次々に起こる医療機関での受付方法の変化。マイナ保険証のスマートフォン搭載もそのひとつで、医療現場でもさまざまな反応があります。
マイナ保険証のスマホ搭載は、早い段階で準備しておかなければなりません。
マイナ保険証がスマホで使えるようになるにあたり、医療機関ではどのような準備が必要となるのかまとめました。
マイナ保険証の導入時に注意すべきポイントや、課題解決のためにできる手立てについても解説してますので、ぜひ最後までご覧ください。
この記事の内容
2025年春にマイナ保険証がスマホ搭載される予定
2025年度の春頃には、マイナ保険証がスマートフォンに搭載される予定です。
マイナ保険証のスマホ搭載機能は、Android版、iPhone版で2025年春に同時リリースされ、実装できた後は、速やかに一部の医療機関で先行してシステムが開始されます。
参考:デジタル庁「マイナンバーカード機能のiPhoneへの搭載について」
スマホ搭載によって、マイナンバーカードを持ち歩かなくても医療機関を受診可能になるため、マイナ保険証の利用促進につながると予想できます。
ただし、マイナカード本人確認機能のスマホ搭載はOSごとの開発が必要なため、2026年を超える可能性もあるようです。
マイナ保険証のスマホ搭載で医療機関がすべき準備
医療機関側がマイナ保険証のスマホ搭載に対応するには、現行の顔認証付きカードリーダーに加え、別のカードリーダーを用意しなければなりません。
厚生労働省は、マイナ保険証をスマホに搭載する新サービスの普及に向け、医療機関への支援を検討しています。
医療機関で機器設置が進まなければ、マイナ保険証のスマホ搭載は普及しないとして、カードリーダーの購入費補助も視野に入れているようです。
マイナ保険証をスマホ搭載した場合の利用方法
マイナ保険証をスマホに搭載した場合の使い方は、特別難しくはありません。
以下に手順をまとめましたので、参考にしてください。
- 患者は医療機関の顔認証付きカードリーダーでスマホ利用を選択する
- 患者が本人確認を行う(Androidでは暗証番号の入力、iPhoneでは生体認証)
- 専用リーダーにスマホをかざす
- 画面上で情報提供に同意して手続き完了
参考:厚生労働省「マイナ保険証の利用促進等について」P.15
スマホ搭載のマイナ保険証を利用する際は、患者はまず顔認証付きカードリーダーの画面上でスマホによる手続きを選択する必要があります。
本人確認後、専用リーダーにスマホをかざした後、画面上で情報提供に「同意する」ボタンを押すと手続きが完了します。
医療機関がマイナ保険証を導入する3つのメリット
マイナンバーカードを健康保険証として活用すると、医療機関側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここからは、医療機関がマイナ保険証を導入する3つのメリットについて解説します。
- 受付業務の負担が軽減する
- 医療保険の事務コスト削減につながる
- 患者情報を閲覧できる
受付業務の負担が軽減する
マイナ保険証を導入すると、健康保険証情報の入力や確認作業を手動で行う手間がなくなります。
患者がマイナ保険証をカードリーダーにかざすだけで、必要な情報が自動で瞬時に反映されるため、受付スタッフの負担は大幅に軽減されるでしょう。
また、自動化によって手作業によるミス発生のリスクも減らせるため、受付業務の正確性も向上します。
医療保険の事務コスト削減につながる
マイナ保険証を導入すると、医療機関は患者の最新状況を確認できるため、医療保険の事務コスト削減も期待できます。
マイナ保険証によって、患者の直近の資格情報(加入している医療保険や自己負担限度額など)が確認できます。
そのため、期限切れの保険証による過誤請求といった医療保険の請求ミスを軽減でき、保険者の事務コスト削減につながるのがメリットです。
患者情報を閲覧できる
マイナ保険証を利用すると、患者の医療状況をデータ上で閲覧できます。
過去の診療内容や他院での処方薬を把握できるため、適切な診療が可能になるのが大きなメリットです。
