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PHR(パーソナルヘルスレコード)とは?医療現場で活用するメリット・デメリットや導入の準備など解説

「PHR(パーソナルヘルスレコード)って聞いたことがあるけど、わかりやすく教えてほしい……」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

 

PHRは、健康支援や災害時の医療・生活習慣病の改善など、さまざまなシーンで役立ちます。

 

そこで本記事では、「PHR(パーソナルヘルスレコード)」とは何なのか、医療現場で活用するメリットやデメリットを含めて解説します。PHR(パーソナルヘルスレコード)の導入で準備しておくべきことや、活用事例も紹介しているので、参考にしてみてください。

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは?

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは?

PHR(パーソナルヘルスレコード)とは、健康・介護・医療に関する個人が保有する記録を指します。

 

個人が保有する記録は、医療や生活情報の管理が必要な際に役立ち、必要に応じて医療機関などと共有する仕組みが「PHR」になります

 

たとえば「母子手帳」には多くの記録が掲載されており、アナログ版のPHRと考えるとわかりやすいです。

 

母子手帳には、予防接種の記録や発育の様子などが記録されており、子どもの健康の維持や医療の連携を目的に作られています。

 

PHRも本人の健康維持や医療の連携が目的で、医療機関や介護事業者・家族と健康診断や日常の健康データの共有を行い、医療や介護に役立てることを指します。

 

医療機関は、患者本人が持つ健康情報の記録をほかの医院や施設に共有・連携を行い、医療の質の向上を図りましょう。

PHRとEMRの違い

EMR(Electronic Medical Records)は電子カルテのことを指し、PHRとの違いは医療従事者のみが扱うという点です。

 

基本的に電子カルテの「EMR」は、外部の病院・クリニックまたは健診機関などの専門機関と情報を共有することは想定されていません。

 

そのため、病院・クリニック独自の情報システムと考えるとわかりやすいでしょう。

PHRとEHRの違い

EHR(Electronic Health Record)は、医療機関同士が患者の医療情報を共有する「医療間情報ネットワーク」を指します。

 

PHRとEHRは補完関係にあり、どちらもうまく連携させることによって患者の健康管理と医療の正確性や効率化を実現できます。

 

PHRを医師に提供し、EHRを通じて他の医師や医療機関が診療に必要な情報を共有し合うインフラ整備を行うことで、診療の質と安全性を高められるでしょう。

PHRが推進されている背景

PHRが推進されている背景

PHRが推進されている背景は、以下の5つがあげられます。

  1. 超高齢化社会への対応
  2. 医療のスムーズ化
  3. 生活習慣病などの予防や早期発見
  4. 災害または救急時の対策
  5. 患者中心の医療を実現するための国の政策

日本は高齢化社会から超高齢化社会へと移行しつつありますが、超高齢になっても自分自身で医療や介護・生活などの情報を管理する能力が求められます。

 

そこで、PHRを医療機関に提供することで、自分の健康状態を把握して適切な医療や介護が受けやすくなります。また、PHRを通して過去の診療や服薬の履歴などを医師が確認できるようになるため、診療がスムーズ化しやすいです。

 

ほかにも、これまでの健康診断の結果や生活状況などを確認することで、生活習慣病の予防や早期発見につながります。さらに、災害が起きた際や救急時の場合は、病院の記録が確認できない場合も多いものの、PHRを提供しているとEHRを通して薬や持病、ワクチン歴などを確認しやすくなります。

 

さまざまなメリットがある点から、PHRが推進されている状況です。

PHRを活用する3つのメリット

PHRを活用する3つのメリット

PHRを医療機関が活用するメリットは、3つあります。

  1. 診療の正確性や効率の向上を図れる
  2. 医療連携の強化を図れる
  3. 慢性疾患管理の支援が行える

それぞれのメリットについて解説していくので、気になる方は参考にしてみてください。

診療の正確性や効率の向上を図れる

PHRを活用するメリットとして、診療の正確性や効率の向上が図れます。

 

