クリニック・医院建築のガイド！遵守すべき法令や人気メーカーを紹介

クリニックの建築にあたって、予算やデザイン以外にも検討すべき項目が多くあります。

法令も遵守する必要があり、クリニックだけで対応するには限界があるでしょう。

そんな時に、クリニックの建築実績があるハウスメーカーは法律や建築後の病院運営についてもトータルでサポートしてくれる存在です。

この記事では、クリニック・医院建築に当たって検討すべき項目や法律について解説しています。

人気のハウスメーカーも8社紹介しているので、クリニック・医院建築を控えている方はぜひ参考にしてください。

クリニック建築で検討すべき項目

クリニック建築で考慮するのは、下記の3つです。

• 開業形態
• 構造
• クリニック建築専門メーカーか汎用的な建築メーカーか

開業形態

土地・建物・内装・機器を所有するか、あるいは一部を購入・所有するかを検討します。
土地を新規購入して所有する場合、土地の価格によって初期投資が大きく変動します。

建物や設備を所有する場合は、初期の投資費用は高くなりますが、ランニングコストを抑えられる可能性があります。

これらを所有しない場合、初期費用を抑えつつ建築できますが、賃料や運用コストがかさむ傾向にあります。

建築したクリニックでずっと診療し続けるのか、商業施設などで開業しいずれは別の場所に移転するため開業年数が限られているかで運用コストも変わるでしょう。

構造

構造・工法による費用の違いも考慮してください。

木造は安く立てられる一方、デザイン自由度が低いため、外観や内装にこだわりがある場合は向いていません。

その点、鉄骨造は比較的安く、かつデザイン自由度が高いため、予算とデザインを両立させるのに適しているでしょう。

鉄筋コンクリート造りは費用が高くなりますが、耐火性に優れているため災害リスクを抑えたい場合に向いています。

クリニック建築専門メーカーか汎用的な建築メーカーか

建築メーカーには、クリニック建築を専門に請け負うメーカーが存在します。

クリニック建築の専門メーカーは、小規模クリニックの実績が豊富にありますが、建築メーカーはクリニック建築の実績と言っても大規模総合病院の建築実績のみで、中小規模病院の建築に対応していない可能性もあります。

クリニック建築専門メーカーは、細かなニーズに対応しやすく、仕様の変更もフレキシブルにできることが期待できます。

クリニック・医院建築で遵守しなければならない法令

建物の建築には守らなければならない法律があります。

• 建築基準法
• 医療法
• 消防法
• バリアフリー法

各法律におけるクリニック建築について解説します。

建築基準法

建築基準法により、土地に建てられる建物の用途や規模・床面積・建築面積などが詳細に規定されています。

建築基準法における病院の区分は、下記のとおりです。

特に、1床以上の入院ベッドがあり、延床面積が100m2以上の場合は特殊建築物となります。厳格な法令が適用されて、内装制限や避難経路などの規定が厳しくなります。

診療所の構造として、必要な設備は下記のとおりです。

なお、「病院」と「有床診療所」が3年ごとに定期報告の対象となり、無床診療所も施設基準を自己点検し、報告する義務があります。

参照：建築基準法

医療法

医療法は、病院やクリニックなどの開設・管理に関する法律で、医療行為に関する指導基準を元に規定されています。

医療法におけるクリニックの構造基準は、主に下記のような基準があります。

• 診察室の標準面積は9.9m2以上
• 待合室の標準面積は3.3m2以上
• 廊下と診察室ははっきりと区画して患者のプライバシーと動線を確保する
• レントゲン撮影室は放射線防護をする

