「動物病院を開業したいけど、必要な開業資金はどのくらいだろう……」という悩みを抱えていませんか?
開業資金を疎かにしてしまうと、十分な設備準備ができないだけでなく、開業して間もないタイミングで運営が厳しい状況になってしまうケースもあります。
そこで本記事では、動物病院の開業にはどのくらいの開業資金が必要なのか、資金調達の方法やコツについて解説していきます。これから動物病院を開業しようと考えている方は、参考にしてみてください。
この記事の内容
動物病院の平均開業資金はおよそ3,000万~5,000万円
動物病院の平均開業資金は、およそ3,000万~5,000万円です。
平均開業資金は3,000万~5,000万円ではあるものの「土地から購入する場合」と「建物だけの場合」では、必要な開業資金が大きく変わります。また、開業資金を金融機関に借りる際は、金額が大きくなるほど融資難易度が高いです。
しかし、借入額を少なくしすぎた場合、設備・機器を購入する際に不足したり、開業後の赤字状態を埋める資金がなくなったりして、運営が回らない状態になる可能性があります。
そのため、動物病院の開業資金は、必要以上に借りすぎず、バランス良く借入できるように事業計画を入念に立てましょう。
動物病院の開業資金・経営に必要な資金・費用
動物病院の開業資金・経営に必要な資金・費用では、主に以下の3つについて考える必要があります。
- 初期費用
- ランニングコスト
- 広告費
それぞれの内容について解説します。
初期費用
一般的には、初期費用は2,000万~4,000万円を目安に計算するのがおすすめです。
動物病院の開業に必要な初期費用の内訳は、以下があげられます。
- 医療機器・器具
- 不動産関連費用
- 内装・外装リフォーム代
- 手数料や登記費用などのその他諸費用
たとえば、レントゲンやエコー、手術台・麻酔器などさまざまな医療機器・検査器具などの準備が不可欠です。
また、賃貸物件の場合は不動産関連費が発生し、敷金や礼金、保証金などを用意する必要があります。さらに、病院の規模やデザインによって内装・外装リフォーム代がかかります。
内装・外装リフォーム代の目安は500万~1,000万円程度で、2階に上がる必要がない・自動ドアの作りにすると良いでしょう。たとえば、大型の動物を連れている場合、2階に上がる構造であれば負担になってしまいます。
また、手動のドアの場合は、小型の動物を見てもらうために抱っこしている状態では、扉を開けられないという状態に陥りやすいです。医師・看護師や患者が使いやすい環境を構築するために、利便性を確認しながら初期費用を準備しましょう。
ランニングコスト
動物病院を開業する際には、開業後の病院を運営していくためのランニングコストが必要です。たとえば、人件費や材料費、毎月の家賃・水道光熱費などがランニングコストになります。
月々のランニングコストは、雇用人数や病院の規模によって変わりますが、150万〜300万円を目安にすると良いでしょう。また、開業時にランニングコストを用意する際には、1~2か月ではなく、半年分を目安に用意するのがおすすめです。
広告費
開業までにかかる広告費の目安は、一般的に100万円程度です。
動物病院を新規開業する場合は、広告宣伝費も必要です。広告宣伝費は、Web広告やホームページ運営などがあげられます。たとえば、ホームページ制作やロゴデザイン、看板設置などが広告宣伝費です。
また、広告費用は開業初期段階だけでなく、継続して宣伝していくことが必要になります。そのため、継続して宣伝をしていくWeb広告や、ホームページの運営に必要なランニングコストも視野に入れておきましょう。
動物病院を開業する際の4つの資金調達方法
動物病院を開業する際の資金調達方法は、4つあります。
- 日本政策公庫
- 地方自治体の融資制度
- 銀行からの借り入れ
- 親族・知人からの借り入れ
それぞれの方法について解説していきます。
日本政策公庫
日本政策公庫は政府系の金融機関で、新規開業者や小規模事業者向けの融資制度を提供しています。日本政策公庫は、他の資金調達方法と比べて、融資を受けるためにより詳細な事業計画書・見積書の提出などが求められるため、入念な準備が必要です。