たとえば、今までどのような診療を受けてきたのか、どのような薬を服用してきたのかを確認することが可能です。これまでの情報を考慮した診療が行えるため、正確性が向上します。

 

また、聞き取りの時間を短縮したり、これまでの情報をもとに症状や病気などを推測しやすく、1から模索する必要がないため効率も良いです。

医療連携の強化を図れる

PHRを活用するメリットは、医療連携の強化を図れる点です。

 

医療機関でPHRの情報を共有すると、他の病院・クリニックの情報もわかります。情報の共有をスムーズに行うことで、患者に対して正確性のある診察や連携度合いが高まっていくため、医療機関にとって大きなメリットがあります。

慢性疾患管理の支援が行える

PHRを活用することによって、慢性疾患管理の支援が行えます。

 

医療機関の診療記録は各病院・クリニックしか保有していないため、一度の診察では慢性疾患があるか判断しにくいです。そこで、PHRを活用すると、これまでの診療・服用歴が確認できるので、慢性疾患の管理も支援できます

 

患者にあった診療管理が行えるため、病院・クリニックの評価が高まりやすいです。

PHRを導入する際のデメリット・注意点

PHRを導入する際のデメリット・注意点

PHRを活用するデメリット・注意点は、3つあります。

  1. システムの整備が必要
  2. セキュリティ対策が必須
  3. システムに慣れる必要がある

メリットとデメリットのどちらも把握していると、あなたの医療機関にあっているか判断しやすいでしょう。PHRの活用を検討している方は、メリットとあわせて確認してみてください。

システムの整備が必要

PHRを活用する際には、システムの整備が必要です。

 

システム整備が整っていないと、どのように情報を活用していいかわからないという状態になりやすい傾向になります。たとえば、医療機関や自治体、企業などが共通のルールを整える必要があり、アプリやサービスなどの仕様が異なると情報のやり取りが難しいです

 

そのため、さまざまな機関・企業と連携をする際には共通のルールを定めるようにしましょう。

セキュリティ対策が必須

PHRは、診療歴や薬歴など機密性の高い個人情報になるため、取り扱いの際にはセキュリティ対策が欠かせません。セキュリティ対策を怠ってしまうと、情報が漏洩してプライバシー侵害や不正アクセスのリスクにつながります

 

通信を暗号化する方法やパスワード管理を徹底するなど、セキュリティ強化はしっかりと行うようにしましょう。

システムに慣れる必要がある

PHRを導入してすぐに対応できる人もいれば、高齢者またはITが苦手な方はシステムに慣れる時間が必要です。

 

また、サポート体制を構築できていない場合は、なかなか使えずに困ってしまうケースも少なくありません。個人情報を正しく取り扱う知識がない状態だと、不正アクセスやプライバシー侵害などのリスクにさらされてしまいます。

 

そのため、システムに慣れるように研修や教育の時間を設ける必要があります

PHRの導入で準備しておくべきこと

PHRの導入で準備しておくべきこと

PHRの導入で準備しておくべきことは、以以下の4つが挙げられます。

  1. 情報管理・技術面の準備
  2. 法的・倫理的な対応
  3. 患者対応や運用体制の整備
  4. 他医療機関・地域との連携

それぞれのポイントについて解説していくので、PHRの活用を検討している方は参考にしてみてください。

情報管理・技術面の準備

PHRを活用したい場合は、電子カルテや検査機器などがPHRと連携できるシステムを整備しましょう。バラバラのフォーマット・アプリでは他の機関との連携が難しく、データ共通ができないケースが少なくありません

 

そのため、連携する企業や機関と情報管理や技術面の打ち合わせを行い、データを共有しやすいシステム整備をしていくようにしましょう。

法的・倫理的な対応

PHRを準備する際には、規制・ルールの整備を徹底しましょう。

 

PHRは、機密性の高い個人情報を取り扱うため、本人同意の取得や第三者提供のルールの改正など個人情報保護法への対応が必須です。また、記録内容の改ざんや誤登録防止に関する規定整備なども徹底すると、情報を正しく取り扱えます。

