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病院業界におけるM&A事例7選!業界の動向やメリットなどについても解説

病院の発展や経営の安定化を図るために、M&Aを視野に入れておきたいという方はいらっしゃいませんか?

病院業界におけるM&Aは、近年ますます注目を集めています。M&Aを行うことは買い手側と売り手側の両方にメリットがあり、事業の安定化や発展に繋げられます。

本記事では、病院業界のM&Aの事例や業界の動向、M&Aのメリットなどについて解説していきます。病院の経営に関わる方やM&Aに興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

病院業界のM&A事例7選を紹介

病院業界のM&A事例7選を紹介

ここでは、病院業界で実際に行われた8つのM&A事例について解説していきます。

  • 医療法人社団博洋会 藤井病院×医療法人社団竜山会(2021年)
  • 日本赤十字社グループ 兵庫県立柏原病院×柏原赤十字病院(2019年)
  • 社会医療法人木下会×医療法人沖縄徳洲会(2019年)
  • 日本郵政株式会社 横浜逓信病院×社会福祉法人恩賜財団済生会グループ(2017年)
  • JA埼玉厚生連 熊谷総合病院×社会医療法人北斗(2016年)
  • 株式会社東芝 東芝病院×医療社団法人緑野会(2017年)
  • NTT東日本 NTT東日本東北病院×東北医科薬科大学(2016年)

医療法人社団博洋会 藤井病院×医療法人社団竜山会(2021年)

施行日 2021年6月
買収(売却)先 買収先:医療法人社団竜山会
売却先:医療法人社団博洋会 藤井病院
目的 藤井病院の経営立て直し

参考:https://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20220401_04.html

2021年6月に医療法人社団竜山会が経営難に陥っていた藤井病院を買収しました。

博洋会の藤井病院は診療報酬の不正請求が明らかになったことで、保健医療機関取り消しの処分を受けており、経営が困難になっていました。そこで医療の提供やスタッフの雇用を守るために、竜山会に譲渡されています。

日本赤十字社グループ 兵庫県立柏原病院×柏原赤十字病院(2019年)

施行日 2019年7月
買収(売却)先 買収先:日本赤十字社グループ
売却先:兵庫県立柏原病院
目的 両病院の施設や医療設備の見直し

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/12403550/000563540.pdf

兵庫県立柏原病院が2019年7月に柏原赤十字病院と経営統合し、日本赤十字社グループの傘下に入りました。

この統合により、施設や医療設備の老朽化等の改善をすると共に、医療サービスの強化を図りました。地元の患者に対しての幅広いサービスを提供できるようになり、災害時の連携体制も強化されています。

特に災害医療の観点では大きな進展があり、地域住民の信頼を得ることで医療機関としての地位が向上したようです。

社会医療法人木下会×医療法人沖縄徳洲会(2019年)

施行日 2019年12月
買収(売却)先 買収先:社会医療法人木下会
売却先:医療法人沖縄得洲会
目的 経営の合理化やコンプライアンス、ガバナンスの強化

参考:https://www.tokushukai.or.jp/media/newspaper/1214/article-2.php

2019年12月に社会医療法人木下会が医療法人沖縄得洲会を吸収合併しました。

この吸収合併は、経営の合理化やコンプライアンス、ガバナンスの強化を目的として行われました。その他にも、専門医療分野での連携強化やスタッフ間のスキル共有なども行われ、医療サービスの質向上も進められています。

日本郵政株式会社 横浜逓信病院×社会福祉法人恩賜財団済生会グループ(2017年)

施行日 2017年4月
買収(売却)先 買収先:社会福祉法人恩賜財団済生会グループ
売却先:横浜逓信病院
目的 病院事業の赤字解消のため

参考:https://www.saiseikai.or.jp/news/2017/0401/

2017年4月、日本郵政株式会社は横浜逓信病院を社会福祉法人恩賜財団済生会グループに譲渡しました。

当時、日本郵政株式会社の病院事業は赤字になっており、その解消を目的として事業譲渡が行われました。譲渡後、医療サービスの質が統一され、患者の満足度向上に繋がっています。特に患者への対応速度やケアの質が上がり、より安心して医療を受けられる病院になりました。

JA埼玉厚生連 熊谷総合病院×社会医療法人北斗(2016年)

