IT技術の進歩がめざましい現代ですが、医療業界でもIT技術の発展が見られます。
しかし、医療の現場において、ITを活用するメリットはあるのか、と疑問に思われる方もいることでしょう。
また「ITはなんだか難しそうだし、あまり興味がない」とお考えの方もいるのではないでしょうか?
本記事では、医療ITを導入するメリットやデメリットを解説します。
日本の医療現場でITが普及していない理由や、今後の医療ITについても解説しているので、ぜひお読みください。
この記事の内容
医療ITとは?
そもそも、医療ITとは何を指しているのでしょうか?簡単におさらいしておきましょう。
医療ITとは、コンピュータやタブレットなどを駆使して医療を行う技術のことです。
例えば、コンピュータを使った遠隔医療やタブレット端末で書ける電子カルテなどが挙げられます。
また、ITに似た言葉としてICTという言葉を耳にすることもあるかもしれませんが、ICTとはITを活用するという意味の言葉です。
もっとも、ITもICTも同じ意味として使われることが多くなっているため、その区別はあまり気にしなくても良いでしょう。
日本は医療ITの導入が遅れている
アクセンチュアが行ったグローバル調査によると、日本は他国に比べ、ITの導入が遅れていることが明らかになっています。
日本の医療現場でITを使っていない人の割合が6割であり、世界平均の4割を大きく上回るほか、COVID-19の流行前後でITの利用状況が改善したと答えた人は6%で、世界平均の20%よりもかなり低い数値となっています。
では、なぜ日本では医療ITの導入が進まないのでしょうか?
主に以下の3つの理由が考えられます。
- 順応までに時間がかかる
- 院内各所での合意が得にくい
- 紙のほうが表現しやすい
1つずつ確認しましょう。
理由①:順応までに時間がかかる
1つ目の理由は、順応までに時間がかかることです。
IT機器の使い方が難しかったり操作が複雑だったりすると、順応するまでに時間がかかってしまいます。
順応するまでの期間でも医療は継続しなければならず、IT機器を導入したことにより、かえって時間がかかってしまうこともあるでしょう。
そのため、無理にIT機器を導入するのではなく、従来のやり方のままで運営を続けるケースが多くあります。
理由②:院内各所での合意が得にくい
2つ目の理由は、院内各所での合意が得にくいことです。
主に大病院で見られる課題ですが、各部門において別々のシステムを使っていることがあります。
この状態で各所での連携を図ろうとすると、利用するシステムを変更しなければならない部門も出てきます。
利用するシステムが変わり、使い勝手が変わることで不便になることもあるため、すべての部門での許可を得られない場合があるのです。
結果として、各部門の連携が出来ず、導入を見送ってしまうケースが少なくありません。
理由③:紙のほうが表現しやすい
3つ目の理由は、紙のほうが表現しやすいことです。
IT機器と言えば、主にパソコンの利用が想定されるでしょう。
パソコンはキーボードによる入力に適している一方、図や絵を描くことには適していません。
図や絵を用いたほうがうまく説明できる場合も多くあるため、パソコンよりも紙のほうが表現しやすいのです。
しかし、近年はタブレット端末でも連携ができるようなシステムが多く開発されています。
タブレット端末には付属のペンが備えられていることが多くあるため、従来の紙と同じように表現することが可能になっています。
そのため、3つ目の理由は、多くの場合で解決が可能でしょう。
医療ITを導入するメリット
医療ITを導入するメリットは、主に以下の3つが挙げられます。
- 業務効率化
- 部署間での連携が容易に
- 感染リスクの減少
1つずつ確認しましょう。
業務効率化
医療ITを導入することで、業務効率化につながります。
紙の場合は転記が必要ですが、ITを導入し各システムを連携させることで、自動で入力されるようになります。
これにより、業務のスピードが上がり、人的ミスもなくなるため、業務効率化につながるのです。
また、業務が効率化することで、必要なスタッフの数が少なくなるため、人件費削減にもつながるでしょう。
部署間での連携が容易に
医療ITは部署間での連携も容易にします。
例えば、電子カルテとレセコンは別々のシステムですが、これらを連携することで、診療報酬の計算をする手間が省けます。
他にも、予約管理システムと問診表、電子カルテを連携させることで、事務作業の手間がかなり省けるでしょう。