建築基準法と医療法で基準が異なる場合は、基本的には建築基準法を優先すべきとされています。

建物の安全性は医療行為を行う上での基本条件であり、優れた構造が確保されなければ、安全かつ適切な医療が提供できないという考えに従いましょう。

参照：医療法

消防法

消防法は、建築物において火災や災害から人命や財産を守るための法律です。

消防法では、「4床以上で患者を入院させられる施設」が有床診療所として定義されます。

消防法に基づき、クリニックには誘導灯や防炎加工などの防火設備を設置することが義務付けられています。

また、床面積に応じて消化器・自動火災報知機・消防機関への通報機能を備えた火災報知設備・スプリンクラーなどの消火設備の設置が義務付けられています。

建物の火災・警戒・鎮火を目的とするだけでなく、地震などの災害からくる被害を軽減するための規定も含んでいます。

建築物の仕様だけでなく、「避難経路に物を置かない」など運営しながら守る必要がある法律です。

参照：消防法

バリアフリー法

バリアフリー法では、クリニックを「特別特定建築物」として定めていて、高齢者や身体障害者が円滑に建物内外を移動できる仕様が求められます。

クリニックでは主に、トイレやスロープ、廊下の手すりや幅などが、バリアフリー法の対象として挙げられます。

なお近年では、単なるバリアフリーだけでなく、どんな人でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の重要性も無視できない要素となっています。

参照：高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律

地方公共団体条例など

クリニックを建築する際には、地域ごとに異なる市区町村や都道府県の条例の遵守も必要です。

各自治体は、独自のまちづくり条例や建築基準を制定しています。例えば、東京都ではバリアフリー化の基準があるなど、地域によってさまざまな要件が存在します。

地域ごとに異なる要件や規制があるため、保健所だけでなく市区町村や都道府県の関係部署とも協力し、独自に進めないことが重要です。

クリニック医院建築を行うメーカーの選び方

クリニック・医院建築メーカーの選び方の基準を3つ解説します。

• 医院建築実績の豊富さで選ぶ
• 建築方法の幅広さで選ぶ
• アフターフォローの充実度で選ぶ

医院建築実績の豊富さで選ぶ

ハウスメーカーが、クリニック建築において実績を持っているかどうかを確認してください。特に、同規模の医院を建設した経験があるかがポイントです。

医療施設の建築には、独自の要件や規制があります。医療機器の配置やクリーンな環境の確保など、病院特有の要件に慣れていることが必要です。

大手ハウスメーカーは、開業候補地の市場性を分析し、事業計画に関するデータや経験からアドバイスを提供するサービスがあるので、地域の特性に則った病院経営ができるでしょう。

しかし、大手のハウスメーカーは規模感の大きい病院が対象になるケースが多いため、マッチするかどうかは確認が必要です。

建築方法の幅広さで選ぶ

医院の規模や必要な設備によって、適切な建築方法が異なります。木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造にはそれぞれ特徴があり、建物の構造や強度に関する要件に対応して選択する必要があります。

さまざまな建築方法に対応しているメーカーだと、建物の特性や機能に応じて柔軟に対応できます。

木造は都市部での建設に制約があることがありますので、都市部で建設する場合は注意が必要です。

アフターフォローの充実度で選ぶ

アフターフォローの充実度は、建築メーカーを選ぶ際の重要なポイントです。

建築後に発生する可能性のある不具合・トラブル・災害に対して、メーカーが修理や点検のサービスを提供しているか確認しましょう。

中には、建物のアフターフォローの他に、開業後の経営に関するサポートやコンサルティングを提供しているメーカーもあります。

これは、特に初めての開業者にとって有益なサポートで、主に大手メーカーがこうしたサービスを提供しています。

クリニック医院建築ができるメーカーおすすめ8選

ここからは、クリニック・医院建築の実績が豊富なハウスメーカーを8社紹介します。

1. ミサワホーム株式会社
2. パナソニックホームズ株式会社
3. 三菱地所ホーム株式会社
4. 積水ハウス株式会社
5. 住友林業株式会社
6. ロイヤルウッド株式会社
7. 大和ハウス工業株式会社
8. 清水建設株式会社