施行日 2016年5月
買収(売却)先 買収先:社会医療法人北斗
売却先:熊谷総合病院
目的 熊谷総合病院の医師不足やJA埼玉厚生連n経営切迫の改善のため

参考:https://www.doctor-concierge.jp/column/colum44

2016年5月、JA埼玉厚生連は社会医療法人北斗に熊谷総合病院を事業譲渡しました。

この事業譲渡は、熊谷総合病院の抱える医師不足や設備投資の負担によるJA埼玉厚生連の経営切迫を改善するために行われました。それと同時に、幅広く医療事業を展開している社会医療法人北斗は関東圏への進出を図り、さらに事業を展開しています。

結果として、多くの専門診療科が新たに設けられ、地域住民に対する医療サービスの質が向上しました。

株式会社東芝 東芝病院×医療社団法人緑野会(2017年)

施行日 2017年10月
買収(売却)先 買収先:医療社団法人緑野会
売却先:東芝病院
目的 東芝病院および株式会社東芝の経営不調改善のため

参考:https://www.global.toshiba/content/dam/toshiba/migration/corp/irAssets/about/ir/jp/news/20171130_2.pdf

2017年10月、株式会社東芝は医療法人緑野会に東芝病院を譲渡しました。
当時、東芝病院および株式会社東芝は経営不調に陥っており、その状態から脱却するために事業譲渡が行われました。

最新機器やシステムを導入している東芝病院と高い技術力のある緑野会が統合することで、医療サービスの水準の底上げが実現されています。

NTT東日本 NTT東日本東北病院×東北医科薬科大学(2016年)

施行日 2016年9月
買収(売却)先 買収先:東北医科薬科大学
売却先:NTT東日本東北病院
目的 NTT東日本東北病院の医師不足や地域が抱えている問題を改善するため

参考:https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20150930_02.html

2016年9月、NTT東日本はNTT東日本東北病院を東北医科薬科大学に譲渡しました。

この事業譲渡は、NTT東日本東北病院の医師不足問題や地域が抱えている多くの問題を改善することを目的に掲げて行われました。譲渡後、NTT東日本東北病院は大学の附属病院として運営されており、医学教育と発展に注力しています。

クリニックや病院のM&Aをするなら仲介サイトの利用がおすすめ

クリニックや病院のM&Aでは仲介サイトを利用することで、手間を抑えつつスムーズに進められます。
ここでは、以下の3つのおすすめ仲介サイトについて解説していきます。

  • CBパートナーズ
  • 株式会社G.C FACTORY
  • 株式会社メディカルプラス

株式会社G.C FACTORY

株式会社G.C FACTORY

株式会社G.C FACTORY

株式会社G.C FACTORYは、医療機関のM&A案件に特化して請け負っており、大規模な病院から小規模のクリニックまで幅広く対応してくれます。

豊富な知識と経験を持った専門スタッフがM&Aを通してサポートし、スピーディーな取引を実現してくれるのが持ち味です。取引後のアフターフォローも充実していて、トラブルが起きやすいM&A直後の時期にも安心して経営に集中できるでしょう。

またM&A完了後に料金を支払う完全成功報酬型のシステムを導入していて、M&Aが初めてでも相談しやすくなっています。

CBパートナーズ

CBパートナーズ

CBパートナーズ

CBパートナーズは、医療・介護業界のM&A支援だけでなく、開業のサポートも行っている企業です。
M&A支援サービスでは法人同士の仲介に加えて、買い手の選定や書類作成などの準備段階から取引を通してサポートしてくれます。

20年以上の実績から培われたノウハウを有しているため、M&Aをするにあたって抱えているお悩みに柔軟に対応してくれるでしょう。

株式会社メディカルプラス

株式会社メディカルプラス

株式会社メディカルプラス

メディカルプラスは医師の意向をしっかりと聞き、買い手と売り手の双方にとって有益なM&Aを実現してくれる企業です。
M&Aを通して地域医療の継続と発展を掲げており、相性の良い病院同士を引き合わせ、地域医療のための医院継承をサポートしてくれます。

公式サイトには検索機能が搭載されているので希望に沿った病院が探しやすく、M&Aを進めるイメージを掴みやすいというのも魅力の1つです。

病院業界のM&Aの動向は?

