Web上で患者が診療を予約できるシステムを取り入れると、予約受付業の負担を軽減できます。また、患者の待機時間に対するストレスも軽減しやすくなるでしょう。
そんな便利な診療予約システムですが、現在の普及率はどのくらいなのでしょうか?
そこでこの記事では、診療予約システムの普及率や選ぶポイントをご紹介します。診療予約システムの導入を検討している病院関係者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の内容
既存クリニックの診療予約システム普及率は34%
病院における診療予約システムの普及率について、公的機関が発表している統計はありませんが、民間調査のデータから、おおよその割合が把握できます。
診療予約システム導入状況のアンケート結果によると、既に導入していると回答したクリニックは34%となっています。
診療予約システムを取り入れている医院は全体の3割程度ですが、このうち7割近くは増患や集患への効果を実感しているという結果も出ています。
新規開業クリニックの診療予約システム普及率は62%
2019年に矢野経済研究所が行った調査では、新しく開業した病院の診療予約システムの導入率は62%でした。
開業のタイミングで診療予約システムを取り入れる病院は増加傾向にあります。
患者の集客や、他クリニックとの差別化戦略のために導入するケースが多いようです。
また、開業時に人材を確保しきれない場合も、診療予約システムが活躍してくれるでしょう。
参照:新規開業クリニックに関する法人アンケート調査を実施(2019年)
診療予約システムの普及率が伸びない3つの理由
ここから、診療予約システムの普及率が伸びない3つの理由について解説していきます。
- 導入コストがかかる
- 導入後の操作に慣れるまで時間がかかる
- 紙媒体での運用が長い
理由1.導入コストがかかる
診療予約システムの普及が進まない大きな理由は、導入コストによる問題です。
予約システムの導入には、初期費用や月額の利用料が発生します。
費用はクリニックが負担しなければならないため、小規模な病院や診療所ではコストの負担に難色を示すケースは少なくありません。
理由2.導入後の操作に慣れるまで時間がかかる
診療予約システムを取り入れると、操作方法などを覚えるのに時間がかかることも、普及を妨げる理由のひとつです。
特に患者が高齢だと、パソコンやスマートフォンの操作に苦手意識を持っていることもあるでしょう。
高齢者の場合、システムを使えたとしても、電話や受付での直接予約よりも時間がかかる傾向にあります。
また、インターネットを介して予約が本当にできているか不安で、診療予約システムを利用しようとしない高齢者もいるようです。
ほかにも、病院スタッフがデジタル操作に対して自信がなく、導入を見送るケースもあります。
理由3.紙媒体での運用が長い
紙での記録に慣れている病院スタッフにとって、デジタルシステム導入に抵抗があるケースも少なくありません。
特に、街の小さな診療所や小規模病院では、古くから紙媒体を使用してきました。そのため、診療予約システムよりも紙媒体のほうが使いやすいと感じ、導入を見送ってしまうこともあるようです。
診療予約システムを取り入れるメリット
診療予約システムの普及率は3割程度と高くはありませんが、導入すれば病院の運営にメリットが多くあります。
ここから、病院が診療予約システムを取り入れる5つのメリットを見ていきましょう。
- 患者の予約・混雑状況を可視化できる
- 患者の満足度向上につながる
- 患者の予約忘れを解消できる
- 院内感染のリスクを低減できる
- 受付業務の効率化を実現できる
患者の予約・混雑状況を可視化できる
診療予約システムを取り入れることで、患者が待ち時間や順番を把握できることがメリットです。
特に混雑する時間帯は、患者は数時間も待機することがあります。
診療予約システムを使えば、患者側で混雑状況を把握できるので、待ち時間の見通しを立てやすくなることがメリットです。
呼ばれるタイミングが可視化できるため、診察待ちに対する患者のストレスも軽減しやすくなります。
患者の満足度向上につながる
診療予約システムによって待ち時間が減ると、患者の満足度向上につながります。
その結果、患者から選ばれる病院になる可能性が上がることが期待できるでしょう。
また、診療予約システムを取り入れると、24時間受付が可能になります。
患者にとって、時間を問わずに予約ができることは大きなメリットです。
予約のしやすさは再診率アップに貢献し、新規患者の獲得にもつながるでしょう。
患者の予約忘れを解消できる
診療予約システムを取り入れることによって、患者の予約忘れを解消しやすくなります。
院内受付で診察の予約をした場合、患者は次回予約の日時を忘れてしまうこともあるでしょう。診療予約システムを取り入れれば、患者はオンライン上で予約日時をいつでも確認できます。
また、自動配信でリマインドメールを送信するシステムや、順番が近づくとお知らせメールを送る機能もあるため、患者の予約忘れの解消に役立ちます。
院内感染のリスクを低減できる
診療予約システムによって待ち時間が把握できれば、患者は予約時間の直前に来院でき、待合室で長時間待機する必要がなくなります。
待機する人数が少なければ、体調が優れない患者がいても最低限の接触で済むため、院内感染のリスクを低減できるでしょう。
受付業務の効率化を実現できる
受付業務を効率化できることも、診療予約システムを取り入れるメリットです。
従来の受付業務では、院内でスタッフが患者と日程を決めたり、電話で予約日時を決めるなど、多くの労力を伴います。
受付スタッフ数が少ないクリニックの場合、予約の日程を調整するだけでも大変です。
診療予約システムを取り入れれば、Web上で患者自身が都合の良い日時を選択するため、スタッフによる日程調整の手間を省くことができます。
電話での予約受付やキャンセルなどの対応が減るため、院内の業務効率化が実現できるでしょう。
診療予約システムを取り入れるデメリット
診療予約システムを取り入れるメリットは数多くありますが、初期費用や月額料金が発生する点はデメリットとして挙げられます。
金額はシステムによって異なりますが、大規模なシステムを導入する場合は、高額になるケースも多いようです。
また、機能をカスタマイズする場合は、その分の追加で料金が発生します。
トータルで必要な料金を確認し、複数社の見積もりを比較するようにしましょう。
最適な診療予約システムの選び方
診療予約システムを導入したくても、「どのシステムを選べばいいかわからない!」と悩みを抱えていませんか?
