「口腔外バキュームの導入を検討しているけど、どのようなメリットがあるのだろう……」
「口腔外バキュームの選び方を知りたい」
このような疑問を抱いていませんか?
口腔外バキュームは、歯科医院で使用されている空気清浄装置の一種です。
本記事では、口腔外バキュームはどのような機器なのか、導入するメリットや注意点について解説します。
選び方やおすすめの口腔外バキュームも紹介しているので、導入を検討している方は、参考にしてみてください。
この記事の内容
口腔外バキュームとは?
口腔外バキュームとは、治療中に患者の口から飛び散る粉じんや唾液、血液などを吸引・除去する機械です。
患者の口の近くに、フレキシブルアームの吸引口を置きます。
強力な吸引力で微細な飛沫を捕集し、フィルターや活性炭などを通して清浄化してくれる機械です。
たとえば、歯の切削、義歯や金属の調整・研磨時などを行う際に、口腔外バキュームを利用します。
治療時に発生する見えない飛び散りを外で吸い込んで除去してくれるため、スタッフや患者の健康を守りたい方におすすめです。
口腔外バキュームと口腔内バキュームとの違い
口腔外バキュームと口腔内バキュームは、吸う場所と目的が異なります。口腔外バキュームは、患者の口の外に装置を設置します。
義歯やクラウンの研磨、タービン・エンジンで切削するときに発生する、飛沫や粉じん、エアロゾルなどを吸引するために使用する吸引器です。
一方、口腔内バキュームは、患者の口の中に入れて使用します。治療中に出る唾液や血液などの水分を直接吸い取り、治療の視野の確保と誤嚥(ごえん)を防ぐ目的で利用されます。
目的や吸う場所が異なるため、それぞれの特徴を理解して導入するべきか検討しましょう。
歯科医院で口腔外バキュームを導入するメリット
歯科医院で口腔外バキュームを導入するメリットは、主に4つあります。
- 感染症対策に役立つ
- 医療従事者と患者の安全確保が可能
- 院内環境の清浄化が図れる
- 法令・ガイドラインへの対応ができる
それぞれのメリットについて解説します。
感染症対策に役立つ
口腔外バキュームを導入するメリットは、感染症対策に役立つ点が挙げられます。
虫歯治療などで歯を削る際に、タービンからは目に見えない粉じんや唾液を含んだミストが大量に発生します。
口腔外バキュームを活用すると、空気中に舞ったミストを吸引してくれるため、患者やスタッフの衣服や顔に付着する状態を防ぐことが可能です。
また、空気中を漂って院内全体に広がってしまう状態を防げます。
医療従事者と患者の安全確保が可能
口腔外バキュームは、医療従事者と患者の安全確保が可能という点がメリットです。
金属の被せ物を外したり、義歯を研磨したりするときは、目に見えない金属粉が舞い上がります。
バキュームを使って除去することにより、スタッフが吸い込んで呼吸器疾患を起こすリスクを減らすことが可能です。
また、粉じんが患者の顔に落ちてしまう状態を防げるため、治療の快適性や安全性も向上します。
院内環境の清浄化が図れる
院内環境の清浄化が図れる点は、口腔外バキュームを導入するメリットです。治療を繰り返すうちに、診療室の壁や器具、床に粉じんが起きやすくなります。
そこで、口腔外バキュームを使用することで、空気中の浮遊物を減らし、診療室全体の空気をクリーンに保つことが可能です。
待合室や診療室がほこりっぽい・臭いが少ないという環境になるため、清潔感のある医院として評価されやすくなります。
法令・ガイドラインへの対応ができる
口腔外バキュームの導入は、法令やガイドラインへの対応ができる点がメリットです。
日本歯科医師会や厚生労働省は、一般歯科診療時の院内感染対策に係る指針のガイドラインで、院内感染対策の一環として、口腔外バキュームの設置を推奨しています。
また、ガイドラインに準拠した感染症対策を徹底しているという点を患者にアピールできるため、信頼性も上がりやすいです。
口腔外バキュームを安全に運用するための注意点
口腔外バキュームを安全に運用するための注意点は、5つあります。
- 性能が医院の規模や診療内容に合っているか確認
- 正しい設置場所の確保が必須
- 定期的なメンテナンスと清掃が必要
- スタッフへの使用方法の教育が欠かせない
- コスト面を確認する必要がある
それぞれの注意点について解説します。
性能が医院の規模や診療内容に合っているか確認
口腔外バキュームは、性能が医院の規模や診療内容に合っているか確認しましょう。
たとえば、ユニットが5台ある大型医院で、小型・吸引力の弱い口腔外バキュームを導入すると、処置内容によってはエアロゾルを十分に吸い取れず効果が薄れる可能性があります。