ここでは、病院業界のM&Aの動向について以下の3つのような項目に分けて解説していきます。

  • 出資持分譲渡が多い
  • 売上高の減少や経営難によるM&A(グループ化)が多い
  • 相場は約〇円

出資持分譲渡が多い

出資持分とは、病院の設立時に出資した割合に応じて、病院側から払い戻しや残った財産の分配ができる財産権のことです。

この権利を譲渡するM&Aの手法を「出資持分譲渡」と言い、病院業界ではこの手法で取引されるケースが多くなっています。

この手法は、法的手続きが少なく取引の透明性が高いことがメリットです。そのため、迅速かつ効率的な事業の引き継ぎが可能で、M&Aの影響を最小限に抑えてスムーズに病院を運営していけるでしょう。

売上高の減少や経営難によるM&A(グループ化)が多い

近年の病院業界では、売上高の減少や経営難に伴うM&Aが増加しています。このような流れには、以下のような要因が考えられます。

  • 地域医療の需要減少
  • 高齢化社会の影響
  • 医療費の抑制などの政策変更

勤めている医師の高齢化や政策変更による医療コストの増加などを理由に経営が苦しくなっている病院が増えているのが現状です。

このように経営難に陥った病院がM&Aによってグループ化することで、資金力や認知度を強化でき、経営の無駄を省いて安定化や効率化を図れるでしょう。

相場は約◯円

病院業界のM&Aにおける金額の相場は、病院の規模や立地などの条件により異なります。一般的には、以下のような価格帯で取引されることが多いようです。

病院の規模 価格相場
小規模病院 1~5億円
中規模病院 5~10億円
大規模病院 10億円以上

病院業界のM&Aのメリット

病院業界のM&Aのメリット

ここでは、病院業界のM&Aのメリットを売り手側と買い手側に分けて解説していきます。

売り手側のメリット

後継者問題を解決してスタッフを守れる

後継者不足は多くの病院が抱える課題です。M&Aにより、経験豊富で人材が揃っている組織に経営を引き継ぐことで、新たな後継者を見つけることができます。

これは病院を安定化させることに直結するため、結果的にスタッフの雇用を守ることにも繋がります。

地域医療に穴を作らずに済む

M&Aによって病院が存続できれば、地域住民への医療提供が途絶えることを防げます。

地域医療においては病院の数も少なく、近隣の医療機関が連携し医療を提供しています。そのため、病院が閉鎖することで周辺地域に大きな影響を与えることは避けられません。

そういった事態を防ぐためにM&Aを行えば、医療機関同士の連携強化や支援体制の改善も期待できます。

設備投資や事業拡大がスムーズにできる

資金力のある法人や企業に経営を引き継ぐことで、最新の医療設備の導入や新規事業への投資が可能となります。

こういった設備投資や事業拡大は、提供できる医療レベルを向上させ、患者の満足度向上にも繋がります。

また他の医療機関よりも早く、最新の医療技術を取り入れられるのも大きなメリットです。

買い手側のメリット

グループ拡大や新規エリアへの事業展開を図れる

M&Aを通じて、新しい地域へ進出し既存の医療ネットワークを容易に拡大できます。

通常、病院を新規設立するには土地や物件、設備など様々な準備が必要であり、膨大な時間と費用を要してしまいます。しかしM&Aによりグループ化することで、そういったコストを大きく削減したうえで事業展開できます。

また様々な地域で医療サービスを提供できるようになれば、地域ごとに異なる医療ニーズにも対応しながら質の高い医療を実現できるでしょう。

地域参入の障壁を回避できる

地域医療では周辺の医療機関同士でネットワークを形成し医療を提供しているため、外部から進出することは簡単ではありません。そこで、元々地域に根ざしている病院をM&Aでグループ化することで、地域の壁を容易にクリアできます。

また新規地域への進出においてもM&Aを介することで、病院の設立にかかる本来のコストを大きく抑えながら地域医療に参入できます。

医師や看護師などの人材を確保できる

人材の確保は、医療機関を経営していく上での大きなメリットです。既存の病院を買収することで、すでに病院で働いている医師や看護師などの人材をそのまま確保できます。

病院側にとって人材を確保するためには、募集や選考など様々な工程が必要になりますが、そこにかかるコストや労力も削減できます。

また医師や看護師が抱えるキャリアの一貫性を維持できる点も魅力の1つです。

病院業界のM&Aのデメリット

病院業界のM&Aのデメリット

病院業界でのM&Aは多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。

大きなデメリットの1つが、合併によって新体制が組まれることで少なからず社内に混乱が生じることです。

病院や企業間の分化や経営方針の違いから、組織内で摩擦が生じることがあります。それにより、スタッフ同士でコミュニケーションが取りにくくなったり信頼関係を築くのに時間がかかってしまい、組織としての一体感が失われるリスクがあります。

