「歯科用CTとレントゲンは何が違う?」
「歯科用CTとレントゲンはどのようにして使い分ける?」
歯科用CTは、詳細なデータを入手することが可能であり、レントゲンは治療計画を迅速に立てられるという特徴があります。
そこで当記事では、歯科用CTとレントゲンの違いを解説していきます。それぞれのメリットや注意点についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
歯科用CT・レントゲンとは
歯科用CTとレントゲンの違いがよく分からないという方は多いと思います。
歯科用CTやレントゲンを撮影することになったときに、戸惑ってしまわないためにも、それぞれの検査について事前に知っておきましょう。
- 歯科用CTとは
- レントゲンとは
それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
歯科用CTとは
歯科用CTは、口腔内や顎などを撮影することに特化したCTです。
解像度の高い画像を撮影可能であり、3Dで立体的に写し出せるため、歯や顎の骨の状態、血管、神経などの位置などを正確に見られます。
骨の厚みや骨密度をコンピューターで計算できるため、より詳細な情報を入手できます。歯科用CTは、座ったままで撮影ができ、服を着用したまま、すぐに撮影が可能です。
1度の撮影にかかる時間は、約十数秒なので、患者がじっとしておく時間が少なくて済み、負担が軽減されます。
レントゲンとは
レントゲンは、2Dの平面画像を写し出せる検査であり、歯や歯の根元の状態を鮮明に見ることができます。
歯科用のレントゲンには、パノラマレントゲン・デンタルレントゲン・咬翼(こうよく)レントゲンの3種類があります。
レントゲンの種類 | 特徴 |
---|---|
パノラマレントゲン | ・回転方式と体腔管方式の2種類がある
・回転方式:カメラが顔の周りを回転して撮影する ・体腔管方式:口の中に細いX線管を入れて撮影する ・撮影可能な部分:目の周囲から下顎まで、上下の歯、顎全体 ・乳歯と永久歯の生え変わりの状態の確認 ・先天性欠如歯の確認 ・埋伏過剰歯や埋伏歯の確認 ・親知らずの治療の有無の診断 ・多数歯のむし歯の進行状態の確認 ・全顎的な歯周病の進行度合いの確認 |
デンタルレントゲン | ・特定の部位、歯を詳細に撮影できる
・むし歯の進行状態の確認 ・根管治療:薬が根管まで行き届いているか確認 ・歯周病の進行状態の確認 ・インプラント周囲の骨吸収状態の確認 |
咬翼(こうよく)レントゲン | ・上下の歯のかみ合わせを確認できる
・口内にレントゲンフィルムを挟んで撮影する |
パノラマレントゲンでは、上下全体の歯や顎の部分を一度に撮影できます。
パノラマレントゲンは、親知らずの生え方や歯の根元の状態、歯茎の状態、歯周病の状態、顎の骨の状態、大きなむし歯を確認可能です。
デンタルレントゲンは、特定の歯の詳細を撮影できるため、歯の根元の状態や見えづらい位置にあるむし歯を確認できます。
咬翼レントゲンは、レントゲンフィルムを挟んで上下の歯がかみ合っている状態で撮影を行い、かみ合わせの確認ができる検査です。
それぞれの特徴を活かして、症例に合った最適な検査を行います。
歯科用CTとレントゲンの違い
歯科用CTとレントゲンの違いは、大きく分けて3つあります。
- 画像データの次元が2Dと3Dで異なる
- 被ばく量が異なる
- 治療の精度が異なる
それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
画像データの次元が2Dと3Dで異なる
歯科用CTは3Dの立体的な画像データであり、レントゲンは2Dの平面的な画像データであるという点が大きな違いです。
レントゲンの平面的な画像からは、一方向からの様子しか確認できないという特徴があります。
一方で、立体的な画像データが見られる歯科用CTでは、骨の幅や厚み、深さ、奥行きなどの詳細なデータが見られます。
被ばく量が異なる
歯科用CTとレントゲンの被ばく量は、異なります。
歯科用CTの被ばく量は0.04mSv程度であり、レントゲンの被ばく量は0.006mSv程度とされています。いずれも、人体に影響を及ぼす可能性のない被ばく量であるため、安全に検査を受けることが可能です。
参照: 被ばく量の比較|株式会社アールエフ
参照:「自然放射線」と「レントゲン検査」の被ばく量|株式会社アールエフ
治療の精度が異なる
