AIチャットボットは、企業のサポート業務やWeb接客において重要な役割を担うツールです。一方で「AIチャットボットの種類には何がある?」「どの種類を選んだらいいの?」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AIチャットボットを「技術」「機能」「会話の仕組み」といった観点をもとに分類し、それぞれの特徴を紹介します。
また、導入を検討する際に押さえておきたいポイントも解説しているので、導入目的や予算、運用体制などに合わせて、最適なAIチャットボットを探していきましょう。
この記事の内容
AIチャットボットの種類【技術タイプ編】
AIチャットボットの種類について、技術タイプ別に3つ紹介します。チャットボットは基盤となる技術によって性能や用途が大きく異なるため、参考にしてみてください。
- 機械学習型
- 独自AI型
- RAG型
機械学習型
機械学習型チャットボットは、大量のデータを学習し、自動的に応答パターンを獲得するタイプです。従来のルールベース型(人がプログラムしたルールに従って動作するシステム)とは異なり、事前に学習したデータから法則性を見出して対応ができるため、ルールベース型よりも柔軟な対応が可能となります。
機械学習型のチャットボットでは、自然言語処理やディープラーニング、強化学習などのAI技術が活用されています。膨大な対話データからパターンを学習するため、想定外の質問にもある程度対応できる柔軟性が特長です。ただし、学習データに含まれていない情報には正確に答えられない場合や、学習データの偏りにより誤った回答をしてしまう可能性があるため注意が必要です。
カスタマーサポート分野では、FAQ対応に加え、複雑な問い合わせにも柔軟に対応できる点が評価されています。
独自AI型
独自AI型チャットボットは、企業や開発者が特定の目的に合わせて独自開発したAIエンジンを搭載するタイプのチャットボットです。一般的な機械学習型をベースに、特定分野のデータで追加学習を行うことで、専門性の高い業務に特化させることができます。
独自AI型は、特定業界や業務に特化した知識を持つので、企業や業界固有の用語や文脈を理解できる点が特徴です。また、セキュリティやコンプライアンスを考慮した設計、ブランドの個性を反映した会話スタイルの実現も可能となっています。
一方で、開発や運用には専門知識が必要となり、初期費用などの導入コストが高額になったり、専任担当者による継続的な更新作業が必要となったりするため、予算や運用後の体制などを事前に確認しておくと良いでしょう。
RAG型
RAG(Retrieval Augmented Generation)型チャットボットは、情報検索と文章生成を組み合わせた、最新のAI技術を活用したチャットボットです。顧客からの質問に関連する情報を、事前学習したデータに加えて、外部のデータベースなどから検索可能なシステムとなっていて、その情報をもとにAIが最も適切な回答を生成するという仕組みになっています。
この仕組みにより、最新の情報や特定領域の専門知識を反映した正確な回答が可能となるため、医療や法律など常に最新情報や専門知識が必要な分野におすすめです。
一方で、RAG型チャットボットを効果的に運用するには、質の高いナレッジベースの構築や定期的な更新、検索データベースなどの最適化が大切になってきます。データベースや検索システムの精度によって回答の質が左右されるため、運用面での工夫が必要となり注意が必要です。
AIチャットボットの種類【機能編】
AIチャットボットの種類について、機能の面から4つの種類を紹介します。自社の導入目的に合った機能が備わっているかどうかは非常に重要なポイントとなるため、参考にしてみてください。
- 配信型チャットボット
- 処理代行型チャットボット
- FAQ型チャットボット
- 雑談型チャットボット
配信型チャットボット
配信型チャットボットは、ユーザーに対して積極的に情報を発信することを目的としていて、プッシュ通知やパーソナライズされたメッセージの自動配信、配信スケジュールの管理などが可能です。
新商品やキャンペーンの案内、ニュースレターの配信など、企業からユーザーへ向けたコミュニケーションシステムとしておすすめです。配信結果の分析機能を備えている場合もあり、メッセージ送信後に問い合わせにつながったかどうかなどを確認できるため、マーケティングの1つとして活用している企業も増えてきています。
一方で、過度な情報発信はユーザーの負担になることがあるため、配信頻度や内容を工夫して、バランスの良い運用を心掛けていきましょう。
処理代行型チャットボット
処理代行型チャットボットは、人間に代わって業務プロセスを自動実行してくれるシステムです。病院などの予約受付やECサイトの注文処理、問い合わせ対応など、定型的な業務を効率化することができます。
処理代行型チャットボットは、24時間対応や人的リソースの最適化におすすめで、単純作業を自動化することで、スタッフはより専門的な業務に集中できるようになります。
導入時には、既存のシステムと連携できるのかや、個人情報を扱う場合のセキュリティ対策について十分に確認するようにしましょう。
