「輸液ポンプはどのような目的で利用されているのか知りたい……」
「輸液ポンプはどのようなシーンで活躍するの?」
このような疑問を抱いていませんか?
輸液ポンプは、薬液や栄養液などの液体を、正確な速度・量で体内に投与するための医療機器です。
本記事では、輸液ポンプの目的やシリンジポンプとの違い、適応シーンについて解説します。輸液ポンプの導入を検討している方は、参考にしてみてください。
この記事の内容
輸液ポンプの目的
輸液ポンプは、液体を体に投与するだけでなく、安全かつ正確に投与する目的で利用されています。
たとえば、血中濃度を一定に保ちたいときや、正確な投与量の確保を行いたいときに輸液ポンプが向いています。
必要な量や薬・栄養を正確に投与したいシーンが多いときは、輸液ポンプの導入を検討してみてください。
そもそも輸液ポンプとは?
そもそも輸液ポンプとは、薬液や栄養液などを体内に正確な速度・量で投与する医療機器です。点滴とは異なり、時間や流量を自動でコントロールできるため、患者の安全性を確保しつつ医療スタッフの負担を軽減できます。
輸液ポンプには流量制御型と、滴下数制御型の2種類があります。
流量制御型とは、送り出す流量が一定になるように、ポンプの速度を制御するタイプです。一方で滴下数制御型は、点滴プローブにより滴下数を監視して投与量をコントロールします。
万が一閉塞や空気混入、残量不足などがあった際にはアラームで通知してくれるので、最悪の事態を防げる点も魅力です。
輸液ポンプの仕組み
輸液ポンプは、点滴バッグやボトルの液体を、チューブ経由にて一定の速度で体内に送る装置です。
一定間隔でポンプが薬液・栄養液を送り出し、チューブを通して患者の体内に投与すると考えるとわかりやすいでしょう。
モーター制御で、流量を1ml単位で調整して送ることが可能です。
輸液ポンプとシリンジポンプの違いは?
輸液ポンプとシリンジポンプは、使用するものと注入方法・投与できる量に違いがあります。輸液ポンプは、点滴バッグやボトルに入った薬液・栄養液を使い、チューブを通して一定の速度で持続的に流します。
一方でシリンジポンプは、注射器に入った薬液を、プランジャーを使用してモニターで少しずつ押し出す医療機器です。
そのため、輸液ポンプは大量~中等量の液体を投与したい場合に活躍し、シリンジポンプは微量の薬を正確かつ持続投与したい場合に利用されます。
輸液ポンプの適応シーン
輸液ポンプの適応シーンは、以下の6つがあげられます。
- 薬剤の流量を厳密に管理したい場合
- 輸液のバランス管理が必要な場合
- 自然落下での調整が困難な場合
- 輸液の流量を一定に保ちたい場合
- 代謝異常や血糖上昇を予防したい場合
- 在宅医療を行っている場合
それぞれの適応シーンについて解説します。
薬剤の流量を厳密に管理したい場合
薬剤の流量を厳密にしたいときは、輸液ポンプの活用がおすすめです。
薬剤によっては、投与速度が早すぎても遅すぎても効果や安全性に影響が出る場合があります。とくに半減期が短い薬や、有害事象のリスクが高い薬は、数ml/h単位での制御が必要です。
たとえば、抗がん剤や昇圧薬、鎮静薬などを精密に流量したいときに、輸液ポンプが活躍してくれます。
輸液のバランス管理が必要な場合
輸液ポンプは、輸液のバランス管理が必要な場合もおすすめです。
たとえば、心不全患者の水分制限が必要な場合や、肝不全患者の透析前後のときは、輸液の過剰や不足が致命的になる場合があるため、バランス管理が重要になります。
ほかにも、体重が軽く影響が大きい乳児や新生児での微量輸液管理などにも、輸液ポンプは活躍してくれます。
輸液のバランス管理が欠かせないときは、輸液ポンプを活用してみてください。
自然落下での調整が困難な場合
