「経営分析ツールは医療機関におすすめって聞いたけど、具体的にどのようなことができるのだろう……」
「経営分析ツールを導入するメリットや注意点を知りたい……」
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
経営分析ツールは、会社の経営状況や業績を数値やデータから分析を行い、経営判断や改善施策に役立つツールです。
一般企業でも経営分析ツールは活用されていますが、収益構造の複雑さを可視化したり、患者数または稼働率の把握ができたりする点から、医療機関にもおすすめです。
そこで本記事では、医療機関におすすめの経営分析ツールを紹介します。
経営分析ツールを導入するメリットや注意点、選び方も含めて解説しているので、参考にしてみてください。
この記事の内容
経営分析ツールとは?
経営分析ツールとは、経営状況を数字で見える化する便利なツールです。
経営者が勘や経験に頼らず、データを根拠に経営判断ができるようになります。
とくに医療機関向けの場合は、診療科別や医師別、保険種別の収益をデータで見ることができるため、経営方針の判断をしやすいです。
ほかにも、職員の配置や働き方改革にも活用できるほか、コスト管理にも役立ちます。
勘や経験に頼らない、より正確な経営判断を行いたいと考えている医療機関におすすめのツールです。
医療機関向け経営分析ツールでできること
医療機関向け経営分析ツールでできることは、主に4つあります。
- 収益・費用の分析
- 患者数・稼働率の分析
- 診療報酬・レセプトデータの分析
- 人件費・コストの分析
それぞれのできることについて解説します。
収益・費用の分析
経営分析ツールを活用することで、収益や費用の分析ができます。
診療別や医師別の収益を自動集計したり、医療材料費や薬剤費の推移を可視化したりできます。
たとえば、整形外科は収益が大きいが、消化器内科は検査材料費がかさみ利益が薄いなどの経営判断の材料に役立てることが可能です。
収益や費用を細かく分析を行い、収益拡大につながる経営分析を行いたいときにおすすめです。
患者数・稼働率の分析
経営分析ツールを利用すると、患者数や稼働率の分析が行えます。
具体的には、外来患者数や入院患者数、平均在院日数の推移を把握することが可能です。
ほかにも、病床稼働率や診察枠の利用率を可視化できるため、どのような稼働状況なのか確認したいときに活躍してくれます。
たとえば、CT稼働率に比べて維持費が高い場合は、外部検査受託を増やすことを検討することも可能です。
また、平日の午前は患者数が集中して待ち時間が長い場合は、予約制を強化するなどの施策を検討できます。
診療報酬・レセプトデータの分析
診療報酬やレセプトデータの分析は、経営分析ツールでできることの一つです。診療報酬点数の算定状況を分析したり、国保・社保・自費などの保険種別の収益をデータ化したりできます。
たとえば、自費診療の割合を把握し、インプラントや健診の強化を検討することも可能です。
ほかにも、特定の加算が算定されていない場合は、請求漏れを発見して収益改善を図れます。
人件費・コストの分析
経営分析ツールを活用すると、人件費やコストの分析が可能です。
具体的には、医師や看護師、事務スタッフの人件費を部門別に集計したり、残業代や夜勤手当などの労務コストを可視化したりできます。
たとえば、特定の曜日は外来患者に比べて看護師が多すぎる場合、配置換えを行ってコスト削減を図ることが可能です。
また、事務スタッフの残業時間が突出しているときは、電子カルテや受付システムの導入を検討することもできます。
不要なコストを、必要な部分に行き渡らせるような経営判断が可能です。
医療機関が経営分析ツールを選ぶ際のポイント
医療機関が経営分析ツールを選ぶ際に意識するべきポイントは、4つあります。
- 医療業界に特化しているか
- 自院の規模・目的に合っているか
- 操作性・わかりやすさに優れているか
- データの連携のしやすさ
それぞれのポイントについて解説します。
医療業界に特化しているか
経営分析ツールを選ぶ際には、まず医療業界に特化しているか確認しましょう。
一般企業向けの経営分析ツールでは、診療報酬やレセプトデータの分析に対応していない可能性があります。
また、医療機関向けツールであれば、点数表や加算要件を踏まえた分析が可能です。
医療業界に特化していないと、ツールを導入しても活用できない可能性があるため、対応業種・業態を必ずチェックしましょう。
自院の規模・目的に合っているか
経営分析ツールを選ぶときは、自院の規模や目的に合っているか確認するのがおすすめです。大学病院と地域のクリニックでは、必要な機能や分析の粒度も異なります。
収益改善やコスト管理など、自院の目的に合うか確認することが大切です。
たとえば、小規模クリニックであれば、外来患者数と収益の推移を簡単に確認できるシンプルなツールが向いています。
中規模病院であれば、病床稼働率や診療科別収益まで見えるツールがおすすめです。
大規模病院であれば、BIツールと連携し、多拠点のデータも一元管理できると良いでしょう。
操作性・わかりやすさに優れているか