FAQ型チャットボット
FAQ型チャットボットはよくある質問に自動で回答する機能を持っていて、ユーザーが質問内容を入力すると、関連性の高い回答を即座に返すことができます。
FAQ型チャットボットは、事前に用意された膨大な質問と、その回答のデータベースを活用し、自然言語処理技術によってさまざまな表現の質問にも対応できるシステムです。問い合わせ対応の効率化やコスト削減に役立ちます。
また、最近ではユーザーの質問履歴をもとに文脈を理解したり、関連質問を提案したりする高度な機能を持つものも増えているので、予算に合わせて機能を選んでいくのがおすすめです。
雑談型チャットボット
雑談型チャットボットとは、ユーザーとの自然な会話を通じて顧客との関係性を深めていくことを目的としたシステムです。業務処理よりもブランドイメージの向上やユーザー体験の向上に重点を置いているのが特徴で、ブランドの親近感やユーザーの滞在時間を延ばしたりする効果が期待できます。
大規模言語モデルの進化により、より自然な会話が可能となっているので、ユーザーとの雑談から自然に自社製品をおすすめするといった使い方をしている企業が多くなっています。
AIチャットボットの種類【会話の仕組み編】
AIチャットボットは、技術や機能だけでなく、会話の仕組みによっても分類できます。ここでは、チャットボットの会話の仕組みの違いに注目し、それぞれの特徴や活用シーンについて解説します。
- 辞書型
- 選択肢型
- 辞書型・選択肢型併用型
- 蓄積型(ログ型)
辞書型
辞書型チャットボットとは、あらかじめ登録された質問と回答のペアをデータベースとして登録し、ユーザーの質問に最も近い内容をデータベースから検索して回答する仕組みです。企業側が想定した質問と回答を事前に用意するため、正確な情報提供が可能となります。特に企業の問い合わせ対応やFAQなど、定型的な回答が求められるシーンで活用されています。
辞書型は、回答内容の品質管理がしやすく、専門知識を正確に伝えやすい点がメリットです。一方で、想定外の質問には対応しにくく、辞書の拡充やメンテナンスに手間がかかるというデメリットもあります。
また、自然な会話の流れを作るのが難しい場合もあるため注意が必要です。
選択肢型
選択肢型チャットボットは、ユーザーに複数の選択肢を示し、その選択に応じて会話を進める仕組みです。あらかじめ会話の流れを設計しておくため、ユーザーをスムーズに目的の情報へ誘導できます。初めてサービスを利用するユーザーのガイドとして導入するのも効果的です。
選択肢型は、ユーザーが何を質問すれば良いか迷わずに済み、企業側も会話の流れを管理しやすいというメリットがあります。しかし、会話の自由度が低く、複雑な問い合わせには対応しにくいことや、選択肢が多くなるとユーザーの操作性が低下する場合があるため注意が必要です。
辞書型・選択肢型併用型
辞書型と選択肢型の両方の特徴を組み合わせた、辞書型・選択肢型併用型(ハイブリッド型)チャットボットも増えています。自然言語でのやり取りをベースにしつつ、必要に応じて選択肢を提示することで、会話の自由度と誘導性を両立させているシステムになっています。
併用型では、ユーザーが自由入力で質問し、AIがその意図を理解したうえで、さらに詳細を確認するために選択肢を提示するといった流れが一般的です。入力や回答の柔軟性と正確性のバランスが取れる反面、システム構築や運用が複雑になりやすいという点には注意が必要です。
蓄積型(ログ型)
蓄積型チャットボットは、過去の会話履歴や応対ログを蓄積・分析し、それをもとに回答の精度を高めていく仕組みを持っているシステムです。運用期間が長くなるほど、ユーザーの質問傾向を学習し、より的確な応答ができるようになります。
蓄積型は実際の質問データを活用して進化していくため、想定外の質問にも柔軟に対応できる点が強みです。ただし、初期段階では回答精度が低いことがあり、学習内容の品質管理や個人情報保護への配慮が必要になるため注意が必要です。
AIチャットボットの失敗しない選び方って?5つのチェックポイント
AIチャットボットを導入する際には、導入目的に合わせた適切なサービスを選ばないと期待した効果が得られず、運用コストの増加や顧客満足度の低下につながることがあります。ここでは、失敗を避けるために大切な5つのポイントを解説します。
- 自然言語処理精度
- 外部連携機能
- 導入~運用コスト
- セキュリティ基準
- サポート体制
1.自然言語処理精度
AIチャットボットで最も大切になるのが自然言語処理(NLP)の精度です。高精度なNLPを搭載したチャットボットは、ユーザーの意図を正しく理解し、適切な返答を行うことができるため、導入を検討しているシステムの精度を事前に確認していきましょう。
特に意図理解の正確性、多言語対応、そして継続的な学習能力の有無を確認するのがおすすめです。ユーザーの要望を的確に把握できるか、複数言語に対応できるか、会話データから学習し応答精度を高められるかなど、導入目的に応じてチェックしていきましょう。
2.外部連携機能