歯科用CTとレントゲンでは、画像データから行える治療の精度が異なります。
レントゲンは平面的な画像を撮影するため、骨の厚みや密度などの詳細なデータを得ることはできません。
一方で歯科用CTでは、立体的に骨の厚みが見え、血管や神経などの詳細なデータを得られます。
歯科用CTとレントゲンの必要性
一般的な検査では、レントゲンで問題ありませんが、親知らずの抜歯や進行した歯周病など、複雑な治療を必要とする場合は、歯科用CTが用いられます。
レントゲンは、平面的な画像を撮影する検査であり、むし歯の進行具合の確認や根管治療の際に薬が根管まで行き届いているのかの確認、乳歯から永久歯に生え変わる際の確認などが行えます。
歯科用CTは、立体的な画像を撮影するために行う検査であり、親知らずの抜歯の際の神経の位置などの確認、埋伏歯の位置の確認など、レントゲンだけでは正確な情報が得られない複雑な症例で必要不可欠です。
レントゲンで補える症例であれば、レントゲンを用いて安価で迅速な検査ができ、レントゲンでは分からない部分を歯科用CTでより詳しく検査が可能です。
レントゲンと歯科用CTはそれぞれ違う特徴があるため、症例に合わせて適切に選択されます。
担当医師は、患者の症例に合わせて適切な検査を選択し、口腔内の状態を正確に判断できる検査画像を参考にして、効果的な治療計画を立て、治療を進めていきます。
歯科用CTのメリット
歯科用CTを活用するメリットは、5つあります。
- 立体的な画像で治療計画の説明がわかりやすい
- 内部まで確認できるため効果的な治療ができる
- 被ばく量をおさえて詳しい検査ができる
- さまざまな治療を安全に行える
- 患者の負担をおさえられる
メリットについて詳しく解説していきます。
立体的な画像で治療計画の説明がわかりやすい
歯科用CTでは、立体的な検査画像を用いて、患者に歯の状態や治療計画を伝えられるため、説明がしやすく、患者も理解がしやすいメリットがあります。
3Dの立体的な画像で歯の内部の状態が見られるため、治療が必要な部分の正確な位置や幅・奥行きなどを確認できます。
複雑な位置のむし歯や、神経周辺の治療を行う際など、患者が不安に思っている場合でも、立体的な画像を使って説明をすることで、安心して治療を受けることが可能です。
内部まで確認できるため効果的な治療ができる
立体的に歯や歯茎の内部まで確認できるため、治療が必要な部分が明確となり、効果的な治療が行えます。
平面的な画像では見つからなかった病変も見つけることができるので、隠れたむし歯の治療や中等度以上の歯周病の進行具合などの正確な情報を得られます。
例えば、表面的には分からない隠れたむし歯が内部で進行していた場合、どの位置からアプローチすれば健康な歯を残しながら治療できるのかを判断することが可能です。
被ばく量をおさえて詳しい検査ができる
歯科用CTは、口腔内や顎部分に特化したCTなので、医療用の体全体を撮影するCTよりも被ばく量を抑えて、歯科診療に必要な詳しい検査ができます。
被ばくする部位が少なくて済むだけでなく、鉛のエプロンを着用するなどして、他の部分が被ばくしないような工夫もされています。
そもそも歯科用CTは、人体に影響を及ぼすほどの被ばく量はなく、安全に詳しい検査ができるCTです。
さまざまな治療を安全に行える
根管治療や親知らずの抜歯、歯列矯正などの治療の際に、立体的な画像を撮影できる歯科用CTが必要不可欠です。
例えば、歯茎を切開しなければ分からなかった部分の治療も、歯科用CTを活用すれば切開の必要がなく、治療を始められる場合があります。
歯科用CTを使用することで、傷みがなく、口腔内部の正確な情報を入手できるため、必要以上の治療を行うことなく安全に治療ができます。
患者の負担をおさえられる
歯科用CTは、来院した衣服を着用したままで、座って撮影ができる検査なので、患者の負担を抑えられます。
医療用のCTとは異なり、衣服を着替えたり、ベッドに横になるなどする必要がありません。
例えば、医療用CTの閉そく感が苦手という方でも、歯科用CTなら抵抗感が少なくなるため、過度なストレスを感じることなく検査が可能です。
レントゲンのメリット
レントゲンのメリットは、3つあります。
- 治療計画を迅速に立てられる
- 被ばく量をおさえられる
- 安価で経済的
それぞれのメリットを詳しく解説していきます。
治療計画を迅速に立てられる
レントゲンは、撮影時間が短時間で済み、すぐに撮影した画像が使えるため、迅速に治療計画を立てられます。