ミサワホーム株式会社

出典：ミサワホーム株式会社

ミサワホーム株式会社は、医院建築に特化した専門チームがあり、開業医のニーズに合わせたトータルサポートを提供しています。

経験豊富なスタッフが、医療機器メーカーや法律関係など幅広い分野のプロとも連携してクリニックの建築から経営までをサポートします。

事業に関するシミュレーションやスタッフの募集、広告もカバーする幅広いサポートが特長です。

パナソニックホームズ株式会社

出典：パナソニックホームズ株式会社

パナソニックホームズ株式会社は、20年の事業実績と先進技術で地域医療に特化した医院建築を支援します。

鉄骨造で平屋から9階建てまで柔軟に対応し、環境や立地に合わせた開業形態を提案。

事業計画からPRまで一手に請け負い、診療圏分析や広告検討などもサポートします。地域に根付く病院建築を実現するハウスメーカーです。

三菱地所ホーム株式会社

出典：三菱地所ホーム株式会社

三菱地所ホーム株式会社は、医院建築のドクターズ・プロジェクトで包括的なサポートを提供しています。

設計・建築からインテリア・経営・財務まで幅広いプロセスをお任せできます。

建物の規模や形状、立地条件に応じて最適な工法を提案し、デザインのこだわりも反映してくれるのが特徴です。

柔軟性があり、ビジネスプランに合わせた建築構造の選択が可能で医院兼住宅の建築実績もあります。限られたスペースを最大限に活用したベストな医院建築を実現できます。

積水ハウス株式会社

出典：積水ハウス株式会社

積水ハウス株式会社は、住宅メーカーのノウハウを生かし、医院建築においても利用者・ドクター・スタッフが快適に使用できるクリニックを建築します。短納期にも定評があるメーカーです。

公的機関との連携により、高齢者や障害者向け建築にも対応できます。土地の探索からクリニックレントのサービスサポートまで相談でき、近年は感染対策にも注力したクリニック建築を提供しています。

住友林業株式会社

出典：住友林業株式会社

住友林業株式会社は、医院建築において木の風合いを取り入れ、心地よく和やかな雰囲気の建築を得意とする企業です。木材は感染対策や心地よい環境づくりを可能にする建築方法です。

医療・介護の専門チームが開業までのステップを細かくサポート可能です。法規制や収益性に合わせた設計プランを提案します。専任のコンサルティングチームがドクターをサポートし、スムーズな事業計画進行を促進します。

ロイヤルウッド株式会社

出典：ロイヤルウッド株式会社

ロイヤルウッド株式会社は、設計から施工まで自社一貫体制で行い、コストと時間を削減したクリニック建築が可能です。

法的規制や設備機器、薬品管理などを考慮しながら、ドクターが目指す理想の医院・クリニックを提案しています。

また、地域密着のハウスビルダーとしての特徴として、長期のサービスサポートやTVCMによるプロモーションを提供できるのが特徴です。

建築工法においても鉄骨造・鉄筋コンクリート造・木造などに対応し、プロの判断に基づいた最適な提案を行っています。

大和ハウス工業株式会社

出典：大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業株式会社は、2021年4月現在で7,000件以上の医療建築実績を持つメーカーです。

医療・介護問題の動向や社会変化に対応するために先進的な取り組みも展開しています。

患者様の心地よい空間や機能性を考慮し、同時に住宅としても快適な空間を提供することが特長で、専門チームがサポートしています。

アフターサポートも充実しており、保証・点検プログラムやリフォーム・建て替えにも対応しています。

清水建設株式会社

出典：清水建設株式会社

清水建設株式会社は、病院建築においても多数の実績を持つ建設会社です。

病院の将来像をふまえて、基本構想コンサルティングから建物の設計・施工まで一貫して手がけることが特徴です。

施設維持管理や警備・受付・給食・検査などの幅広い業務に参画し、総合的に病院経営をサポートします。

地域ニーズの把握や投資規模を検討し、無理のない投資と機能性を両立した、地域に愛される病院を建築します。

まとめ：理想のクリニック・医院建築は優良メーカーにお任せしよう

医師にとって理想のクリニックを建築することは、スタッフや患者さんにとっても快適で居心地の良い病院づくりにつながります。

良好な動線やバリアフリー対応が備わったクリニックは、患者さんの利便性向上に寄与し、リピート率も向上していくでしょう。

クオリティに妥協せず、優良メーカーのサポートを得て患者もスタッフも居心地の良いクリニックの建築を目指してください。