 

患者に誤解を与えるような説明や、同意なく情報共有をしてしまうと信頼を失うため、法的・倫理的な対応を取るようにしてください。

患者対応や運用体制の整備

PHRを活用する準備として、患者対応や運用体制の整備を行うようにしましょう。たとえば、PHRを患者に提供してもらう際に、PHRの目的やメリット・使い方などを丁寧に説明できる環境を整備するのが理想的です。

 

また、高齢者やデジタル系に不慣れな方を対象とした相談窓口や操作支援などを用意しておくと、不満につながってしまう状態を解消できます。

他医療機関・地域との連携

PHRをうまく活用する際には、他医療機関や地域との連携を行うのがおすすめです。地域包括ケアや在宅医療などと情報連携の仕組みづくりを行うと、スムーズに共有しやすいでしょう。

 

また、薬局・介護・リハビリ事業所との横断的な協力体制を作るのがおすすめです。PHRは一つのクリニックだけで完結してしまうと意味が薄くなるため、EHRとPHRを補完しながら対応していきましょう。

医療現場でのPHRの活用事例

医療現場でのPHRの活用事例

医療現場でのPHRの活用事例では、以下の3社があげられます。

  1. 診療の質が高まった「中部ろうさい病院」
  2. 地域医療情報連携ネットワークとの連携「長野県」
  3. ビックデータから精度の高い分析で妊活をサポート「ルナルナ」

それぞれどのような活用をしたのか解説していくので、参考にしてみてください。

診療の質が高まった「中部ろうさい病院」

愛知県名古屋市にある中部ろうさい病院は、医療の質の担保の解決を目指して2019年度にオンライン診療とPHRの同時活用を試みています。PHRを併用することで、患者の日々の生活が遠隔でもわかり、栄養指導や療養指導に大きなメリットを感じています

 

PHRを併用しない状態では、オンライン診療をしても、普段と変わらないと言われるとすぐに診察が終わっていました。一方で、オンライン診療とPHRを組み合わせることで患者の様子がわかっているため、診察で丁寧に状況の確認が可能です。

(参照:シンクヘルス株式会社

地域医療情報連携ネットワークとの連携「長野県」

長野県はPHRの一環として展開されている地域医療情報連携ネットワーク「あじさいネット」を活用して情報共有をしています。

 

具体的には、診療所を中心に367施設があじさいネットに提供された電子カルテの情報を確認できる状態で、他の医療機関における過去の診療情報を参照にしながら質の高い医療を効率的に提供できる体制が整えられています

 

現在は電子カルテの情報を確認できるだけでなく、オンライン診療機能も利用できるようにすることで利便性が向上するため、整備が進められている状態です。

(参照:SOMPOインスティチュート・プラス

ビッグデータから精度の高い分析で妊活をサポート「ルナルナ」

株式会社エムティーアイが提供しているアプリ「ルナルナ」もPHRを活用したヘルスケアサービスとして注目を集めています。

 

ルナルナは生理日や基礎体温などを入力し、生理日予測や排卵日予測、妊娠の可能性が高い日の予測などができます。ルナルナは約800万人に利用されており、ビッグデータを細かく分析してより精度の高い排卵日予測や妊娠率が高い日の予測を提供している状態です。

 

また、自分でルナルナに記録することで、産婦人科などの医療機関に足を運んだ際に入力した内容をもとに医師に詳しく内容を説明し、状態の確認ができます。

(参照:厚生労働省

まとめ:PHRの活用で地域に根づいた医療を提供しよう!

まとめ:PHRの活用で地域に根づいた医療を提供しよう!

PHRの活用は、地域に根づいた医療の提供が可能で、多くの医療機関におすすめです。

 

ただし、PHRを活用する際には、個人情報の取り扱いに関する説明や環境整備が必須になります。多くの医療機関と連携を行うことでより信頼性の高い診療を行えるため、診療の質にこだわりたい方はPHRの導入を検討してみてください。