医療機関が経営分析ツールを選ぶときは、操作性やわかりやすさに優れているか確認しましょう。
たとえば、高性能な経営分析ツールを導入しても、操作が難しい場合は医師や看護師が扱いきれず、機能を十分に活用できない可能性があります。
ITに詳しくない人でも直感的に使えるツールを選ぶのがおすすめです。
データの連携のしやすさ
データの連携のしやすさは、経営分析ツールを選ぶ際に重要なポイントです。
なかでも、電子カルテやレセコン、会計システムとスムーズに連携できるツールを選びましょう。
手入力が多いと、ミスや作業負担が増えるだけでなく、分析結果の信頼性も下がります。
データ連携が弱いと事務スタッフが毎月手作業でデータを加工する必要があり、業務が煩雑になりやすいです。
医療機関におすすめの経営分析ツール10選
ここからは、医療機関におすすめの経営分析ツールを10選紹介します。
CLINIC BOARD
運営会社 | 株式会社エムティーアイ |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・医療業界に特化している ・クリニックの重要指標が簡単に把握できる ・体験版が登録不要で利用できる |
公式サイト | https://clinicboard.jp/ |
CLINIC BOARDは、医療業界に特化している経営分析ツールです。
病院・クリニックの経営改善施策に役立つツールとしてこだわって開発されており、経営にとって重要な指標を瞬時に可視化できます。
たとえば、診療単価や新患者数、リピート率を一つの画面にまとめることができるため、経営状況の把握をスムーズにできます。
また、体験版を登録不要で利用できるので、実際に使ってみて自院に合っているか判断しやすいです。
Beeコンパス
運営会社 | 株式会社メディ・ウェブ |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・過去の実績や将来予測と現状を比較できる ・豊富な分析機能が備わっている ・毎日スマホで経営通知表が届く |
公式サイト | https://www.3bees.com/ |
Beeコンパスは、過去の実績や将来予測と、現状を比較できる経営分析ツールです。
医療経営に必要な豊富な分析機能が備わっており、項目を選択して細かく分析できます。
具体例を挙げると、患者数や診療報酬額、スタッフ一人あたりの患者数などの項目を分析可能です。
また、スマホに経営通知表が毎日届くため、経営状況をスマホから簡単に確認できます。
レセコンアナライザー
運営会社 | カルー株式会社 |
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価格 | 初期費用:100,000円 Calooプレミアム掲載契約者限定:10,000円/月 単体での利用:20,000円/月 |
特徴 | ・経営指標を自動で集計 ・各月の重要な経営指標を一画面にまとめられる ・離反患者のピックアップができる |
公式サイト | https://lp.caloo.jp/reze/ |
レセコンアナライザーは、クリニック経営指標を自動で集計できる経営分析ツールです。
レセプト枚数や新規患者数、再来患者数を自動で集計して一画面に表示してくれます。
また、先月比や昨年同月比で数字変化の要因を見える化できるため、経営状況の変化を把握しやすいです。
レセプト申請用ファイル(UKEファイル)をアップロードするだけで簡単に分析できるので、使い勝手も良いです。
CLINICSカルテ
運営会社 | 株式会社メドレー |
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価格 | 初期費用:無料 利用料金:要問い合わせ |
特徴 | ・多種多様な機能が備わっている ・曜日や時間帯などの細かい分析が可能 ・オンラインデモ機能がある |
公式サイト | https://clinics-cloud.com/karte |
CLINICSカルテは、3,400件を超える医療機関が導入しているツールです。経営分析だけでなく、予約や問診機能なども備わっているため、一つのツールで一元管理できます。
分析機能では、診察数やカルテ数、初再診数などをデータ化したり、医業収入を可視化したりすることが可能です。
また、曜日や時間帯とオーダーに分けて分析することができるため、細かく分析したい方にも役立ちます。
さらに、無料オンラインデモ機能があるので、実際に使用してみてから導入を検討できます。
CLIUS(クリアス)
運営会社 | 株式会社 DONUTS |
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価格 | 初期費用:200,000円~ 利用料金:12,000円/月 |
特徴 | ・外来・在宅・オンライン診療に対応 ・ほぼ全ての診療科に対応 ・診療時間分析や業務分析など細かく分析できる |
公式サイト | https://clius.jp/ |
CLIUSは、外来診療や在宅診療、オンライン診療に対応しているツールです。経営分析ができるだけでなく、予約や診察、院内フローなどの機能も備わっています。