とくに、インプラントや外科処置が多い医院では、より吸引力の高い口腔外バキュームを選ぶのがおすすめです。
このように、口腔外バキュームを導入する際に、処置内容やユニット数、部屋の広さを考慮すると良いでしょう。
正しい設置場所の確保が必須
口腔外バキュームを導入する際には、正しい設置場所の確保が必要です。
たとえば、吸引口が患者の口から離れすぎると、粉じんを吸い込みきれません。
そのため、吸引効果を高めるために、口元から10~15cm以内に先端を設置しましょう。
また、アームが邪魔になって治療の妨げにならないよう、診療ユニットの動線を考慮した設置が必須です。
定期的なメンテナンスと清掃が必要
定期的なメンテナンスと清掃が必要という点は、口腔外バキュームを導入する際の注意点です。
定期的なメンテナンス・清掃を行わずに使用を続けてしまうと、フィルターが目詰まりしてしまい、吸引量が低下して感染対策効果が落ちます。
そのため、メーカーが推奨している頻度(1か月に1回など)で、フィルター交換や内部清掃を行うようにしましょう。
スタッフへの使用方法の教育が欠かせない
口腔外バキュームを導入する際には、スタッフへの使用方法の教育も重要です。
たとえば、口腔外バキュームの吸引口の位置が5cmズレただけでも、吸引効率が大幅に落ちます。
スタッフ全員が「どのくらいの距離で」「どの角度で設置すればよいか」を理解し、使えることが重要です。
導入したのに十分に機能していないという状態を避けるために、スタッフの教育は徹底しましょう。
コスト面を確認する必要がある
口腔外バキュームを導入する際には、コスト面を確認することが必要です。導入費用は、1台数十万円から数百万円する場合があります。
また、本体価格だけでなく、フィルター交換などのランニングコストも発生するため、維持・メンテナンス費用も計算にいれる必要があります。
トータルコストを試算したうえで、無理のない費用計画のもと導入するか検討しましょう。
口腔外バキュームの使い方
口腔外バキュームの使い方は、4つの流れで進みます。
- 患者さんの口周りにアームを伸ばす
- 治療に合わせて飛沫や粉じんを吸引
- 吸引力やアームの位置を調整
- 使用後はフィルター交換や清掃を行う
それぞれの手順・流れについて解説します。
STEP.1:患者さんの口周りにアームを伸ばす
口腔外バキュームを使用する際には、まず患者の口周りにアームを伸ばしましょう。
診療ユニットに座った患者の口元に向かってアームを動かし、吸引口から10~15cmの距離に設置します。距離が近すぎると、治療器具の操作や視野の妨げになり、遠すぎると吸引効果が弱まります。
目安として、コップ1つ分くらいの距離を意識してアームを設置すると良いでしょう。
STEP.2:治療に合わせて飛沫や粉じんを吸引
患者の口周りにアームを伸ばしたあとは、治療に合わせて飛沫や粉じんを吸引しましょう。タービンで歯を削ると、歯の粉や唾液のミストが空中で飛び散ります。
また、義歯や金属を研磨するときには、目に見えない研磨粉が舞い上がるため、室内に広がらないように、バキュームで吸い込み、空気中の浮遊物を即座に捕集します。
STEP.3:吸引力やアームの位置を調整
治療に合わせて飛沫や粉じんの吸引をする際に、吸引力やアームの位置を調整しましょう。
患者の体格や治療内容によって、吸引口をややななめ下や横など、角度を調整します。
また、吸引音が大きい場合はパワーを少し下げたり、逆に粉じんの多い処置では最大出力にしたりします。
STEP.4:使用後はフィルター交換や清掃を行う
使用後に、フィルター交換や清掃を行います。アームの先端や吸引口をアルコールで拭き取り、内部にたまった粉じんを清掃します。
また、フィルターはメーカー推奨の周期で交換しましょう。
口腔外バキュームのメンテナンスポイント
口腔外バキュームのメンテナンスでは「毎日行うべき清掃」と「定期的に行うべき清掃」の2種類があります。
それぞれどのような清掃をするべきなのか解説していきます。
毎日行うべき清掃
口腔外バキュームは、使用後のルーティンとして以下の3つを掃除しましょう。
- 吸引口の清拭
- アームの外側の拭き取り
- ダストボックスのゴミ回収
フード部分の吸引口は、アルコールや中性洗剤で拭き取り、唾液や粉じんの付着を落とします。
アームの外側の拭き取りは、アルコールや次亜塩素酸水で表面の消毒を行い、飛沫や粉じんを除去しましょう。
