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理事・役員報酬の一般的な相場は?金額の決め方や注意点を徹底解説

「理事や役員の報酬の相場はどのくらい?」
「報酬を決めるときにはどんなことに注意するべき?」

理事を含む役員報酬を決める場合に、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。適切な理事・役員報酬の設定は、役員のモチベーションにも関わる大切な要素となります。

本記事では一般的な役員報酬の相場や、決め方のポイント、注意点などについて詳しく解説していきますので、参考にしてみてください。

理事・役員報酬の相場に決まりはない

理事・役員報酬の相場に明確な決まりがあるわけではなく、妥当な金額を算出する式などもありません。

報酬を決める基準としては、理事長や監事などの役員がいくら必要なのかと、会社や法人の経理事情を総合的に判断して決めます。

売上や利益に応じて、1,000万円や2,000万円、3,000万円と設定は可能ですが、金額に応じて税金や保険料が変動します。

手取りの金額も踏まえながら検討しなければいけません。

それでは、役員毎の報酬の特徴について解説していきましょう。

理事長

理事長の報酬は、定款もしくは社員総会の決議によって決めます。いずれの決め方においても、理事長のみの報酬額を決めることはほとんどなく、理事全員に対する報酬総額のみを決める形となります。協会や医療法人において、理事長は代表権を持った存在であり、医療法人としての業務を執行する立場です。

しかし理事報酬を決議する社員総会においては、報酬の意見を述べることはできません。報酬に関しては、無報酬にもできます。

監事

監事の報酬も、定款か社員総会の決議によって決まります。

しかし、監事は監査機関として独立性を保たなければならないため、理事と一緒に決議することは原則認められていません。理事報酬と別途決める必要があるので、注意しましょう。

監事は、社員総会で監事報酬に対しての意見を述べる権利があります。監事が複数人いる場合には、報酬の配分を監事協議によって定めることもあります。

会計監査人

会計監査人の報酬については、理事長や監事と違い、定款や社員総会で決める必要はありません。ただし、会計監査人は独立性を保つ必要がある職位のため、報酬を決める際には、監事の同意が必要となります。

理事・役員報酬に上限はない

理事を含む役員の報酬に明確な上限額は設定されていません。

しかし、不当に高額な役員報酬だとされた場合には、損金算入が認められず、法人税の節税対策効果が低くなることがありますので注意が必要です。

もし報酬の追加が妥当であると判断された場合には、役員報酬額の水準を超えていても、不当であるとみなされないケースもあります。

理事・役員報酬とは?

そもそも役員報酬は、役員に対して支払う報酬です。医療法人では理事長や理事、監事が役員に該当するため、これらの職位者への報酬も役員報酬にあたります。

なお、損金算入できる役員報酬は、「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の2種類です。それぞれの報酬について解説していきましょう。

定期同額給与

定期同額給与とは、1ヶ月以下における一定期間ごとに支給される同額の報酬です。

定期同額給与の支給をするためには、税務署へ届出をしなければいけません。

なお、届出額よりも多く支給した分については、損金算入が認められないので注意しましょう。

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは、役員に対する賞与のような性質があり、支払日と支払額を都度、事前に税務署に届ける必要がある報酬です。

事前確定届出給与の場合、損金算入や支給のためには、定められた期日までに届け出なければいけません。

届出内容や支給日、支給額に相違が認められた場合には、該当期間のすべての事前確定届出給与の損金算入が認められなくなるため、注意してください。

理事・役員報酬は「定款」か「社員総会の決議」で決められる

役員報酬は、定款または社員総会の決議によって決めます。社員総会では、まず役員報酬の総額を決め、理事会で各役員の報酬の内訳を決められます。

役員報酬を損金算入させるために、税務署の調査で各会の議事録が必要となるケースがあるので把握しておきましょう。そのため、役員報酬を決める際には、必ず議事録の作成と保存を忘れずに行いましょう。

理事・役員報酬を決める3つのポイント

ここでは役員報酬を決める際に考えるべき3つのポイントについて、詳しく解説していきます。

  1. 税率を考慮する
  2. 必要なキャッシュを把握する
  3. 同規模のクリニック・医院を参考にする

1.税率を考慮する

役員報酬を決定する際には、「法人税」と「社会保険料」のバランスを考えることが大切です。

役員報酬を高く設定すると、損金算入により法人としての利益が減らせるため、かかる法人税を低くできます。

ただし、個人の所得には累進課税制度が適用される点には、注意しなければいけません。

役員報酬を高くすると、その分個人にかかる住民税や所得税などの社会保険料の負担が重くなります。法人税と役員個人の税率を考えて金額を決めましょう。

2.必要なキャッシュを把握する

役員報酬を決める上で大切なポイントとして、必要なキャッシュを把握しましょう。役員本人とその家族にとって必要な金額を踏まえた上で決定してください。

法人税の負担を考えるあまり、役員報酬を安くしすぎると、生活が圧迫されて勤務に対して報酬が低すぎると不満につながります。

報酬を決める際には、役員と家族の生活も考慮しましょう。

3.同規模のクリニック・医院を参考にする

 

また、同規模の医院が設定する役員報酬を参考にしながら、高すぎない金額の設定も大切です。

もし、同規模のクリニックや医院よりも高い金額を設定した場合、損金を否認されかねません。

一方、低すぎても役員のモチベーションに影響するため、バランスを取れるように、他院も参考にしましょう。

医療法人の理事・役員報酬を決める時の注意点

 

ここからは、役員報酬を決める時に注意すべき2つのポイントを解説していきます。

  • 必要以上の高額設定は損金算入が認められない
  • 役員報酬の変更は事業年度の開始から3ヶ月以内でなければできない

必要以上の高額設定は損金算入が認められない

役員報酬は自由に報酬額を設定できるものではありません。必要以上に高額だと判断されてしまうと、損金算入が認められず、法人税の負担が大きくなってしまいます。不当に高額な報酬とならないためのポイントは、下記となります。

  • 他法人の役員報酬や給与額を参考に、該当する医療法人の経理状況から判断する
  • 収益額が大きな場合でも、無制限に役員報酬を認められない
  • 役員の勤務状態によって、報酬額の加算が認められることもある
  • 役員としての勤務状況や責務に応じた報酬額である

役員報酬が必要以上の高額だと判断されるか否かは、経理事情や役員の勤務状態などを含めて、総合的に判断されるため注意しましょう。

役員報酬の変更は事業年度の開始から3ヶ月以内でなければできない

役員報酬を変更するには、原則事業年度が開始されてから3ヶ月以内とされています。

中には、経営上の事情などから、事業年度の開始から4ヶ月以上経ったあとに、役員報酬を変更したい場合もあるでしょう。しかし、事業年度が開始されてから4ヶ月以上経ってしまうと、増やした金額の損金算入ができません。

損金算入ができないと、法人税の負担が大きくなりますので、注意してください。

まとめ:理事・役員報酬は相場を把握して適切に設定しよう

役員報酬は、平均の金額は導き出せるものの、利益や税金によって判断が変わるため相場はありません。

報酬を高く設定しても、所得税や社会保険料が多くなり、手取り額が減ることもあるでしょう。

また、報酬次第では、損金算入が認められない可能性もありますので、総合的に判断して決定しましょう。