レントゲンの撮影は短時間で終わるため、レントゲンを撮影して治療する椅子に戻ったら、すぐに撮影したレントゲン画像をもとに、担当医師からの説明が受けられます。
レントゲンの撮影画像の結果を待つための時間がないため、スピーディな治療が可能です。
被ばく量をおさえられる
レントゲンは、歯科用CTよりもさらに被ばく量が少ない検査です。
被ばく量をおさえて、口腔内の状態を確認できるため、患者の心身に負担をかけることなく、安全に治療が行えます。
例えば、複数枚のレントゲン撮影を必要とする患者でも、1度の撮影の際の被ばく量が少ないため、人体に影響を与えることがありません。
安価で経済的
レントゲンは、比較的安価で経済的であるというメリットがあります。
歯の治療を行うために、高額な費用が必要となれば、なかなか行く気になれないという方も、経済的で安全な検査を受けられるため安心です。
歯科用CTの注意点
歯科用CT検査を受ける際には、3つの注意点に気をつけましょう。
- 妊娠中や妊娠の可能性がある場合は事前に知らせる
- 心臓ペースメーカーの方は事前に知らせる
- 検査時に取り外せない金属がある場合は検査が受けられない
注意点について詳しく解説していきます。
妊娠中や妊娠の可能性がある場合は事前に知らせる
妊娠中や妊娠の可能性がある方は、歯科用CT検査を受ける前に、担当医師に相談しましょう。
歯科用CTは顔部分の撮影に特化したものであるため、胎児への影響はないとされています。
歯科医院では、被ばくをなるべくおさえるために、鉛のエプロンをつけて他の部分の被ばくを防止しているため、安全に検査が行えます。
ただし、病院によっては撮影不可としているケースもあるため、自己判断せずに必ず医師に伝えてみてください。
心臓ペースメーカーの方は事前に知らせる
心臓ペースメーカーは、体内に機械を埋め込んでいるため、事前に担当医師に申告しておきましょう。
病院によって、歯科用CTの検査ができるかできないかを判断しているため、必ず担当医師に伝えなくてはなりません。
安全に治療を受けるために、自身の病状については、きちんと伝えておくことが大切です。
検査時に取り外せない金属がある場合は検査が受けられない
歯科用CTの検査を行う際に、取り外せない金属がある場合は、検査が受けられないため注意しましょう。
体内に金属がある場合、安全に検査が行えないと判断された場合は、検査が受けられません。
関係ないだろうと自己申告をせずに検査を受けてしまうと、怪我をするなどの問題が発生する恐れがあるため、必ず検査前に担当医師に伝えるようにしてください。
レントゲンの注意点
レントゲン検査を受ける際の注意点を確認しておきましょう。
- 撮影部位にあるアクセサリー、エレキバン、ボタンを外す
- 息を止める・動きを止めて撮影する
- 妊娠中や妊娠の可能性がある場合は医師に伝える
注意点を詳しく解説していきます。
撮影部位にあるアクセサリー、エレキバン、ボタンを外す
歯科用レントゲンでは、顔あたりを撮影することになるため、撮影部位の近くにあるアクセサリーやエレキバン、ボタンを外す必要があります。
補聴器や眼鏡、ヘアピン、ピアス、ネックレスなどのアクセサリーは、レントゲンに写りこんでしまうため、外さなくてはなりません。
金属のついているウィッグやかつらを着用している方で、検査の際に取り外せないという場合は、担当医師の判断で検査が受けられないケースがあるため注意が必要です。
息を止める・動きを止めて撮影する
レントゲン撮影は短時間で終わるため、撮影中はなるべく動かないようにすることで正確な画像を撮影できます。
担当医師から「息を止めて」と声かけをされたら、息を止めて、動かないように注意して撮影に挑みましょう。
動いてしまうと画像が鮮明に撮れず、撮り直しとなってしまう恐れがあるため、注意が必要です。
妊娠中や妊娠の可能性がある場合は医師に伝える
歯科用CT同様に、レントゲンを撮影する際も、妊娠中の方や妊娠している可能性がある方は、事前に担当医師に伝えておきましょう。
妊娠の可能性がある方がレントゲン検査ができるかを判断するのは、担当医師であるため、検査を受けられるケースと受けられないケースがあります。
胎児にとって影響がないとしても、念のためにレントゲンは控えるべきという方針の歯科医院では、撮影ができません。
事前に担当医師に妊娠の可能性を伝えておくことで、安全な検査と治療が可能になります。
歯科用CTは保険適用となる?