チャットボット単体の機能だけでなく、既存システムとの連携も重要な選定基準となります。顧客管理システムや予約システム、ECサイト、データベースなどとスムーズに連携できるかと合わせて、使用可能なAPIの柔軟性や拡張性も確認するのがおすすめです。
また、顧客満足度向上を目的としている場合には、ユーザーの使用頻度が高いSNSやWebサイトなど、さまざまなチャネルに対応しているかどうかも重要になってきます。さらに、業務効率化を目的として導入する場合には、チャットボットが既存の外部システムと連携可能かどうかや、その後の業務処理まで自動化できるかどうかもチェックしておくと良いでしょう。
3.導入~運用コスト
AIチャットボットのコストを比較する場合は初期費用はもちろん、導入後の運用や保守にかかる継続的な費用も含めて検討する必要があります。
ライセンス料やカスタマイズ費用、学習用データの作成費用など、導入時に必要なコストは多岐に渡ります。導入目的に合わせて、必要なオプションについて確認していきましょう。導入時の初期費用が無料のシステムもあるので、導入時の基本項目に含まれている内容を合わせてチェックするのがおすすめです。
また、クラウド型とオンプレミス型では費用構造が異なるため、自社の運用方針に合ったものを選ぶようにしましょう。月額利用料やAPI利用料、保守費用などのランニングコスト、さらに機能の拡張や再学習にかかる追加費用についても事前に確認しておくと安心です。
4.セキュリティ基準
AIチャットボットはユーザー情報を取り扱うこともあるため、高いセキュリティ基準を満たしていることが大切です。個人情報や機密情報の取り扱いポリシー、データの暗号化やアクセス制御の仕組みが整っているかを確認していきましょう。
また、管理画面やAPIのアクセス権限管理、不正アクセス防止策が取られているかも重要なポイントです。第三者認証の取得状況も、システムのセキュリティ体制を判断する材料となるので合わせて確認するようにしましょう。
5.サポート体制
導入前はもちろんですが、導入後も継続的なサポートが受けられるかどうかは、長期的な運用成功のポイントとなります。初期設定やカスタマイズ、データ移行などの導入支援の充実度を確認するのと同時に、管理者向けのトレーニングやマニュアル、ドキュメントの提供状況もチェックしていきましょう。
さらに、会話ログの分析やAIの再学習、新機能の追加など、導入後の継続的な改善サポートが受けられるかどうかもチェックしておくと安心です。
おすすめのAIチャットボット5選
AIチャットボットの種類について解説してきましたが、ここではおすすめのAIチャットボットを5つ紹介します。それぞれのチャットボットがどの種類に当てはまるのかも合わせて紹介しますので、参考にしてみてください。
- ClinicAI
- NOMOCa-AI chat
- Cognigy
- ChatPlus
- sinclo
1.ClinicAI
システム名 | ClinicAI |
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初期費用 | 要問い合わせ |
月額費用 | 要問い合わせ |
チャットボットの種類 | RAG型 |
主な機能 | 要問い合わせ
(クリニックごとにカスタマイズ) |
ClinicAIは、クリニックや歯科医院などの医療機関向けに設計されたAIチャットボットです。クリニックごとの導入目的に合わせて機能をカスタマイズできるため、本当に必要な機能だけに絞って導入可能で、導入〜運用までのコストを最適化できます。
ChatGPTの最新セキュリティ技術と厳格なデータ管理体制を利用しているので、事前学習データや個人情報などを安全に保護してくれるので安心です。LINEやWebサイトなどに設置できるため、顧客ニーズに合わせた運用が可能なのが嬉しいポイントです。
2.NOMOCa-AI chat
システム名 | NOMOCa-AI chat |
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初期費用 | 要問い合わせ |
月額費用 | 8,000円〜 |
チャットボットの種類 | 独自AI型
処理代行型チャットボット FAQ型チャットボット |
主な機能 | 24時間365日自動応答
FAQ学習・自動回答 多言語対応(98ヵ国以上) 会話履歴や質問ランキングの分析 LINEやWebサイトへの設置対応 |
NOMOCa-AI chatは、クリニックや医療機関向けに特化したAIチャットボットです。月額8,000円(税込)で利用でき、別途初期費用が必要となります。ChatGPT(GPT-4o)を搭載しており、精度の高い回答が可能なだけでなく、FAQの学習や24時間365日の自動応答、予約案内や多言語対応など、医療現場の業務効率化に役立つ機能を備えているシステムとなっています。
LINEやWebサイトにも設置でき、クリニックのホームページに合わせたデザインをカスタマイズ可能です。管理画面からFAQの変更や会話履歴の分析が可能なため、導入後の運用もしやすくなっています。
3.Cognigy
システム名 | Cognigy |
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初期費用 | 無料 |