経営分析では、担当医や曜日、時間帯などの診療時間ごとのデータを分析できます。
ほかにも、患者の属性や性別、保険などの業務分析が可能です。
眼科や歯科などのほぼ全ての診療科に対応している点も魅力です。
病院ダッシュボードχ
運営会社 | 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン |
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価格 | 初期費用:無料 ベースパッケージ:100,000円/月 【オプション】 看護必要度モニタリング:15,000円/月 手術分析・チーム医療plus・外来分析・材料ベンチ:各37,500円/月 看護必要度分析・病床機能:各50,000円 |
特徴 | ・同規模他病院との比較ができる ・シミュレーション機能が備わっている ・導入時のサポートがある |
公式サイト | https://www.ghc-j.com/dashboard/ |
病院ダッシュボードχ病院経営の専門コンサルティング会社が開発した多機能型経営分析ツールです。
自院だけでなく、同規模他病院と比較した診断結果を表示することが可能です。
また、シミュレーション分析機能が備わっており、どの項目を改善することで経営に影響があるか分析できる機能も備わっています。
導入時にはコンサルタントが訪問して、実際の使い方や数値の見方・解釈などを丁寧に説明してくれます。
Libra(リブラ)
運営会社 | 株式会社日本経営 |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・累計1,000院以上の医療機関から利用されている ・内部環境だけでなく外部環境の分析も可能 ・相談サポートを完備 |
公式サイト | https://sdb-libra.jp/ |
Libraは、1,000院以上の医療機関が導入している経営分析ツールです。
算定可能性のチェックや疾患別の集計・パス分析などの内部環境を分析できるだけでなく、病床機能報告の分析や需要予測などの外部環境の分析もできます。
ほかにも、重点経営指標の管理や、患者数・収益などの収益構造を可視化することが可能です。
また、操作方法が相談できるだけでなく、直面している課題や困りごとに関して一緒に解決できるようにサポートしてもらえます。
AI-Board
運営会社 | GMOリザーブプラス株式会社 |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・データ分析をAIに任せられる ・統計データを細かく確認できる ・幅広い診療科に対応 |
公式サイト | https://medical-reserve.co.jp/products/ai-board |
AI-Boardは、AI機能を搭載している医業経営分析ツールです。
データ分析や集計をAIに任せることが可能で、分析に必要な業務効率負担を削減したい方に向いています。
内科や皮膚科、眼科などさまざまな診療科に対応しており、目的に合わせて細かい分析が可能です。
日次や月次統計や治療統計などの分析ができ、知りたい情報を素早く収集して確認できます。
ほかにも、患者単価や患者アクセス数、患者リピート率をダッシュボードから確認できるため、経営判断に役立つ情報を一つの画面でチェック可能です。
homis analysis
運営会社 | メディカルインフォマティクス株式会社 |
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価格 | 初期費用:100,000円 利用料金:20,000円/月 |
特徴 | ・在宅医療に特化 ・目的に合わせて細かく分析できる ・無料デモ機能が備わっている |
公式サイト | https://homis-mics.jp/analysis.html |
homis analysisは、在宅医療に特化している経営分析ツールです。収益分析や患者分析、診療分析など、目的に合わせて細かく分析できます。
また、収益傾向や患者層、稼働率を可視化し、課題を明確にすることが可能です。
集計したデータをグラフや報告書として自動生成も可能で、分析結果を会議などで使用したい場合にも向いています。
無料のデモ機能が備わっているため、実際に利用してみてから導入するか検討できます。
B4A 経営ダッシュボード
運営会社 | 株式会社B4A |
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価格 | 要問い合わせ |
特徴 | ・カスタマイズ性に優れている ・予約から決済までを一元管理できる ・幅広い分析が可能 |
公式サイト | https://www.b4a.co.jp/ |
B4A 経営ダッシュボードは、自由診療や美容クリニックに特化している経営分析ツールです。分析項目やアウトプット形式を自由にカスタマイズできます。
カスタマイズ性に優れているため、目的に合わせて柔軟に出力・分析できる点が魅力です。