ダクトボックスは、吸い込んだ粉じんが溜まるため、毎日ゴミを捨てるようにしてみてください。
定期的に行うべき清掃
口腔外バキュームは、メーカーが推奨している周期に合わせて、定期的に清掃しましょう。フィルター交換や内部清掃、吸引力チェックなどを行います。
フィルター交換の目安は、以下のとおりです。
- プレフィルター:1~3か月ごと
- HEPAフィルター:半年~1年ごと
- 活性炭フィルター:6か月~1年ごと
フィルターが目詰まりすると、吸引力が低下するため、感染症対策効果が落ちます。
また、ダクトや配管部分の清掃は、粉じんの汚れが内部に堆積しないよう、数か月に一度点検・清掃をすると良いでしょう。
吸引力のチェックは、専門の測定器や、ティッシュを吸わせるなどの簡易チェックがおすすめです。
口腔外バキュームの選び方
口腔外バキュームを選ぶ際に意識したいポイントは、6つあります。
- 吸引力や性能
- 静音性
- メンテナンスのしやすさ
- 設置・スペースの適合性
- コストパフォーマンス
- メーカーのサポート内容
それぞれのポイントについて解説します。
吸引力や性能
口腔外バキュームを選ぶ際には、吸引力や性能に注目しましょう。エアロゾルや粉じんをどれだけ吸い込めるかによって、感染症対策効果が変わります。
たとえば、外科処置やインプラントオペが多い医院では、大風量・高吸引力タイプの製品がおすすめです。
一方、予防歯科のクリーニングがメインであれば、小型や中型の口腔外バキュームで問題ないでしょう。
静音性
口腔外バキュームを選ぶときは、静音性をチェックしてみてください。吸引音が大きいと、患者にうるさい・落ち着かないという不安を与えてしまいます。
診療ユニットが複数ある歯科医院で、静音性の低い機種を選ぶと、同時に稼働しているときは会話や説明が聞きづらくなりやすいです。
静音設計モデルを選びたい場合は、50~60dBを目安にすると良いでしょう。
メンテナンスのしやすさ
メンテナンスのしやすさは、口腔外バキュームを選ぶ際に注目したいポイントです。
メンテナンスがしにくい製品だと、手間に感じてしまうだけでなく、掃除やメンテナンスに時間が割かれてしまうため、業務効率が低下する可能性があります。
また、管理が滞り、吸引力の低下や感染対策不十分につながります。工具を使わずにフィルター交換ができるタイプや、内部のダストボックスがワンタッチで取り外せるタイプなどがおすすめです。
設置・スペースの適合性
口腔外バキュームを選ぶときは、設置場所やスペースの適合性をチェックしましょう。診療室の広さや動線に合わないと、アームが邪魔になってしまい、移動が大変になります。
特に、狭い診療室で使う場合は、キャスター付きのコンパクトタイプを選ぶのがおすすめです。
また、ユニットごとに設置するのか、複数ユニットで1台を共有するのかなども検討しましょう。
コストパフォーマンス
コストパフォーマンスは、口腔外バキュームを選ぶ際に意識したいポイントです。口腔外バキュームは、導入費用に加えて、フィルター交換などのランニングコストがかかります。
本体価格は30~100万円台が多く、フィルター交換は数千円から数万円程度です。
継続してメンテナンスを続けていく必要があるため、トータルコストを確認した上で、投資回収できるか慎重に考えましょう。
メーカーのサポート内容
口腔外バキュームを選ぶときは、メーカーのサポート内容を確認しましょう。故障時の対応や部品供給が不十分だと、長期的に安心して使用できません。
サポート拠点が日本国内にあるか、定期点検サービスがあるかなどを確認しておくと、突然のトラブル時にも対処しやすいでしょう。
おすすめの口腔外バキューム5選
おすすめの口腔外バキュームを5選ご紹介します。
へパクリーン
メーカー | 株式会社ビーエスエーサクライ |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・最大15Kpaの強力吸引 ・最小55dB ・タッチセンサー式で扱いやすい |
公式サイト | https://www.bsa-sakurai.co.jp/item/5035/ |
へパクリーンは、パワフルな吸引力の口腔外バキュームです。
最大15Kpaの強力吸引が可能で、飛沫した粉じんや唾液などをしっかりと吸い取ってくれます。フィルターは、静電プレフィルター・高性能HEPAフィルター・集塵フィルターの3つがあり、0.3ミクロンの粉じんも99.97%除去してくれます。
清潔な院内環境を構築し、感染リスクも低減してくれる点が魅力です。操作パネルはタッチセンサー式なので、扱いやすさにも優れています。