このように連携をすれば、部署間での連携が容易になり、伝達ミスなどの人的ミスも少なくできるでしょう。
感染リスクの減少
医療ITの導入により、感染リスクの減少も可能です。
COVID-19の感染拡大以降、院内での感染対策が課題として挙げられています。
とくに、院内では紙の文書を複数のスタッフで共有して扱うため、間接的に接触をしてしまうことが感染拡大の1つの要因であると考えられています。
しかし、紙の文書は消毒することが難しいため、抜本的な解決策が求められました。
そこで、タブレット端末で確認できるようにすれば、消毒が容易であり、感染拡大を抑える効果が期待できます。
また、一人一台配布できれば、より一層感染リスクを減らすことができるでしょう。
医療ITを導入するデメリット
一方、医療ITを導入するデメリットは、主に以下の2つが挙げられます。
- 費用がかかる
- 操作に慣れない
1つずつ確認しましょう。
費用がかかる
医療ITの導入には、初期費用や月額費用がかかります。
もちろん、業務が効率化したり部署間での連携が容易になったりするメリットはありますが、費用面だけを見ればメリットを感じにくいかもしれません。
しかし、医療ITを導入し、人件費が削減できれば、費用面でもメリットがあります。
また、業務効率化により顧客満足度が高まり、リピート率の増加や新患の増加にもつながる可能性があるため、潜在的なメリットもかなり大きいと言えるでしょう。
操作に慣れない
IT機器の操作に慣れていない場合は、医療ITの導入が困難になるかもしれません。
操作に慣れないまま導入してしまうと、業務のスピードが遅くなり業務に支障をきたしてしまう可能性もあります。
しかし、開発が進むにつれ、使いやすい機器やシステムが多く開発されるようになりました。
直感的に操作できるようになっていたり、マニュアルがとても親切に作られていたりするため、かなり使いやすくなっています。
そのため、IT機器に慣れていない人でも十分に操作できるでしょう。
医療ITの今後
最後に、医療ITが今後、どのような未来を歩むのかを見ていきます。
医療ITの未来を知ることで、医療ITとの関わり方のヒントにもなるでしょう。
医師が不要になることはない
「ITを導入したら医師の仕事が置き換えられてしまうのではないか?」という疑問を耳にすることがあります。
もちろん、一部の仕事はAIをはじめとしたITに置き換えられるでしょう。
しかし、すべての仕事がITにより行われることは考えにくいです。
ITよりも人間である医師のほうが総合的に判断する力やコミュニケーション能力は長けています。
そのため、あくまでも医師がやる必要のない業務を代行したり、医師の判断をサポートしたりする役割として活用されるでしょう。
多方面での連携につながる
ITを活用することにより、多方面での連携につながります。
例えば、データをクラウド上で利用することで、医療情報の共有が簡単になるほか、モバイル端末を利用することで、在宅医療や遠隔医療が可能になります。
他にも、データが自動で入力されたりデータの共有が簡単になったりすることで、連携が可能になるものが増えていくでしょう。
人口減少かつ高齢化という2つの課題を抱える日本において、医療ITは課題解決に向け、大きな役割を果たすでしょう。
ビッグデータの分析・活用
ビッグデータの分析や活用も、どんどん促進されることになるでしょう。
今までに積み重ねてきたデータベースをもとに、AIが診断のサポートをしたり診断そのものをしたりすることが考えられます。
AIが診断をすることで、瞬時に正確な判断ができるようになるため、迅速な医療の提供ができるでしょう。
また、手術をAIが行う手術ロボットも開発されている段階であり、医師の負担軽減が期待されています。
医療AIについて詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてお読みください。
医療AIでなにができる?活用事例や医療AIに期待されることを解説
まとめ
日本の医療業界のIT化は、変化への対応力が低いことが原因で、かなり遅くなっています。
医療ITを活用すれば、医師の負担が減るだけでなく、医療の質も向上し、どこに住んでいても電波さえつながれば医療が受けられるようになります。
導入当初は、システム変更への対応に苦慮することもあるかもしれませんが、徐々に慣れていくことで、医師にとっても患者にとっても大きなメリットを享受できるでしょう。
まだ医療現場でIT技術を利用されていない方は、電子カルテや予約システム、AI問診票など、簡単なものから導入してみてはいかがでしょうか?