新規開業者でも、条件が合えば融資してもらうことが可能で、無担保・無保証人でも融資が受けられます。
民間の金融機関と比べても、長期の返済が可能なものや固定金利での融資など便利な融資制度が多いため、日本政策公庫の利用はおすすめです。
地方自治体の融資制度
地方自治体のなかには、地域経済活性化を目的として、新規開業者向けの融資制度を設けている場合があります。地方自治体の融資制度も、金融機関と比べて比較的金利が低い融資を受けることが可能です。
融資制度の条件や内容は自治体によって異なるため、詳細は各自治体の窓口またはホームページで確認するようにしましょう。
銀行からの借り入れ
都市銀行や地方銀行、信用金庫などの民間の金融機関から融資を受けるという選択肢もあげられます。融資限度額や条件は金融機関によって異なり、新規開業者に対しては、事業計画の具体性や経営者の信用力が重視されます。
なかでも地方銀行や信用金庫は、地域密着型の融資サービスを提供している場合があるため、新規開業でも柔軟に対応してくれる場合があるでしょう。
親族・知人からの借り入れ
開業資金が少し足りないという場合などは、親族や知人からの借り入れもおすすめです。親族または知人からの借り入れは、柔軟に返済条件が設定できるほか、審査などの必要がないため、融資までのスピードが速いという点が大きな魅力となっています。
ただし、後々のトラブルを避けるために、借用書や返済計画書を作成し、利息または返済方法について明確化しておくことが重要です。
金銭の貸し借りは人間関係に大きな影響を与えるため、慎重に対応するようにしましょう。
動物病院の開業を成功させる3つのコツ
動物病院の開業を成功させるために押さえておきたいコツは、3つあります。
- 事前調査を入念に行う
- 自己資金を貯めておく
- 専門家のアドバイスを受ける
それぞれの方法について解説します。
事前調査を入念に行う
動物病院の開業を成功させたいときは、入念な事前調査が欠かせません。動物病院、地域によって特性や競合状況は異なります。
具体的に、ペットの飼育頭数や競合動物病院の数、診療時間などを調査しましょう。たとえば、周りの病院が平日のみの対応しかしていない場合は、土日も診療受付対応にすると、平日働いている方でも足を運びやすいです。
開業予定地の需要や競争状況を分析して、適切な立地を選定することが重要となります。
自己資金を貯めておく
開業する際には多額の資金が必要になるため、自己資金の準備もしておきましょう。自己資金を貯める際には、資金の出所を明確化し、帳簿や記録を適切に管理するのがおすすめです。
自己資金の出所の明確化や帳簿・記録を怠ってしまうと、財務管理が難しくなり、経営に支障をきたす可能性があります。必要設備の購入や運営補助などに自己資金を活用しますが、経営状況の分析に影響が出ないように、記録は徹底するようにしてください。
動物病院開業のための自己資金は、500万~2,000万円以上が目安です。たとえば小規模の病院を開業したいときは、500万~800万円が良いでしょう。
また、一般的な病院規模であれば、1,000万~2,000万円程度を用意するのがおすすめです。
専門家のアドバイスを受ける
動物病院の開業で成功したい場合は、専門家のアドバイスを受けましょう。たとえば、マーケティング戦略の専門家のアドバイスを受けることによって、開業場所のニーズ調査や事業計画の策定、マーケティング戦略の立案などが受けられます。
また、税理士に相談すると、資金調達や税務申告のアドバイスを受けることが可能です。専門家と連携することにより、リスクを最小限に抑えながら、成功につながる状態を作れます。
動物病院の開業資金を調達する際のコツ
動物病院の開業資金を調達する際に押さえたいコツは、以下の3つです。
- 綿密に事業計画書を作成する
- 必要以上に借り入れない
- 病院の経営理念を定めておく
それぞれのコツについて解説していきます。
綿密に事業計画書を作成する
動物病院の開業資金を調達したい場合は、綿密に事業計画書を作成しましょう。とくに、事業計画書は金融機関から融資を受ける際に重要で、事業計画が綿密に練られていない場合は、断られる可能性があります。
