 24時間365日体制が厳しい
  • 急変時への対応が不安

1つずつ見ていきましょう。

医療現場の人材不足

1つ目は、医療現場の人材不足です。

在宅医療に対応している医師の数が不足しているだけでなく、看護師など医師以外のスタッフの数も足りていません。

そのため、訪問看護や訪問介護の体制も整っていない地域が多くあります。

在宅医療を進めるためには、医師のみならず関係スタッフを大幅に増員して対応する必要があります。

このような状況では、なかなか在宅医療に手を出しにくいと言わざるを得ません。

家族への負担が大きい

2つ目は、家族への負担が大きいことです。

在宅医療を頼むとなると、自宅で看病することになるため、医師やヘルパーが対応できない時間帯は家族が看病しなければなりません。

家族に大きな負担を負わせてしまうことに対し、患者が配慮をしてしまい、在宅医療に踏み出せないケースが多いのです。

家族だけに頼るのではなく、地域全体で在宅医療の普及をサポートする体制づくりが求められるでしょう。

24時間365日体制が厳しい

3つ目は、24時間365日体制が難しいことです。

1つ目の「医療現場の人材不足」と関連する内容ではありますが、医師やスタッフが不足していると、在宅医療において重要な24時間365日体制が作れなくなります

24時間365日体制を1人で維持するのはかなり困難なことなので、地域にある他の医療機関と連携しながら体制を構築するのが好ましいでしょう。

急変時への対応が不安

4つ目は、急変時への対応が不安なことです。

医師・病院側が24時間対応できる体制を作っていても、患者やその家族に説明できていなければ不安を感じてしまうでしょう。

たとえ、説明していたとしても「本当に来てくれるのかな?」「いざとなった場合、自分は何をすれば良いのだろう?」と次々に悩みが出てきてしまう可能性があります。

患者やその家族に理解して、安心してもらうためには、何度も何度も丁寧に説明することが求められるでしょう。

まとめ

今回は、在宅医療が普及しない理由について解説しました。

年々、在宅医療の利用者は増加しており、ニーズも増していますが、環境整備が追いついていない現状があります。

特に一般診療所や歯科診療所においては、1/3しか在宅医療に取り組んでいないため、小規模な医療機関でも在宅医療に取り組める環境を整備することが大切です。

地域で連携をしながら、在宅医療を普及させる環境を作っていきましょう。

なお、以下の記事で、在宅医療を開設する際のポイントを紹介しています。

在宅医療の開設を考えている方は併せてお読みください。

在宅医療が抱えている課題とは?在宅医療を開設する際のポイントも解説