電子カルテは、昨今の深刻な問題となっている人手不足や労働時間の軽減を目的として、多くの病院で導入されています。
電子カルテは、予約や問診、検査との連携ができ、医療業務の効率化と医療サービスの品質向上が可能になります。
とはいえ、注意しなければならないポイントもいくつかあります。注意点を押さえておかなければ、システムをしっかりと使いこなせません。
そこでこの記事では、電子カルテ連携について詳しく解説します。システムごとの連携するメリットも解説するので、どの部門システムと連携できればいいかの選定もできるでしょう。
この記事の内容
電子カルテ連携とは?
電子カルテ連携は、病院内の異なる部門システムと電子カルテを結びつけ、患者に関する情報を網羅的かつ統合的に扱うことです。情報の統合により、患者の医療情報はさまざまな診療科や業務領域をまたいで利用でき、医療提供者が迅速かつ正確な情報にアクセスできる状態が実現できます。
患者の基本情報や診療履歴、検査結果などを一元管理することで、重複入力や不整合などのリスクの低減が可能です。
医師や看護師は電子カルテを通じて患者情報にアクセスでき、清算、検査、調剤などの業務が容易になり、作業効率が向上するでしょう。
医療業務の品質向上に向けて、電子カルテ連携は大きな影響をもたらします。
電子カルテとシステム連携するメリット
では、電子カルテとその他のシステムを連携させて得られる4つのメリットを紹介します。
- 入力ミスや転記の手間を削減できる
- 患者の待ち時間が短縮できる
- 診療や検査がスムーズに進む
- 検査結果・画像のデータを各端末から参照できる
入力ミスや転記の手間を削減できる
従来の紙による管理では、入力や転記のミスが絶えませんでした。
しかし、システムの連携により、患者の基本情報が一度の入力で他の部門システムに共有されるため、手動での情報転記は必要ありません。
これにより、データ入力に伴うヒューマンエラーや転記ミスが大幅に削減され、正確な情報の管理が可能となります。
よって、スタッフは患者のケアや診療により多くの時間を充てることができ、医療サービスの質も向上につなげられるでしょう。
患者の待ち時間が短縮できる
電子カルテと各システムが連携されれば、予約や調剤、会計などが一元的に参照できて診療の流れがスムーズになり、病院滞在時間の短縮につながります。
自動精算機やセルフレジが電子カルテと連携していると、レセプト業務も時短ができて、受付の待ち時間も短縮できるでしょう。
待ち時間の短縮は、待合室の混雑緩和や感染症対策、通院離れ対策にも有効です。
診療や検査がスムーズに進む
電子カルテ連携により情報が一元化され、診療や検査の流れがスムーズになります。
電子カルテに患者の基本情報(氏名、住所、電話番号など)が事前に入力されると、診療や検査の際に利用されます。連携されたシステムではこの情報を一元的に管理でき、繰り返しの入力や情報の不一致が防げるでしょう。
検査結果・画像のデータを各端末から参照できる
電子カルテとシステムの連携により、検査結果や画像データをいつでもどこからでもスピーディに確認できるメリットがあります。
画像でわかりやすく結果を伝えられるため、患者も納得感を持って話を聞けます。診察をはじめ、より患者目線での医療を提供できるのは大きなメリットです。
電子カルテと連携する部門システム8選
電子カルテと連携できる主な部門システム8選を紹介します。
- 予約管理・問診システム
- 検査システム
- PACS(医用画像管理システム)
- オンライン診療システム
- 薬剤管理システム
- 透析管理システム
- 会計・決済システム
- リハビリシステム
予約管理・問診システム
まず、予約・問診システムとの連携が可能です。
予約・問診システムとの連携により、医師のカルテ記入にかかる時間や来院時に問診票を書く手間などが削減されます。一人の患者に対して診察や検査など重要な部分に時間を割けるため、医療の品質向上につながります。
なお、医師によるカルテの記入漏れやミスも防げるため、安心して医療サービスを提供できるでしょう。
検査システム
電子カルテと検査システムの連携により、一般検査や細菌検査、病理・細胞診検査などの検査結果がスピーディに電子カルテに取り込まれます。よって、診療時間の短縮はもちろん、データの誤りや記載ミスが大幅に削減されます。
なお、検査システムとの連携により、検体ラベルや採血指示票の印刷も手軽に行えるでしょう。
PACS(医用画像管理システム)
PACS(Picture Archiving and Communication System)と電子カルテのシステム連携により、一つのデバイス内で診療に必要な画像データを並行して閲覧できます。
そもそもPACSとは、CTやMRI、内視鏡検査などで得られた画像データを保管する医療用画像管理システムです。