月額費用 | 要問い合わせ |
チャットボットの種類 | RAG型
処理代行型チャットボット FAQ型チャットボット |
主な機能 | ローコード開発
外部システム連携 インテント機能 コンプライアンス対応 |
Cognigyは、ローコードで高機能なチャットボットを短期間で開発できるAIチャットボット構築プラットフォームです。AlexaやGoogle Homeといった音声インターフェース(VUI)や、Webチャット、LINE bot、Teams botなどのさまざまなチャンネルに対応しています。
外部システムとの連携機能も充実しており、SalesforceやMS SQL Serverなど、既存の業務システムと連携可能なため、業務効率化におすすめのシステムです。また、自然言語理解(NLU)やインテント機能により、より高度な会話やユーザーの質問意図を正確に把握できるため、FAQ型チャットボットとしても利用可能となっています。
4.ChatPlus
システム名 | ChatPlus |
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初期費用 | 無料 |
月額費用 | 1,500円〜 |
チャットボットの種類 | 辞書型・選択肢型併用型 |
主な機能 | 有人チャット対応
サジェスト機能 NGワード設定 API連携 IPアドレス制限 多言語対応 |
ChatPlusは、導入件数20,000件超えのAIチャットボットシステムです。約5,000種類もの機能が利用可能で、導入目的や規模に合わせて月額1,500円から導入できます。シナリオ作成やカスタマイズまでおまかせできるプランもあるので、導入が初めてで不安な方にもおすすめです。
10日間の無料トライアル期間を設けているので、実際の使用感を事前に確かめられるというメリットもあります。また、生成AIでの回答はもちろん、質問内容に合わせて有人対応に切り替えられるため、顧客満足度向上に効果が期待できます。
5.sinclo
システム名 | sinclo |
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初期費用 | 要問い合わせ |
月額費用 | 要問い合わせ |
チャットボットの種類 | 配信型チャットボット
FAQ型チャットボット |
主な機能 | 自動メッセージ送信
自動回答 シナリオ設定 有人チャット対応 定型分設定 ファイル送受信 履歴・統計レポート 外部サービス連携 |
sincloは、Webサイトの成果を最大化したい企業におすすめのチャットボットです。訪問者の行動に合わせて最適な情報を提供するWeb接客ツールとして、リード獲得や顧客エンゲージメントの向上に期待が持てます。顧客情報に合わせた自動メッセージや自動応答などの機能、有人チャットによる対応も可能です。
管理画面はシンプルな仕様になっており、ノーコードで運用可能という特徴があります。サイトへの設置はタグ1行を追加するだけで完成し、複数サイトでの利用も追加料金なしで行えるのが嬉しいポイントです。
医療機関でのAIチャットボット活用事例~患者からの問い合わせを自動化~
AIチャットボットの導入事例として、日野みんなの診療所での事例を紹介していきます。
日野みんなの診療所では、救急診療、小児科診療、在宅診療といったさまざまな診療科を提供しているため、患者からの「どの科を受診すればよいか」といった問い合わせが多く、常に電話対応に追われていました。
そこでAIチャットボットを導入したところ、電話や窓口で対応していたスタッフの業務負担が大幅に軽減されました。また、24時間いつでも患者が必要な情報を得られるようになったため、利便性の向上にもつながっています。
AIチャットボットは複数の診療科を持つ医療機関や、電話対応によるスタッフの業務負担を軽減したい企業の顧客対応の効率化やサービス向上に貢献しています。
参考:日野みんなの診療所
まとめ:利用目的に合わせてAIチャットボットの種類を選ぼう
本記事では、AIチャットボットの種類を技術タイプ、機能、会話の仕組みという基準で分類し、紹介しました。AIチャットボットの導入を検討する時は、まず自社の課題や目的を明確にすることが大切です。
たとえば、FAQ型は問い合わせ対応に適しており、雑談型はユーザーエンゲージメントの向上に役立ちます。技術面では、機械学習型はデータ量によって精度が向上し、RAG型は最新情報への対応力に優れています。
AIチャットボットを選ぶ時には、自然言語処理の精度や外部システムとの連携、長期的なコスト、情報セキュリティ対策、サポート体制の充実度などを総合的に確認しましょう。LINE連携やChatGPTなどの最新技術を活用したサービスも増えていますが、必要以上に多機能なものを選ぶよりも、自社のニーズに合ったシンプルなチャットボットを選ぶことが長期的な運用において効果的とされています。
適切なAIチャットボットを選ぶことで、業務効率化や顧客満足度の向上につながります。自社の導入目的や運用体制に合わせて、最適なチャットボットを選んでいきましょう。