病院経営者にとって、赤字化は病院の存続に関わる深刻な問題です。
「赤字の病院経営から脱出したいけどどうすればいいかわからない……」
「赤字化から黒字化に改善する方法を知りたい」
このように、黒字化させたいと思っていても、赤字から脱出できないと悩みが膨らむでしょう。
そこで本記事では、病院経営が赤字化するのはなぜなのか、その原因や黒字化するための対策を5つ解説します。
この記事の内容
病院経営が赤字になるのはなぜ?主な3つの原因
それでは、病衣経営が赤字になる主な理由を3つ紹介します。
- コロナ禍による影響
- 人件費や採用費の増加
- 病床稼働率の減少
コロナ禍による影響
なぜ赤字経営の病院が急増しているのか、その原因として考えられるのは、コロナ禍による影響です。
新型コロナウイルス感染症は、感染力が高いうえに重症化しやすいことから、対応できる病院が限られていました。
コロナ患者を受け入れが可能な病院でも、他の患者への影響を考え病棟を閉鎖せざるを得ない状況に追い込まれたケースも少なくありません。
また、患者側も感染リスクを懸念して、病院の受診をひかえる傾向も見られました。
このように、新型コロナウイルス感染症は、病院経営の赤字化に大きな影響を与えています。
人件費や採用費の増加
人件費や採用費のアンバランス化も原因の一つです。
医療現場で働く医療従事者は、激務であるにもかかわらず仕事量に見合った報酬が得られない問題がクローズアップされてきました。
働く環境を変えないまま人材を確保しても、働くメリットが感じられなければ離職率の上昇は避けられません。
なんとか人材を確保しようと、人件費や採用費が増加すればコストがかかり、赤字化に拍車をかけてしまいます。
病床稼働率の減少
病床稼働率の減少も、赤字化の原因です。
病床稼働率は、入院病棟のベッドがどれだけ使用されているかを表しています。
入院病棟のある病院では、収入の60%以上を入院診療が占めるといわれているため、病床稼働率が低くなるほど赤字化する恐れがあります。
日本の病院経営の現状
日本の病院経営の現状としては、規模が大きい病院ほど赤字化しやすいとされています。病院を存続させるための統廃合で、病院数は減少する傾向が見られます。
一方で、個人経営の有床クリニックや有床診療所は、診療報酬が低いことから、無床へとシフトするケースも多いようです。
医業利益における毎年6月の4期比較における赤字病院の割合は、2019年が65.4%、20年は 76.8%に増加し、21年では73.5%、22 年74.4%。3期連続で70%を超える結果となりました。このように、赤字の病院は年々増加傾向にあると分かります。
病院経営を赤字から黒字化するためのポイント
続いて、病院経営を赤字から黒字化するためのポイントを3つ紹介します。
- 人件費を最適化する
- 集患・増患対策を実施する
- 業務のIT化を検討する
人件費を最適化する
病院経営を赤字から黒字化するためには、人件費を最適化するのがポイントです。
どれだけ人材を確保しても、従業員1人あたりの医業収益が低ければ赤字からは脱出できないでしょう。
重要なのは、従業員1人あたりの医業収益をあげることです。赤字経営から黒字化するためには、人材の需要と人件費のバランスを見直し最適化を図る必要があります。
集患・増患対策を実施する
病院を黒字化するためには、集患や増患対策を実施しましょう。
従業員を十分に確保し、最新設備を整えても、患者が増えなければ赤字経営からの脱出はかないません。
病院のホームページやSNSで積極的に情報を発信し、多くの患者にアプローチするのも有効です。SEO対策やMEO対策を取り入れ検索上位を狙えば、インターネット検索からの流入も期待できます。
業務のIT化を検討する
赤字化から黒字化にするためには、業務のIT化を検討しましょう。
病院が患者を受け入れる体制が整っていても、業務効率が悪ければ業務に支障が出たり、患者の評判が悪くなったりする恐れがあります。
そこで、業務のIT化を取り入れれば、業務効率が向上し、待ち時間や病院内の環境が整えば患者の満足度も向上し、良い評判が広がるでしょう。
業務のIT化は人件費の節約や、新たな医業収益効果も期待できます。
病院経営を黒字化させる具体策5選
では最後に、病院経営を黒字化させる具体策5選について解説していきます。
- IT業務システムを活用して効率化を図る
- 地域や他の病院と連携する
- 感染症対策を強化する
- 福利厚生を充実させ従業員の離職を防ぐ
- 専門分野を特化させて差別化を図る
IT業務システムを活用して効率化を図る
IT業務システムを活用して効率化を図れば、病院経営を黒字化させる効果が期待できます。
病院経営ではさまざまなコストがかかりますが、無駄が多く業務効率が悪ければ赤字からの脱出は難しいでしょう。
業務効率化には、電子カルテやオーダリングシステムなど、IT業務システムの導入を検討してください。
IT業務システムの導入により、スタッフの業務効率化が図れます。業務量が減れば人件費のコスト削減にもつながります。
地域や他の病院と連携する
病院経営の黒字化には、地域の介護施設や他の病院との連携も欠かせません。
例えば、かかりつけ医機能を活用すれば、患者は健康に関することを気軽に相談できますし、専門医がいる場合は紹介を通じて集患にもつながります。
高齢化社会に伴い要介護者が増える傾向にある昨今では、地域における医療機関と介護施設の連携を図ることも重要です。
入退院支援制度と連携すれば、急な入院での不安や、退院後のサポートについて相談できるので、患者やその家族の満足度向上につながるでしょう。
感染症対策を強化する
新型コロナウイルス感染症は、赤字経営の病院が急増した原因の一つです。
未だ終息には至っていないものの、感染拡大は落ち着きを見せています。しかし、今後も新たな感染症が流行する可能性はゼロではありません。
そうなった場合、感染症対策を強化していれば、病院を閉鎖せずに済み、収入減少による赤字を回避できるでしょう。
福利厚生を充実させ従業員の離職を防ぐ
病院の安定した経営には、福利厚生を充実させ従業員の離職を防ぐことも大切です。
従業員の離職率が高まれば、人件費がかさみます。
そこで、福利厚生を充実させ、従業員が安心して働ける環境を構築できれば、離職率低下を回避できるでしょう。
従業員の離職率が下がれば、余計な人件費をおさえられます。
専門分野を特化させて差別化を図る
専門分野を特化させて差別化を測れば、黒字化を図れる可能性があります。
かかりつけの病院では対応できない専門的な治療が必要な場合、新たに病院を探さなければなりません。
かかりつけ医に紹介してもらうこともできますが、遠方では通院が難しかったり、よく知らない病院では不安になったりすることもあるでしょう。
そこで、専門分野を特化させれば、競合との差別化を図れます。専門分野の特化により、他病院からの紹介で増患にもつながれば、黒字化の実現も可能です。
まとめ:病院経営を赤字から黒字化させるための対策を取ろう
近年赤字経営により厳しい状況の病院が増えています。病院を維持するには、早急に黒字化に向けた対策を取り入れなければなりません。
また、黒字経営を安定化させるには、長期的戦略も重要です。
本記事で紹介した内容を参考に、病院経営を赤字から黒字化させるために、最適な対策を取ってください。