フリーアーム・アルテオ
メーカー | 株式会社東京技研 |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・4種類の型式から選べる ・関節が多く調整しやすい ・消音性に優れている |
公式サイト | https://www.tokyogiken.com/ja/solution/ |
フリーアーム・アルテオは、F型・I型・T型・S型の4種類の型式が用意されている口腔外バキュームです。
院内の状況に合わせてデザインを選択することが可能で、ほかのユニットと組み合わせやすいです。また、関節が多いため細かな調整が行いやすく、しっかりと吸引できる位置に調節できます。
さらに、サイレントフィルターが搭載されているので、高周波領域の騒音を低減してくれます。使いやすさや機能性にこだわりたい方に向いている製品です。
フラミンゴ ナノ
メーカー | 株式会社アクロス |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・殺菌灯を搭載 ・62dBの音 ・HEPAフィルターが備わっている |
公式サイト | https://do.dental-plaza.com/search/item/detail/id/4160000/ |
フラミンゴ ナノは、殺菌灯が付いている口腔外バキュームです。バキュームで吸い込んだ飛沫や細菌を含む空気を、殺菌灯によってフィルターと空気を殺菌し、外へ出る空気の清浄度を高めてくれます。
また、殺菌灯で内部が常に殺菌されているため、メンテナンス性が向上し、機器の寿命も伸びやすいです。
さらに、62dBの音で、テレビを付けているときぐらいの不快にならない程度の音量です。
ジェットアームneo
メーカー | 株式会社チームフォーチューン |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・メンテナンスしやすい ・ULPAフィルタを採用 ・長寿命のブラシレスモーターを搭載 |
販売サイト | https://teamfortune.net/products/jt-1300neo-%E5%8F%A3%E8%85%94%E5%A4%96%E3%83%90%E3%82%AD%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%A0-%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A0neo |
ジェットアームneoは、メンテナンス性を重視したい方におすすめの口腔外バキュームです。長寿命のブラシレスモーターを採用しているため、長く使い続けられます。
また、綿繊維層・微細繊維層・活性炭層の3つの層が組み合わさったULPAフィルターや、HEPAフィルターを搭載しているので、クリーンな吸排気を実現しています。
吸引量は本体にあるツマミで調節できるので、口腔外バキュームを使い慣れていない方でも利用しやすいでしょう。
カルモ
メーカー | 東京歯科産業 |
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価格 | 698,000円 |
特徴 | ・キャスター付きで移動しやすい ・HEPAフィルター内蔵 ・工具不要でダストパックの交換が可能 |
公式サイト | https://fordynet.fordy.jp/products/1620 |
カルモは、移動させながら使用したい方や、複数台のユニットに1台を共有して使いたい方におすすめの口腔外バキュームです。キャスターが付いているので、目的の場所までスムーズに移動させられます。
また、HEPAフィルターを内蔵しており、診療所の排気もクリーンにしてくれます。さらに、工具不要でダストパックを交換できるので、メンテナンスしやすい点も魅力です。
まとめ:口腔外バキュームは患者と医療従事者の安全確保や感染症予防に役立つ!
口腔外バキュームは、患者と医療従事者の安全確保や感染症予防に役立ちます。
歯の切削やスケーリング、義歯調整による粉じんや唾液などの微細な飛沫を効率良く吸引してくれるので、空間全体の汚染を大幅に抑制できます。
また、粉じんや水しぶきが減るので、施術者の視野がクリアになり、作業効率が上がりやすいです。
多くのメリットがあるため、切削や義歯調整などを行う機会が多い方は、本記事でご紹介した口腔外バキュームをチェックしてみてください。