また、分析機能では、スタッフ別の売上実績や顧客属性別の利用傾向など細かい部分まで分析することが可能です。
ほかにも、クロス集計やGA4などの外部データも取り込むことができるため、幅広い分析に対応しています。
医療機関が経営分析ツールを導入するメリット
医療機関が経営分析ツールを導入するメリットは、4つあります。
- 収益構造の可視化を図れる
- コスト管理の効率化が期待できる
- 患者の動向を把握できる
- 経営判断のスピードを向上できる
それぞれのメリットについて解説します。
収益構造の可視化を図れる
医療機関が経営分析ツールを導入するメリットとして、収益構造の可視化が挙げられます。診療科や医師・診療内容ごとの収益を明確に把握できるため、経営判断を行いやすいです。
また、黒字部門と赤字部門が一目でわかり、経営改善につなげやすいです。
たとえば、健康診断やワクチン接種などの自由診療の収益割合が大きい場合は、今後の強化ポイントにできます。
収益構造の可視化で、現状と今後について検討できるため、多くの医療機関におすすめです。
コスト管理の効率化が期待できる
医療機関が経営分析ツールを利用するメリットとして、コスト管理の効率化が期待できる点も挙げられます。人件費や薬剤費、医療材料費など部門別に集計し、ムダな部分を発見することが可能です。
たとえば、薬剤費が前年よりも10%増加している場合は、ジェネリック医薬品の採用を検討できます。
ほかにも、夜勤専従看護師の人件費が高い割に、病床稼働率が低いときは、夜間体制を見直して改善を図ることができます。
データに基づいた経営分析をできるため、大きなメリットがあるといえるでしょう。
患者の動向を把握できる
患者の動向を把握できる点は、医療機関が経営分析ツールを導入するメリットです。経営分析ツールを導入すると、外来患者数や入院患者数、病床稼働率などを把握できます。
加えて、地域のニーズや患者層の変化を捉えやすい点も魅力です。
具体例を挙げると、高齢患者が増えて整形外科とリハビリ科の外来数が急増している場合は、介護・在宅医療の強化を検討できます。
ほかにも、特定曜日や時間帯に患者が集中するときは、予約制や診察枠の見直しで待ち時間短縮を図れます。
経営判断のスピードを向上できる
医療機関が経営分析ツールを導入すると、経営判断のスピードを向上できます。
データがリアルタイムで可視化できるため、勘や経験に頼らず迅速な判断が可能です。
会計や報告の際に、根拠ある数字で示せるので、説得力のある提案・説明ができます。
たとえば、経営分析ツールを使って翌月の資金繰りに不安があるとわかると、早めに金融機関に融資相談するといったことも可能です。
医療機関が経営分析ツールを導入する際の注意点
医療機関が経営分析ツールを導入する際の注意点は、4つあります。
- セキュリティ・個人情報対策を講じる
- コストと運用負担を検討する
- 無料の分析ツールでは機能が不足する
- 何を分析したいか具体的にする
それぞれの注意点を解説します。
セキュリティ・個人情報対策を講じる
医療機関が経営分析ツールを導入する際には、セキュリティ・個人情報対策を講じましょう。
経営分析は、患者数や診療内容、レセプトデータなど個人情報や機密情報を扱います。
そのため、セキュリティが不十分だと情報漏洩のリスクが高まります。
対策として、医療情報ガイドラインに準拠したサービスを選んだり、二段階認証またはアクセス権限の管理を徹底したりしましょう。
コストと運用負担を検討する
経営分析ツールを導入する際は、コストと運用負担を検討しましょう。
高機能なツールを導入しても、維持費やスタッフの負担が増えてしまうと、かえってコストパフォーマンスや業務効率が下がる場合があります。
試用期間やデモ版を利用して、操作性を確認したり、スタッフ教育の時間やコストを含めて検討したりすると良いでしょう。
無料の分析ツールでは機能が不足する
経営分析ツールの注意点として、無料の分析ツールでは機能が不足する可能性が挙げられます。
無料ツールは、診療報酬算定やレセプト分析などの医療業界特有の分析に対応していないケースが多いです。
導入してみたものの、目的に合った使い方や分析ができない場合は、導入の手間がかかっただけで終わってしまう可能性があります。
導入前に必要な分析項目を明確化したり、無料ツールは補助的な意味合いで活用したりすると良いでしょう。
何を分析したいか具体的にする
経営分析ツールを導入する際の注意点として、何を分析したいか具体的にすることも大切です。
目的があいまいな状態で導入すると、機能を十分に使いこなせず、宝の持ち腐れ状態になってしまうリスクがあります。
「患者数の増減を見たい」「人件費率を適正にしたい」といった分析目的を事前にリスト化し、解決できるツールを選ぶと良いでしょう。
まとめ:医療機関は経営分析ツールの導入がおすすめ!
経営分析ツールを導入すると、根拠のある数字でデータ化を行い、経営判断に役立てられます。
ほかにも、コスト管理の適正化が図れるため、収益改善に役立てることが可能です。
多くの医療機関におすすめなので、経営分析ツールの導入を検討している方は、本記事で紹介した選び方やおすすめツールをぜひ参考にしてみてください。