患者が過去の治療歴を正確に覚えていない場合でも、データ上で正確に把握できるため、質の良い医療を提供できるでしょう。
医療機関がマイナ保険証を導入にあたって注意するポイント
マイナ保険証の導入が進む中で、具体的にどのような点に気を付けるべきか不安を感じている医療関係者も多いのではないでしょうか。
ここからは、マイナ保険証導入時に押さえておきたい注意点を分かりやすく解説します。
- システムの不具合が生じる恐れがある
- 最初は患者への対応の負担が大きくなる
- 導入コストが発生する
システムの不具合が生じる恐れがある
マイナ保険証を利用する際には、顔認証付きカードリーダーをはじめとする精密機器が必要になります。そのため、機器の故障や通信エラーといったシステム不具合のトラブルは付きものです。
マイナンバーカードの読み取りや顔認証ができないなどの不具合が生じると、受付作業が滞ってしまい、患者に迷惑をかけてしまいます。
このような事態に備え、システム不具合時に対応できる代替手段の準備や、対応マニュアルの作成など、迅速に対応できる体制を整えておくのが重要です。
最初は患者への対応の負担が大きくなる
マイナ保険証を利用する際、顔認証付きカードリーダーを使用する必要があります。
デジタル機器に不慣れな患者がいる場合、スタッフは操作をサポートしなければなりません。特に導入当初は対応に時間がかかるため、他の業務の妨げになる可能性もあります。
マイナ保険証は本来、受付業務を効率化する目的のシステムですが、運用に慣れるまでは丁寧なサポートが必要であると理解しておきましょう。
導入コストが発生する
マイナ保険証の運用には、顔認証付きカードリーダーの導入が必要です。また、システム構築に伴う初期費用も発生します。
さらに、導入費用だけでなく、メンテナンス代や更新にかかるランニングコストも考慮しておかなければなりません。
これらのコストが経営上の負担とならないよう、助成制度の活用や適切な予算組みが必要です。
医療機関がマイナ保険証の課題解決のためにできること
マイナ保険証をクリニック運営に役立てるには、デメリットとなりうる課題を解決する必要があります。
ここからは、クリニックがマイナ保険証に関する課題解決のためにできる対策を紹介します。
- スタッフ間で情報を共有する
- 丁寧に説明を行って患者の不安を取り除く
- マイナ保険証を保有していない患者には「資格確認書」で対応する
クリニックの運営をスムーズにするためにも、ぜひ参考にしてみてください。
スタッフ間で情報を共有する
マイナ保険証の導入初期は、さまざまなトラブルが発生しやすいため、スタッフ間で情報を共有するのが重要です。
スタッフ間で情報を共有すると、トラブルへの対応が迅速化でき、患者からの信頼度向上も期待できます。
たとえば、顔認証付きカードリーダーの不具合や通信エラーが発生したときなど、各スタッフが適切に対応できるようマニュアルを共有しておくとよいでしょう。
丁寧に説明を行って患者の不安を取り除く
マイナ保険証について、まだ詳しく知らない患者も少なくありません。そのため、医療スタッフには丁寧な説明が求められます。
マイナ保険証の使い方やメリットをしっかりと伝えると、患者の不安は取り払われ、マイナ保険証の利用がスムーズに進むでしょう。
マイナ保険証を保有していない患者には「資格確認書」で対応する
マイナ保険証を保有していない患者でも、「資格確認書」を利用すれば保険診療が可能です。
資格確認書は、地方自治体や健保組合などの保険者が発行している書類で、期限は最長5年です。
資格確認書はあくまでも一時的な手段のため、今後もマイナ保険証への移行を積極的に促すようにしましょう。
まとめ:医療機関はスマホ利用のマイナ保険証にスムーズな対応をする準備をしよう
マイナ保険証がスマホに搭載されると、患者はマイナカードを持ち運ぶ必要がなくなるのが大きなメリットです。
マイナ保険証のスマホ搭載にあたり、医療機関では新たな機器の導入やスタッフの対応力強化などの準備が必要となります。
クリニックによっては、マイナ保険証のシステム導入からのスタートとなるため、できる限り早めに準備を始めておくとよいでしょう。