ここから、最適な診療予約システムの選ぶポイントを4つご紹介します。
- システムの使いやすさを優先する
- 導入や運用にかかる費用で選ぶ
- セキュリティ対策が万全なものを選ぶ
- 電子カルテと連動できるかチェックする
診療予約システムの導入を検討している方は、参考にしてみてください。
システムの使いやすさを優先する
患者にとって使いにくいシステムだと、不便さや不満を感じてしまい、予約しなくなる可能性もあります。そのため、どんな患者でも操作できる、使いやすいシステムを選ぶことが重要です。
また、病院のスタッフが管理しやすいものでなければ、業務に支障をきたすこともあるため注意が必要です。
無料デモ体験できるシステムも用意されているため、実際に操作して扱いやすいものから選びましょう。
導入や運用にかかる費用で選ぶ
診療予約システムの選定には、導入や運用にかかる費用が負担にならないか検討することが大切です。
自院にとって必要な機能を洗い出し、費用対効果が高いかどうかも確認しましょう。
各システム会社によって費用や機能は異なるため、複数社に見積もりを依頼して比較することをおすすめします。
ただし、大雑把な見積もりでは、装備したい機能の料金が含まれておらず、後に別料金が発生するといったトラブルも起こり得ます。
そのため、見積もりを依頼する際は、詳細まで記載してもらうようにしましょう。
セキュリティ対策が万全なものを選ぶ
患者のデータは個人情報にあたるため、セキュリティ対策が万全なものを選ぶことも重要です。
診療予約システムはオンライン上で行われるため、不正アクセスや情報漏れなどのリスクが潜在します。
ウイルス感染や個人情報の漏洩などには、細心の注意を払いましょう。
適切なシステムであれば、IP制限やSSL暗号化といったセキュリティ機能が備わっています。
これらの機能を備えたシステムであれば、セキュリティリスクを軽減することができるでしょう。
また、災害時やサーバーダウンなど、何らかのトラブルが発生した際に、サポート体制が整っているかどうかも確認するべきポイントです。
電子カルテと連動できるかチェックする
診療予約システムの中には、電子カルテと連携ができるシステムもあります。
それぞれを連携すると患者情報の確認がスムーズに行えて、業務効率化を図れることがメリットです。
メーカーごとに、どの電子カルテと連携実績があるかは異なるため、事前に確認するようにしましょう。
そもそも診療予約システムとは?
そもそも診療予約システムとは、患者がインターネット上から自由に診療予約を行うシステムのことです。
パソコンやスマートフォンから24時間利用できるので、いつでも予約できます。
診療予約システムの予約方法は3タイプ
診療予約システムには、以下3つの予約方法があります。
- 順番予約
- 時間予約
- 複合タイプ
順番予約
順番予約とは、銀行や郵便局などでよく見られる、来た順番に予約される方法です。
デジタル掲示板を設置して院内で順番を把握できるようにするだけでなく、Web上でも順番を把握できることが便利なポイントです。
オンラインでも把握できると、待ち時間に患者は外出できるため、待合室の混雑を緩和できます。
時間予約
時間予約とは、患者が受診時間をウェブ上で事前に予約できる方法です。
飲食店や美容院の予約と同じ感覚で利用できます。
時間予約は診察時間が決まっているため、ほとんど待ち時間がないことがメリットです。
ただし、遅れた患者に対応していると、正しい予約時間に来院した患者の診療が遅れることもあります。そのため、患者が予約時間に遅れた場合の対策が必要です。
複合タイプ
複合タイプは、順番予約と時間予約を合わせた方法です。順番予約は診療にかかる時間が予測しにくいクリニックに向いている一方、時間予約は一人の患者にかかる時間が予測しやすいクリニックに適しています。
複合タイプは、予約していた患者の診療をしながら、予約の無い患者を予約患者の隙間に入れられます。
予約が優先のため、当日飛び込みの患者は待ち時間が発生しますが、予約が入っていない空き時間も診療できるでしょう。
まとめ:診療予約システムの普及率はまだ低い!業務効率化に向けて導入を検討しよう
診療予約システムの普及率は3割程度とまだ低いです。とはいえ、今後デジタルネイティブ世代の増加やクリニックの人材不足が進むに伴って、普及率は拡大していくと予想されます。
患者の満足度向上や業務効率化の観点からも、診療予約システムの導入を検討してみてください。