輸液ポンプの適応シーンとして、自然落下での調整が困難な場合もあげられます。
たとえば、搬送中の救急車や航空機内での輸液は、重量滴下の場合、針の位置や患者の体制で流量が変化する可能性があります。正確性が必要な場面では、誤差が許されません。
輸液ポンプは自然落下による調整とは異なり、患者の体勢や針の位置に影響されないのでおすすめです。
輸液の流量を一定に保ちたい場合
輸液の流量を一定に保ちたいときは、輸液ポンプが活躍してくれます。時間あたりの流量を安定させられるため、薬効の安定や血中濃度の維持が可能です。
たとえば、中心静脈栄養や、麻酔薬の持続投与を行いたいときに向いています。
ほかにも、血糖管理目的で、インスリンの持続静注で輸液ポンプが使われます。
代謝異常や血糖上昇を予防したい場合
輸液ポンプの適応シーンでは、代謝異常や血糖上昇を予防したいときも挙げられます。急激な投与は、代謝の負担や高血糖を引き起こしてしまうリスクがあります。
具体例をあげると、高濃度ブドウ糖液や、脂肪乳剤などの栄養輸液などをゆっくりと均等に投与したいときに、輸液ポンプがおすすめです。
在宅医療を行っている場合
在宅医療を行っている場合は、輸液ポンプの活用がおすすめです。在宅医療は、長期的に安定した輸液や薬剤投与が必要なケースも少なくありません。
輸液ポンプを活用すると、患者自身や家族でも管理できる装置になるため、治療による負担が軽減できるでしょう。
なかでも、在宅中心静脈栄養や、在宅モルヒネ持続皮下注などを持続投与したいときに活躍してくれます。
輸液ポンプ使用時の7つのチェック項目
輸液ポンプを使用するときは、以下の7つをチェックしましょう。
- 輸液ポンプのセット位置
- 輸液ポンプのルートを確認する
- バイタルサイン
- 患者の状態
- 薬剤の効果や副作用の出現の有無
- 流量と予定量の確認
- 静脈留置針刺入部の状態
それぞれのチェックポイントを解説します。
輸液ポンプのセット位置
輸液ポンプを使用する際には、セット位置を入念に確認しましょう。輸液ポンプの高さや設置位置が不適切だと、重量やルートの折れによって流量が変化する可能性があります。
輸液ポンプは患者の静脈留置部よりも、適切な高さにセットするようにしましょう。
また、ルートが引っ張られない位置に置き、車椅子やベッド移動時に固定が外れないか確認するのがおすすめです。
輸液ポンプのルートを確認する
輸液ポンプを設置する際には、ルートの確認も重要です。ルートが閉塞・屈曲している場合は、空気塞栓または薬剤が投与されないリスクがあります。
そのため、チューブが折れ曲がっていないか、挟まりがないかなどを確認しましょう。
また、チャンパーやチューブ内に空気がないか確認するのも忘れないようにしてみてください。
バイタルサイン
輸液ポンプを使用する際には、バイタルサインも確認しましょう。輸液や薬剤の影響で、血圧や脈拍・呼吸・体温が変化する可能性があります。
バイタルサインを確認することで、異常の早期発見に直結するため、投与前後は定期的に血圧・脈拍・呼吸・体温を測定しましょう。
患者の状態
輸液ポンプを使用する際のチェック項目として、患者の状態もあげられます。バイタルサインも重要ですが、異変が起きた際には患者の表情や動きなどに現れる場合もあります。
たとえば、顔色や発汗、意識レベルなどを確認しましょう。また、息苦しさや痛み、吐き気などの訴えがある際にも、一度投与を中断して状態を確認する必要があります。
薬剤の効果や副作用の出現の有無
薬剤の効果や副作用の出現の有無は、輸液ポンプを使用する際のチェック項目として挙げられます。
たとえば、薬液・栄養液を投与することで、呼吸改善や血圧が安定しているなど、目標達成していると問題ないでしょう。