事業計画書の完成度が高いほど、融資の審査でも有利に働きやすいため、作成は時間をかけて綿密に行うようにしましょう。
必要以上に借り入れない
資金調達のための融資では、必要以上に借り入れしないようにしましょう。融資の希望金額が大きくなるほど、審査難易度が高くなります。
また、過剰に借り入れをしてしまうと、返済の負担を増やしてしまい、経営を圧迫させてしまう可能性があるでしょう。一般的な規模の動物病院であれば、2,000~3,500万円程度の融資金額までに抑えるのがおすすめです。
専門診療を検討している場合は、4,000万~6,000万円程度が目安になります。融資の金額が大きくなるほど利息も増えるため、注意してください。
病院の経営理念を定めておく
動物病院の資金調達のコツとして、病院の経営理念を定めるようにしましょう。
経営理念は病院の経営方針・方向性を定めるものであり、経営理念が明確に定まっていない場合は、金融機関からも事業計画がしっかりと練られていないと判断されやすいです。
逆に、病院の経営理念がしっかりと定まっていると、入念に事業計画が練られており計画性があると評価されます。
経営理念は、病院のブランディング化や他の病院との差別化を図る重要なポイントなので、金融機関に評価してもらうためにも、経営理念は明確化しましょう。
動物病院の開業数と廃業数
動物病院は全国各地にありますが、農林水産省が発表している調査によると、令和6年の時点で動物診療施設は約16,993軒となっています。
また、動物病院の新規開業率は年間200~300件とされています。
一方、廃業数の割合は、年間100~200件といわれており、廃業してしまうという方も多いです。廃業してしまう理由としては、資金計画のミスや集客の失敗、人材不足、スタッフの定着率の低さなどがあげられます。
集客・人材・資金計画はどれも欠かせない重要なポイントなので、開業する際や開業後も常に意識して運営するようにしましょう。
(参照:「都道府県別飼育動物診療施設の開設届出状況」農林水産省)
動物病院の開院に必要な書類
動物病院の開院に必要な書類は、3つあります。
- 診療施設開設届
- 動物取扱業届出書
- エックス線装置設置届
それぞれどのような書類なのか解説します。
診療施設開設届
動物病院を開業する際には、開設届を都道府県知事へ提出する必要があります。開設届の提出は、獣医療法第3条によって定められており、開設日から10日以内と決められています。
届出を出す際には、診療施設開設届書や診療施設の平面図、獣医師免許証の写しなどが必要です。開設する施設の所在地を管轄する都道府県の担当部局に、書類を提出するようにしましょう。
なお、地域によって必要書類が変わる場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズに進められます。
動物取扱業届出書
動物病院で動物の預かりまたは入院を行う場合は、動物の愛護及び管理に関する法律に基づいて、第一種動物取扱業の登録が必要になります。
動物取扱業届出書とあわせて、飼育施設の平面図や付近の見取図、動物取扱責任者の資格要件を証明する書類などが必要です。提出先は、開設する施設の所在地を管轄する都道府県の担当部局です。
営業を開始する前までに、提出するようにしましょう。
エックス線装置設置届
動物病院でエックス線装置を使用する際には、放射線障害の防止に関する法律にもとづき、設置届の届出が必要になります。エックス線装置を設置したあと、10日以内に提出するようにしましょう。
提出する際には、エックス線装置の制作者名や形式・出力などの情報が必要です。開設する施設の所在地を管轄する、都道府県の担当部局に提出してください。
まとめ:動物病院の開業には開業資金と事業計画をしっかりと準備しよう!
動物病院の開業資金の目安は、平均3,000万~5,000万円です。
土地から購入したり、建物だけ建てたりする場合などさまざまな状況・条件によって必要な開業資金が変わりますが、必要資金を調達するためには、入念な事業計画が必要になります。
これから動物病院を開業したいと考えている方は、本記事で紹介した内容を参考にしながら、事業計画や資金調達を行ってみてください。