また地域医療に参入する場合、M&Aによって方針や体制が変わると患者に対しても混乱を招く場合があるため注意が必要です。

M&Aは組織内の変化だけでなく、ブランドイメージともいえる世間的な印象にも変化をもたらします。余計なトラブルを避けるためにも、紹介した事例からM&Aのコツを学んでおきましょう。

病院のM&Aをする流れ

病院のM&Aをする流れ

病院のM&Aをする際の主な流れは、以下の通りです。M&Aを検討している場合は、この流れを参考にしてみてください。

  1. 初期準備と計画策定
  2. 譲渡価値の評価
  3. 買い手の選定と交渉
  4. デューデリジェンスの実施
  5. 契約締結と譲渡
  6. アフターフォロー

1.初期準備と計画策定

まずは、事業譲渡の目的や目標を明確にし、計画を策定します。準備の初期段階では、病院の財務状況や事業内容、将来のビジョンなどを徹底的に確認しておきましょう。この段階でコンサルタントやM&Aアドバイザーなどの助言を受けることも有益です。

計画策定の際には、以下の要素に注意して進めると安心でしょう。

  • 経営戦略と目標の設定
  • 財務状況の評価
  • 将来の事業ビジョンの確認
  • 法律・規制の確認

2.譲渡価値の評価

次に病院の譲渡価値を評価するために、デューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、病院の価値や買収側が投資するリスクなどを調査することです。

譲渡価値を評価する際に見られるポイントは主に以下の5つです。

  • 財務状況
  • 患者数と診療実績
  • 医療設備の状態
  • スタッフの構成と資格
  • 地域医療における位置付け

これらについての詳細な調査結果を元に適正な譲渡価格を設定します。病院のM&Aにおいて価格設定のための正確なデューデリジェンスは非常に重要なため、事前にこれらのポイントについて把握しておきましょう。

3.買い手の選定と交渉

譲渡先となる買い手を選定し条件交渉を進めます。買い手の候補には、規模の大きな医療法人や病院グループが多く含まれています。

買い手を選定する際に確認するべきポイントは主に以下の3つです。

  • 買い手の経営実績と財務状況
  • 病院経営におけるビジョンの一致
  • 地域医療との相性

これらのポイントに注意して買い手を決定した後は、条件交渉を行います。交渉のステップは主に3段階あり、この流れに沿って進めてみてください。

  1. 基本合意書の締結
  2. デューデリジェンスの実施
  3. 採集契約書の締結

4.デューデリジェンスの実施

買い手と共に再度内部監査を行い、デューデリジェンスを実施します。

財務状況や医療品質、患者満足度などについて詳しく調査し、買い手側にどの程度のリスクがあるのかを明らかにします。この調査をできる限り詳しく行うことで、買い手と売り手の双方に対するリスクを最小限に抑え、不満なく取引を進められるでしょう

5.契約締結と譲渡

ここまでの全ての条件が揃ったら、最終的な譲渡契約を締結します。この段階では、法的な手続きや必要書類の作成が重要です。譲渡が正式に成立するには、関係各所への報告や許認可の取得が必要になります。

  • 最終形役所の締結
  • 必要書類の作成と提出
  • 関係各所への報告
  • 許認可の取得

これらの手続きを適切に進めることで、スムーズな譲渡が実現できるでしょう。

6.アフターフォロー

契約締結後には、譲渡された側の企業がスムーズに経営を進められるように、アフターフォローを行います。

具体的には、内部のコミュニケーションの強化やスタッフへの教育・研修の実施、病院運営の監督などです。こういったアフターフォローを丁寧に行うことで、M&A直後に生じやすい組織内の混乱や摩擦を最小限に抑えられます。

また新たに地域医療に参入する場合、周辺の医療機関との連携や患者へのサービス提供が上手くいかないことがあります。このようなトラブルを避けるためには、定期的な経営会議を開催したり患者満足度の調査・改善を行うなどのアフターフォローが有効です。

まとめ:病院のM&Aを検討する際は専門家に相談しよう

本記事では、病院業界でM&Aを行うメリットや動向、事例などについて解説してきました。

M&Aには経営を安定化・効率化できるメリットがありますが、一方で組織内に混乱を招きやすいといったデメリットもあります。様々な問題を避けながらM&Aを行うにはいくつものポイントがあるので、検討する際には専門家に相談すると安心でしょう。

病院業界でのM&Aに興味がある方は、本記事の内容を参考にしてみてください。