歯科用CTは、保険適用となる場合とならない場合があります。
- 歯科用CTが保険適用となる場合
- 歯科用CTが保険適用とならない場合
保険適用となる場合とならない場合の条件について、詳しく解説していきます。
歯科用CTが保険適用となる場合
歯科用CTが保険適用となる場合は、歯科用レントゲンでの撮影は困難であるため、歯科用CTでの撮影が必要不可欠であると、判断された場合のみです。
歯科用CTが保険適用となる例としては、歯茎に埋まっている親知らずの位置を把握するため、顎裂(がくれつ)などの上顎の歯茎が裂けている場合の確認や検査などが挙げられます。
保険適用となるのかは、自己判断できないため、担当医師に相談することがおすすめです。
歯科用CTが保険適用とならない場合
歯科用CTが保険適用とならない場合は、自由診療であるインプラント治療などが挙げられます。
インプラント治療では、歯茎の内部の神経や骨の厚み、骨密度などの情報を正確に得る必要があるため、必ず歯科用CTの撮影が必要となります。
よって、インプラント治療を行う場合は、自己負担で歯科用CTの費用を支払う必要があることを知っておきましょう。
レントゲンは保険適用となる?
レントゲンも症例によって、保険適用となる場合とならない場合があります。
- レントゲンが保険適用となる場合
- レントゲンが保険適用とならない場合
レントゲンが保険適用となる条件とならない条件について、詳しく解説していきます。
レントゲンが保険適用となる場合
レントゲンは、むし歯の疑いがある場合や、歯周病などの疾患の可能性がある場合、治療をするために担当医師が必要であると判断すれば、保険適用となります。
むし歯の治療前に確認のためにレントゲンを撮影した場合や、歯周病治療の必要性の有無を確認する場合、治療の経過を見るためのレントゲン撮影は保険適用です。
保険適用となるかどうかは、担当医師に確認すると安心です。
レントゲンが保険適用とならない場合
レントゲンが保険適用とならない場合は、インプラント治療や歯列矯正などの自由診療を受ける場合です。
むし歯治療の場合でも、セラミック治療をするときは自由診療になるため、保険適用ではありません。セラミック治療とは、被せ物や詰め物にセラミックを使用する治療法です。
むし歯治療でも、方法によっては保険適用とならない場合があるので注意が必要です。
歯科用CTとレントゲンのかかる時間
歯科用CTとレントゲンは、いずれも短時間で撮影が終わるという特徴があります。
歯科用CTは、数十秒で検査が終わります。歯科医院によって、10〜20秒程度と違いがありますが、1分以内で終わるため、迅速な検査が可能です。
デンタルレントゲンの撮影時間は、約0.1秒と非常にスピーディであり、パノラマレントゲンの場合は、撮影時間は15秒程度です。
歯科用CTとレントゲンの費用相場
歯科用CTとレントゲンは、費用が異なります。
保険適用になるレントゲンの検査は、3割負担の場合にデンタルレントゲンの撮影が約150~200円、3割負担の場合にパノラマレントゲンの撮影が約1,200〜1,500円です。
例えば、むし歯が痛くて歯科医院を受診し、担当医師がレントゲンを撮影しましょうと判断した場合に、保険が適用されて、費用をおさえて撮影ができます。
保険適用になる歯科用CTの撮影にかかる費用は、3割負担の場合に約3,000〜4,000円程度です。自由診療のレントゲン撮影の費用は、約5,500円がかかります。
自由診療の歯科用CTは、高額になるため、約8,000~10,000円が相場になります。
例えば、歯列矯正をしたいと考えている患者が、治療の前や経過を見るために歯科用CTを使用した場合は保険適用外の自由診療です。
歯科用CTとレントゲンでそれぞれ適したケース
歯科用CTとレントゲンは、それぞれの特徴を活かして使い分けすることで、効率的な治療ができます。
- 歯科用CTの利用が最適なケース
- レントゲンの利用が最適なケース
それぞれの活用が最適なケースを紹介します。
歯科用CTの利用が最適なケース
歯科用CTを使った検査が最適なケースは、親知らずの抜歯やインプラント、根管治療や顎関節の確認を行うときです。
歯科用CTでは、歯や歯茎の内部、顎の骨の状態などを詳しく検査できるため、レントゲンでは写し出せない部分の病変を見つける際に最適です。
レントゲンの利用が最適なケース
むし歯の検査や歯周病の有無など、一般的な診断はレントゲンが最適です。
レントゲン検査は、歯科用CTよりも検査時間が短く、費用が安くおさえられます。
歯科用CTの方が詳しく検査が可能ですが、どのような検査にも必要な検査方法ではないため、レントゲンで十分に判断できる画像が撮影可能な場合は、レントゲンが適しています。
まとめ:歯科用CTとレントゲンを適切に使い分けて効果的に治療を進めよう
歯科用CTとレントゲンは、撮影できる画像データの次元や精度、被ばく量が異なります。
一般的なむし歯治療には、平面的な2D画像が撮影できる歯科用レントゲンが最適です。
進行した歯周病やインプラント治療など、神経の位置や骨の厚みなどの正確な情報が必要な治療を行う場合は、歯科用CTが適しています。
ぜひ当記事を参考にして、効果的な歯科治療に活かしてみてください。