画像の閲覧が簡単な操作で行えるため、業務にかかる手間を削減できます。
また、画像の提供をしやすくなったことで、患者との共有もしやすくコミュニケーションを取りながら納得感のある診療を提供できます。
オンライン診療システム
電子カルテはオンライン診療とも連携できます。
患者情報や過去の診療履歴を参照しながらの診療が可能となり、オンライン上でも品質が高い医療サービスの提供が実現します。
書類の印刷や紙での送付は必要ないため、業務効率化につなげられます。
薬剤管理システム
薬剤情報管理システムと電子カルテの連携により、医師や薬剤師は電子カルテから医薬品情報を参照できます。
医薬品の情報や在庫数をリアルタイムで把握できるため、現時点での医療資源を最大限に活用できるでしょう。また、相互作用や注意事項のチェックなど、患者の健康に影響を及ぼす要因を事前に確認できます。
使用上の注意などの伝え漏れもなくなり、より安全な医療を提供できます。
透析管理システム
透析管理システムと電子カルテの連携により、患者の診療データと透析に関する情報が一元管理できます。
透析に関するデータが電子カルテに確実に連携されることで、患者の状態変化を見落とすリスクが低減します。変化が起こりやすい透析患者にとって特に重要で、早期の異常に対しても気づきやすくなるでしょう。
また他の部門とも連携ができ、より質の高い医療を提供できます。
会計・決済システム
会計・決済システムと電子カルテの連携により、診療内容に基づいた正確な請求が可能となり、会計ミスの防止につながります。
受付業務の負担軽減や、患者の待ち時間短縮、それに伴うコストの削減も実現できます。
加えて、キャッシュレス決済もできれば、釣銭準備の必要もありません。業務の効率化が測れる上、非接触決済による感染症の予防にもつながるでしょう。
リハビリシステム
リハビリシステムと電子カルテの連携により、リハビリの予約状況や実施状況が一元的に管理できます。
リハビリシステムを通じて、患者の基本情報や総合計画書が作成できるので、理学療法士の業務効率と正確性アップが図れます。
医師は電子カルテを通じてリハビリの実施状況や回復の度合いを手軽に把握できるので、適切な治療計画も立てやすくなるでしょう。
電子カルテ連携の種類
では、電子カルテと連携できる情報について詳しく見ていきましょう。
患者情報 | 氏名や年齢、住所、保険の種類などの基本情報 |
---|---|
オーダー情報 | 医師が出す検査や処方指示などのオーダー情報 |
予約・受付情報 | 診療科や受診日、時間など |
検査結果 | CTなどによる画像検査や血液検査の結果 |
記録情報 | 診療情報提供書や診断書、医療機関以外で行った健康診断結果の文書 |
コスト情報 | 医療行為や検査、調剤などのデータから割り出させるコスト情報 |
診療情報 | 診察の記録など |
システム起動 | 看護や手術、透析などによる情報 |
電子カルテと連携できるデータは、上記のようにたくさんあります。しっかりと連携させることで、予約から受付、診察や検査、決済に至るまでミスを減らしながら円滑なサービス提供を実現できます。
ただし、導入するシステムやメーカーによって、連携可能なデータに違いがあります。導入するにあたって、どのデータを紐づけられるのかはしっかりと確認した上で活用しましょう。
電子カルテ連携する注意点
電子カルテと部門システムの連携をするにあたって、注意すべきポイントが2つあります。
- 導入コストがかかる
- 連携可能なシステムをしっかりと確認する必要がある
導入コストがかかる
まず、システムの連携には、相互の接続が必須になります。この連携を行うために、追加で費用がかかるケースがあります。
よって、連携させる範囲が広くなればなるほど、導入には一定のコストがかかる点に注意しましょう。
連携可能なシステムをしっかりと確認する必要がある
利用する電子カルテが、既存システムとの互換性があるかを確認してください。
大前提として、電子カルテは全てのシステムと連携できるわけではありません。同じ予約管理システムでも、Aのメーカーには対応しているものの、Bには対応していないケースはよくあります。
Bのシステムと連携を想定していた場合、根本から見直さなければなりません。
システムの導入をする上で「どのメーカーのシステムと連携可能なのか」は必ず確認しておきましょう。
まとめ:電子カルテ連携で医療の品質向上に努めよう
電子カルテとその他のシステム連携により、医療の業務効率化はもちろん、品質向上に大きくつながります。
患者にとっても、診療時間の短縮や問診票の手書きをはじめとする負担の軽減、品質の高い医療サービスを受けられるなど、メリットは大きいです。
コストがかかるため、必ずしも全てのシステムと連携させなければいけないわけではありません。
病院内で検討し、医療サービスの品質向上につながるシステム連携を図りましょう。