しかし、呼吸困難や動悸、血圧変動などの副作用やアレルギー反応が出ている際には、即座に投与を中断する必要があります。
患者の体調や体質によって副作用が出る場合もあるため、輸液ポンプを使用する際には、薬剤の効果や副作用の出現を入念に確認しましょう。
流量と予定量の確認
輸液ポンプを使用する際、とくに気を付けてチェックしたいのが流量と予定量の確認です。輸液ポンプは、流量や予定量の調整を簡単に設定できますが、設定ミスやポンプ異常で流量がズレると、薬効や安全性に大きな影響を与えます。
そのため、投与速度と予定量が医師の指示と一致しているか、何度も確認してから使用するようにしてみてください。
また、終了予定時刻を把握し、残量を定期的に確認すると良いでしょう。
静脈留置針刺入部の状態
輸液ポンプを使用する際のチェック項目として、静脈留置針刺入部の状態も挙げられます。
刺入部での痛みや発赤、腫脹などは、薬剤の漏出やウイルス感染のリスクにつながります。
圧痛や熱感がないか、固定テープのズレや剥がれがないかを入念に確認しましょう。
輸液ポンプを使用する際の注意点・チェックポイント
輸液ポンプを使用する際の注意点・チェックポイントは、4つあります。
- 輸液ポンプが作動しているか
- 輸液の予定量の確認
- 輸液の流量速度の確認
- 輸液ルートの屈曲・圧迫などがないか
それぞれの注意点・チェックポイントについて解説します。
輸液ポンプが作動しているか
輸液ポンプを使用する際には、正常に作動しているか入念に確認しましょう。電源トラブルや誤設定、アラーム解除設定などの理由により、ポンプが止まっていると薬剤投与が中断されてしまい、治療効果に影響が出る可能性があります。
電源コードが抜けていないか、バッテリー切れが起きていないかなど、入念に確認しましょう。
投与中はポンプの稼働ランプや画面表示を確認し、モーター音が聞こえるか耳で確認するのがおすすめです。
輸液の予定量の確認
輸液の予定量の確認について、輸液ポンプを使用するうえで細心の注意を払いましょう。設定ミスや入力間違いで予定量を超えてしまうと、過剰投与や副作用リスクが高まります。
開始前に、医師の指示書やポンプの設定画面を照合するようにするのがおすすめです。
また、投与終了時刻と、バッグ残量が指示と一致しているか確認も行いましょう。
輸液の流量速度の確認
輸液ポンプを使用する際には、輸液の流量速度にも注意しましょう。流量速度が速すぎると、血圧変動や肺水腫などの副作用が起きる可能性があります。
一方、流量速度が遅すぎると、効果不足や治療遅延が起こります。
そのため、投与中にmL/hの表示を定期的にチェックし、バイタルサインや患者の状態変化と照らし合わせるようにしましょう。
輸液ルートの屈曲・圧迫などがないか
輸液ポンプを使用する際の注意点として、輸液ルートの屈曲・圧迫などがないかも確認しましょう。チューブが折れ曲がっていたり、圧迫されていたりすると、予定通りの流量が確保できない可能性があります。
たとえば、ベッド柵や車椅子のフレームにルートが挟まってしまったり、患者の腕を曲げた位置で固定し、肘でチューブが圧迫されたりするケースもあります。ルート全体を目視でたどり、折れや圧迫がないか入念に確認しましょう。
体位変換や移動の前後でルート状態を再チェックするのがおすすめです。
まとめ:輸液ポンプは機器のチェックや患者の状態観察が重要!
輸液ポンプは、流量やルートなど、さまざまな点に注意を払う必要があります。
問題なく活用できると、薬液や栄養液などを正確かつ安全に持続した投与ができるため、患者や医療スタッフの負担を軽減できます。
うまく活用できると便利な医療機器なので、輸液ポンプの導入を検討している方は本記事で紹介した内容を参考にしてみてください。